NHKのEテレのシリーズ『100分de名著』は興味のある人物を取り上げたときは録画しておき、4回放送が終了したら一気に視聴する習慣が付いています。
今回は哲学者のカント。
カントと言えば『純粋理性批判』という書物が頭に浮かびます。
確か庄司薫氏が『赤ずきんちゃん気をつけて』シリーズの中で、主人公が夜寝る前に読書していた本と記憶しています。
庄司薫に心酔していた当時高校生の私は、それを真似て古本屋で入手し挑戦しましたが・・・ちんぷんかんぷん。
ただ、ほどよい睡眠薬にはなりました(^^;)。
取り上げられた『永遠平和のために』は晩年の作品とのこと。
究極の堅物教授がお説教的に諭す内容、と思いきや、内容は私の思い込みとはかなり異なることが発覚し、“食わず嫌い”だったことに気づかされました。
彼の思索のテーマは、
「戦争しない世界はどうしたら実現できるか?」
という素朴な疑問。
いろいろ考えているうちに、人間の根源まで深く推論することになり、哲学書になってしまったという経緯。
その“人間の根源”とは、「人間は戦争するもの」という大前提です。
考えてみれば、動物は遺伝子を残すために、同じ種の仲間を蹴散らしてでも生き抜くことを選択するよう設定されています。
そして人間も、その動物の一つの種であり、この原則を免れません。
誰もが衣食住が満ち足りて幸せ一杯なら争いごとは起きないかもしれません。
しかし、生死を分けるような危機的状況に陥り、全員が生き残れないような状況では争いが発生します。
その一番規模が大きいものが、国と国との争い、つまり戦争です。
それを避けるためには、一定のルールが必要。
カントの思索は、国際連盟や国際連合の思想に結実していることを知りました。
まあ、現在もあちこちで紛争やテロが発生し、完璧に平和がもたらされているわけではないけど、そこへ向かって努力し続けることは必要ですね。
うん、哲学って現実に役に立ってるんだ(^^)。
<解説> (プロデューサーAの思惑)
「純粋理性批判」「実践理性批判」「判断力批判」という哲学史に残る名著を著し、近代哲学の骨格を築いた18世紀の哲学者イマヌエル・カント(1724 - 1804)。彼が確立した哲学は「ドイツ観念論」と呼ばれ、今も多くの人々に影響を与え続けています。そんなカントが最晩年、戦争が絶えないヨーロッパ情勢を憂い、「世界の恒久平和はいかにしてもたらされるべきか」を世に問うたのが「永遠平和のために」です。終戦記念日を迎える8月、この本をあらためて読み解きたいと思います。
「永遠平和のために」が書かれた18世紀のヨーロッパでは、国家間の紛争が頻発。民衆たちが戦争を忌避し平和を希求する一方で、国家間のエゴが対立しあい、一部権力者たちによる軍備拡張や戦費の増大がとめどなく進んでいました。巨大な歴史の流れの中では、戦争を回避し、恒久平和を実現することは不可能なのかという絶望感も漂っていました。そんな中、「国家」の在り方や「政治と道徳」の在り方に新たな光をあて、人々がさらされている戦争の脅威に立ち向かったのがカントの「永遠平和のために」です。そこには、「常備軍の廃止」「諸国家の民主化」「平和のための連合創設」など、恒久平和を実現するためのシステム構築やアイデアが数多く盛り込まれており、単なる理想論を超えたカントの深い洞察がうかがわれます。それは、時代を超えた卓見であり、後に「国際連盟」や「国際連合」の理念を策定する際にも、大いに参考にされたといわれています。
哲学研究者、萱野稔人さんは、民族間、宗教観の対立が激化し、テロや紛争が絶えない現代にこそ「永遠平和のために」を読み直す価値があるといいます。カントの平和論には、「戦争と経済の関係」「難民問題との向き合い方」「人間の本性に根ざした法や制度のあり方」等、現代人が直面せざるを得ない問題を考える上で、重要なヒントが数多くちりばめられているというのです。
番組では、政治哲学や社会理論を研究する萱野稔人さんを指南役として招き、哲学史上屈指の平和論といわれる「永遠平和のために」を分り易く解説。カントの平和論を現代社会につなげて解釈するとともに、そこにこめられた【人間論】や【国家論】、【政治論】などを学んでいきます。
