山岳ガイド赤沼千史のブログ

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冬 飯縄山 戸隠蕎麦はやはり冬 

2014年02月03日 | ツアー日記

 やたら寒かった今年の冬だが、雪と言えば少雪傾向で、一月の後半からは途端に暖かくなって、雨が降ることも何度かあった。やはり冬と言うのは寒くなくちゃいけないと僕は常日頃思っているので、雨が降ったりするととても不安な気持ちになる。地球温暖化?果たして僕ら人間の存在は悪なのか?僕らのすることなす事はとても罪深く・・・・・・・・なんて、余計な事まで頭の中をよぎっていく。だけど、そのほんとの理由は、僕の大好きな冬が過ぎていく事への寂寞感だったりする。僕は冬が大好きなのだ。

 僕が子供だった頃、僕が通った旧有明小学校には校庭が二つあって、そのひとつを潰して水が張られてスケートリンクとなっていた。冬の遊びと言えばスケート意外にはなんにもなくて、体育はスケートで、放課後もスケートという日々。みんな足の指を霜焼けにして、ほっぺを真っ赤にしてスケートをした。だが、小学校高学年になる頃からまともな氷が張らなくなって、それからスケートからはすっかり遠ざかってしまった。それからずっと、冬は暖かい。寒かったあの頃の冬を思うととても懐かしいし、それは今となっては、梅雨時日が暮れて蛍が乱舞するあぜ道を歩いたのと同じぐらい夢の様な光景に感じるのだ。やっぱり冬は寒くないと。

瑪瑙山 背後に高妻山と戸隠山

 冒頭から話がそれてしまっているが、2月1日(土)「戸隠、飯縄ツアー」のこの日も暖かな一日だった。翌日天気が崩れて雨が降ると言う予報だったので、昼からではあるが急遽初日に飯縄山を登ることにした。戸隠スキー場からリフトを二本乗り継いで瑪瑙山(めのうやま)に登る。そこから飯縄山へは一旦コルへ下り、300メートル程を登り上げる。ここに来るまでに通りすがった一の鳥居ルート駐車場には沢山の車があったのだが、こちらからは数人の山スキーヤーのシュプールがあるだけで、トレースは無かった。スノーシューを履いて少しクラストした雪をサクサクと踏んでいった。ぼんやりとはしているが、周りの山もぐるりと見渡せて、風も無くなんて暖かいのだろう。

 ジンワリと汗をかいて飯縄山頂にたどり着くと、広い山頂には一の鳥居ルートからの登山者の踏み跡が沢山残っていた。朝一番で皆さん登ってきたのだろうから、もうすっかり下山したあとだ。春霞がかかったように辺りはぼんやりとしてはいるものの、遠く北アルプスも見える。東側の足下には飯縄スキー場が見えるが、土曜日だと言うのに滑っている人がぽつりぽつりとしか見えなくて人ごとながら心配になる。その向こうには善光寺平が広がる。静かな山頂を満喫して中社ルートへ下山した。

瑪瑙山と背後には戸隠、高妻山

 此処も今年はやはり雪が少なめである。この時期は、パフパフの新雪を踏んでグイグイと下れるはずなのだが、クラストして堅めの雪に難儀させられる。スノーシューというのは、深雪であれば絶大な力を発揮するが、堅い雪の急斜面はからっきしである。踵を雪に蹴り込めないので膝が前へ無理矢理押し出される感じになって結構恐いのだ。ご愛敬だが時々ずるずる滑って転ぶ。この飯縄山なら良いのだが、日本の複雑な地形の雪山をこれで一つで歩き回るのは不可能だ。

パイプライン

 中社ルートを下山してそのまま戸隠の定宿「横倉」に滑り込む。いつもながら、手の込んだ美しい料理を出してくれる宿だ。翌日は雨予報なのでどうしようかとお客さんと相談したのだが、久しぶりにスキーをやってみようかと言う話になる。お二人ともスキーは久しぶりなのだそうだ。約10年ぶりともうひと方はなんと30年ぶり?一旦遠ざかってしまうと、道具やら何やらも大変だし、滑り方も変わっているの?なんて、どことなく億劫になってしまうのがスキーだが、この際良いタイミングかも知れない。いいね、いいね、やりましょう。

 翌日は、それほどの天気の崩れもなくぽつぽつと降る雨のなかスキーを楽しんだ。先ずは初心者コースからだが、ボーゲンスタイルでお二人とも無難に滑り降りる。流石昔取った杵柄。スキーは自転車と似ていて、何年も滑らなくても完全に滑れなくなってしまう事は無い。二本目、三本目と次第に調子を上げるお客さん。最後は、「あたし、またハマっちゃいそうだわーー」だって。やっぱり楽しいでしょ?スキーは。みなさんもこの際、もう一度スキーにチャレンジしてみては如何だろう?スキーは心底打ち込める生涯スポーツだ。登山が出来なくなってもスキーなら大丈夫とも言う。そして、何より冬が待ち遠しく楽しくなる。僕の行く冬を惜しむ寂寞感も少しは解っていただけるかも知れない。

随分待たされたので写真を撮る前に一口食べてしまった僕であった。崩れたボッチ盛り(笑)

人気店「蕎麦の実」の蕎麦打ち場、夢の様な仕事場だ。