小説家、反ワク医師、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、反ワク医師、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

卍(まんじ)(小説)(3)

2020-07-07 08:12:23 | 小説
しばしして、おおかたの毛が切りおわった。芝を刈り取られた後のように、京子の盛り上がった恥丘と、女の割れ目の全貌がはっきりと丸見えになった。しかし、まだ坊主刈りのように、短く刈られた毛が低く残っている。
「京子。これから、剃刀できれいに剃り上げるから、じっとしていてね」
悦子が言った。
「も、もう。好きにして」
とうとう京子は声を震わせて、捨て鉢な口調で言った。悦子は京子のアソコを洗面器の水で湿らせた。そしてボディーソープを念入りに塗った。
「じゃあ、京子。剃るわよ。動かないでね」
そう言って、悦子は剃刀を京子のアソコに当てた。その時、
「ああっ」
と悦子は、声を張り上げた。一人の男が、悦子の尻に手を触れたのである。悦子は、振り返って後ろを見た。一人の男が、悦子の尻にしがみついていた。
「な、何をするの」
「お、おれ。お前の裸を見ているうちに、もう我慢出来なくなっちゃったんだ」
そう言って男は悦子の尻に顔をつけた。
「お、おれも我慢の限界だよ」
「オレもだよ」
男達は口々に言って、ハアハアと興奮した荒いをしながら、悦子と圭子に近づいて、二人の尻を触ったり、胸に手を当てたり、ツルツルのアソコを触ったりし出した。
「ま、待って。今、剃刀を持ってるから危ないわ。剃りおわってからにして」
悦子が言った。そう言っても男達は、もうザーメンが溜まりすぎて限界なのだろう。悦子と圭子から離れようとしなかった。
「わ、わかったよ。じゃあ、手を触れておくだけにするよ。それならいいだろう」
悦子は困惑して眉を寄せた。
「仕方がないわね。じゃあ、触るだけにしておいて」
「そ、そうするよ」
男達の手はピタリと貼りついているだけになった。悦子は、やれやれといった顔で机に向き直って、京子のアソコを剃刀で剃り出した。ソケイ部から割れ目の方に向かって、坊主刈りになっている京子のアソコを剃っていった。一剃りした所だけが、つるつるの肌となって、ボディーソープの泡の中から、くっきりと現われた。悦子は、剃刀を剃った所の隣に当てて剃っていった。ちょうど半分、剃った頃だった。
「ああっ」
悦子は、声を出し、あわてて剃るのをやめた。悦子の胸を触っていた男が悦子の乳房を揉み出したのである。
「や、やめて。ちょっと待って。剃刀を扱っているから危ないわ」
悦子が言った。
「お、おれ。もう我慢できないんだ」
悦子の胸を揉んでいる男は言った。
「結婚したての夫婦では、女が台所で料理しているのを見ると、夫はどうしようもなくムラムラしてくるって、聞いたけど、本当だな」
京子の尻を触っている男が言った。
「その時、女はどうするんだ」
一人の男が聞いた。
「夫はムラムラを抑えられないから、妻は耐えながら料理を続けるんだって」
悦子のアソコを触っている男が言った。
「女もそうされると、すごく興奮するらしいぜ」
男の一人が言った。
「そういうわけだ。だから、お前も我慢して、弄ばれながら、京子のアソコを剃りな。すぐに終わるだろ」
そう言って、男は悦子の割れ目に指を入れ出した。
「ああっ」
悦子は反射的に声を出した。
「わ、わかったわ。で、でも、そっとにしてね」
そう言って悦子は、剃刀を京子のアソコに当てて、剃り始めた。
「ああっ」
悦子は、声を出し、体を震わせた。アソコを触っている男が、悦子の穴に入れた指をゆっくり動かし出したのである。悦子の胸を触っていた男も、悦子の乳房を揉み出した。悦子はハアハアと喘いで体をプルプル震わせながら、必死で男達の悪戯に耐えて、京子の毛を剃った。やっと剃りおわった。
「お、終わったわ」
悦子が言った。
悦子はタオルで京子のアソコを丁寧に拭いた。悦子と圭子を触っていた男達は、やったとばかり、ハアハアと息を荒くしながら悦子と圭子の体を揉み始めた。
「え、悦子。昨日は、お前達のレズショーを見ているだけで、触れなかったから、もう我慢が出来ないんだ」
そう言って男達は、悦子と圭子に皆で襲いかかろうとした。
「待って。今、京子の気持ちが解れてきた所だから、京子と肉体の関係をしっかり作りたいの。その後で好きな事させてあげるわ」
そう言って悦子は男達の手を払いのけた。
「わ、わかったよ」
男達は少し残念そうに言って、悦子と圭子から離れた。
「さあ。京子。見て御覧なさい。アソコの毛がなくなって、すっきりしたわよ」
悦子はそう言って、京子の顔を起こした。そして、机の上にあった手鏡をとって、剃り上げて、つるつるになった京子のアソコが見えるような角度にした。
「い、嫌っ」
京子は鏡の中に自分の、毛を剃られたアソコを見ると、真っ赤になった顔をそらした。京子は、俎板の鯉のように、四人の男に手足を押さえられて机の上に仰向けになっている。悦子と圭子の二人は京子の体を触り出した。
「い、嫌っ」
京子は抵抗したが、四人の男達に手足を押さえられているので、どうすることも出来ない。
京子は顔を真っ赤にして、口をキュッと閉じて黙っていた。悦子は、きれいに剃り上げられた京子のアソコの穴に指を入れて動かし出した。圭子は、京子の乳房を揉んだ。
「ああー」
京子は、苦しげに眉根を寄せて、苦しげな喘ぎ声を出した。悦子は京子の小陰唇を引っ張ったり、拡げたりした。悦子はクリトリスを刺激した。
「ああー」
京子は苦しげな喘ぎ声を出した。

