杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ヒポクラテスの誓い 

2023年04月14日 | 
中山七里(著) 祥伝社文庫 

浦和医大・法医学教室に「試用期間」として入った研修医の栂野真琴。彼女を出迎えたのは偏屈者の法医学の権威、光崎藤次郎教授と死体好きの外国人准教授・キャシーだった。凍死や事故死など、一見、事件性のない遺体を強引に解剖する光崎。実は「既往症のある遺体が出たら教えろ」と指示していた、その真意とは?(公式サイトより)


海堂尊の小説「バチスタ」シリーズや、ドラマ「科捜研の女」「アンナチュラル」「監察医朝顔」など法医学を扱ったものは好きで、この本も題名に惹かれてチョイスしました。
日本における遺体検索の件数や精度はまだまだ改善されるべきですが、それが世間一般の認識となっていないのは残念なことです。

栂野真琴は内科の津久場教授の指示で広範な知識と単位の修得のために法医学教室にやってきます。
法医学教室の光崎藤次郎教授は斯界の権威で、解剖の腕は超一流ですが、傲岸不遜で口が悪く、頑固な人物。キャシー・ペンドルトン准教授はアメリカ生まれですが流暢な日本語を話します。彼女は「死体好き」を公言しており、医学生の時に光崎のことを知って日本にやってきました。初対面で、キャシーは真琴をヒポクラテスの誓いの宣誓文のプレートの前に連れて行きます。
臨床医を目指している真琴にとって死体を扱う法医学への関心は薄く、この言葉も今一つピンと来なかったのですが、光崎の信念に触れるうち、次第に法医学にのめり込んでいき、物語の終わりには、ほんの少しではあるけれど理解できる気がすると言います。生きている患者を担当している時には見えなかったものが、死者と語らうようになってからぼんやり見え始めて来たと、法医学教室に残ることを願うようになるのです。

一 生者と死者
泥酔状態で凍死した中年男性
二 加害者と被害者
自転車で道路に飛び出し乗用車と衝突して死亡した女性
三 監察医と法医学者
レース中にコースアウトして防波堤に激突した競艇選手
四 母と娘
容態が急変して病院に運ばれ治療中に死亡したマイコプラズマ肺炎患者
五 背約と誓約
腹膜炎によるエンドトキシンショックで死亡した10歳の少女

一見、犯罪性のなさそうな遺体を半ば強引に解剖する光崎教授の狙いが明らかになるのは五話目です。それらの遺体に共通していたある事実を隠蔽しようとしていたのも意外な人物ですが、わかってみればなるほどな伏線は第一話からあったのですね。
受け身だった真琴が最終話では自ら動いて真相に近づきます。この彼女の変化は法医学者としての成長でもあるのです。

さて、上司の渡瀬警部も相当の曲者(でも検挙率はピカイチ)ですが、その部下である埼玉県警捜査一課の古手川和也刑事がまた猪突猛進な熱血刑事で、感情的で気の強い真琴とどこか似た面があるので、最初は反発していた真琴の気持ちにも変化が生じてきます。法医学ミステリーではあるけれど、今後恋愛要素も仕掛けられているようです。

シリーズ第四弾まで出ているようなので続編を読むのが楽しみ♪

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