加瀬 油彩
小学生の油絵紹介を挟み、2週間ぶりのナツメです。本日は大人クラスより加藤さんの作品をご紹介します!
動物や子どもを描くことが多い加瀬さんの新作は左、写真集から選ばれた看板犬(?)です。海外なのでしょうか、ドアのカラーリングやベルなどにどこか異国の雰囲気が感じられます。日差しの眩しさが印象的で、壁や部屋の中、そして犬に落ちる影をしっかりと暗く落としていることで白が鮮やかに強調されています。この暗さと白のコントラストが効果的に使われているため、犬の存在感が際立ち真っ先に目がいくような明度計画がされています。扉の横にあるベルや足元の犬の置物も細やかに描かれ、何気ない日の一瞬が感じられる一枚です。
続いて右の作品は、実は1年前に完成されたものです。小原先生が真横からと真上からの対照的な絵として一緒に紹介したかったそうです。こうして並べて見てみると、アングルだけではなくコントラストや筆のタッチも含めて大きく印象が違いますね。先ほどは眩しいほどに光が強い夏を演出されていたのに比べ、今度は仄暗い部屋の中のやわらかな光とスリッパの材質からも分かるように冬を感じます。
穏やかな雰囲気のこちらは加瀬さんが真上から愛猫を撮られた日常的な風景です。小さな生き物を見る時には真上からのアングルが多くなりますが、これを平面の絵画に表現するのは非常に難易度が高かったことでしょう。真正面や真上からの構図は被写体の立体感を出しにくく、奥行きを表現するのが難しいものですが、この作品ではその困難を克服し、床との距離感や猫の立体感を巧みに捉えています。
一枚ずつ見ても素晴らしいですが、並べてみるとお互いが引き立てあって対照的だからこそ、それぞれも印象深くなりますね。日常の一コマを切り取り、犬と猫それぞれの個性を活かしつつも、どちらの作品にも共通しているのは動物への温かなまなざしと空間の捉え方です。動物への愛情と細やかな観察力が、日常の中にある大切なものを再確認させてくれます。