前回は主人公の旧友に殺されかけ、
リエの幻覚を見て、昏倒してしまいました。
002:
どこをどう走ったのか、気づくとアパートの前にいた。頭痛に顔をし
かめつつ部屋に転がり込んだ。ナオミが悲鳴に近い声を上げた。
キミはナオミの肩を借り、ベッドに横になった。
─アイツが…カセムが何故、サイド6にいるんだ?
─何故、オレを殺そうとするんだ?
─オレもああなるのか?
同じ質問を誰かに繰り返した覚えがあった。
F066が死んだ半月程後のことだ。
F066の死を見て、強化人間に対する不信を募らせていたキミは、
ムラサメ研でキミたち3人の強化処置を施した責任者の名を知った。
軍務に就いて初めて、キミは命令違反を承知で、そのドクターの研究
室に押しかけた。
事務員の目を盗んで入って来たキミを、ドクターは目を丸くして見詰
めていた。
「きっ、キミは!」
「1ヶ月前、ムラサメ研で強化人間とやらにしていただいた男ですよ」
「キミは誰の命令を受けてここに来たんだ!?」
キミはゆっくりとドクターに歩み寄った。
「オレはアンタに聞きたいことがあるんだ。F066は死んだ。オレ
もああなるのか?」
ドクターの表情が強ばった。
キミはジャケットから拳銃を取り出し、ドクターに向けた。
ドクターは項垂れた。聞き取れないような小さな声で言う。
つらつらと強化人間について語ってましたが、割愛!
ナオミの声でキミは目を覚ました。誰かと言い争っているらしい。
「ネオジオンの者だ。これがどういうことか判るな」
寝室に大勢の足音が入って来た。
「運び出せ」
「薬を打っておけよ。暴れられると困る」
「ヴァロージャから離れて!」
ナオミの持っている銃には見覚えがあった。恋人のヴァロージャの形
見と言って大事にしていたものだ。
気合いを発して一気に跳び起きる。右腕に押しつけられていた注射器
を取り上げ、指揮官と思しき男の首に突き立てた。
「ナオミ!窓だ!」
キミとナオミは小さな裏庭に転がった。ナオミに起こされたが、足が
言うことを利かなかった。階段をジオン兵が降りて来る足音がする。
「ひとりで逃げろ…」
ナオミはキミを背負うようにして裏庭を出た。
「ナオミ…ヤツらはオレに用があるんだ、ひとりで逃げろ」
ナオミが何か言ったが、キミには理解できなかった。
「グスタフ…グスタフ!」
くぐもったような声にキミは目を開けた。
キミはモビルスーツのコクピットにいた。モニターには荒涼とした白
い大地と真っ黒な夜空が映っている
─月だ…。
「グスタフ、どうした?」
グスタフというのは─キミのコードネームだろう。
キミの後ろには2機のモビルスーツがいた。ダークグリーンのネモだ。
エゥーゴの主力モビルスーツ。
─エゥーゴだって?
