(2013年11月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
筆者は1年ほど前、フィリピンのアルバート・デルロサリオ外相の執務室にいた。(当時、日本の首相の座を目指して いた)安倍晋三氏が平和憲法を改正するという公約を実行に移して「再軍備」したら、フィリピン政府はどう言うかと聞いてみた(実際には、日本は既に完全に軍備しているが、憲法は自衛以外の目的での武器使用を禁じている)。
筆者はてっきり、それは遺憾な行為だと外相が答えると思っていた。再軍備は中国を激しく刺激するだけでなく、北京やソウルと同様、マニラでも、レイプや市民の虐殺がよく起きた日本のフィリピン侵略の記憶が生々しいからだ。
■「再軍備を大いに歓迎する」
ところが、そんなことは全くないと外相は言った。「我々は再軍備を大いに歓迎する。我々は地域で均衡を保つ要因を探しており、日本は重要な均衡要因になり得る」
今週、中国と日本が東シナ海に浮かぶ島々を巡り危険なにらみ合いを繰り広げるなかで、インドネシア外相が同意を示す、この発言が筆者の頭をよぎった。中国は先週末、日本で尖閣諸島、中国で釣魚島として知られる島々を含む防空識別圏(ADIZ)の設定を発表し、多くの人を驚かせた。こうした防空識別圏の設定は珍しいことではない。日本と米国も含め、多くの国が設定している。
だが、中国の動きは挑発的だ。中国の防空圏は日本のそれと重なっているからだ。今後、この空域に入る航空機は中国政府当局に通告しなければならず、さもなければ詳細不明の「防御的緊急措置」に直面すると中国政府はいう。
安倍首相はこの動きを非難し、中国の防空圏設定には正当性がないと述べた。米国政府も強く抗議し、米国の不満を強調するために中国政府に事前通告せずにB52爆撃機2機を送り込み、防空圏内を飛行させた。日本の大手民間航空会社2社は当初、中国の要請に従ったが、日本政府からの圧力を受け、27日から再び、中国当局に通告せずに防空圏内の飛行を開始した。
中国の狙いは、地上の現実(この場合は空の現実か)を変えることのようだ。中国が新たに設定した防空圏は、昔から続く、日本による尖閣諸島の実効支配に挑戦するものだ。日本はこれらの島々を1895年に領土に組み込んだが、中国はそれが違法だとしている。
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http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2804H_Y3A121C1000000/?df=2