悦子と圭子の二人は、机の上に乗せられて、四人の男に手足を押さえられている京子をさんざん弄んだ。抵抗する気力も無くなったのだろう。京子は、ダランと力を抜いて二人に、されるがままになっていた。悦子が京子の唇に接吻しても京子は抵抗しようとしなかった。京子のアソコからは白濁液が少し出ていた。悦子は京子の体を起こした。
「さあ。京子。机から降りて」
悦子が言った。京子の手足を押さえていた男達は京子の手足を離した。京子は机から降りた。
悦子は京子の正面に立った。圭子は、京子の後ろに回って座り、京子が動けないように太腿を抱きしめた。

京子は頬を赤くして正面の悦子を見た。悦子は、京子の肩をつかんだ。
「京子。乳首の擦りっこをしましょう。すごく気持ちがよくなるのよ」
悦子が言った。
悦子は、そっと胸を近づけた。二人の乳首が触れ合った。
「ああっ」
京子が苦しげに眉根を寄せて叫んだ。
「どうしたの」
悦子が聞いた。
「か、感じちゃう」
京子が言った。
「我慢して。すぐに気持ちよくなるから」
そう言って悦子は京子の肩をつかみながら、乳首を擦り合わせた。二人の乳首は、まるで、じゃれあう動物のように、弾き合ったり、押し合ったりした。だんだん二人の乳首が大きく尖り出した。二人はハアハアと呼吸が荒くなってきた。
「え、悦子。わ、私、何だか変な気持ちになってきちゃった。な、何だか凄く気持ちが良くなっちゃったわ」
京子が虚ろな目つきでハアハアと息を荒くしながら言った。
「わ、私もよ。京子」
悦子が言った。二人は、しばらく、もどかしげに乳首を擦り合わせていた。
「京子。今度は乳房を擦り合わせましょう」
悦子が言った。
「ええ」
京子が答えた。二人は乳房を擦り合わせた。二人は乳房を押しつけたり、擦り合ったりさせた。まるで、お互いの乳房が相手の乳房を揉み合っているようだった。時々、乳首が触れ合うと、二人は、
「ああっ」
と苦しげに喘いだ。
京子と悦子の二人の顔は目と鼻の先である。 二人の目と目が合った。暗黙の了解を二人は感じとった。二人は、そっと顔を近づけていった。二人の乳房はピッタリと密着して、平べったく押し潰されてた。二人は、お互いに唇を近づけていった。二人の唇が触れ合った。二人は無我夢中でお互いの口を貪り合った。悦子は、両手を京子の背中に回して、ガッチリと京子を抱きしめている。しばしして、二人は唇を離して、ハアハアと大きく深呼吸した。二人は恥じらいがちにお互いの顔を見つめ合った。
「京子。好き」
悦子が言った。
「悦子。私も好きよ」
京子が言った。二人は再び、尖って大きくなった乳首や乳房を擦り合わせ出した。二人は、これでもか、これでもかとさかんに乳房を押しつけ合った。そして、唇をピッタリと合わせてお互いの口を貪り合った。
「ああー。京子。好きー」
悦子が大声で叫んだ。
「私も好きよ。悦子」
京子も大声で叫んだ。二人はもう一心同体だった。
圭子は京子の後ろで座って、京子が逃げないように太腿を抱きしめていたが、それは、もはや不要の行為だった。抱きしめていたのは別の目的だった。圭子は、京子の大きな柔らかい尻に頬をピッタリとくっつけていた。
「圭子。京子の下を気持ちよくしてあげて」
悦子が言った。
「わかったわ」
圭子は京子のアソコを、触り出した。
「京子。もっと足を開いて」
圭子が言った。言われて京子は閉じていた足を開いた。
圭子は京子の女の穴に中指を入れた。京子のアソコは、もうじっとりと濡れていたので、指はスルっと入った。圭子は、ゆっくりと、穴に入れた中指を上下に動かし出した。
「ああー」
京子が眉根を寄せて、大きく喘いだ。京子のアソコがクチャクチャ音を立て出した。白い粘っこい液体が出始めた。
「ああー」
京子は体をプルプル震わせて、叫んだ。

