「恋」をキーワードに、ジェンダーの概念を用いて、文学作品やことばのあり方を考察する方法を示す。第一部は、ジェンダーに関する基礎概念を詳説した6章で構成されている。第二部では、西洋の神話・伝承物語から、近現代の恋愛・ロマンス小説、また、日本の短歌や中国の恋愛映画まで、「恋とジェンダー」をテーマに、各国文化と文学の読み方を提案している。ジェンダーの基礎のみならず、文学の新しい切り口にふれたい読者にとって有益な1冊。
A5判並製 224頁 定価1,800円+税
ISBN 978-4-89476-694-5
ひつじ書房
■目次
はじめに
第一部 「 ジェンダー」について考える
第一章 性の違いとはどういうことか?
「 ジェンダー」と「セックス」
男と女という分別
「男女」という分別の具体例
四つのカテゴリー
ふたつの性があるとして、だから?
「だから~」の部分を切り離す
「変わらない」ものか、「作り上げられた」ものか
用語解説 1. ジェンダーという概念とことば 2.「セックスとジェンダー」をめぐって
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第二章 ジェンダーはどのように表れるか?
「 セックス」はふたつか?
ヒトの性はどうやって決められるのか
性自認=ジェンダー・アイデンティティ
性役割=ジェンダー・ロール
ステレオタイプ
性別役割分業
ジェンダー・バイアスとジェンダー・バランス
用語解説 1. トランス・ジェンダー 2. ジェンダー・イデオロギー
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第三章 性差はどのように考えられてきたか?
「 女らしい女」・「男らしい男」という要請
「外」と「内」、「生産」と「消費」の分別
男女の住み分け―「公的空間」と「私的空間」
「消費する」という行動とジェンダー
「人権宣言」と「女権宣言」
フェミニズム運動
用語解説 1. 主婦をめぐる問題 2. 階級
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第四章 「セクシュアリティ」にまつわる決まりごと
「 女風呂」と「女遊び」
「性」ということばの持つふたつの側面
「女遊び」と「男遊び」
性規範のダブルスタンダード
「女社長」の持つニュアンス
「男色」と「女色」
性的指向
性のあり方の多様性
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第五章 「 恋」と「恋愛」について考える―「恋をする」とはどういうことか―
「 恋」は定義できるのだろうか?
「恋」と「恋愛」は違うのか?
「恋愛」と「性的指向」
「クィア」というあり方
「恋愛」と「性的経験」
ロマンティック・ラヴ・イデオロギー
「恋愛」と「結婚」
次なる「関係性」の可能性とは?
用語解説 1. レズビアン連続体 2. サイボーグ
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第六章 フェミニズム・ジェンダー理論とその展開
フェミニズム批評…「文学」と女性|「フェミニスト批評」と「ガイノ批評」|「 ガイネーシス批評」|「女性」であること
「ジェンダー」理論の展開
「ことば」と「ジェンダー」
「ホモソーシャル理論」…「ホモセクシュアル」と「ホモソーシャル」|「男同士の絆」と「女」の立場
「ポストコロニアル理論」
「少女」・「少年」を考える…「少女」の文化|「女」が書く・「女」が読む|「少女文化」の研究|「少年」を考えること
用語解説 1. 魔女狩りと魔女裁判 2. ポルノグラフィー
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第二部 「ジェンダー」を読む
〈ことばと主体〉
自分の恋を語り、書くことをめぐる闘争
誰が恋をしているのか―和歌・ことば・主体―
〈類型への欲望〉
「 恋愛小説」は好きですか?
悪魔のようにハンサムな彼
〈語り直されるテクストとジェンダー〉
美女と野獣、騎士と精霊
誰に恋をするのか―神話と生きる今―
〈表象されるジェンダー〉
中国の足をめぐるエロティシズムとフェミニズム
おわりに、にかえて
ひとはなぜ愛にとらわれるか―恋愛という仕掛け―
執筆者紹介
索引
■著者紹介
【編者】岡尚子…奈良女子大学文学部言語文化学科准教授。専門研究分野はフランス文学/ジェンダーと文学。著書に『摩擦する「母」と「女」の物語―フランス近代小説にみる「女」と「男らしさ」のセクシュアリティ』(2014年、晃洋書房)など。 【執筆者】 岡真紀子/小山俊輔/鈴木広光/岡尚子/中川千帆/野村鮎子/三野博司/吉田孝夫