田中悟の片道旅団

大阪で芝居と弾き語りをしています。

鍵を失くした男?

2020年04月26日 | 日記
皆さん、こんにちは。
まだまだ大変な日々が続きますが如何お過ごしでしょうか?
僕はと言えば不詳ながらも皆様の幸せを祈りつつ、
ぼちぼちと毎日を過ごしております。

そんな日々の中、
最近は珍しく読書をしております。
先日ツイッターでも呟きましたが、
有栖川有栖先生の『鍵の掛かった男』。




ネタバレに注意しつつ本の帯に書かれた範囲で内容を説明しますと、
5年ほどホテルのスイートに住み続けたある男性の死をめぐる推理小説です。

ホテル暮らし。
実はホテルで暮らしたいという願望が昔からありまして、僕としては物凄く憧れるお話です。
ホテルといっても僕がまず連想するのはビジネスホテルですけどね。
ビジネスホテル大好きなんです。
今から30年ほど前になりますが、
当時勤めていた会社で月の半分ぐらい他府県に出張に出ておりまして、
連日あちこちのビジネスホテルに泊まっていました。
ある意味ではホテル暮らしのようなものだったかも知れません。
自分が住んでるマンションの家賃がなんだか勿体無く感じたりもしましたけど、
当時はとても楽しかったです。

ホテルの部屋って、めっちゃ落ち着くんです。
なぜだろう?
無機質なのにどこか温かくて自分の部屋よりもリラックス出来る。
当時僕が住んでたワンルームはほぼ何もない殺風景な状態で、
ただただ寝に帰るだけの『箱』みたいな感じでした。
それは今もそう。
自分の部屋を片付けたり、好きな家具を置いたり、心地良い空間を演出したり…そんな発想がなぜか昔からないんです。
いつからそうなったのかな?
多分中学生ぐらいから。

今、こんな状況になって、
部屋にいる時間が長くなったので、
掃除したり、片付けをしたりしています。
とは言えやはり何もない部屋なので、ある程度片付けたら、することがなくなりましたけど。

テレビはほぼ見ないし、
YouTube見て酒飲んで寝るだけの部屋でしたが、
以前よりちょっと広くなった机に向かって本を読んだりしています。
何年も部屋の片隅で埃を被っていたCDラジカセを復活させて、
ブルース・スプリングスティーンを小さくかけて。




CDなのにラジオみたいなノイズがジジジとスピーカーから聞こえます。
薄っぺらい質感の音で低音は割れまくり。途中で勝手に停止したりもします。
でもそんな感じの音が僕は好きなんです。
なんだかアナログっぽくて懐かしい。

そしてお酒とともに本を開く。
紙の匂いとページを捲る時の指先の感触、文字だけの情報から脳裏に描かれる物語世界。
読書が苦手な自分は5~6ページで充分満足。
その頃にはほどよく酔ってます。
本を閉じればCDラジカセからノイジーなブルース・スプリングスティーンの声だけが聞こえる。
ちびちび飲みながら、また気まぐれにページを開いたりして夜が更けていく。
幸せな時間です。


この物語に出てくる男はホテルの部屋に鍵を掛けてひっそりと生きていた…自分の人生にも鍵を掛けるように。
僕も部屋の施錠ぐらいはするけど人生の鍵はと言えばどうだろう?
なんというか…掛けたまま、というか掛かったまま。
自ら鍵を掛けてひっそりと生きているつもりはないけど、
扉を開ける鍵をいつしか失くしてしまって、ずっと立ち止まっている…そんな気もします。
よくある人生、つまりは平凡な男であります。
この物語に何かしらの憧れやシンパシーを覚える所以がそのあたりにあるのかも知れませんね。

僕は鍵を失くした男?
大丈夫、最初から鍵は掛かっていないはずだから。
コメント
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