京子はハアハアと苦しそうに喘ぎながら、自分も右手を下に降ろし、正面の悦子のアソコに手を当てて、しばしアソコの肉を揉んだり撫でたりした。そして中指を悦子のアソコの割れ目に入れて、ゆっくり動かし出した。
「ああー」
悦子はプルプル体を震わせて、喘ぎ声を出した。
京子も中指を立てて悦子の女の穴に入れ、ゆっくりと指を動かし出した。悦子のアソコもクチャクチャと音を立て出した。悦子のアソコからも白濁液が出てきた。
圭子は、後ろから一心に京子のアソコに入れた指を動かしている。
「け、圭子。もっと激しくやって」
京子が後ろの圭子に言った。
「ええ。わかったわ」
圭子は、指の蠕動を速めていった。
「ああー」
京子は、圭子の責めの辛さのやりきれなさを悦子にぶつけるように、悦子の女の穴に入れた指の蠕動を速めていった。京子と悦子は、お互い抱き合って、乳房を押しつけながら、お互いの口を吸い合った。
「ああー。いくー」
ついに京子が叫んだ。
「ああー。いくー」
悦子も叫んだ。二人は、
「ああー」
とことさら大きな声を出して全身をガクガクさせた。まるで痙攣したかのようだった。二人は同時にいった。二人は、しばしハアハアと荒い呼吸をした。

呼吸が落ち着いてくると、今度は、悦子と圭子が入れ替わった。圭子は京子と向かい合って、キスをし、乳首を擦り合った。悦子は京子の背後で、圭子がしたように、京子のアソコに指を入れた。京子と圭子も一緒にいった。これで、三人は同性愛の関係になった。

