新型コロナとインフルエンザ どちらのウイルスが怖いか?
新型肺炎の中国国内での患者数が3万人に迫る勢いで増え続ける一方、忘れちゃならないのがインフルエンザも流行シーズンまっただなかということ。どちらも症状がよく似ているため、新型肺炎の感染者のなかには、インフルエンザを疑って医療機関を受診した患者も少なくないが、果たしてどちらのウイルスのほうが脅威となるのだろうか?
今季のインフル患者は累計570万人
国立感染症研究所の最新報告によると、今シーズンの国内のインフルエンザ患者数の推計は約570万人。1月20日から26日までの1週間だけでも約65万4000人が医療機関を受診していると推計されている。
一方、新型コロナウイルスは、昨年12月に中国・武漢市で原因不明の肺炎の流行が報じられたのち、正体が新型コロナウイルスだと判明してから2カ月弱。多数の中国人が移動する春節時期だったということもあり、警戒感が強まったが、それでも中国以外での患者の数は200人前後に抑えられている(2月5日時点でのWHOまとめ)。
インフルエンザと区別がつかない
インフルエンザにはワクチンがあるが…、新型コロナウイルスにはない(CDC)
我々は、インフルエンザと新型肺炎のどちらに対しても予防しなければならないのだが、実際のところ、両者は症状だけを見れば、判断がつかない病気だ。5日に新型肺炎の感染が判明した京都府の20代の男性も、同じ医療機関を2回訪れたが肺炎と診断されず、別の病院でレントゲン検査を行ったすえ、ようやく新型コロナウイルスと診断されたが、本人は当初インフルエンザを疑っていたという。
これに対し、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ医学博士は「インフルエンザは季節性ですから、春になれば患者の数は確実に減ります」と語る。
米ホワイトハウスで先月31日に開かれた会見の席で、ファウチ所長は「インフルエンザは死亡率や入院の程度をかなり正確に予測できますが、新型コロナウイルスには多くの未知数があります」と述べて、新型肺炎の感染が今後どこまで広がるか、死亡率については、現時点では白紙状態だとして、知見を重ねる重要性を訴えた。
新型コロナは未知数
国立感染症研究所が分離に成功した新型コロナウイルス
米国保健福祉省(HHS)のアレックス・アザール長官は先月31日、新型コロナウイルスに関する公衆衛生上の緊急事態宣言を発表した時点で、新型ウイルスの死亡率は約2%だという見解を発表。その際に、「流行開始当初に重症者だと診断された患者数が多くなると、死亡率は高くなるが、軽症者の数が増えれば、死亡率は低下する可能性がある」と指摘している。
そして、症疫学の専門家の間では、感染症のうつりやすさを「R 0(アール・ノウ)」という指標で考える。日本語では「基本再生産数」と呼ばれるが、これは「1人の患者から何人に感染(二次感染)させるか」を表す数のこと。
中国の疾病管理予防センターが先月29日に米国の医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に発表した論文によると、流行が始まった12月から1月22日まで武漢市で報告された425人の患者のデータから、新型コロナウイルスの感染率は平均2.2(1.4〜3.9)と推計されている。
これは1人の感染者から平均2.2人にうつることを意味しており、季節性インフルエンザ(1.4〜2)に比べるとやや高いが、R 0は定数ではないため、国によって状況は異なり、一人ひとりが人混みを避けたり、マスクや手洗い、アルコール消毒を積極的に行うことで、減らすことは可能だという。
世界保健機関(WHO)は5日、新型肺炎の感染は現時点では中国国内が大半だとして、世界的な大流行を示す「パンデミックではない」という見解を示している。しかし、医療体制が脆弱な開発途上国にウイルスが持ち込まれれば、爆発的に広がるリスクもあるため、2月から4月までの間に封じ込める必要があるとして、国際社会に緊急支援を要請している。