日々雑感

読んだ本やネット記事の感想、頭に浮かんでは消える物事をつらつら綴りました(本棚7)。

「珈琲どりーむ」(漫画:ひらまつおさむ/原作:花形怜)

2012-11-02 06:48:14 | マンガ
 珈琲のうんちく漫画です。

 主人公は老舗の日本屋の息子で、実は大の珈琲好き。和服姿で近所の喫茶店に入り浸ります。
 そこは幼なじみ&恋人の家でもあり、互いの両親は「日本茶vs 珈琲」を絵に描いたような犬猿の仲。
 「将来はカフェを開きたい」と、反対する父親の逆風に晒されながらも「珈琲事業部」を立ち上げ、いろんな人と関わり合いながら夢へ向かってコツコツ前へ進む主人公の様子が描かれている内容で、ストーリーを追いながら珈琲に関するトリビアが知らないうちに身についているという美味しい漫画です。

 いろんなうんちくがでてきますが、自分自身の興味の方向もわかって意外な発見もあり楽しめました。珈琲産地の情報や歴史は気になり、特にラオスの現地状況やエクアドルの森林農法の話は目から鱗が落ちました。一方、珈琲を他の食材でアレンジした飲み物には興味がわきませんでした(笑)。

 ちょっと残念なのは、紆余曲折を経ながらも毎回無難なラストで終わること。
 主人公がもっと失敗して右往左往する展開があると、読み応えが出てくるんですけどねえ。


メモ
 自分自身のための備忘録。

珈琲の珍品「ピーベリー」と「コピ・ルアク」
 ふつう、赤いコーヒーの実の中には、半球形のコーヒー豆が2つ、平らな面を向かい合わせて入っている。しかしごく希に一つの豆しか入っていない物がある。これを「ピーベリー(別名:丸豆)」と呼ぶ。
 ピーベリーはコーヒー豆全体の10%ほどしかないので珍重されるが、味わいも異なる。そのまん丸の形状から、豆全体をうまく均一に焙煎することが可能だからである。ジャマイカやブラジル産のピーベリーは、通常の豆と区別して売られていることがある。
 一方「コピ・ルアク」インドネシアで採取される珍品。これはコーヒーの実を食べたジャコウネコの排泄物(ウンチ)から、消化されないで残った豆を取り出した物。

珈琲と農薬
 実はコーヒーは世界で最も農薬が使われている作物ワースト3の常連である。コーヒー生産国では、農園労働者の農薬被害が大きな社会問題となっている。
 しかし珈琲を飲むことに関して云えば、農薬の危険はそれはどない。コーヒー豆は果実に包まれており、農薬が直接は当たらないからである。更に火を使って焙煎をし、豆そのものを食べるわけではない。

珈琲の名前に「○○○マウンテン」が多い理由
ブルーマウンテン ・・・ジャマイカ
エメラルドマウンテン ・・・コロンビア
クリスタルマウンテン ・・・キューバ
コーラルマウンテン ・・・コスタリカ
カリビアンマウンテン ・・・プエルトリコ
アンデスマウンテン ・・・エクアドル
等々。
 なぜこのような名前が多いのかというと、それは良質なコーヒー豆は山岳地帯で収穫されることが多いから。
 珈琲の木は20℃前後の気温と適度な雨を好む。また水はけのよい土壌や昼夜の温度差も重要である。このような様々な栽培条件を満足させられるのが熱帯の山岳地帯と云うことになる。
 世界中の優良なコーヒー豆の多くは、車も入り込めない山の急斜面で収穫される。農夫たちによる手作業が行われ、運搬にはラバが使用される。その後も加工や選別、袋詰めなどの作業があることを考えると、ふだん何気なく飲んでいる一杯の珈琲がいったいどれほどの人の手を通ってきているのか想像もつかない。

ペーパーフィルターには「レギュラータイプ」と「ヨーロピアンタイプ」の2種類がある
 レギュラーの方が目が詰まっている。
 珈琲豆は焙煎してから時間が経つほどガスが抜けて湿気ってくるのでお湯の吸収力が落ちる。そのため、スーパーなどで売られている古い豆は目の詰まったレギュラータイプでじっくり抽出しないと十分なうま味が出ない。
 逆に焙煎したての豆の場合レギュラーでは余計な雑味まで出てしまう。