   ☆   ☆   ☆

三人は疲れからグッタリと床に座り込んだ。
しばしの時間がたった。女三人はゆっくりと起き上がり出した。
「おい。悦子。お前達だけで楽しんでるのを見せつけられて、オレ達はもう我慢の限界なんだ。さっき、後でやらせてやると言ったから、やらせてくれ」
男達はそう言って女三人に近づいてきた。
「さあ。三人とも立ち上がるんた」
男達に手をつかまれて京子と悦子と圭子の三人は立ち上がらせられた。森田がやって来た。森田は三人は体を外側に向けた三角形のかたちに立たせた。
京子の左に悦子を立たせ、京子の右には圭子を立たせた。そして圭子の右肩を悦子の左肩にくっつけた。
「な、何をするの」
京子は言った。
「ふふ。面白いことさ」
森田はそう言って京子の右腕をつかんで背後に回し、左隣にいる悦子の左手を背後で握らせた。
「さあ。京子。悦子の左手をしっかりつかむんだ」
森田に言われて京子は悦子の左手をつかんだ。森田は、今度は京子の左腕をつかんで背後に回し、右隣にいる圭子の右手を背後で握らせた。
「さあ。京子。圭子の右手をしっかりつかむんだ」
森田に言われて京子は圭子の右手をつかんだ。京子は、背中で両腕を交差させて、両隣にいる二人の、遠い方の手を背後で握る形になった。男達は、それを三人にやらせた。
これで三人が、それぞれ、背中で腕を交差させて、両隣の女の遠い方の手を握る状態になった。三人は体を外に向けた三角形になった。背中で両隣の女とお互い遠い方の手を握り合っているので、三人の体はピッタリとくっついている。森田はニヤリと笑って、握り合っている三人の手首をそれぞれ縄でカッチリと縛った。まず京子の右手と悦子の左手の手首を縛り、次に京子の左手と圭子の右手の手首を縛った。そして最後に悦子の右手と圭子の左手の手首を縛った。これでもう三人は自由が利かなくなった。女三人は、丸裸の体を男達に向けて曝け出している。
「は、恥ずかしいわ」
男達に取り囲まれて、丸裸をじっくり見られて女達は、太腿をピッタリ閉じて言った。
「森田君。こんなことしてどうするの?」
京子が聞いた。
「こうやって三人で手をしっかりつないでいれば、何をされても耐えられるだろ。そうすればお前達の友情の絆も強くなるぜ」
森田がニヤリと笑って言った。
「ふふふ。それじゃあ、好きなことをさせてもらうぜ」
男達が言った。
男達はわらわらと、三人の前にやって来た。男達は、それぞれ自分の好きな女の前に行った。女達は太腿をピッチリ閉じた。
「すげー。こんなに間近に女の裸を見れるなんて、夢のようだ」
京子の正面にいた男が京子の間近に近づいて言った。男は、いやらしい目つきで、京子の胸や、臍や、アソコをしげしげと見つめた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は、か細い声で言って、太腿をピッチリ閉じて、腰を引いた。
「ふふ。京子。お前のアソコも毛がなくなって、つるつるになって、さっぱりしたじゃないか。割れ目が丸見えだぜ」
京子の正面の男が言った。女は、揶揄される度にピクッと体を震わせた。三人は手をギュっと握り合った。
「しっかり手を握り合うことで恥ずかしさに耐えましょう」
京子が言った。
「ええ。三人一緒だから怖くないわ」
悦子が言った。それは他の二人に言うのと同時に、自分に対しても言い聞かしているような口調だった。
「そ、そうね」
圭子も言った。
三人はまさに一心同体だった。一人が、別の女の片手をギュッと握ると、握られた女は、もう一人の女の手をギュッと握りしめた。それがまた最初の女に返ってきた。まるで、電気回路のスイッチが入って、電流が流れ出しているかの様だった。

