大坪 油彩
急な夏のような暑さにヘトヘトの大竹です。今回ご紹介させて頂くのは大坪さんの油彩の作品です。
どちらもたっぷりと絵の具を使用し山の風景を描いています。左の作品は高い山をそれよりも上から見下ろす神の視点からの風景、右の作品は山を見上げる我々の視点の風景となっていますね。その対比が面白く、二つ並べてよりお互いの魅力を引き出しています。
まずは左の作品から。太陽光に濡れた左側面と、影になっている青色の右側面の色の響き合いが美しく、1番に目を惹きます。光や影の中にも山肌の色の変化が細かく描写されています。強い明暗の中に全体の色味のバランスを崩さずに色を置くことは、実は少し難しかったりします。合わない色を置いてしまうと悪目立ちしてしまうからです。大坪さんの作品は、そうした色のバランスがきちんと整っていますね。雲の表情も、手前の大きな塊から奥にいくにつれ細かくなだらかに描写され、画面の中に広大な奥行きを作っています。雲に誘導された視線の先に連なるサーモンピンクの山々の姿もまた美しいですね。
そして右の作品は、先ほどの立体感のある山や雲の風景と比べるとやや平面的に表現されています。逆光で浮かぶ山の黒いシルエットをより強調し、形を重視して描かれているのでしょう。そのインパクトと存在感は1枚目の作品とも引けを取りません。山に使用する色数を抑えた分、周りの空や木々、湖の色の鮮やかさが際立って見えてきます。輝く様な白と豊かな色彩を持つ空は、まるで宝石のようです。改めて同じ時刻に様々な色が入り乱れる空とは面白いものだと感じますね。こちらの空もまた、奥へと続く広い空間を感じさせ、キャンバスの画面の外の空間をも想像させてくれます。
両作品ともメインとなる山を異なる手法で表現しており、描く事の面白さ、奥深さを見る人に伝えてくれます。皆さんはどちらの表現が好みでしたか?