日々雑感

読んだ本やネット記事の感想、頭に浮かんでは消える物事をつらつら綴りました(本棚7)。

寂聴文学塾第4回「谷崎潤一郎」

2017-10-13 06:48:51 | 小説
 寂聴文学塾第四回は昭和の文豪、谷崎潤一郎。
 文壇でも別格扱いで「大谷崎」と呼ばれていたそうです。

 彼はある三人姉妹の芸者と深く縁がありました。
 長女が営んでいるバーに出入りし、長女を好きになりました。
 しかし長女はすでに人妻で、その長女から次女を紹介されました。
 次女と谷崎氏は結婚しました。
 しかし谷崎氏は3ヶ月で次女に飽きてしまいました。
 そして谷崎氏が目を付けたのは三女です。
 まだ14,5歳の女の子を拉致して自分好みの女性に育てようとしました。
 源氏物語の光源氏と同じことを試みたのです。
 しかし途中で失敗しました。

 上記登場人物の次女は千代、三女はせい子という名前です。
 千代は佐藤春夫との「小田原事件」「細君譲渡事件」の当事者です。
 飽きてしまった千代を佐藤春夫に譲ったのですね。
 当時、大きく社会を賑わせたそうです。
 せい子は小説「痴人の愛」のモデルとなりました。

 寂聴さん曰く、谷崎氏にとって理想の女性とは神か奴隷かのどちらかだったそうです。
 女神として崇め奉り、その女神のわがままを聞いてあげることを無上の喜びとした、と。
 そのような女神を自分で育てて作り上げようとしたのがせい子だったわけです。

 谷崎氏は変人です。
 SとMではMです。
 時に犯罪者すれすれのこともしてきました。

 でも彼の残した芸術があまりにも素晴らしいので、文化人として名を残しました。
 やはり後世に名を残すためには、それまでの社会常識・社会通念を打ち破る行動・生活をしないとダメですね、と寂聴さん。

 寂聴さんは生の谷崎氏に会ったことがあるそうです。
 目黒アパートに住んでいたある年の正月に、知り合いの文学関係者が年始に来たことに乗じて一緒にご挨拶に伺うと、そこには穏やかな表情のお爺さんが座っていて、ちょっと肩すかしにあった感じ、と話していました。

 寂聴さんは、目黒アパートの近くに住む佐藤春夫宅にもお邪魔したことがありました。
 そこには谷崎氏の元妻であり、「細君譲渡事件」(谷崎氏、佐藤氏が連名で新聞広告に出した)の当事者である千代さんがいましたが、若い頃は美人で有名だった彼女がふつうの中年おばさんになっているのを目撃して、ここでも肩すかしを食らった気分になったそうです。
 一方の佐藤春夫はおしゃれで子どもっぽくて魅力的な人物という印象を持ちました。
 
 寂聴さんは晩年のせい子さんとお会いしたこともあるそうです。
 彼女は少女の時に谷崎氏に囲われて理想の女性に育てられるプログラムから逃避して、若い男に走った経歴の持ち主です。
 その時に初めて知った驚愕の事実。
 なんと谷崎氏はせい子さんに生涯お金を送り続けていました。
 彼女が人妻になった後も送り続けていましたというのです。
 「どんな気持ちでお金をもらっていたのですか?」
 と寂聴さんがせい子さんに聞くと、
 「15歳の時に谷崎に犯されたのだから、それくらいしてもらって当たり前でしょ」
 との返答。

 谷崎氏は何度もノーベル文学賞の候補になりました。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。