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連載小説フォワイエ・ポウも、いよいよ3章・・・
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「・・・」
ここまで、
寺元マスターと木村がカウンター越しで話していた。そんな時、サンチョパンザに2組目の来客があった。来客は、なじみの客である。そして今夜は7人、、、。
(上記、17回の終りから・・・)
客の人数を見て、さらに客の内容を判断した瞬間に、
(しめた!今日はこれで出来上がった!もう今夜はこれで、大丈夫・・・)
寺元は、頭の中でつぶやいていた。
寺元の予定していた今夜の損益分岐点を越えた安堵感と達成感が、瞬時に寺元の頭をよぎった。
サンチョパンザは、規模的にはB級店ではあるが、寺元の夜の商売のフィールドは、ナイトクラブ・ビジネスである。一人当たり客単価の高いナイトクラブのビジネスは、勝負が早い。サンチョパンザの規模であれば、一晩で10名の客が入れば、文句なし、一日あたり12万円の利益ラインに完全に乗ってしまう。とにかくテーブルに座っただけで、最低1万円以上は支払わなくてはならないのが、ナイトクラブに出向いてくる客の支払いの目安である。逆に、店側としては少なくとも一人当たり平均1万5千円を請求ラインの目安としている。中を取っても、12,500円。これがナイトクラブの客単価である。
寺元は、一瞬にして気合が入った。
寺元と木村栄は、同時に声を発した。
「いらっしゃいませ!」
カウンター越しに喋り続けていた寺元と木村栄の休憩モードは、突然仕事モードに切り替わった。お客を迎え入れる挨拶をした瞬間、2人の顔は夜の営業の顔に変化していた。
とりもなおさず、2人の会話はここで中断した。
フォワイエ・ポウには、3組目の客が入っていた。
9時過ぎなってようやく、本田の弟・譲治が、仲間と一緒に顔を出していた。
同じ会社の部下を3人引き連れて来店し、奥のボックス席を占領した。すでに、会社の近くの居酒屋でアルコールの下地ができていた。五時半から課内会議があったらしく、事務所近所のいつもの居酒屋で、会議に参加した主だった連中で、食事しながら反省会をしたらしい。今尚、その仕事の延長線上の会話が飛び交っていたが、この場で一番先輩の譲治一人が喋っている。同行した部下は、いかにも静かでおとなしい。
にわかに本田は忙しくなった。
ボックス客のサービスでカウンターを離れる回数の多くなった本田と、ゆっくり会話を楽しむ時間が取れなくなった浜田と大塚は、あらためて本田に挨拶し、浜田が会計を済ませた。
「マスター、たいへんご馳走さまでした。もっともっとマスターのお話お聞きしたいのですが、今日は引き上げます。またお伺いしますので、どうぞ宜しくお願いします」
「ありがとうございます。またいらしてください、おやすみなさい」
ドアーに向かう2人の足取りは、いかにも軽やかだった。
「おやすみなさい、マスター」
店のドアーの手前で立止まった浜田は、振り返りながら、
「今夜は仕事のこと忘れて2人ともぐっすり眠れます・・・」
・・・
本田は微笑みながら会釈し、2人を送り出した。
初対面の客を送り出した本田は、なぜか清々しい気分になっていた。
時計はすでに午後11時を回っていた。
約1時間、仕事の話ばかりが続いた譲治の仲間も、ようやく腰を上げようとしていた。11時45分終発の、山陽本線JRの電車に間に合わせなくては自宅に帰宅できない部下が参加していたようであり、フォワイエ・ポウに付き合った譲治の仲間全員が、その時間に合わせて店を出た。
客を送り出した本田は、奥のボックス席とカウンター席のグラス類その他、さっそく、かたずけに取り掛かった。
わずか10名足らずの客の後始末に、そんなに時間はかからない。最期に残ったグラスを拭き終わったら、思わず、時計に目が向いた。
12時半が少し回っていた。
すでに空っぽになった店の中で、本日の売り上げの計算を始めた。
2度、計算した。
客数は、女性2名に男性2名、譲治たち5名。合計9名の来客数である。今夜の総売上金額は2万9千5百円であった。もちろんこの合計金額には、木村栄が差し出した1万円が含まれている。
結果、客単価は3千2百77円77銭・・・
と、なっていた。
本田は、もう一度確かめた。
(総売上はどうか?)