今回は哲学者のカント。
カントと言えば『純粋理性批判』という書物が頭に浮かびます。
確か庄司薫氏が『赤ずきんちゃん気をつけて』シリーズの中で、主人公が夜寝る前に読書していた本と記憶しています。
庄司薫に心酔していた当時高校生の私は、それを真似て古本屋で入手し挑戦しましたが・・・ちんぷんかんぷん。
ただ、ほどよい睡眠薬にはなりました(^^;)。
取り上げられた『永遠平和のために』は晩年の作品とのこと。
究極の堅物教授がお説教的に諭す内容、と思いきや、内容は私の思い込みとはかなり異なることが発覚し、“食わず嫌い”だったことに気づかされました。
彼の思索のテーマは、
「戦争しない世界はどうしたら実現できるか?」
という素朴な疑問。
いろいろ考えているうちに、人間の根源まで深く推論することになり、哲学書になってしまったという経緯。
その“人間の根源”とは、「人間は戦争するもの」という大前提です。
考えてみれば、動物は遺伝子を残すために、同じ種の仲間を蹴散らしてでも生き抜くことを選択するよう設定されています。
そして人間も、その動物の一つの種であり、この原則を免れません。
誰もが衣食住が満ち足りて幸せ一杯なら争いごとは起きないかもしれません。
しかし、生死を分けるような危機的状況に陥り、全員が生き残れないような状況では争いが発生します。
その一番規模が大きいものが、国と国との争い、つまり戦争です。
それを避けるためには、一定のルールが必要。
カントの思索は、国際連盟や国際連合の思想に結実していることを知りました。
まあ、現在もあちこちで紛争やテロが発生し、完璧に平和がもたらされているわけではないけど、そこへ向かって努力し続けることは必要ですね。
うん、哲学って現実に役に立ってるんだ(^^)。
<解説> (プロデューサーAの思惑)
「純粋理性批判」「実践理性批判」「判断力批判」という哲学史に残る名著を著し、近代哲学の骨格を築いた18世紀の哲学者イマヌエル・カント(1724 - 1804)。彼が確立した哲学は「ドイツ観念論」と呼ばれ、今も多くの人々に影響を与え続けています。そんなカントが最晩年、戦争が絶えないヨーロッパ情勢を憂い、「世界の恒久平和はいかにしてもたらされるべきか」を世に問うたのが「永遠平和のために」です。終戦記念日を迎える8月、この本をあらためて読み解きたいと思います。
「永遠平和のために」が書かれた18世紀のヨーロッパでは、国家間の紛争が頻発。民衆たちが戦争を忌避し平和を希求する一方で、国家間のエゴが対立しあい、一部権力者たちによる軍備拡張や戦費の増大がとめどなく進んでいました。巨大な歴史の流れの中では、戦争を回避し、恒久平和を実現することは不可能なのかという絶望感も漂っていました。そんな中、「国家」の在り方や「政治と道徳」の在り方に新たな光をあて、人々がさらされている戦争の脅威に立ち向かったのがカントの「永遠平和のために」です。そこには、「常備軍の廃止」「諸国家の民主化」「平和のための連合創設」など、恒久平和を実現するためのシステム構築やアイデアが数多く盛り込まれており、単なる理想論を超えたカントの深い洞察がうかがわれます。それは、時代を超えた卓見であり、後に「国際連盟」や「国際連合」の理念を策定する際にも、大いに参考にされたといわれています。
哲学研究者、萱野稔人さんは、民族間、宗教観の対立が激化し、テロや紛争が絶えない現代にこそ「永遠平和のために」を読み直す価値があるといいます。カントの平和論には、「戦争と経済の関係」「難民問題との向き合い方」「人間の本性に根ざした法や制度のあり方」等、現代人が直面せざるを得ない問題を考える上で、重要なヒントが数多くちりばめられているというのです。
番組では、政治哲学や社会理論を研究する萱野稔人さんを指南役として招き、哲学史上屈指の平和論といわれる「永遠平和のために」を分り易く解説。カントの平和論を現代社会につなげて解釈するとともに、そこにこめられた【人間論】や【国家論】、【政治論】などを学んでいきます。