ヨーロッパ一の珈琲大国はフィンランド
 ヨーロッパで一番珈琲を飲むのはエスプレッソのイタリアではなく、カフェオレのフランスでもなく、実はフィンランド人。国民一人当たりの珈琲消費量は年間約1200杯! 
 一般的なフィンランド人は毎日朝起きてから夜寝るまでに5-6杯の珈琲を飲む。
 そんなフィンランドにはKUKSA(ククサ)という伝統的なマグカップが存在する。白樺の木にてきたコブを加工して作ったもので、送られた相手が幸せになるという言い伝えから、出産祝いなどプレゼントの定番品となっている。

代用珈琲
 現在では珈琲輸入大国の日本だが、かつては輸入量ゼロの暗黒時代があった。原因は太平洋戦争で、昭和19年にはゼロへ。
 当時、珈琲は敵国の飲み物であり、それを飲む人は非国民扱いされた。ガマンできない珈琲好きの人達は、珈琲に近い苦みや香りを求めて試行錯誤を繰り返し、代用珈琲の登場となった。
 日本では百合やタンポポの根、カボチャの種、サツマイモの屑、サラにはドングリの実までを代用珈琲にしていた。真っ黒に焦がしたこれらの材料をお湯に溶かして珈琲に似た色や苦みを味わう・・・つらい時代だったと思われる。
 コーヒー豆の輸入が再開されたのは昭和25年。

オールド珈琲「オールド・ガバメント・ジャワ」
 戦前ジャワ島の珈琲はオランダ政府が管理していた。専用の貯蔵庫で10年ほど寝かせた生豆は、当時世界で最も優秀な珈琲と云われていた。
 ジャワ島では戦後ゴムの栽培が農業の中心となり、珈琲はゴムの保護植樹としてのロブスタ種ばかりが栽培されるようになった。
 ロブスタ種はそれ以前に栽培されていたアラビカ種に比べて格段に味が落ちるため、今ではジャワの珈琲に昔のような名声はない。

※ 収穫から数ヶ月以内の生豆をニュー・クロップと呼ぶ。数ヶ月以上1年未満はカレント・クロップ、1年から2年でバースト・クロップ、そして3年以上の生豆がオールド・クロップ。

インド珈琲の子孫たち
 珈琲はエチオピアをを原産地年、その後アラビアに伝わり、長い間イスラムの支配階級に独占されていた。
 1500年代前半になると、飲料としての珈琲はエジプトやシリア、トルコなどへ伝わったが、珈琲の木がアラビア以外に持ち出されることはなかった。イスラム総員により非常に厳しい管理がなされたいたためである。
 その珈琲の木を初めてアラビアの外へ持ち出すことに成功したのが、インドからやってきた聖地巡礼者、ババ・ブタンであると伝えられている。彼が持ち出した珈琲の木はインド南部の米ソールで栽培され、後にオランダ人によってジャワ島へと移された。ジャワ島一帯で栽培されるようになった珈琲の木は、その後西インド諸島へ伝わり、さらに中南米へと広まっていった。

アメリカン珈琲はお湯で薄めた珈琲ではない
 アメリカン珈琲の誕生はアメリカ開拓時代と云われている。当時、珈琲豆は非常に高価で重量単位の売買が行われていたため、豆を浅煎りにすることでできるだけ重量を減らさないようにしていた。深煎りにすると水分が抜けた分重量は軽くなってしまう。
 さらに焙煎後の味の劣化は深煎りの方が速いので、広大なアメリカ大陸を流通させるには浅煎りは都合がよかった。

 ではなぜ日本では湯で薄めた珈琲に成り下がったのか?

 1970年代前半、ブラジルのコーヒー農園が霜害で壊滅的な打撃を受け、珈琲の価格が世界的に高騰したことがあった。それとほぼ同時に、アメリカから日本にファストフードのチェーン店が上陸し”珈琲おかわり自由”という当時としては画期的なサービスを始めた。
 それに対抗するため、少ない珈琲豆でたくさんの量を淹れる苦肉の策として考えられたと云われている。

 現在のアメリカの珈琲はどうなっているか。

 ヨーロッパの影響が強い東海岸では濃厚なエスプレッソが好まれている。
 西海岸では今も薄味の珈琲を飲んでいる人が多いらしい。

エクアドルの森林農法
 エクアドルは近年、世界で最も環境破壊が進んだ国tぴわれている。実際、既に9割を超える森林が失われた。
 森林農法は、森の中で珈琲を栽培する方法。
 珈琲のような商品樹木を材木用の樹木と一緒に育て、一つの土地で農業と林業を同時に行うので、森林を伐採することがない上に、土壌や環境の保全が可能になる。それにバランスの保たれた生態系では害虫の発生が少ないため、農薬や化学肥料を使わずに安全な珈琲を作ることができる。

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