今年、脚光を浴びることになった検察審査会であるが、実はよく知らないことが多いということを気付かされた。制度変更で導入されて間もない「強制起訴」という強力な武器についても、制度上の危うさが気になるところである。また、検察審査会の議決を巡って、行政訴訟提起との報道もあり、個人的見解について述べてみたい。
1)検察審査会の議決は行政処分ではない
過去に最高裁判例があるらしい、ということだが、当方は法律について素人であり、判例集も持っていないことから、当該判決文を見てはいない(最高裁の見解がどういうものであったかは、自身で調べて下さい)。当時には強制起訴制度が存在していなかったことから、あくまで現行制度について検討をする。
①検察審査会は行政機関なのか
議決が処分に該当するのかどうか、というのがポイントとなろう。行政訴訟提起に当たっての前提とは、検察審査会が行政機関でなければならない、ということになろう。処分の妥当性を争う、ということなのだから。
名称からして「検察」と付いていることから検察庁の下部組織なのかと思ったら、どうやらそうではないようだ。検察庁からの権限が及ばないということであり、法務大臣の指揮監督も及ばない、ということになろう。
②「行政機関」説を否定する理由
行政手続法による規定から判断できると思われる。
▼行政手続法 第二条
二 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
五 行政機関 次に掲げる機関をいう。
イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項 若しくは第二項 に規定する機関、国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 に規定する機関、会計検査院若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
ロ 地方公共団体の機関(議会を除く。)
定義から判るように、第二号の「行政庁の~行為」が処分であり、第五号のイに掲げられる国家行政組織法等の法律規定に基づく組織には、検察審査会は該当していない。
③行政不服審査法の対象にもならない
これも条文からすると、判りやすいのではないか。
▼行政不服審査法 第四条
行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第六条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。ただし、次の各号に掲げる処分及び他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については、この限りでない。
六 刑事事件に関する法令に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が行う処分
他の号は略してあるが、行政庁の処分であれば原則として異議申立ては可能であるが、除外規定も存在する。それが、刑事事件に関する処分である。一般的に言う「検察官の行った処分を行政訴訟の対象にするのはヘンだ」という言い分は、こうした規定からも窺われるわけである。
同様の規定は行政手続法にも存在しており、
▼行政手続法 第三条
次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章までの規定は、適用しない。
五 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導
この第五号規定があることから、「仮に検察審査会が行政機関であるとしても、不服申立てや行政訴訟の対象とすることは困難」であると考えてよいだろう。
従って、
・検察審査会は行政機関(組織の一部)とは認められない
・行政手続法や行政不服審査法の適用対象外
・仮に議決が行政処分の一種であると仮定しても、行政訴訟は困難
ということになろう。
2)検察審査会は司法組織の一部である
行政機関ではないことが判ったとして、では何に当てはまるのか、というのが気になるところである。最高裁判所のHPには検察審査会が載せられており、検察審査会事務局の規定からすると、恐らくは司法の一部と看做して良いのではないか。
▼検察審査会法 第二十条
各検察審査会に最高裁判所が定める員数の検察審査会事務官を置く。
○2 検察審査会事務官は、裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを命じ、検察審査会事務官の勤務する検察審査会は、最高裁判所の定めるところにより各地方裁判所がこれを定める。
○3 最高裁判所は、各検察審査会の検察審査会事務官のうち一人に各検察審査会事務局長を命ずる。
○4 検察審査会事務局長及びその他の検察審査会事務官は、検察審査会長の指揮監督を受けて、検察審査会の事務を掌る。
最高裁判所が裁判所事務官に命じて検察審査会事務官とし、更に各地方裁判所等に事務局を置くことから、司法組織の一部と判断したわけである。ただし、組織上は独立的であり、指揮命令・監督権というのは「検察審査会」にあるようである。
▼検察審査会法 第三条
検察審査会は、独立してその職権を行う。
(続く)
1)検察審査会の議決は行政処分ではない
過去に最高裁判例があるらしい、ということだが、当方は法律について素人であり、判例集も持っていないことから、当該判決文を見てはいない(最高裁の見解がどういうものであったかは、自身で調べて下さい)。当時には強制起訴制度が存在していなかったことから、あくまで現行制度について検討をする。
①検察審査会は行政機関なのか
議決が処分に該当するのかどうか、というのがポイントとなろう。行政訴訟提起に当たっての前提とは、検察審査会が行政機関でなければならない、ということになろう。処分の妥当性を争う、ということなのだから。
名称からして「検察」と付いていることから検察庁の下部組織なのかと思ったら、どうやらそうではないようだ。検察庁からの権限が及ばないということであり、法務大臣の指揮監督も及ばない、ということになろう。
②「行政機関」説を否定する理由
行政手続法による規定から判断できると思われる。
▼行政手続法 第二条
二 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
五 行政機関 次に掲げる機関をいう。
イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項 若しくは第二項 に規定する機関、国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 に規定する機関、会計検査院若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
ロ 地方公共団体の機関(議会を除く。)
定義から判るように、第二号の「行政庁の~行為」が処分であり、第五号のイに掲げられる国家行政組織法等の法律規定に基づく組織には、検察審査会は該当していない。
③行政不服審査法の対象にもならない
これも条文からすると、判りやすいのではないか。
▼行政不服審査法 第四条
行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第六条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。ただし、次の各号に掲げる処分及び他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については、この限りでない。
六 刑事事件に関する法令に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が行う処分
他の号は略してあるが、行政庁の処分であれば原則として異議申立ては可能であるが、除外規定も存在する。それが、刑事事件に関する処分である。一般的に言う「検察官の行った処分を行政訴訟の対象にするのはヘンだ」という言い分は、こうした規定からも窺われるわけである。
同様の規定は行政手続法にも存在しており、
▼行政手続法 第三条
次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章までの規定は、適用しない。
五 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導
この第五号規定があることから、「仮に検察審査会が行政機関であるとしても、不服申立てや行政訴訟の対象とすることは困難」であると考えてよいだろう。
従って、
・検察審査会は行政機関(組織の一部)とは認められない
・行政手続法や行政不服審査法の適用対象外
・仮に議決が行政処分の一種であると仮定しても、行政訴訟は困難
ということになろう。
2)検察審査会は司法組織の一部である
行政機関ではないことが判ったとして、では何に当てはまるのか、というのが気になるところである。最高裁判所のHPには検察審査会が載せられており、検察審査会事務局の規定からすると、恐らくは司法の一部と看做して良いのではないか。
▼検察審査会法 第二十条
各検察審査会に最高裁判所が定める員数の検察審査会事務官を置く。
○2 検察審査会事務官は、裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを命じ、検察審査会事務官の勤務する検察審査会は、最高裁判所の定めるところにより各地方裁判所がこれを定める。
○3 最高裁判所は、各検察審査会の検察審査会事務官のうち一人に各検察審査会事務局長を命ずる。
○4 検察審査会事務局長及びその他の検察審査会事務官は、検察審査会長の指揮監督を受けて、検察審査会の事務を掌る。
最高裁判所が裁判所事務官に命じて検察審査会事務官とし、更に各地方裁判所等に事務局を置くことから、司法組織の一部と判断したわけである。ただし、組織上は独立的であり、指揮命令・監督権というのは「検察審査会」にあるようである。
▼検察審査会法 第三条
検察審査会は、独立してその職権を行う。
(続く)