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米国債と英国債の謎

2013年04月02日 17時41分40秒 | 経済関連
世界的に株式市場は「好調だ」というようなことらしい。代表的な例が、アメリカのダウ平均は史上最高値だ、と。日本にも、若干の恩恵がやってきたのかもしれないが、手放しでは喜べないようにも思う。


極端な言い方をすれば、日米英の「緩和競争」によって、カネが膨大になったが、その行き場がない、というようなことである。


昔の経験からすると、株式市場が好調になっている時には、債券相場というのは下落(金利上昇)基調となり、次第に金利水準が上がることによって、今度は株式市場の上昇が頭打ちとなる、といったようなフィードバックのような機構が働いていたわけだ。

ところが、日本の「脱デフレ」により約10年ぶりに国債指標金利が「0.5%割れ」に迫っている中、株式市場は上昇を続けてきた。米国においても、ダウは史上最高値更新を連発してきたわけである。米国の成長率は大幅に鈍化しており、マイナス成長も視野に入っているというのに、企業業績がそれほど好調とも思えないわけであるが、それでも上昇してきたわけだ。グローバル化によって、米国国内の不調であっても、企業自体は世界中のどこからか儲けたカネを集められる、ということなのかもしれないが、世界中の企業だけが儲かっているというのもヘンな話ではある。

日本でだって、マイナス成長かギリギリゼロ近傍(第二次速報値でも3Qは0.05%くらいの微々たる成長)なのに、企業業績がそんなにいいというのも本当なのかな、と。


米国は日本と違ってデフレではないのだが、強力な緩和策が続けられている。その結果、米国債は2%割れは勿論のこと、そこから更に下がっている。日米国債の金利差が日本側の緩和推進で1%程度だったものが1.4%くらいまで開いていたわけだが、若干戻している。日本と米国の緩和状態が同じくらいだと、金利差に変動がないとすれば、日本側が緩和を強化したのに、それ以上に米国の緩和が効いている、ということになる。実際そうなのかは不明だけれどもね。


これは英国債でも同じ傾向が見られる。
08年のリーマンショック後に、英国債では「2%割れなんて!英国紳士が許せんぞ」というくらい稀有な現象であったのに、ここ最近は再び大きく2%を割り込んでいるわけである。ポンドをそんなに緩和してどうするのだろう、と思うわけだが、年明け以降金利低下は顕著であり、1.8%を割り込んできている。


米英の緩和の理由としては、やはり「金融機関を救済する為」ということ以外には理由が思いつかないわけだ。低金利を「政府と中央銀行」が一体となって維持することで、金融機関をはじめ多々の経済主体の持つ「バランスシートの傷」を緩和する、ということだろう。デレバレッジなどで収縮した部分を、再び拡張させることで金融機関の負った傷を目立たなくするという効果は得られるはずだから。本格的に金融機関の破綻連鎖が生じれば、経済は大打撃となってしまうからな。


株式市場の好調が続くなら、普通は国債市場からの資金移動が促進されるので、金利上昇は普通だ。企業業績がそんなに好調で景気がいいなら、中銀が将来時点で「引締め」に動いてくると推測され、国債価格は下落することが当然予想される(金利引き上げが行われるので)。つまり、ダウが高値連発なら、米国債市場では金利上昇が観察されても良さそうなのに、逆に金利低下が起こっているわけだ。

国内資金移動ではなく、国外からの資金流入が続いているからだ、という見方もあるかもしれない。だとすると、ドル買いが猛烈に進むことになるから、ドル独歩高となっても良さそうだったが、ユーロが年末年始に切り返してドルに対し上がっていたわけだ。キプロス問題とかいって、ちょっと戻したが、ドル高と呼ぶには微妙な感じだったわけだ。

為替市場ではドル高というのが、そう顕著ということでもない。
海外からの資金流入(例えば米国債需要増大とか、米国株への投資増大とか)がそんなに増加したなら、為替に変動がもっとありそうだ。それか、インフレ率が中国みたいに上昇することになるだろう。ドル高ならば、円高に戻るのも解せないわけだよ(笑)。


となると、考えられることは何か?
意図的に生み出された相場(指標数値)である、ということだな。作られた数字、と言ってもいいかもしれない。米国ではドル供給が膨大なので、カネの行き場が見当たらないわけだ。そうすると、株式市場に流入するのと、FRBが国債や公社債を買っているわけだから、金利低下となるし、米国銀行に余ってるカネはやはり国債買いを誘発する。
ダウ平均を押し上げるのは、そう難しいことではない。銘柄数が少ないから、そこに集中的に資金投下を行えば、見掛け上「好調な株式相場」という空気を作れなくもない、ということだ。


