茨城県南西部で相次ぐ地震「スロースリップ」が地下水に作用していた!
関東地方では、茨城県南西部を震源とする地震が非常に多い。東京工業大学などのチームは、茨城県南西部のフィリピン海プレート周辺で発生する地震の波形を解析した結果、プレート境界では「スロースリップ」が約1年周期で発生するのにともなって、地下水が上へ移動し、地震を繰り返し誘発しているメカニズムを明らかにした。
地球は十数枚の厚い岩盤(プレート)で覆われていて、私たちが住む日本列島は、①北米プレート②ユーラシアプレート③フィリピン海プレート④太平洋プレートの4枚のプレートの上に乗っている。このうち、関東から西日本〜台湾の下に年間3〜5センチの速さで沈み込んでいるのがフィリピン海プレートだ。
プレートの境界では、人体には感じないほどのゆっくりしたすべり(スロースリップ)が数カ月から数年周期で起こっている。この動きが周囲のプレートにも影響し、東日本大震災をはじめとする巨大地震を引き起こしていると考えられている。
東工大理学院の中島淳一教授と、東北大学大学院の内田直希准教授は、2004年から2015年にかけて茨城県南西部のフィリピン海プレートの境界付近で起きた地震活動を調べ、地震波の伝わり方や振動の幅の変化を解析。
その結果、茨城県南西部ではスロースリップが約1年周期で発生していることを突き止めた。発生すると、プレート境界から地下水が上部に押し出され、数カ月かけて上昇し、プレート同士がガッチリとくっついている固着域に染み込むことで、地盤の強度が弱まり、地震が誘発される可能性があるという。
これは、地下に人工的に水を注入し、岩石の破壊や地震活動を調べる注水実験と同じメカニズムで、石油の掘削や地熱発電所などの近くで起こる誘発地震の原因だと言われている。
研究チームは、これまでプレート境界で起こる地震の予測には、スロースリップによる力の変化ばかりが注目されていたが、今回の研究によって、地下水の移動についても考慮していかなければならないと指摘している。