男の一人がハアハアと息を荒くしながら、京子の体に手を伸ばそうとした。
「待て」
森田が制した。
「どうしてだ」
男が森田に聞いた。
「いきなり触らないで、まず女達の裸をじっくり観賞するんだ。そうして、いっぱいザーメンを溜めておくんだ。そして後で思いっきり出すんだ」
森田が言った。
「な、なるほどな。わかったよ」
男は、手を引っ込めて、ハアハアと息を荒くしながら、ズボンの上からビンビンに勃起したマラを扱きながら、女達の裸を舐めるように見つめた。男達は、まず裸の女達の体を隅々まで、じっくり観賞しようと、ビンビンに勃起したマラをズボンの上から扱きながら、食い入るように、女の裸の体に目をやった。女達は羞恥に太腿をピッチリ閉じて腰を引いた。
「しかし、三人ともいいプロポーションだな」
一人が言った。
「おっぱいは悦子が一番大きそうだな」
一人が言った。悦子の肩がピクッと震えた。
「でも形は圭子の方がいいぜ」
別の男が言った。
「そうかな。オレは京子のおっぱいの方がいいと思うけどな。弾力があって。この前は、すごく揉みがいがあったぜ」
別の男が言った。
「でも、おっぱいって、脂肪と乳腺という柔らかい組織だけなんだろ。それが胸の上にくっついているだけだろ。何で垂れてこないんだろう」
ある男が言った。
「それはだな。乳房の中にはクーパー靭帯というのがあって、乳房をテント状に吊り上げているんだよ」
森田が説明した。
「ふーん。なるほどな」
男達は感心したように女達の乳房を見た。
「太腿は京子が一番、スラリとしてて美脚だな」
「ウエストは圭子が一番よく、くびれてるな」
男達は口々に女の体の品評をし出した。女達は、しっかり手を握りしめ合うことで男達に裸をまじまじと見られる屈辱に耐えようとした。
「乳首の形は京子が一番いいな」
「そうだな。糸でくくっても外れなさそうだな」
「糸でくくっても外れない乳首だと、面白いことが色々できるからな」
「その点、糸でくれない乳首は面白くないな」
男達は好き勝手なことを言い合った。女達は真っ赤になった。助平が京子の前にやって来た。そして、ポケットから鉛筆を取り出して、京子の乳首の先を突いた。
「ああっ。やめてっ」
京子が叫んだ。
「おい。女を触るのはまだだぞ。もっとじっくり観賞するんだ」
森田が叱るように言った。
「鉛筆でつついているだけだよ。手で触っていないから、これは触っているとは言えないよ」
助平が言った。
「なるほど。そうかもな」
森田はそう言って助平の行為を大目に見た。
「ふふ。こうやって京子の乳首を刺激して、勃起させるんだ。勃起したら糸でくくっても、外れないかどうか、試してやる」
そう言って、助平は京子の両方の乳首を鉛筆で突いた。
「や、やめてっ」
京子は肩を震わせて言った。しかし、両手を交差されて、悦子と圭子にガッチリとつなぎあわされている以上、身動きすることは出来ない。助平は、それをいいことに、鉛筆の先で、京子の乳首を突いた。心地よい刺激を与えて乳首を勃起させるのが目的だったので、突く、というより、鉛筆の先を、触れるか触れないかの程度で触れ合わせているだけである。京子の乳首はだんだん大きくなっていった。助平は、さらに鉛筆で、京子の豊満な乳房を突いた。鉛筆の先が京子の柔らかい乳房にめり込んだ。
「ああっ」
京子は声を出して胸を揺すった。しかし意地悪な鉛筆は、執拗に京子の乳房についてまわった。京子は、後ろ手に縛られて、鉛筆で乳房を弄ばれるという屈辱に、なす術もなく耐えるしかなかった。それは見ている男達の性欲を激しく刺激した。
「おれも」
「おれも」
と言って、男達は悦子と圭子の前に立って、助平と同じように鉛筆で女達の乳首を突き出した。
「ああー」
悦子と圭子は、恥ずかしさと、屈辱と、もどかしさで、声を出した。三人は屈辱に耐えようと、ギュッと、お互いの手を握り締めた。京子の乳首は勃起している。悦子と圭子の乳首も同様に、勃起し出した。助平は、
「ふふふ」
と笑って、ポケットから絹糸を取り出した。
「な、何をするの」
京子は、声を震わせて言った。
「ふふ。お前の乳首も勃起して大きくなったことだし、絹糸でくくっても、外れないかどうか試してみるのよ」
そう言って、助平は京子の勃起した右の乳首の根元を絹糸で縛った。乳首の根元がくびれて、糸はしっかりと乳首にとりつけることが出来た。右の乳首を縛ると、今度は左の乳首を縛った。
「ふふ。しっかりと、とりつけることが出来たぜ。どれ。引っ張っても、はずれないかな?」
そう言って、助平は、京子の両方の乳首にとりつけた糸をクイと引っ張った。糸は、はずれず、乳首につられて、大きな乳房がせり上がってきた。
「ああー。やめてー」
京子は、乳首に糸を結びつけられて、引っ張られるという、この上ない屈辱に、顔を真っ赤にして叫んだ。助平は、かなりの力で引っ張った。乳房が円錐形になって、糸がピンと張った。
「すげー。完全に糸を乳首に結びつけることが出来るよ。これなら、色々と、悪戯したり、折檻したり出来るな」
助平が言った。
「将来、結婚して、浮気とかしたら、夫にこうやって折檻されるだろうな」
そう言って、助平は、面白そうに、京子の乳首に結びつけた糸を引っ張った。
「ふふ。この糸に重りをつけて体を柱に縛りつけておけば、いい仕置きになるな」
助平は、そんなことを言いながら京子の乳首の糸を引っ張った。隣の悦子の正面にいた男も、悦子の勃起した乳首を絹糸で縛った。糸を引っ張ってみたが、悦子の乳首の糸も外れなかった。圭子の乳首にも糸は結びつけることが出来て、引っ張っても、外れなかった。男達は、エーイと、掛け声をかけてそれぞれ、三人の乳首にとりつけた糸を引っ張った。
「ああー」
女達は、屈辱のため、そろって苦しい声を出した。
「は、恥ずかしい」
「く、口惜しい」
「み、みじめだわ」
女達は、顔を真っ赤にして、口々に屈辱の心境を言った。
「京子。どうだ。今の気持ちは」
森田が聞いた。
「み、みじめだわ。は、恥ずかしいわ」
京子は体をプルプル震わせて言った。
「じゃあ、恥ずかしくないようにしてやろうか」
森田がしたり顔で言った。
「な、何をするの?」
京子が聞いた。
森田は、ふふふ、と笑った。
「恥ずかしい所は三ヶ所だろう。それなら、そこを隠せば恥ずかしくなくなるだろう」
そう言って、森田は、ガムテープを男達に渡した。
「ほら。これを切って、恥ずかしい三ヶ所に貼りつければ、恥ずかしくなくなるだろう」
男達はニヤリと笑った。
「なるほど。二プレスか」
男達はニヤリと笑った。そして、ハサミで、ガムテープを小さく切った。男達は、女達の乳首の糸を外して、代わりに、乳首とアソコに、小さく切ったガムテープを貼った。女の恥ずかしい三ヶ所は確かに隠された。しかし、その姿は、裸より、ずっとエロチックだった。
「ふふ。恥ずかしい所が見えなくなったから、もう恥ずかしくないだろう」
森田が言った。
「は、恥ずかしいわ」
京子は顔を真っ赤にして言った。
「ふふ。ストリップショーの女みたいだな」
一人が言った。男達は、しばし、小さく切られたガムテープを、女の恥ずかしい三ヶ所に貼りつけられている、三人の女を、ストリップショーを見るように、しげしげと眺めた。

