モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

紙と透明水彩、そして光と空気が生まれる不思議

2015-05-16 04:20:53 | 大人 水彩

鈴木 透明水彩

土曜・大人クラスの京谷です。長いインターバルから復帰いたしました。
みなさま、ゴールデンウィークでリフレッシュなさいましたか?

さてさて本日は、水曜午前クラスの鈴木さんの透明水彩作品をご紹介したいと思います。
私はなかなかお目にかかる機会がないのですが、その素晴らしい数々の水彩画作品のお噂はちらりほらり伺っておりました。改めて今回の作品2点を拝見してまず、「ああ、なんてやさしい光なんだろう」という感想を持ちました。
透明水彩の、画材としての扱いにくさについては、岩田先生もここ何回かのブログで触れられ、沢山のアドバイスをなさっていらっしゃいますが、そこがまたこの画材の魅力でもあります。パレット上のみでなく、紙の上で薄い絵の具の層を重ねての混色や、それぞれに溶く水の分量を変えた複数の色をにじませ、偶然性を楽しむ混色があったり。鈴木さんの素晴らしいところは、そんな透明水彩の「透明」という特徴を十分に生かしていらっしゃるところ。画用紙の白が美しい「光」として極自然に扱われているところにあるのではないでしょうか。二つの作品ともに、前景から背景までなんともナチュラルに空気が流れているのです。写真をもとに描くにしろ、現場スケッチするにしろ、まずは画用紙との対話から始まると思うのですが、どの程度白い画面を絵の具で覆っていくかは、なかなかに難題ですね。反射や輝いている場所に単に白い絵の具を塗るのではなくて、紙の「白」を生かす訳ですから、作業初期段階であれこれ予想しながら制作を進めることになります。ついつい考えすぎて、筆が止まってしまうこともよくあることでしょう。ただごくまれに、すでにこの感覚を身につけられていて、画面上にあっという間に「空気」が流れ始める、そんな方がいらっしゃいますが、鈴木さんもそのお一人だと思います。

左右どちらの作品も、沢山のモチーフが丁寧に描かれていますね。
左は青果店のスイカや台の下の空き箱、客である少し物悲しい感じの背中をした年配男性の、特に肘から下の腕・買い物カゴまでの描写が秀逸です。
そして右の作品でまず目に飛び込んでくるのは、南仏あたりで見かけるグリーンの陶器セット。艶やかな上薬の感じがとてもよく表現されています。桃と葡萄も質感が出ていてすごく美味しそうです!彩色に絶妙な強弱があり、筆のタッチも変化に富んでいるため単調なリズムにならず、笑顔の女性とともに楽しい雰囲気に繋がっています。

画用紙に、鈴木さんの眼差しと水彩絵の具がのっかって、美しい光と空気が生み出されています。
コメント
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