日本のデフレ脱却に向けた緩和度合いというのは、相当なものである。
この緩和水準を超えて、米英の緩和が進んでいるのは、デフレでもない両国では「実際には火の車」状態だから、ということくらいしか思い浮かばないわけだよ。それが証拠に、米国成長率は低いままだったではないか。それでも米国企業業績が著しく素晴らしいのだとすれば、それは世界中から収奪したカネが集まっているから、ということだね多分(笑)。


いずれにせよ、米国と英国における「金利操作」というのは、市場で決まる価格決定機構のような仕組みが十分には「機能していない」であろう、ということである。人為的に誘導されたもので、それは市場に歪みをもたらすはずである。


また、日本市場の混迷ぶりは、意図的なものであろう。
円安や株高というのは、そのように「仕向けられたもの」であれば、そう動くよね、という程度の話でしかない。ある程度の一致結束があれば、動かせる勢力というのは現実に存在する。ただ、彼らが本当に実行しているかどうかは、確かめようがないわけであるが。




追記:21時半頃


今みたら、海外市場で大幅に円は戻したな。記事に書いた時には、92円台半ば近辺だったはずだが、現在は93.4円くらいまで大きく戻したようだ。こっちの記事を誰か読んだか?違うか。
東京市場では大きく売り込まれたが、すかさず買い戻された、ということかもしれんが。


どうよ?
微妙だな(笑)。









決算対策としてのアベノミクス

2013年04月02日 14時56分58秒 | 経済関連
新年度に移行した途端に、為替も株価も大幅反転、ですな。
輸出比率の高い大企業にとっては、期末の価格が大きく影響するわけで、そういう点では「アベノミクス」とやらの宣伝効果は、あった、ということは言えるだろう。


すなわち、企業の期末決算対策として、どうしても株価上昇とか、円安効果での海外利益の膨張、といったことが必要であった、ということである。その為には、安倍政権というのは、大変都合のいい役回りを演じてくれた、というわけだ。
(ところで、上げてた時には「アベノミクスの威力www」と煽てて、下げた時には「麻生総理の発言が…」「キプロスが…」などとウソかホントか判らないような解説を語っていた連中というのは、権利落ち後の下落についてはどう解説してくれるのだろうかww出鱈目を言ってるヤツに限って他人のデマには厳しい)



12月のドル円が82円くらいから、10円以上もの円安方向に動かすには、円売り優勢となる額は50兆円以上必要であろう、と以前から書いたわけである。この売り主体が誰なのかは、不明だったわけである。資金移動の形跡も見つけられなかった。
他の可能性としては、海外収益を挙げた日本企業が、いつもならドルから円に交換して資金繰りを行っているところを、その円に転換する時期を後ろにずらした、という行動を「みんなが一致して」行ったりしたとすれば、それまでと資金の流れは変わるはずで、持っている円を積極的に売らなくても、「常時行ってきた円買いを止める」ことで円安方向に動くかもしれない。


で、決算対策の済んだ4月に入ると、これまで資金移動を我慢していた人たちが堪え切れずに円転換を行ってしまうと、堰き止められていた流れが再開することになるので、すかさず円高に動く、ということなら、辻褄は合いそうだ。本気で円安に賭けている投資家たちなら、別な判断をするかもしれないが、実需勢というのはそういう「待ち」が難しいからね。払うものは払わねばならないし、支払い先がずっと待っていてくれるわけでもないので。


日銀短観が出たわけだが、その結果は12月時点に比べて「大幅に改善」と伝えられたのに、これほどの株価下落と円高となるのは、不思議に思いませんか?(笑)

いくら事前のアナリストたちの予想を下回った、ということがあったにせよ、これほどの下落を招くというのは、ちょっと考え難いのではありませんか?


あるとすれば、決算対策として意図的に釣り上げておき、期限を過ぎたらそそくさとカネを引き上げてポジション整理、ということなら、なるほどな、とは思うわけだ。

安倍政権誕生後の市場の動きというのは、まだ「日銀が何もしてないのに」期待だけで動いたんだ、という言い方もできるかもしれないが、違憲選挙で生まれた正統性を欠くかもしれない「安倍政権を下支え」する為に行われたもの、という見方も成り立つかもね、と。その支えをテコにして、「TPP交渉参加表明」と日米首脳会談に踏み切れたから、だ。


だって、50兆円以上も円を売れるかな?

投資筋にしても、決済期限がやってくれば、一度整理せざるを得なくなるなら、これまでと逆回転が起こってくることになるので、円売りがポジションが買い戻されて円高方向に戻るだけだしね。それは、日銀に買わせるのを待つ、という戦術が行き詰まった、ということかな?