「おい。京子。スリーサイズはいくつだよ?」
一人が聞いた。京子の体がピクンと震えた。
「し、知りません」
京子は首を振った。
「知らないわけがないだろう。自分の体だぜ。ブラジャーやスカート買う時、自分のバストやウェストのサイズを測るんだろう」
一人が言った。京子は黙っている。
「あっそうか。成長期だから、どんどん大きくなって変わっていくんだよな」
一人が言った。
「それじゃあ、オレ達が測ってやろうぜ」
森田が言った。彼はメジャーを出して、助平に渡した。
「ほら。スリーサイズを測ってやりな」
言われて助平は、ホクホクした顔つきで、京子の前に立った。
「スリーサイズを正確に測るからガムテープは外すぜ」
助平はニヤリと笑って言った。
「や、やめてー」
京子が大声で言った。だが助平は、容赦せず京子の乳首の二つのガムテープをとった。
「ついでにこれもとるぜ」
そう言って助平は京子のアソコに貼ってあるガムテープもとった。京子は丸裸になった。助平は、京子の胸に巻尺を巻いて、バストを測った。測ると、大きな声で、「バスト××cm」と言って、開いたノートに、その値を書いた。そして、次はウェスト、最後にヒップを測った。京子が終わると、次は、悦子のスリーサイズを測り、最後に、圭子のスリーサイズを測った。さらに男達は、ノギスで、女達の乳首の大きさを測った。
「じゃあ、お前達のもとるぜ」
男達はそう言っての悦子と圭子のアソコに貼ってあるガムテープもとった。女達は丸裸にされて、膝をピッチリ閉じ合わせて、腰を引いてモジモジしている。
「ふふ。アソコもよく調べてみたいな」
一人が言った。
「でも膝をピッチリ閉じてしまっているから、測りにくいぜ」
「どうやったら膝を開かせることが出来るかな?」
「ふふふ。いい方法があるぜ」
助平がニヤリと笑って言った。
「どんな方法だ」
助平は答えず、三人の女のパンティーをもって来た。助平はニヤリと笑いながら、京子の左足にパンティーの片方の穴を通した。そして、京子の隣の左にいる悦子の右足に、もう片方のパンティーの穴を通した。そしてスルスルと引き上げて、膝の上で離した。パンティーは弾力によって縮まろうとする。結果、二人の隣り合った女の膝が引っ張られた。助平は同様に、京子の右足と、京子の右隣にいる圭子の左足にパンティーを通して膝の上まで上げて離した。最後に、悦子の左足と、悦子の左隣にいる圭子の右足にパンティーを通して膝の上まで上げて離した。これで女達は、パンティーによって隣の女の膝と膝を結びつけられた形になった。パンティーの弾力によって、閉じていた女達の足が開かされていった。
「ああー。な、何てことをー」
京子は、真っ赤になって叫んだ。だが両隣にいる女の、膝と膝に通されたパンティーが縮もうとしているため、足が開かされてしまう。
「ふふ。よく見えるぜ」
男達はそう言って、女のアソコに顔を間近に近づけた。女達は真っ赤になった。男達は、鼻先を女のアソコに近づけてクンクンと鼻を鳴らした。
「なんか、かわった匂いがするぜ」
「それが女の匂いだよ。女は風呂に入っても、アソコの中はあまり石鹸できれいに洗わないんだ」
「どうして?」
「女の穴の中は敏感な粘膜で酸性で、石鹸はアルカリ性だから、刺激が強すぎるんだよ」
「ふーん。女って、不潔なんだな。オレなんか、風呂に入ったら、毎回、マラの皮を剥いて、石鹸で、恥垢をきれいに洗ってるぜ」
「しかし、いい眺めだな」
男達は感心したように言った。