気がつくと、コクピットのコンソール配置も連邦系とは違っていた。
キミの乗っているのもネモだ。
「しっかりしろよ、これからアナハイムの研究所へ殴り込むんだぜ」
乗機はネモ、月の上、アナハイム─キミはゆっくりと頷いた。
「そうだな、ガンダムをブン盗りに行くんだもんな」
2年近く前、可変モビルスーツという新兵器が登場した。従来の航続
距離と活動か脳時間の短さという欠点を補って余る能力を持つそれは
艦隊の長距離打撃力を大幅に高めるものとして注目された。
連邦ではメッサーラ、ギャプラン、アッシマーなどの様々な試作機が
造られ、あるものはムラサメ研に回され、あるものは試験のために地
方の部隊に回されて行った。
一方、エゥーゴ側は出遅れた。作業用モビルスーツの生産ラインを利
用できるという条件で試作されたものの、採用に至らなかったアニュ
スデイを改造したメタスというものもあったが問題外だった。
そんな時、アナハイムが可変機の開発をしているという情報が入った。
後にゼータガンダムとして知られる機体だ。
この時点では、アナハイムでは新型ガンダムを単にヴァリアブルガン
ダム、Vガンダムと呼んでいた。一年戦争時の連邦軍におけるモビル
スーツ開発計画、V作戦にちなんでという理由もあったのだろう。
このVガンダムの開発は、予定よりかなり遅れていた。エゥーゴとし
ては大いに不満であり、アナハイムに対して正式抗議文を送りつけた。
ところが、その抗議文の中に開発の遅延をエゥーゴの戦線拡大に反対
するアナハイムの一部分子によるサボタージュであると決めつけてい
るにも取れる一節があった。
当然、アナハイム側は激怒した。エゥーゴとアナハイムの関係は、新
型ガンダムの開発を巡り、軋んだ音を立て始めた。
これに目をつけた連邦軍は、エゥーゴに偽装した一隊で新型ガンダム
を開発している研究所を襲わせる、という計画を立てた。
成功すれば、アナハイムとエゥーゴの決裂は決定的なものになるだろ
うし、巧くすれば新型ガンダムのノウハウが手に入るかも知れない。
FISTがこの計画の実行者となることとなり、キミは偽装襲撃隊の
一員に加えられた。
しかし、捕獲品のネモを人数分揃えるのに手間取る内に、新型ガンダ
ムはロールアウトし、この計画は流れてしまった。
─これはアノ計画の夢だ…。
「良し、グスタフ、エミール、メモリーバンクのE1208だ」
キミはキーボードを叩いてデータを読み取った。目標は半地下式の研
究所、地下の部分は工場になっていて、そこにガンダムがある筈だ。
キミの目は小さなディスプレイに釘づけになった。そこに映っている
設計責任者はリエだった。
─もう一度、リエに会ってやる。そして…
背中のメインバーニアをコンマ8秒だけ噴射し、キミのネモは飛び出
した。後方の2機も続く。
その時、いきなりビーム光が閃き、右後方で何かが爆発した。
─隊長機(アントン)がやられた
・後退する:040
・このまま前進する:156
・横に回り込む:144
後退以外は最終的に157へ進むことになりますので、
次週以降、至るまでのルートを総て調べてみます。
リエの幻覚を見て、昏倒してしまいました。
002:
どこをどう走ったのか、気づくとアパートの前にいた。頭痛に顔をし
かめつつ部屋に転がり込んだ。ナオミが悲鳴に近い声を上げた。
キミはナオミの肩を借り、ベッドに横になった。
─アイツが…カセムが何故、サイド6にいるんだ?
─何故、オレを殺そうとするんだ?
─オレもああなるのか?
同じ質問を誰かに繰り返した覚えがあった。
F066が死んだ半月程後のことだ。
F066の死を見て、強化人間に対する不信を募らせていたキミは、
ムラサメ研でキミたち3人の強化処置を施した責任者の名を知った。
軍務に就いて初めて、キミは命令違反を承知で、そのドクターの研究
室に押しかけた。
事務員の目を盗んで入って来たキミを、ドクターは目を丸くして見詰
めていた。
「きっ、キミは!」
「1ヶ月前、ムラサメ研で強化人間とやらにしていただいた男ですよ」
「キミは誰の命令を受けてここに来たんだ!?」
キミはゆっくりとドクターに歩み寄った。
「オレはアンタに聞きたいことがあるんだ。F066は死んだ。オレ
もああなるのか?」
ドクターの表情が強ばった。
キミはジャケットから拳銃を取り出し、ドクターに向けた。
ドクターは項垂れた。聞き取れないような小さな声で言う。
つらつらと強化人間について語ってましたが、割愛!
