釘宮 透明水彩
サトルです。今日は僕の担当している日曜クラスの釘宮さんの作品を紹介します!
晴れの日の美しい光の差し込む浅草寺と、参拝客が緻密かつ軽やかに描かれていますね。とても情報量の多い風景で、参拝客を一人一人描くだけでも非常に時間のかかる大変な題材です。賑わいを表現する為にここまで沢山人を描かないと行けない時、焦って雑になってしまいがちですが、釘宮さんはデッサンの段階から計画的に描かれていました。水彩画を写実的に描く際、油画やアクリル画の様に途中で形を変えることが出来ないので、デッサンのクオリティが作品の完成度に直結します。完成した作品からはわかりませんが、参拝客以外の部分の下描きがとても丁寧に描かれており、そのおかげで宝蔵門や看板の文字まで絵具で細かく仕上げることができました。
門に差し込む光が美しく描かれています。光を描くということは影を描くということです。美しい光を描くためには美しい影の色が必要です。門の影の色に注目してください。正面の柱は強くはっきりとした色で影を描き、それに対して門の奥、提灯左の柱などは背後から差し込む光を紫に近い色にして、奥行きのある表現がされています。また、最も太陽に近い位置の屋根を少々はっきりと描き過ぎてしまった為、青と白の瓦の対比を最後に洗い流しました。そのおかげで主役となる提灯が手前に感じられて立体感が出たのです。
この作品を見た時まず主役となる提灯や手前に描かれた参拝客のクオリティに目が行くのですが、それは主役を引き立たせる影の表現がとても繊細に描かれているからです。緻密で美しい表現がこの作品の一番の魅力ですが、それを活かす絵全体の組み立てが釘宮さんはとても上手です。デッサンから焦らず時間を掛けて絵作りしたおかげで完成した素晴らしい作品ですね。