男達は、後ろ手に縛られて、パンティーで足をつながれた女達を、しばし、しげしげと眺めた。男達は顔を低くして、下から女の割れ目をじっくりと見上げた。
「すげー。丸見えだよ」
男達は女の羞恥心を煽るように、ことさら驚いたように言った。女達は、体をピクンと震わせて、足を閉じようとした。しかし、隣の女と膝がパンティーでつながっているため、引っ張られて閉じられない。それに、自分が足を閉じようとすると、隣の女の足を開かせることになるので、友情から、それは出来なかった。

男達は、ハアハアと息を荒くしながらビンビンに勃起したマラを扱き出した。
「お、おれ。もう我慢できないよ」
「おれも」
「おれも」
男達はもう我慢の限界だった。
「よし。もう観賞するのはこれくらいでいいだろう。思う存分、触りまくって、好きなことをしな」
森田が言った。

「よし」
男達はまってましたとばかり、女達にとびかかった。男達は、ハアハアと息を荒くしながら、女達の胸を揉んだり、アソコを揉んだりした。
「い、嫌っ」
女達は、身を捩って避けようとしたが、手をお互いに縛られて、パンティーで膝をつながれているため、どうしようもない。手をしっかり握り合って男達の攻撃に耐えた。男達は、嫌がる女達に、
「好きだー」
と言って、強引にキスした。女達は口をギュッと閉じたが男達は、強引に舌を入れて歯や歯茎をペロペロ舐めた。
そしてアソコの穴に中指を入れて、ゆっくり動かし出した。
「ああっ。やめてー」
女達は、嫌がったが、だんだん、クチャクチャと音がし出して、トロリとした白濁液が出始めた。
「も、もう我慢できない」
男達はそう言って、服を脱ぎ出した。上着を脱いだ。そしてズボンを脱ぎ、パンツを脱いだ。男達は丸裸になった。マラは天狗の鼻のように、激しく怒張して、そそり立っていた。男達は、裸で女達に抱きついた。そして、そそり立ったマラを女のアソコに押しつけた。
「ああー」
女達は、男のマラがアソコに触れると、思わず声を出した。男達は、キスしたり、胸を揉んだりしながら、マラを女のアソコに擦りつけた。男達の息はハアハアと荒くなっていった。
「も、もう限界たー」
男達は、そう言って、マラを握りしめて扱き出した。
「ああー。で、出るー」
男達は、ひときわ大きな声で叫んだ。男達はマラの先を女のアソコに向けた。ピュッ、ピュッ。と、勢いよく精液が放出された。精液は女のアソコにくっついた。一人が射精すると、待っていた次の男に代わった。こうして、男達全員は、裸の女のアソコにザーメンを放出した。それぞれ自分の好きな女に。



