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辺野古沖基地建設に係る埋立承認取消の代執行に関する裁判の争点について~6

2015年11月30日 17時04分17秒 | 法関係
政府の準備書面について、時事通信報道によれば、次のように主張されているようだ。

「米軍施設をわが国のどこに配置するかは、内閣ないし日米両政府間で決定されるべき事項だ。都道府県知事に審査・判断する権限は与えられていない」

まさしく強権の典型。権限があるのは俺様だけだから、俺様のいうことを全部きけ、俺様の土地なんだからどんなことだって許される、みたいな妄言である。
過日、往来妨害罪とかいう殆ど耳にすることのない犯罪で逮捕された老夫婦がいたが、彼らの主張と政府見解はそっくりだ。「俺の家の前の土地は私有地なんだから、何をどう配置しようが自由だ、俺が決定権を握っているんだ、だから好きにさせろ」といったような言い分ですな。

確かに、一知事に過ぎない立場で「○○基地とヘリ部隊はハワイに置け」というように政府に命じたり、沖縄よりグアム配置が有利であるといった具体論について比較検討しいちいち政府にこれを実施するよう求めるという(行政としての)権限は、持ってはいないでしょう。しかし、賛否は認められるべきものです。基地の配置を指示したりはできないが、「そこに作るぞ」と言われた場合にはこれを拒否できる権限を有している、ということです。
これについて、書いてゆくこととします。


まず、わかりやすい例から説明します。

賃貸マンションがあります。所有権者は甲、マンションの部屋の賃借人がおり乙とします。
普通マンションの部屋というのは、所有権者といえども甲がいちいち部屋の内部に入ってきたり、あれこれと乙に命令したりする権利が与えられているものではありません。普段は、住人である乙が部屋を支配している、ということです。つまり、管理権者(とりあえずこう呼ぶ)は乙であり、所有権者とは異なった支配権を持ち部屋を管理している、ということになります。
所有権者の甲は、水道水の流量について乙にあれこれ求めることはできません。もっと少なくしろ、とか命令権がないのです。

部屋に設置されている暖房器具が、エアコンか灯油式かガス式かということについては、乙は甲に対しあれこれ注文を言える権限はありません。エアコンを設置するかどうかは、甲に裁量権があるということです。それとも、給湯器が電気式よりガス式にしろとか、キッチンのガスコンロを廃棄して電磁調理器にしろとか、シャワーヘッドの形やメーカーはこれにしろ等々を審査する権限は乙にはありません。あくまで所有権者の甲が部屋に付ける設備を考え配置するべき権限を有している、ということです。

ここで、甲が乙の在住する部屋に対して、「明日、お前の部屋にアイランドキッチンを設置し、コンロを一つ増設することにした。だから、その場所を空けておけ」と命じたとします。これを乙は受け入れる義務があるのか、ということです。

甲は所有権者ですから部屋の増改築や設備工事の権限はあるにはあります。しかし、賃借人の乙は、現在部屋の管理権者として部屋を実効支配しています。給湯器は甲の所有物ですが、給湯器を毎日使用しようが、3日にいっぺん使おうが、乙の自由です。甲にとやかく命令されるいわれはありません。

乙はアイランドキッチンの設置予定の場所に食卓セットを置いているのに、これをよけて設置工事を認めなくてはならないものなのか?

乙の同意なくしては、甲のいう設置工事は強行できるものではないでしょう。部屋の管理権者たる乙が部屋を支配しており、甲の権利主張が通用するとは思えません。契約によるとか、甲の特段の事情がなければ、乙にはこれを拒否する権利があるものと言えます。


甲=国、乙=沖縄県、アイランドキッチン=米軍基地、と置き換えてみれば、所有権者の甲の要求がいかに無謀かということです。部屋の設備についての自由裁量が甲にあるとしても、乙の権利を無視して設置工事を強引に行うことは許されないでしょう。


以下において、沖縄県が管理権者たる地位にあるのかどうか、ということを示したいと思います。


要旨:
1)憲法94条は「地方公共団体は、その財産を管理し」と規定
2)埋立対象海域は「財産」の一部である
3)地方公共団体は埋立対象海域の「管理権者」である
故に、沖縄県は憲法94条が保障する管理権者の権限行使が許される。それが埋立を拒否できる根拠である。



1)憲法94条は「地方公共団体は、その財産を管理し」と規定

説明するまでもありませんが、憲法94条は、
『地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる』
となっています。
「その財産」とは、恐らく地方自治法238条にいう財産です。特に重要な条文は次のものです。

