日々雑感

読んだ本やネット記事の感想、頭に浮かんでは消える物事をつらつら綴りました(本棚7)。

「珈琲記」(黒井千次著)

2012-08-16 20:48:06 | コーヒー
紀伊國屋書店、1997年発行。

小説家による珈琲関連エッセイ集です。
決してマニアではなく、珈琲好きの一男性が周辺の思索を記したもの。
この「マニア過ぎない」スタンスが、肩が凝らなくてよい感じでした。

■ 珈琲の味へのこだわり
・本格的な「アメリカン」はただの薄い珈琲ではなく、浅煎りで粗挽きの豆で淹れた贅沢な一品である。
・朝の珈琲は2杯飲みたい。西洋料理の最後に出てくるデミタスは量が少なくて物足りない。ちなみに「デミ」とは’半分’、「タス」とは’茶碗’の意味。
・インスタントも必ずしも嫌いではないけれど、感覚的には豆で入れる珈琲とは別の飲み物だという気がしてならない。ちょうど、「珈琲」と「コーヒー」くらいの差があるのだ。
・どちらかといえば、苦みのある珈琲より酸味の強い方が好みである。特に少し薄めに淹れる場合は、酸味の珈琲が適しているように思われる。苦みの品は薄いとすぐ味がぼやけるのに対し、酸味は薄いながらも尖った部分が残る感じである。
■ 紅茶派と珈琲派
・自分の中では紅茶は家の中の味、珈琲は家の外の味として育ってきたので、珈琲には飲んだ店の影がつきまとい、いわば店の雰囲気ごと飲んでいることになる。
・ロシアの珈琲は大味なので、これなら紅茶の方がまし。
・英語の辞書を引くと、「ティー・ブレイク」とは英国でのお茶の休憩時間を指し、米国ではそれが「コーヒー・ブレイク」となる、と記されている。珈琲好きのイギリス人に「なぜ珈琲ではなく紅茶を飲むのか?」と聞いたところ「安いから」との答えが返ってきた。
■ 器具へのこだわり
■ カップへのこだわり
■ ミルクと砂糖へのこだわり
■ 喫茶店に置ける珈琲の諸相
・その店の特徴を味わうにはストレートではなく「ブレンド珈琲」が最適である。うるさくいえばきりがないだろうが、ストレートの場合はどこの店で飲んでも同じ種類の豆ならほぼ似た味の珈琲が出てくる筈である。しかしブレンドとなれば、店によって味が異なるのが当然である。そこに客としての楽しみがある。
・ファストフード店の珈琲はあくまでも「セットの一部」であり、単独で飲むと味気なくなってしまう。

などなど、興味深く読ませていただきました。

ただ、黒井氏は自分で豆をひくのを面倒くさがり、粉の缶を購入してきてドリップしている様子。
これはいけません。ちょっと損をしています。
やはりオンデマンドで焙煎した豆を購入し、ミルで粉を挽いて香りを楽しみ、お湯を注ぐときに粉が膨らみ味が凝集していくのを眺めながら、淹れるまでの過程を楽しんでほしいものです。


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