山岳ガイド赤沼千史のブログ

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雨の夏

2014年08月27日 | 安曇野の暮らし

水車のある村

 お盆頃から時ならぬ秋雨前線が出現し、どうにもこうにも天気が悪い日が続く。山を歩く人達が極端に少ない気がする。例年なら、登山道でのすれ違いなどが結構大変で、山岳ガイドという職業はこの夏の間、交通整理の役目も果たす。登りの場合は下山する登山者に待って頂く事が多いが、大勢を引き連れている場合彼らに十分配慮しなくてはならない。礼を言ったり、時には先に下ってもらったり。だが、今年はそんな心配も殆どないのだ。上高地のバス待ちも無いに等しい。上高地の登山相談員のOさんは言う。

「オラあ、上高地に60年いるが、こんな夏は初めてダジ、今年の登山者は半分だ。」

 黒部川上廊下も水量多く撤退した。今回の槍ヶ岳北鎌尾根2回目も雨に見舞われ敢えなく撤退。雨の夏休み。ぽっかり空いた休日に僕は複雑な気持ちになる。稼ぎ時なのに、ぼんやり雨を見ている。気温は寒いぐらいで、ストーブを点けたい位だ。田圃の畦草も豊富な雨に異常に伸びるし、草も刈らなきゃと思う。だけど雨だからね。今日は休んどこう。あきらめが僕の心を癒す。

寒冷紗に覆われた山葵畑

 ならばと、ふと思い立って雨の写真を撮りに出かけた。どこに行こうか考えながら車を走らせた。その頭に浮かんだのは安曇野観光の定番中の定番「大王ワサビ農場」。

 日本一の規模を誇るこのワサビ農場がある一帯は、梓川、高瀬川、穂高川、万水川(ヨロズイカワ)など、松本盆地の全ての水が集まるところで、ここから川は犀川となって長野盆地へと流れ下って行く。周辺には北アルプスからの湧水が沸き、ゆったりと流れる清流に水鳥が浮かぶ。黒澤明監督の「夢・・・・・・水車のある村」の撮影地もまさしくここなのだ。その水車小屋のセットは保存され、今でも静かに万水河畔に佇んでいる。

 久しぶりに訪れた水の郷を観光客に紛れてぐるっと回った。再び万水川に戻ると、上流から一艘のラフティングボートがやって来た。見れば友人の「ワンダーエッグ吉沢さん」だった。

「おーい、吉沢さーん。」

「あれ?赤沼さん?久しぶりーーー!じゃあね」

結構な雨が降る中、子供達を乗せた黄色いラフティングボートは歓声をあげながら果敢に増水気味の梓川本流へと流れ下って行った。元々が濡れてナンボの水遊びとは言え・・・・・・・・・・・・・ヤルね。

 ラフティング 「ワンダーエッグ」

雨の夏