○地方自治法238条
4  行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。


2)埋立対象海域は「財産」である

これまで何度も書いてきたように、海は、自然公物であって法定外公共物である。機能面で見れば、公共用財産としての行政財産と同等物であるとみなせる。ただし、最高裁判例にあるように「国の直接の公法的支配管理に服する」とされており、所有権限が地方自治体にあるものでなく、原則として国の支配管理下にある。
公有水面埋立法1条にいうところも、その旨であると考えられる。

保護すべき公共用に供される財産というべきものは、他にも存在する。
環境基本法2条3項にいう「水の状態」と「水底の底質」である。

○環境基本法 2条
3  この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第二十一条第一項第一号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。


「水の状態」や「水底の底質」の悪化は、例えば水産資源に損害を与える可能性があるのであり、これを防ぐべく水産資源保護法のような規制法がある。


また、景観法によって保護される資産も、公共用に供される財産と同等である。
2条1項において「国民共通の資産」とされ、2項及び3項では地域の自然、歴史、文化等調和を配慮することと地域固有の特性を活かす土地利用などが求められている。


○景観法 第二条  
良好な景観は、美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠なものであることにかんがみ、国民共通の資産として、現在及び将来の国民がその恵沢を享受できるよう、その整備及び保全が図られなければならない。
2  良好な景観は、地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和により形成されるものであることにかんがみ、適正な制限の下にこれらが調和した土地利用がなされること等を通じて、その整備及び保全が図られなければならない。
3  良好な景観は、地域の固有の特性と密接に関連するものであることにかんがみ、地域住民の意向を踏まえ、それぞれの地域の個性及び特色の伸長に資するよう、その多様な形成が図られなければならない。

(以下略)


従って、保護するべき公共用に供される財産と言えるものには、

・公共用物としての海
・「水の状態」や「水底の底質」
・景観法に規定される資産たる景観


がある。


本件埋立海域では、埋立工事によってこれら利益に対し侵害が発生すると言える。


3)地方公共団体は埋立対象海域の「管理権者」である

海域が財産と見做せるとして、地方公共団体に権限があるのか、というのが検討すべき条件として残されている。

本件提供海域が、全部国の管理下にあるもので、自治体の財産ではないなら、口出しできないという主張もあり得るだろう。先の賃貸マンションの例で見たように、所有権者甲に対し、管理権者たる乙にも権限があることをいわねばならない。


まず、海岸法37条の三により、知事が海岸管理者である。

○海岸法 第三十七条の三  
一般公共海岸区域の管理は、当該一般公共海岸区域の存する地域を統括する都道府県知事が行うものとする。

知事以外の場合もあるが、主に知事か市町村長ということになっており、地方公共団体が管理主体である。また、漁港漁場整備法25条でも、地方公共団体が管理者となっている。


○漁港漁場整備法 第二十五条
 次の各号に掲げる漁港の漁港管理者は、当該各号に定める地方公共団体とする。
一 第一種漁港であつてその所在地が一の市町村に限られるもの 当該漁港の所在地の市町村
二 第一種漁港以外の漁港であつてその所在地が一の都道府県に限られるもの 当該漁港の所在地の都道府県
三 前二号に掲げる漁港以外の漁港 農林水産大臣が、水産政策審議会の議を経て定める基準に従い、かつ、関係地方公共団体の意見を聴いて、当該漁港の所在地の地方公共団体のうちから告示で指定する一の地方公共団体



これら海岸や海岸域における管理者というのは、実質的に地方公共団体であることを意味している。
キャンプシュワブの陸地から一定範囲の海域が米軍の独占排他的使用を主張しているとしても、海の管理権者たる地方公共団体の立場は影響されない。


公共の用に供しない水面(米軍のみが使用できる海面)が存在するとしても、水産資源保護法において、

○第三条
公共の用に供しない水面であつて公共の用に供する水面と連接して一体を成すものには、この法律を適用する。

○第八条
 公共の用に供しない水面であつて公共の用に供する水面又は第三条の水面に通ずるものには、政令で、第四条から前条までの規定及びこれらに係る罰則を適用することができる。

とあるので、公共用に供される海面と繋がっているから、水産資源保護法の管理権者たる知事権限は及ぶ(だからこそ、本件埋立に伴い岩礁破砕許可申請がなされた)。保護すべき利益としての「水の状態」や「水底の底質」は、管理権者の知事が管理権限を有する、ということである。


更に、本件埋立海域は一般公共海岸区域であるから、海岸法に基づく管理権限は一号法定受託事務には該当しない(40条の四)。自治事務であって、第一義的に管理主体は地方公共団体である。

そして、たとえ海岸の土地が国有地であったにせよ、管理主体の地方公共団体に対して無償貸付された土地においては、地上部分にも知事の管理権限が及ぶものというべきである。たとえ元来は国の財産であっても、貸し出された土地においては管理権者に権限が存在するのである。

