2022年12月9日公開 95分 G
舞台は2020年11月17日。婚約をしたものの、コロナの影響で結婚式をすることができなかった20代の亮介(前原滉)とゆかり(大友花恋)。引っ越しの整理もままならない二人だが、都会から離れた町に住む真紀子(柳ゆり菜)の自宅で友人たちがお祝いパーティーを開いてくれることになり、稲田(中島歩)や圭吾(篠田諒)、そして真紀子の知り合いのインフルエンサーちひろ(めがね)らが集まる。しかし、自分の意見に合わせるばかりで、本音を話さない夫に不安を募らせていたゆかりは、彼の隠し事を知ってしまい、祝いの席に不穏な空気が漂ってしまう。
同じ空の下、様々な人物がやり切れない想いを抱えて毎日を過ごしている。急増するデリバリー案件に答えながら演劇ワークショップが中止になる日々を送る30代の若手俳優の片岡(アベラヒデノブ)、帰省できず里帰り出産のわが子を抱くこともできない40代のタクシードライバーの淡路(高橋努)、そして、学校イベントのほとんどが中止となり、長年の恋心さえも伝えられずにいる中学3年生の光輝(山時聡真)と鈴(佐々木悠華)。
この日は、しし座流星群がピークを迎える日── 恋人や親友、我が子との間でさえも曖昧になっていく他者との繋がりに、それぞれが葛藤を抱えながらも、たしかな一歩を踏み出そうとする彼らの空に、流れ星が降り注ぐ。(公式HPより)
新型コロナウイルス感染拡大により漠然とした不安が漂う2020年を舞台に、世代も職業も異なる人々が織りなす人間模様を描いた群像劇。(映画.comより)
新型コロナウィルスの感染拡大で行動制限がかかり、マスク、消毒、ソーシャルディスタンス、テレワーク等が日常となった3年前。気軽に友人と集まることも、やりたいことや行きたい場所さえ我慢せざるを得ない現実を受け入れることに慣れていく中で、誰にもどこにもぶつけられない怒りや苦しみを抱えながら、それでもゆっくり確実に時間は流れていきました。
本作では、10代から40代の世代も職業も異なる人々が過ごした「しし座流星群」が降った一夜が描かれます。
コロナ禍で結婚披露宴が出来なかった亮介夫婦のために、亮介の元アルバイト仲間の真紀子が披露宴を企画しました。場所は彼女の自宅(東京から少し離れた場所のよう)で、バイト時代の先輩の稲田や後輩の圭吾も参加します。でも祝ってくれるとはいえ、この時期に会ったこともない人たちと集まることにゆかりは気乗りしていません。真紀子はロールケーキだけは手作りしましたが、他の料理はウーバーのデリバリーを更に盛り付けます。でも稲田と圭吾、亮介たちの土産が高級ケーキだったため、自分のケーキを出せずにいます。
ラジオから「しし座流星群」が関東近郊で今日ピークを迎えるとのニュースが流れてきます。
里帰り出産の妻とスマホで会話するタクシードライバーの淡路、天体望遠鏡を持って流星群を見に行こうとしている光輝についていく鈴、役者を目指しウーバーで生計を立てるつむり・・・それぞれが閉塞した状況にため息をつきながら生きています。
後半、亮介が自分に黙って転職を決めたことを知ったゆかりが、彼と本音で会話します。「許せない」ではなく、「好きだからちゃんと話して」という方向に行って、最初のぎくしゃくした関係が好転するんですね。
真紀子の家にオードブルを届けたつむりは、閉鎖された学校に忍び込んでいる光輝と鈴にも配達します。ウーバー仲間の外国人たちに「お化けが出る」と脅されたつむりと光輝の会話が最初噛み合わない様子がちょっと笑えました。つむりは芸能活動自粛の煽りをくらって発表の場を失いますが、夜中、漫才の練習をしている芸人の卵たちを見かけて「独り」じゃないんだと心強くなります。
幼馴染の光輝を見かけ思わず一緒について行った鈴は彼に好意を抱いています。修学旅行も中止になり中学時代の思い出が作れなかったという鈴に、光輝は蚊取り線香と花火を取り出し一緒に楽しみます。思い切って告白しようとした瞬間、星が流れます。う~~ん、アオハルだね😁
酔客を乗せた淡路は、彼の愚痴(コロナ自粛で店が潰れた)を聞きます。下車した彼に思わず「がんばって・・じゃないな。がんばらないで」と話しかけると、彼は「初めて言われた・・がんばらないことにするよ、ありがとう」と答えます。
(この客は自分は一度も罹患したことがないと車内でもノーマスクでしたが、下車したあと淡路からマスクを渡されると素直につけます。このエピソードが伝えたかったのは励まし?それともさり気ない同調圧力?)
その帰路、亮介たちを乗せ、彼らのリクエストで星が見える場所に寄り道した淡路は、妻に「今度(実家に)行ってもいいかな」と電話します。不特定多数の客と接する彼は生まれたばかりの我が子に会いにいくのも遠慮していたことがわかる件です。
家から少しだけ遠出をして自分の時間を過ごすことで見えてくる何かもある。この映画はそういうことを伝えているようにも思えました。
あれから3年が経ち、コロナは5類になり、自粛は過去のものとなりつつある現状ですが、ウィルスが消滅したわけでも、克服されたわけでもないということもまた事実です。この作品を「そんなこともあったね~」と笑えるのはまだ先なんだよな~。😞