天の川銀河に1万個のブラックホール?研究成果
超大質量ブラックホールに近い「ブラックホール連星」を調査
私たちの銀河系(天の川銀河)の中心付近に、多数のブラックホールが集まっていることが明らかになり、学術誌「ネイチャー」に発表された。今回の発見は、これまで考えられていたよりはるかに多くのブラックホールが銀河系全体に分布している可能性を示唆している。重力波と呼ばれる時空のさざ波の解明にも役立ちそうだ。
銀河系の中心に怪物級のブラックホール「いて座A*」が潜んでいることは、ずっと前から知られている。いて座A*は、地球から太陽までの距離ほどの狭い空間に、太陽の400万倍以上の質量が詰め込まれた、コンパクトな天体だ。
科学者たちは以前から、銀河系では約2万個の小さなブラックホールが軌道運動しているのではないかと考えていた。けれどもブラックホールはその名が示すように、直接観測するのは非常に困難だ。(参考記事:「史上初のブラックホール撮影、成否は数カ月後」)
この困難を克服するため、ある天文学者のチームは、ブラックホールと恒星が強く結びついている「ブラックホール連星」に目をつけた。こうした連星では、恒星の物質が超高密度のブラックホールに落ち込んでいて、渦を巻くガスがブラックホールのまわりに降着円盤を形成している。超高温のガスの円盤はX線を放出し、天文学者はこのX線を検出することができる。(参考記事:「ブラックホールは食べ残しを投げ捨てるとの新説」)
米コロンビア大学のコロンビア天体物理学研究所に所属する天体物理学者で、今回の論文の筆頭著者であるチャック・ヘイリー氏は、「今回発見されたブラックホールは氷山の一角です」と言う。「私たちがブラックホールを見つけるには、こうした痕跡を探すしか方法がないのです」
見えないブラックホール
研究チームは、いて座A*から約3光年内と近くにあるブラックホール連星で、その運動から、いて座A*に落下しつつあると思われるものを探した。
「長い目で見ると、超大質量ブラックホールには小さなブラックホールが次々と落下しているのです」とヘイリー氏は言う。