○第四十条の三  
国の所有する公共海岸の土地は、国有財産法 (昭和二十三年法律第七十三号)第十八条 の規定にかかわらず、当該土地の存する海岸保全区域等を管理する海岸管理者の属する地方公共団体に無償で貸し付けられたものとみなす。


公有水面埋立法において、知事が免許するか承認するという権限を有するということを鑑みれば、基本的に海域の管理権者たる地方公共団体に判断の権限が与えられていると解するべきである。


ここで再び憲法94条に戻ろう。
地方公共団体には、財産を管理する権限が憲法で保障されている。「管理」とは、国有財産法1条で規定される、「保存及び運用」をいう。
すなわち、「保存すべき財産」があるなら、地方公共団体はこれを管理=保存してよい、と憲法が認めているものである。「保存すべき財産」には、2)で示した自然公物たる海、「水の状態」又は「水底の底質」、景観、などがある。

これに基づく権利行使が埋立事業を承認しないことであり、米軍基地の配置等の審査権限の有無には影響されない権利行使である。


海岸~公有水面(海面)という一連の区域について、管理権者たる知事には、当然に管理権限を有するものというべきである。管理権限行使の一部が、埋立のを免許(承認)するということである。


国の主張を粉砕すべし。



違法を重ねる安倍政権~海保の暴力行為を糾弾せよ

2015年11月30日 13時47分26秒 | 法関係
安倍政権がやってきた法の無視の数々は、戦争法案の採決にすらなっていない委員会採決の暴挙だけではない。昨年から繰り返し述べてきたが、海保の暴力行為は、全くの違法でありデタラメである。


糸数議員の出した質問主意書に対する回答がいい例だ(良くはないけど)。


内閣参質一八九第九号(平成二十七年二月十日)

御指摘の「暴力行為を伴う海上保安官による警備活動」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、海上保安庁は、海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)第二条第一項の規定に基づき、海上の安全及び治安を確保するための業務を適切に行っているものと考えている。


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海上保安庁法2条は

海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、海上における船舶の航行の秩序の維持、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする。

となっている。


このような海上保安庁の目的を述べた条文によって、海上保安庁職員の行った具体的行為が合法であることを立証することはできない。
むしろ、このような答弁を閣議決定するということは、内閣がこれを正当であると認識している証拠であり、法の根拠を欠いたまま不法行為であろうとも実行させることの証左である。


例えば、警察官が発砲した場合において、その行為について法的根拠を質されたなら、警察法の第2条の条文を挙げて、当該行為は合法であったことを立論するようなものである。これを、一国の内閣が、立法府への正式答弁として行い得ることは、法の軽視を自ら証明するも同然である。

警察法 第二条  
警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。


これを理由に行為を正当化できるなら、他の関係法令はいらない。

普通の考え方であれば、警察法の具体的条文や警察官職務執行法の条文を挙げて、法的根拠が存することを説明できるものだろう。それを意図的に回避するということは、海上保安庁の行為が法の正当性をもって説明できうるものではないことを自覚しているということの表れである。


ここで改めて海上保安庁の行ってきた身体拘束等の行為の重大性・悪質性について検討する。


ア)公益侵害・被害の程度

告訴例がある。身体的苦痛を与えられたり、怪我を負わされた例がある。一般人の自由使用をほぼ毎日妨害し続けてきたので、公益侵害は決して小さくない。


イ)行為自体の悪質性

海上の自由使用者から多数の苦情を受けている。首長、議会や国会議員団なども再三申し入れしたにも関わらず、引き続き暴力的行為を続けている。法的根拠がないと指摘を受けても、意に介さず実行しており、極めて悪質。


ウ)当該行為が行われた期間や反復性

海上作業が行われだした、平成26年7月以降から多数の高速ボートや「あるたいる」など30ノット以上の高速艇を投入し、反復して拘束が行われた。カヌー没収もあった。


エ)故意性の有無

故意性は高い。抗議や申し入れを無視し、暴力的行為をやめない。恐怖を植え付ける為に水没させ続けたり、敢えて組伏せたりする。


オ)組織性の有無

海上保安庁として取り組んでいるので当然組織的。庁外の防衛省からの指示ないし要請で組織的に活動している。自由使用を妨害する為、多数のボートや船舶類及び人員を投入。


カ)隠蔽の有無

前記質問主意書においても明らかなように、自由使用の妨害行為がまるで存在しないかのように振舞っている。




現政権における法を無視する行為は、反復性と継続性を有し、組織的であり故意に行っているものである。これは、海上保安庁の行為に限ったことではない。

極めて悪質な違法が、政府によって繰り返されているということである。