ナオミの声でキミは目を覚ました。誰かと言い争っているらしい。
「ネオジオンの者だ。これがどういうことか判るな」
寝室に大勢の足音が入って来た。
「運び出せ」
「薬を打っておけよ。暴れられると困る」
「ヴァロージャから離れて!」
ナオミの持っている銃には見覚えがあった。恋人のヴァロージャの形
見と言って大事にしていたものだ。
気合いを発して一気に跳び起きる。右腕に押しつけられていた注射器
を取り上げ、指揮官と思しき男の首に突き立てた。
「ナオミ!窓だ!」
キミとナオミは小さな裏庭に転がった。ナオミに起こされたが、足が
言うことを利かなかった。階段をジオン兵が降りて来る足音がする。
「ひとりで逃げろ…」
ナオミはキミを背負うようにして裏庭を出た。
「ナオミ…ヤツらはオレに用があるんだ、ひとりで逃げろ」
ナオミが何か言ったが、キミには理解できなかった。
「グスタフ…グスタフ!」
くぐもったような声にキミは目を開けた。
キミはモビルスーツのコクピットにいた。モニターには荒涼とした白
い大地と真っ黒な夜空が映っている
─月だ…。
「グスタフ、どうした?」
グスタフというのは─キミのコードネームだろう。
キミの後ろには2機のモビルスーツがいた。ダークグリーンのネモだ。
エゥーゴの主力モビルスーツ。
─エゥーゴだって?
気がつくと、コクピットのコンソール配置も連邦系とは違っていた。
キミの乗っているのもネモだ。
「しっかりしろよ、これからアナハイムの研究所へ殴り込むんだぜ」
乗機はネモ、月の上、アナハイム─キミはゆっくりと頷いた。
「そうだな、ガンダムをブン盗りに行くんだもんな」
2年近く前、可変モビルスーツという新兵器が登場した。従来の航続
距離と活動か脳時間の短さという欠点を補って余る能力を持つそれは
艦隊の長距離打撃力を大幅に高めるものとして注目された。
連邦ではメッサーラ、ギャプラン、アッシマーなどの様々な試作機が
造られ、あるものはムラサメ研に回され、あるものは試験のために地
方の部隊に回されて行った。
一方、エゥーゴ側は出遅れた。作業用モビルスーツの生産ラインを利
用できるという条件で試作されたものの、採用に至らなかったアニュ
スデイを改造したメタスというものもあったが問題外だった。
そんな時、アナハイムが可変機の開発をしているという情報が入った。
後にゼータガンダムとして知られる機体だ。
この時点では、アナハイムでは新型ガンダムを単にヴァリアブルガン
ダム、Vガンダムと呼んでいた。一年戦争時の連邦軍におけるモビル
スーツ開発計画、V作戦にちなんでという理由もあったのだろう。
このVガンダムの開発は、予定よりかなり遅れていた。エゥーゴとし
ては大いに不満であり、アナハイムに対して正式抗議文を送りつけた。
ところが、その抗議文の中に開発の遅延をエゥーゴの戦線拡大に反対
するアナハイムの一部分子によるサボタージュであると決めつけてい
るにも取れる一節があった。
当然、アナハイム側は激怒した。エゥーゴとアナハイムの関係は、新
型ガンダムの開発を巡り、軋んだ音を立て始めた。
これに目をつけた連邦軍は、エゥーゴに偽装した一隊で新型ガンダム
を開発している研究所を襲わせる、という計画を立てた。
成功すれば、アナハイムとエゥーゴの決裂は決定的なものになるだろ
うし、巧くすれば新型ガンダムのノウハウが手に入るかも知れない。
FISTがこの計画の実行者となることとなり、キミは偽装襲撃隊の
一員に加えられた。
しかし、捕獲品のネモを人数分揃えるのに手間取る内に、新型ガンダ
ムはロールアウトし、この計画は流れてしまった。
─これはアノ計画の夢だ…。
「良し、グスタフ、エミール、メモリーバンクのE1208だ」
キミはキーボードを叩いてデータを読み取った。目標は半地下式の研
究所、地下の部分は工場になっていて、そこにガンダムがある筈だ。
キミの目は小さなディスプレイに釘づけになった。そこに映っている
設計責任者はリエだった。
─もう一度、リエに会ってやる。そして…
背中のメインバーニアをコンマ8秒だけ噴射し、キミのネモは飛び出
した。後方の2機も続く。
その時、いきなりビーム光が閃き、右後方で何かが爆発した。
─隊長機(アントン)がやられた
・後退する:040
・このまま前進する:156
・横に回り込む:144
後退以外は最終的に157へ進むことになりますので、
次週以降、至るまでのルートを総て調べてみます。