「Space.com」(3月29日付)などによると、今月22日、戦略国際問題研究所(CSIS)のカンファレンスに登壇したリチャード中将は、今年最大の懸念事項といわれる「宇宙戦争」がはやくも現実のものになろうとしていると警告。自国の宇宙資産保護と戦争の抑止のため、宇宙戦争を念頭においた戦闘準備が不可欠との見方を示した。
リチャード中将「Space.com」より引用
「戦争を未然に防ぐ最良の手段は、戦争に備えることです。そうすることで、我々には戦闘用意があり、あらゆる面において勝利する準備が整っていると敵に知らしめることができます。宇宙空間も例外ではありません」(リチャード中将)
リチャード中将は、その例として核兵器に言及。宇宙防衛は、同盟国や第三国に対する核攻撃を抑止する、いわゆる「核の傘理論」と同様の戦略的メッセージを持つと強調している。
これまで宇宙の(戦略的)開発は米国がリードしてきたが、今日ではロシアと中国が「衛星攻撃兵器(anti-satellite weapon)」の開発を進めるにあたり、米国の戦略的優位が揺らぎつつある。戦場が宇宙空間に拡大されるのは時間の問題であり、まだ宇宙戦争が勃発していないとはいえ「完全に平和とは言えない」と、リチャード中将は懸念を表明している。
2007年に中国が行った衛星攻撃兵器の実験「Space.com」より引用
それに加え、各国の“宇宙空間での不良行為”を防ぎ、科学的な宇宙探査を持続的に可能にするためにも戦略的防衛準備がなによりも必要だという。たとえば、2007年に中国が行った衛星攻撃兵器の実験では、3400個もの新たなスペースデブリが地球の軌道に拡散する結果を招いた。このような身勝手な行為を防ぎ、宇宙空間への安全なアクセスを確保することが最終目的とのことだ。
「我々は宇宙を陸地、空、海、サイバー空間と変わらない1つの領域としてみていますが、宇宙にはどこか特別なところがあります。人類が仰ぎ見上げ、夢見る領域である宇宙を、そのままの状態で維持することがアメリカ戦略軍(USSTRATCOM)の仕事です」
■トランプが「スターウォーズ計画」を実行に移した?
一見したところ素晴らしいプランのように聞こえるが、その裏にトランプのヒステリックなまでのナショナリズムが隠されていることを忘れてはいけない。トランプは、安全保障政策スローガンとして、ドナルド・レーガン元大統領が掲げた「力による平和」を発表している。以前トカナが取材した軍事ジャーナリストはこの件に関して次のように語っていた。
「レーガンといえば、宇宙に大量のミサイル衛星やレーザー衛星、早期警戒衛星などを打ち上げて、ソ連のミサイルがアメリカに到達する前に破壊する防衛網を宇宙空間につくる“戦略防衛構想=スターウォーズ計画”を構想していたことで有名だ。大出力の化学レーザー兵器の配備など、さまざまな宇宙兵器が研究・計画されていたが、莫大な費用がかかるため、失敗に終わった。しかし、トランプはこれを受け継ぎ、いよいよスターウォーズ計画を実行に移す可能性があると囁かれている。そうなれば、ロシアや中国を巻き込んだ大規模な宇宙戦争が勃発してもおかしくない」
今回のリチャード中将の発言を、「スターウォーズ計画」が実現段階に差し掛かった証拠、そして米国の宇宙支配を危惧する中露に対する宣戦布告とみることもできるだろう。上述の軍事ジャーナリストの分析も考慮すると、計画が完遂される前に、ロシアと中国が何らかの軍事的アクションを起こす恐れもある。今、我々は大規模宇宙戦争勃発の瀬戸際に立たされているのかもしれない。今後、米露中の動きには細心の注意が必要だ。