1836年1月3日、息子モーリスに宛てた手紙のなかで
サンドは
「お母さんは、毎日、夜中から朝の7時まで仕事をしています。まるで古いランプのようです。」
と書いています。
このところ疑問に思っているのは、サンドの1月はじめの手紙には、「明けましておめでとう」といった新年を祝う言葉が見当たらないことです。
1830年代、サンドはベストセラー作家となり多忙だったせいかとも思われますが、それでも、この年頭の手紙が文頭から間髪を容れず要件で始まっている、そのような書き方は明らかに新年を意識していないように感じられます。
当時は今のように、クリスマスや新年を祝うカードのやり取りをする習慣がなかったのかどうか・・・。
現在は多少すたれてきたとはいえ、日本では新年早々に年賀状のやりとりをする習慣があるので、その感覚からすると、新年の最初の手紙にBonne année と一言、書かないのは、少々、奇妙に思われます。
しかしながら、日本とは異なり西洋では新年よりクリスマスを祝う方に重きが置かれているので、元旦よりクリスマスかそれ以前の手紙を調べてみるべきなのかもしれません。
ただよく思い起こしてみると、サンドの後年の手紙には新年を祝う言葉があって、確かに見かけた記憶があります。
サンドの書簡集は27巻に及びおよそ2万通の手紙が収録されているため、すべてをチェックするのは大変なのですが・・・。
お亡くなりになられた霧生和夫先生の貴重な業績でもあった「サンド書簡集のデータ化」という膨大なお仕事、このデータが残されていれば、検索が可能となり世界のサンド研究にとっても大きな役割を果たしてくれると思うのですが、御奥様から頂戴したお手紙には「パソコンの中に入っていると思いますが、操作もパスワードなども何もわからないので、家族でも触ることができないのです」とあり、非常に残念に思われたことでした。
先生のご病状がそんなにお悪かったとは知らず、先生のこの貴重なデータがあったなら、日本のみならず世界のサンド研究者の研究推進にずいぶん役立ったことだろうと思われ、当時は異常に多忙だったとはいえ、先生のお見舞いにも参らせて頂かず、不義理を通してしまったことが、今となっては非常に悔やまれます。