365度の液体が噴き出す前人未到の海底には、生物がうじゃうじゃ棲んでいた
海面から約4kmほど潜った海の底にあるのは、365度の高温の黒い液体が吹き出す30mもの高さの熱水噴出孔。そこには小さなカニやエビ、カサガイ類などが煙突のような噴出孔の下に住んでいます。そんな人類未踏の地に最近新たな訪問者が。遠隔操作探査機「SuBastian」です。
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カリフォルニア州はパロアルトにあるSchmidt Ocean Instituteが2016年に開発した遠隔操作探査機(ROV)のSuBastianが「訪問」したのは、2015年にマリアナ海溝近くの「マリアナ・バック・アーク(Mariana Back-Arc)」で新たに見つかった熱水噴出孔群。このSuBastianを操作する科学者たちは、去る12月、Falkorという船に乗り込みデータを収集たり、その探索の模様をライブストリーミングしていました。
動画はこちら:https://youtu.be/YlNUiUcBGwQ
Schmidt Ocean Instituteが最近発表したプレスリリースによれば、このバック・アーク地域には30mもの高さの熱水噴出孔があり、エビ、カニ、ロブスターを含む生命に満ちているんだそう。
National Geographicの説明によると、泥状になった海底とは違い、ここでは硬い岩のお陰で海の生き物たちがしっかり掴まれるようになっています。ワシントン大学JISAO(直訳:大気・海洋合同研究所)の主任研究科学者David Butterfield氏が米Gizmodoに語ったところによれば、他にもさまざまな国がSuBastianのようなROVを持っているそう。「だが(SuBastianの)技術的能力のお陰で、問題点をすべて解決できたら最高級のROVとなれるだろう」とButterfield氏。
マリアナ・バック・アークの温度、地質、化学的性質は、海の他の場所ではみることのできない、他の似たような熱水噴出孔地域とも違う、とても特殊なエコシステムを形成しているかもしれないのです。Butterfield氏は「これらの火山性温泉に住むものは、海底からの化学エネルギーがそこにあるからです」と語っており、「我々は大局的な地殻変動による種の地域差があると考えています」とのこと。研究者たちは採取したサンプルの中から新たな種が出てくるのではと考えていますが、それを判断するにはデータを分析する時間が必要となります。
SuBastianが直面したチャレンジもありました。例えば、1年前に発見したプルームを探したり、噴火中の海底火山を泳ぎ渡ったりなどなど。それでもSuBastianからは熱水噴出孔の素晴らしい写真や動画が撮影されました。
科学者たちは今後SuBastianの問題点を修正するとともに、探索で集めたサンプルやデータを分析します。しかしButterfield氏が一番喜んでいたのは、申し込めば他の科学者たちの個別の研究にもFalkorやSuBastianなどのリソースをSchmidt Ocean Instituteが使わせてくれるということでした。
海底は色のない世界