ツタンカーメンの隠し部屋はなかった
論争を呼んだ「隠し部屋」問題、入念なレーダー調査でついに決着か
エジプト、王家の谷にあるツタンカーメン王墓で入念なレーダースキャンが実施され、玄室の壁の奥にあると期待された隠し部屋や通路が、いずれも存在しないことが決定的に判明したと、エジプト高官が発表した。
ギザの大エジプト博物館(GEM)で開かれていた第4回国際ツタンカーメン大エジプト博物館会議の中で、エジプト考古最高評議会のムスタファ・ワジリ事務局長の代理人が明らかにした。
調査が始まったきっかけは、ナショナル ジオグラフィックが支援するエジプト学者ニコラス・リーブス氏が、3300年前のツタンカーメンの墓の後ろに第18王朝の伝説の女王ネフェルティティの墓が隠されているという仮説を提唱したことだ。以来、3年にわたって繰り返されてきた調査は、今回の発表によって残念な結末を迎えた。(参考記事:「ツタンカーメンの墓に隠し部屋か」)
リーブス氏の説を検証するため、これまでにも2度、地中探査レーダー(GPR)を使った隠し部屋や通路の探査が行われたが、決定的な証拠は得られていなかった。
3度目となる直近のレーダー調査は、ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受け、イタリア、トリノ工科大学のフランコ・ポルチェリ氏を中心とする合同科学チームが今年初めに実施した。これまでで最も包括的な調査だった。
5月5日にポルチェリ氏がワジリ氏とエジプト考古相カーレド・エル・アナニ氏に提出した報告書は、「ツタンカーメンの墓の隣に隠し部屋が存在するという仮説は、GPRのデータでは裏付けられないと、大いに自信を持って結論する」という言葉で締めくくられている。
相反する2度の調査結果
GPRは、一般に石油やガス、その他の鉱物資源を探すために使われる遠隔探査技術だが、考古学調査にもますます不可欠なツールになっている。墓や通路のような、地中にある人工の空間を、壊れやすい古代遺跡を傷つけずに見つけ出すことができるからだ。(参考記事:「21世紀中に解明されそうな古代ミステリー7つ」)
2015年には、レーダー技術者の渡辺広勝氏がツタンカーメンの墓をGPRスキャンで調査し、玄室の北と西の壁に隠された入口がある証拠を発見したという、驚くべき結果を発表した。(参考記事:「ツタンカーメンの隠し部屋、日本の技術者が活躍」)
しかし、2016年にナショナル ジオグラフィック協会のエンジニアが実施した2度目の墓のレーダースキャンでは、渡辺氏の発見を検証できなかった