(1日あたりの最低目標である3万円には、わずかに届いていない・・・)
(あと1人、今からでも、もう1人の客が来れば、目標に届く・・・)
と、呟いたが、その実、
(もう終わりだ。今日は、これでよしとしよう!)
すでに、本田の神経は磨り減っていた。オープンした初日の売上げとして、良かったのか悪かったのか、それを判断する基準は、残念ながら本田には全く無かった。
午前1時の閉店を、決めていた。時計はすでに、12時55分を回っていた。
「この時間になって、そう、今から客が来てくれても、困る。もうホトホト疲れ果てた・・・」
久しぶりに独り言を言った本田は、手元の冷蔵庫からビールを1本取り出し、おもむろに栓を空けた。
(本田君、ごくろうさま!おつかれさま!)
もう一人の自分自身に、本田はねぎらいの言葉をかけた。
「カンパイ・・・」
まるで一人芝居だった。
ビールグラスに口を付けながら、ようやく表の看板のスイッチを切ったのは、午前1時6分だった。
(3章・完)
*掲載済み「小説フォワイエ・ポウ」をご覧になりたい方、4月12日記事から、お入り下さい、、、。
<・・次回4章に続く(4月12日水曜日・掲載予定)・・>
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<画像説明>
撮影場所:バリ島・レギャン通り、バリ風「レストラン&バー」
撮影日:2004年7月
備考:キッチンバー代わりに、朝・昼・夜・深夜を問わず2日に一回、必ず顔を出す「行きつけ」の店。
(ゆめゆめ接待には使えないですぞ)
ちなみに、
・American Breakfast= about300.-
・Lunch= abt.350.-/ 500.-・・・
・Dinner= abt.450.- / 700.-・・・
・Bintan Beer= ? maybe 160.-
・Traditional Bali-Style Dishies, Australian Foods, Sea Foods, etc.
* 表示価格は、いずれも日本円換算(正直、正確には覚えていない!全部アバウトですが、決して外れてはいない? まあ、まるで学生食堂並み?あるいは、それ以下のPRICEですから、うれしい、、、)
オーナーは豪州人女性。スタッフ全員、バリ人。
朝は9時半から開店、深夜1時までノンストップで営業。我輩の「隠れ家」から徒歩で3分。レギャン通りに面した便利の良い場所にある。
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(上記、17回の終りから・・・)
客の人数を見て、さらに客の内容を判断した瞬間に、
(しめた!今日はこれで出来上がった!もう今夜はこれで、大丈夫・・・)
寺元は、頭の中でつぶやいていた。
寺元の予定していた今夜の損益分岐点を越えた安堵感と達成感が、瞬時に寺元の頭をよぎった。
サンチョパンザは、規模的にはB級店ではあるが、寺元の夜の商売のフィールドは、ナイトクラブ・ビジネスである。一人当たり客単価の高いナイトクラブのビジネスは、勝負が早い。サンチョパンザの規模であれば、一晩で10名の客が入れば、文句なし、一日あたり12万円の利益ラインに完全に乗ってしまう。とにかくテーブルに座っただけで、最低1万円以上は支払わなくてはならないのが、ナイトクラブに出向いてくる客の支払いの目安である。逆に、店側としては少なくとも一人当たり平均1万5千円を請求ラインの目安としている。中を取っても、12,500円。これがナイトクラブの客単価である。
寺元は、一瞬にして気合が入った。
寺元と木村栄は、同時に声を発した。
「いらっしゃいませ!」
カウンター越しに喋り続けていた寺元と木村栄の休憩モードは、突然仕事モードに切り替わった。お客を迎え入れる挨拶をした瞬間、2人の顔は夜の営業の顔に変化していた。
とりもなおさず、2人の会話はここで中断した。
フォワイエ・ポウには、3組目の客が入っていた。
9時過ぎなってようやく、本田の弟・譲治が、仲間と一緒に顔を出していた。
同じ会社の部下を3人引き連れて来店し、奥のボックス席を占領した。すでに、会社の近くの居酒屋でアルコールの下地ができていた。五時半から課内会議があったらしく、事務所近所のいつもの居酒屋で、会議に参加した主だった連中で、食事しながら反省会をしたらしい。今尚、その仕事の延長線上の会話が飛び交っていたが、この場で一番先輩の譲治一人が喋っている。同行した部下は、いかにも静かでおとなしい。
