2011年4月8日(金曜日)
毎日新聞の福井県版でいつも楽しみにしているのが
「支局長からの手紙」
今日の「支局長からの手紙」はわたし自身の想いとも
かさなりました。
電力会社などからのPR誌はどれもフルカラーの立派な冊子です。
原発はよっぽど、儲かるんにゃで・・・
冊子を手にするたび、そう思うわ・・・という声をよく聞きます。
敦賀1号機ができる頃、原発は1日稼働すれば1億円儲かる・・・
という話を聞いたことがあります。
あれから40年・・・
今は1日稼働するといったいいくら儲かってるんでしょうね・・・
原発の地域振興策で潤ってきた町や村が
お金と引き換えにした命を失おうとしています。
http://mainichi.jp/area/fukui/news/20110408ddlk18070663000c.html
支局長からの手紙:安全宣伝 /福井
6日に福井支局へ届いた経済産業省資源エネルギー庁の
季刊広報誌「Enelogy」を見て、わが目を疑いました。
福島第1原発の地元の女性団体リーダーが、
「“信頼の上”に高齢化を迎える原子力発電」とする、
原子力安全研究協会理事長らとの対談に出ているではありませんか。
そして、古里を大切に思う女性として、
原発への素朴な信頼に基づいた話をしています。
この人は今、放射能からの避難生活を余儀なくされているはずなのに……。
調べてみると、案の定でした。
原発事故の終息はいつとも知れず、避難指示のあった地域の人々が
古里に戻れる日は目途さえ立っていません。
この間、「信じていたのに」という気の毒な言葉を、
原発被災地からの報道でどれほど耳にしたことでしょう。
女性の話を直接は聞けなかったのですが、震災前のままとは思えません。
同庁原子力発電立地対策広報室に問い合わせると、担当者は
「(女性の)安否は確認しました。(震災後に掲載について)
やりとりはしていない」と。
震災前に編集済みで、その後、表紙に被災者への見舞いの言葉を入れる
手直しはしたものの、
「原発立地自治体の首長や議長、マスコミを対象に
同庁の考えを伝えるものだから、全体的に問題はない」と判断し、
3月末に全国発送したそうです。
理解不能な説明である以上に、あまりに原発被災者の心情に
無神経ではないかと思いました。
震災を受けての見直しをする時間は、十分にあったはずです。
電力会社などの事業者や政府機関の原発広報誌に、
違和感を抱くことが少なくありません。
今回のEnelogyには、広報官の対談もあり、
「正しい知識に基づく判断は、漠然とした不安を追い払います」
などと載っています。
しかし、福島原発事故は漠然とした不安が的中した格好です。
何が正しいかこそ、実は難しい。
その議論を積み重ね、コンセンサスを求める姿勢が重要です。
さらに、原発関係広報誌の量。
福井支局には、事業者や政府機関から何種類が届くことでしょう。
また一昨年に福井市へ転勤してきて驚いたのは、
広報誌が自宅のポストまで戸別配達されることです。
この物量を可能にする大きな力を時に感じ、
市民が反対意見を言いにくくならないかと思ったこともあります。
07年のこと。こうコラムに書きました。
<少女がCO2の文字を見て、「出しません」と繰り返すCMがある。
続けて、
「原子力発電は水力、風力発電と同じように電気をつくる時、
CO2を出しません」のテロップ。
エネルギー問題は、私たちの生活のあり方を問う。
単純な答えがないのはわかっている。
しかし、地球温暖化を引き合いに原発の優位性のみを主張し、
数々の問題点を塗り込めてしまうのは、あまりの厚化粧ではないか>
掲載されるとすぐ、事業者から電話がありました。
「お考えを教えていただきたい」。
一目瞭然(りょうぜん)の内容でしたが……。
理解を求める広報活動は重要だと思います。
その際は、大きな力を有する機関であればあるほど、
多様な声のある社会を尊重する姿勢を持ってほしいと思います。
【福井支局長 戸田栄】
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