日本で翻訳書が書店に並べられたばかりだが、今年、出版された書物の中で最も重要な必読書の一つなのではないだろうか。
フランスの経済学者トマ・ピケティが著わした本書は、昨年フランス語で出版され、今年2014年4月には英語訳版が発売されるやAmazon.comの売上総合1位に輝いた。目下、アマゾンでは売り切れ。『現代思想』の最新号(一月号)が本書の特集を組んでいるが、こちらも入手困難の状態のようだ。
本書は、目次の各章に目を通しただけで、経済的専門知識がない読者でも強烈な好奇心がそそられることだろう。
「ヴォートランのお説教」「ラスティニャックのジレンマ」など19世紀小説の登場人物の言及あり、「マルサス、ヤング、フランス革命」「資本って何だろう?」「資本と富」「古典文学に見るお金の意味」「21世紀は19世紀より不平等」「奴隷資本と人的資本」「民法典とフランス革命の幻想」「富裕国の国民資本と純外国資産」「実体資産と名目資産」「労働の格差―ほどほどの格差?」「資本の格差―極端な格差」等々、読者を惹きつけてやまない刺激的なタイトルの文字が、そこに踊っているからだ。
紹介文によれば、「経済的格差は長期的にどのように変化してきたのか?資本の蓄積と分配は何によって決定づけられているのか?所得の分配と経済成長は、今後どうなるのか、決定的に重要なこれらの諸問題を、18世紀にまでさかのぼる詳細なデータと、明晰な理論によって解き明かす。格差についての議論に大変革をもたらしつつある、世界的ベストセラー」との由。
さらに
「長期的にみると資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きく、その結果として富の集中が起こり、資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど富はより資本家へ蓄積される。そして富が公平に分配されないことによって社会や経済が不安定となるということを主題としている。この格差を是正するために、富裕税を、それも世界的に導入することを提案している。」というのであるから、まさに歴史的観点からも画期的な書に違いない。
本書の詳細は下記の通りである。
著者 トマ・ピケティ『21世紀の資本 LE CAPITAL AU XXIe SIECLE』
訳者 山形浩生 訳者 守岡桜 訳者 森本正史
みすず書房 2014 5940円
http://www.msz.co.jp/book/detail/07876.htmlhttp://www.msz.co.jp/book/detail/07876.html
目次
謝辞
はじめに (一部公開、PDFファイル1.38MBダウンロード)
第 I 部 所得と資本
■第1章 所得と産出
■第2章 経済成長─幻想と現実
第 II 部 資本/所得比率の動学
■第3章 資本の変化
■第4章 古いヨーロッパから新世界へ
■第5章 長期的に見た資本/所得比率
■第6章 21世紀における資本と労働の分配
第 III 部 格差の構造
■第7章 格差と集中─予備的な見通し
■第8章 二つの世界
■第9章 労働所得の格差
■第10章 資本所有の格差
■第11章 長期的に見た能力と相続
■第12章 21世紀における世界的な富の格差
第 IV 部 21世紀の資本規制
■第13章 21世紀の社会国家
■第14章 累進所得税再考
■第15章 世界的な資本税
■第16章 公的債務の問題
■おわりに
資本主義の中心的な矛盾― r>g
政治歴史経済学に向けて
最も恵まれない人々の利益
索引、原注、図表一覧
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著訳者略歴
トマ・ピケティThomas Piketty
1971年5月7日、フランスのクリシー生まれ。パリ経済学校経済学教授。社会科学高等研究院経済学教授。
多数の論文をQuarterly Journal of Economics, the Journal of Political Economy, the American Economic Review, the Review of Economic Studiesほかに発表、また多くの書籍を刊行している。経済成長と所得および富の分配についての、重要な歴史的・理論的研究を行ってきた。特に、国民所得に占める所得上位層の割合の長期的推移に関する研究を先導している。これは現在、世界最高所得データベース(World Top Incomes Database)で入手可能。(以上、著者のホームページより)
識者・著名人のコメント:
「本年で、いや、この10年で、最も重要な経済学書になると言っても過言ではない」ポール・クルーグマン(プリンストン大学教授)
「この事実の確立は、政治的議論を変化させる、ノーベル賞級の貢献だ」
ローレンス・サマーズ(ハーヴァード大学教授)
「かれの研究が、スマートな人たちを富と所得格差の研究に惹きつけることを望む」(ビル・ゲイツ)