オイラにとって、絶対に外せない舞台ってのが幾つかある。
年に平均2回ある扉座の公演と、夏の定番M.O.P.の舞台である。
年イチになってからはずっと夏公演だったM.O.P.であるが、今年のM.O.P.はどう言う事情かは解らないが、珍しく冬の公演。
いつもなら熱い暑い公演となるトコロが、今回は熱い熱い公演となった訳だ。外が寒い分、舞台の上の熱さがより感じられる・・なんてね。
本来ならば、公演途中でネタバレレポは書かない主義なのだが、今回は特別気分なので、書いちゃうのだ。
ココからは
ネタバレでございますから、まだ公演をご覧になっていらっしゃらない方は、決して覗かないで下さい!!!
前回の
『水平線ホテル』はマキノ作品の集大成って感じのお話だった。
これでもか!これでもか!!と言うくらいマキノカラーが押し出された作品。
「燃えて泣けて決まる!」っていう、熱い熱い舞台がマキノさんの特徴なんでね。
しかし、今回の『「ズビズビ。」』はガラリと感触が違う作品。
4本のオムニバス形式で綴られたお話は、個々としては確かにマキノカラーがあるものの、何て言うのかな~、全面に熱さを感じないって言うか、熱さが内に秘められているって感じ。
今回はその1本1本についての感想でいってみよう!
■ずっと貴方を・・・
妻を亡くしたばかりのかつての大物スター南大作の旅公演の楽屋。大作はイラついていた。自分の酷評を書かれた記事を廊下に貼り出されてしまったからだ。それはかつての大スターに対する冒涜であり、また、今の自分を再認識する事でもあったから。
そこへ地方新聞の記者がインタビューにやって来る。南は初めインタビューを断るが、女性記者が自分の大ファンである事に気を良くしてインタビューを受ける事を承諾する。
自分の酷評に対する意見を記者に聞いた時、記者は自分も同じ意見だと答えた。自分への賛辞を期待していた南は記者を問いつめる。
演目はハムレット。南の役はクロ-ディアスであった。ただの悪役を演じる南に記者は言う。
「クローディアスは悪役だとは思いません。愛する女の為に人殺しをしてしまうほど、弱い人間なのです。」と。
南にはこの演技が出来るはずだと、過去にあったひき逃げ事件の話を持ち出す。実はそのひき逃げ犯は南であったが、証拠隠蔽で容疑者は捕まらず時効となっていた事件である。
死んだ被害者はどうしようも無い人間であったが、記者の「被害者の娘にあったかもしれない父の良い記憶」を奪い去る権利は誰にも無い。。。という説得に、本当の事を話し、被害者の娘に対し詫びの言葉を口にする。
記事を売るのでも、記事を書くのでも無く、ただその一言を聞きたかったと記者は号泣する。実はその被害者の娘こそ、この記者なのであった。
南を好きだった娘は犯人の名を世に告げる事無く、今、ここで打ち明けたのだった。
そして、ソワレの舞台の幕が開く。南の演じるクローディアスの姿には、単なる悪役では無く、一人の人間としてのクローディアスがいた。
◆軽快なテンポの滑り出しから、ミステリーの謎解きの様な中盤を経て、ラストのクローディアスを演じる南の姿まで。緊迫したやり取りに目が放せない。記者を演じるドリさんが号泣する時に一緒に涙がこぼれ落ちる。そして鏡を使ったクローディアスの演出。
南大作の二つの人生の分岐点を描き、また、記者の二つの人生の分岐点も描いているのだと思った。
個人的には、オクチンさんの「大ちゃぁ~ん」ってセリフが大好きだった。
扉座と四季でハムレットを観ていたので、ホレイショーもクローディアスもちゃんと解って良かった♪
■ビッグな男
♪そっらには太陽!レッツゴー!ゴーゴー!!
キッミとふたぁりで!レッツゴー!ゴーゴー!!♪
70年代。夏のとある楽屋。
ヤッちゃんの工藤が刀を片手にキレている。キレられているのは「しろがね菊次郎一座」という大衆演劇の一座。題目の森の石松を演じる役者がドロンしてしまい、上演が出来ない状況になっていた。
興業元のヤクザの親分が三度の飯より石好きって事で、しろがね一座を呼び興業する事にしたのに、題目を変える事は許さないと言う工藤。
急遽代役を捜す事にしたが、団員の中には上がり性と言葉が聞き取れない訛しかいない。会館の安田に頼んでみたが、セリフを教えた工藤の方が上手ときた。工藤に石をやってくれないかと頼んだが、題目を帰るなら指の一本覚悟しろと言い捨てて去って行く。
小便に行った菊次郎が「血尿が出た」と戻って来る。おかみさんに「それはストレスだに」と言われしょんぼりと寝転ぶ。菊次郎が一人でどうしようか思いあぐねている所に、グループサウンドをすると言ってドロンをしていた座長の弟マサルが帰って来る。実はマサルのバンドのレコードでビューの条件が、ボーカルのマサルと事務所で用意した男前とにすげ変える事だった。マサルはGSを飛び出し、また一座に戻りたかったのだ。
題目を変えずに石松ができると喜んだ一座であったが、頑固者の菊次郎がマサルを許す事が出来ず交渉決裂。菊次郎は指を詰め一座を解散する覚悟を決める。
そこへ、衆議院議員海老沢の秘書・加賀見がやって来て「海老沢が親分さんに交渉して、題目はなんでもよい事になった」と告げる。一同ほっと胸をなで下ろし加賀見に礼を言うが、この公演を海老沢が観ない事が発覚した途端、菊次郎のへそが曲った。
「その施しは頂きたくござんせん。どなたさんも、真っ平ごめんなすっておくんなせぇ!」
啖呵を切った。
加賀見が去った後菊次郎が言った。「マサルのやつを呼んで来い。このオレが、菊次郎がおめぇの石松を見たいと、土下座して頼んでるって言いな!」
団員は嬉しそうに返事をし、マサルを捜しに行く。菊次郎は小便をしに立つ。おかみさんも小便に血が混じって無いかを確認に覗き込みに行く。
誰もいない楽屋に工藤が石の格好でやって来る。
「どちらさんも、ごめんなすって・・・」森の石松、金比羅代参の有名なセリフが響く。
◆イキナリのGSにビビル客を取り残し、ノリノリで歌いまくる木下さんが素敵すぎ(笑)衣装も髪型も忘れられませぬ。
最近、酒井のオヤジさんの演技がごっつう好きなオイラ。掛川の遠州弁って言うんですか?コレがすごく美しい芝居なんですよ。第2話の見どころはきっぷの良さとこの方言でしょうな。
今年はなんだか方言が綺麗だなって思っていた所。夏に見たsasukeの後、津本陽の真田忍法記を途中まで読んで、その方言の持つ豊かさに感動したんだな。読破して無いけれど。地の言葉ってのはそれだけで独特の勢いがある。言葉って生きてるなぁって思ってたので、この掛川弁(?)は非常にタイムリーにオイラの中にスルリと入った。
2話目もしろがね一座の分岐点を描いている。チャキチャキのセリフの裏に、沢山の思いや迷いや怒りや優しさが詰まっている。言葉っていいなぁと思った作品。
森の石松も、扉座の『語り継ぐ者たち』のお陰でちゃんと遅れを取ること無く着いて行けました♪石松を演じる三上さんに犬飼さんが被ったことはナイショにしておこう・・・
うーーーん。長くなって来たので、2幕と最終感想はタイトルを改めて・・・・
そんな訳で、続く。