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知事評議会と米軍再編について

2010年02月08日 20時49分41秒 | 防衛問題
ロイターを見るまでは、全く知りませんでした。
日本で報道されない「大統領令」の驚くべき中身 | その他・必見連載

この記事を読むと、ああそうなのか、と思ったのですが、ちょっと気になって、問題の大統領令をググって探してみました。また嫌いな英語ですが、仕方がないので、少し読んでみました。

こんな感じです。

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EO #13528
ESTABLISHMENT OF THE COUNCIL OF GOVERNORS

By the authority vested in me as President by the Constitution and the laws of the United States of America, including section 1822 of the National Defense Authorization Act of 2008 (Public Law 110-181), and in order to strengthen further the partnership between the Federal Government and State governments to protect our Nation and its people and property, it is hereby ordered as follows:
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前文のところで、ポイントになると思われるのが、
「国防法権限付与改正2008(公法110-181)」(*1)中の「セクション1822」を含む、という部分でしょうか。恐らくこれは、米軍再編に伴う法改正ということではないかと思います。
(*1):拙訳、国防法は昔からあるので、そのマイナーチェンジ、という意味合いです。

で、この大統領令の「セクション2」の部分ですが、箇条書き部分で次のような文面がありました。

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section.2  Functions
(a) matters involving the National Guard of the various States;
(b) homeland defense;
(c) civil support;
(d) synchronization and integration of State and Federal military activities in the United States; and
(e) other matters of mutual interest pertaining to National Guard, homeland defense, and civil support activities.
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(拙訳)
a 複数州の州兵に関する事項
b 郷土防衛
c 文民支援
d アメリカ国内における州及び連邦(陸)軍活動の協調と統合
e 州兵・郷土防衛・文民支援活動に付随する相互関係についてのその他事項

堀田氏の記事で書かれていた「シンクロ」という話は、多分この項目から拾われたのではないかと思います。確かに、州兵を連邦の軍隊として活用するために、州政府と連邦政府が協調して当たらねばならない、というのは、そうだろうと思います。
けれども、大統領が独断で州兵を意のままに動かせるように、大統領権限を強化してしまおう、というようなEOということではないように思われます。むしろ、大統領以外の関与、すなわち知事10名という文民の統制が利くようになっていますし、同じ党からは最大5名しか入れられないということで民主党か共和党の一方的に有利な配分にはできないようになっています。

背景としては、イラク戦争などの「最近の戦争」ということが、まずあると思います。イラク戦争に参加した州兵は数万人規模で存在していたわけで、その時点でも「大統領の命令」という形で軍隊を動かしていたわけです。仮に知事が反対しても、大統領の命令に従うというのが大義名分となっています。歴史的には、アイゼンハワー大統領の例があるようです。
州兵 - Wikipedia

高校への通学を認められた黒人高校生らを101空挺師団所属の米兵が護衛するという、アメリカらしい話だったようですね。wikipediaの説明を引用します。
『公民権運動の最中、ブラウン事件の連邦最高裁判決を経てリトルロック・セントラル高校は人種差別を廃止して黒人生徒の登校を認める事になった。しかし、その判決に納得していなかった当時のアーカンソー州知事オーヴァル・フォーバス(en:Orval Faubus)は州兵を動員して黒人の生徒ら9人が登校するのを阻止した。これに怒った当時の大統領ドワイト・D・アイゼンハワーはそれら州兵を合衆国陸軍に編入し、駐屯地へ帰還するように命じた。州兵達はこの命令に従ったため事態はこれ以上悪化しなかった。しかしそれでは不十分だと思ったのかアイゼンハワーはリトルロック・セントラル高校に行くことになった9人の黒人生徒に第101空挺師団から護衛をつけて学校に通わせた。』

それから、連邦最高裁判決では、知事が大統領命令に反するような場合であっても、州兵が連邦軍指揮下に入ってしまえば、覆すことはできない、ということになっているようです。したがって、今回のEO#13528がなかったとしても、大統領が命ずれば基本的には州兵を動かせるということになるかと思います。イラクとアフガンでの戦争を継続するには、州兵の協力が必要であった、ということだと思います。


次に、米軍再編の影響ということがあるだろうと思います。第二次大戦後、更に冷戦終結後には、「米軍のリストラ」的な縮小が行われてきたわけで、総軍は減ったし、陸軍自体も数十万人規模で縮小されてきたでしょう。そうなると、イラクとアフガンという2つの戦争を抱えているとなれば、陸軍だけではまかないきれない、ということだろうと思います。一人の兵士を長期間に渡り戦場に張り付けておくなら別ですが、そうした方法では「兵士が壊れる」ということに繋がりがちなのではないかな、と。そうすると、ある程度の期間で前線の兵士を入れ替えていく必要があるので、州兵の補充というのが重要になってくる、ということでしょう。実際イラク戦争では、そうして州兵が参加していったわけですから。別な見方をすると、より「プロ化」した兵士が任務につく、ということであり、それにはある程度の専門的訓練を受けた者が求められる、ということでしょう。州兵がそうなってきた、ということかな、と。


もうひとつは、グアム移転に関係することです。
州兵は50州以外にも配置されており、ワシントンDC、バージン諸島、プエルトリコ、そしてグアムが該当しています。州兵は原則として、直接的には知事が最高指揮官ということになっており、そうすると形式的にはグアム知事が州兵のトップということになってしまうでしょう。ここら辺の問題、ということだったのでは。グアムの知事に米軍の部隊配置などについて委ねることになるのは、はっきり言えば「困る」ということなのではないかな。

今後には、グアムとハワイなどで部隊のやり取りをせねばならない、ということになると、一部の州兵についても連邦軍に編入して、やりくりしていこう、という発想ではないのかな、と。そうなれば、兵員総数を抑制しつつ、州兵と連邦陸軍の役割を必要に応じて使い分けられる、ということになるわけですから。多分、そういう意図が一番の理由なのではないかな、ということは思いますね。州兵の費用負担は連邦政府が出す、ということになっているので、費用削減の折、軍事費の圧縮には兵員を減らすことが必要、ということでしょう。


以上からしますと、元々大統領権限はそれなりにあったけれども、今後には大統領単独の権限というよりも、州政府の協力を受けながら、米軍再編を行っていくということであろうと思います。知事評議会を通じて州政府側の言い分も取り入れる仕組みを残しますよ、ということの方が、意味のあることのようにも思えます。




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