にわかに本田は忙しくなった。
ボックス客のサービスでカウンターを離れる回数の多くなった本田と、ゆっくり会話を楽しむ時間が取れなくなった浜田と大塚は、あらためて本田に挨拶し、浜田が会計を済ませた。
「マスター、たいへんご馳走さまでした。もっともっとマスターのお話お聞きしたいのですが、今日は引き上げます。またお伺いしますので、どうぞ宜しくお願いします」
「ありがとうございます。またいらしてください、おやすみなさい」
ドアーに向かう2人の足取りは、いかにも軽やかだった。
「おやすみなさい、マスター」
店のドアーの手前で立止まった浜田は、振り返りながら、
「今夜は仕事のこと忘れて2人ともぐっすり眠れます・・・」
・・・
本田は微笑みながら会釈し、2人を送り出した。
初対面の客を送り出した本田は、なぜか清々しい気分になっていた。
時計はすでに午後11時を回っていた。
約1時間、仕事の話ばかりが続いた譲治の仲間も、ようやく腰を上げようとしていた。11時45分終発の、山陽本線JRの電車に間に合わせなくては自宅に帰宅できない部下が参加していたようであり、フォワイエ・ポウに付き合った譲治の仲間全員が、その時間に合わせて店を出た。
客を送り出した本田は、奥のボックス席とカウンター席のグラス類その他、さっそく、かたずけに取り掛かった。
わずか10名足らずの客の後始末に、そんなに時間はかからない。最期に残ったグラスを拭き終わったら、思わず、時計に目が向いた。
12時半が少し回っていた。
すでに空っぽになった店の中で、本日の売り上げの計算を始めた。
2度、計算した。
客数は、女性2名に男性2名、譲治たち5名。合計9名の来客数である。今夜の総売上金額は2万9千5百円であった。もちろんこの合計金額には、木村栄が差し出した1万円が含まれている。
結果、客単価は3千2百77円77銭・・・
と、なっていた。
本田は、もう一度確かめた。
(総売上はどうか?)
(1日あたりの最低目標である3万円には、わずかに届いていない・・・)
(あと1人、今からでも、もう1人の客が来れば、目標に届く・・・)
と、呟いたが、その実、
(もう終わりだ。今日は、これでよしとしよう!)
すでに、本田の神経は磨り減っていた。オープンした初日の売上げとして、良かったのか悪かったのか、それを判断する基準は、残念ながら本田には全く無かった。
午前1時の閉店を、決めていた。時計はすでに、12時55分を回っていた。
「この時間になって、そう、今から客が来てくれても、困る。もうホトホト疲れ果てた・・・」
久しぶりに独り言を言った本田は、手元の冷蔵庫からビールを1本取り出し、おもむろに栓を空けた。
(本田君、ごくろうさま!おつかれさま!)
もう一人の自分自身に、本田はねぎらいの言葉をかけた。
「カンパイ・・・」
まるで一人芝居だった。
ビールグラスに口を付けながら、ようやく表の看板のスイッチを切ったのは、午前1時6分だった。
(3章・完)
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撮影場所:バリ島・レギャン通り、バリ風「レストラン&バー」
撮影日:2004年7月
備考:キッチンバー代わりに、朝・昼・夜・深夜を問わず2日に一回、必ず顔を出す「行きつけ」の店。
(ゆめゆめ接待には使えないですぞ)
ちなみに、
・American Breakfast= about300.-
・Lunch= abt.350.-/ 500.-・・・
・Dinner= abt.450.- / 700.-・・・
・Bintan Beer= ? maybe 160.-
・Traditional Bali-Style Dishies, Australian Foods, Sea Foods, etc.
* 表示価格は、いずれも日本円換算(正直、正確には覚えていない!全部アバウトですが、決して外れてはいない? まあ、まるで学生食堂並み?あるいは、それ以下のPRICEですから、うれしい、、、)
オーナーは豪州人女性。スタッフ全員、バリ人。
朝は9時半から開店、深夜1時までノンストップで営業。我輩の「隠れ家」から徒歩で3分。レギャン通りに面した便利の良い場所にある。