平成23年3月13日(日)

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秋子 (小説)

2020-07-07 07:52:19 | 小説
秋子

 秋子はマゾである。それは生まれついての性癖だった。それを秋子は夢想の自涜で慰めていた。秋子は、月一回、ある本屋へ出かけていった。そこは裏通りの小さな本屋だった。そこに月一回のSM雑誌の発売日に、秋子はそれを買いに行った。秋子はその小説を読むのが好きだった。秋子はすぐには買わない。しばらく立ち読みしてから買うのである。書店のおやじはもう六十を越しているであろう。禿げた頭に白髪が少しある。チョッキを羽織り、老眼鏡をかけている。老人は秋子が立ち読みしているのをじっと眼鏡の奥から眺めている。万引きに対する警戒心とも違う。いくら老人とはいえ、毎月、秋子が買いに来ることは知っているだろう。かりに忘れたとしても、秋子が手にしているのは月刊のSM小説である。この老人にSM小説を立ち読みしているのを見つめられるのは、秋子にとって被虐的な官能だった。あの老人は何も親しく話しかけてこない。それはきっと秋子を視姦しているに違いない。そもそもSM小説を取り寄せているのもきっと自分のため、とも思われてくる。
ある時、SM小説がなかった。売り切れたのかと思って初めて老人に小声で聞いてみた。
「あ、あのSM秘小説ありますか」
すると老人は棚の下からそっとそれを差し出した。秋子以外の客に買われないように、そっと隠しておいたのだ。それ以来、秋子の官能はますます激しくなった。客の少ない店だったので。秋子はその書店に行く時、超ミニをはいて行ったり。極力、肌の露出したセクシーな服装で行った。時には、薄いブラウスやTシャツに、ノーパンやノーブラで行ったりした。秋子は黙読のスピードが速かった。秋子はSM小説を読みながら、すぐに蓬頭垢面の男にいたぶられる女に感情移入した。読みながら老人の視線にも、それを妄想した。あの老人は何も言わない。しかし無口な男は例外なくムッツリスケベだ。きっと、あの老人は、自分を裸にして縛ることを想像しているに違いない。老人の視線は秋子の起伏に飛んだ肉体を舐めまわすようでもある。視線はいつも胸と尻である。秋子はほとんど確信した。秋子も媚態を示した。本を探す振りをして、腰を曲げ、わざとスカートがめくれるようにしたり、ブラウスのボタンを胸元が見えるまで、はずしたりした。腰を曲げる時、老人の熱い視線を感じる。もう間違いない。老人は秋子を視姦しているのだ。老人の熱い視線を浴びて立ち読みして、レジにそれを出す時、秋子はもうクラクラしている。本は裏にして出す。秋子は五千円出す事に決めていた。老人がおつりの三千六百八十円手渡させるため。老人は無言のうちにおつりを渡すが、受け取る秋子の手はプルプル震えている。老人は紙幣と硬貨を、ゆっくり渡す。秋子はえもいわれぬ淫卑なスキンシップを感じてしまう。家に帰って、ベッドで寝転んで小説を読む。グラビアの写真も実にいやらしい。秋子はそれに感情移入する。丸裸で柱に縛られた美しい女を蓬頭后面の老人が、いやらしく筆でくすぐっている。秋子はそれにすぐに感情移入する。丸裸で縛られている美女が自分で、それを筆でくすぐる老人が書店の老人となる。秋子はさまざまな奇態な姿に縛められ、老人に、いやらしい事をされることを想像した。つい、パンティーの中へ手がいってしまう。秋子は何度も老人に縛られることを想像した。丸裸になって、写真のような奇態なポーズをしてみたりした。秋子の妄想の自涜はどんどん激しくなっていった。

ある時、それは真夏のある日だった。秋子はその書店に行った。超ミニにTシャツで。いつものように立ち読みして、レジに出した時、秋子は官能の悩みの激しさにクラリとよろめいて倒れてしまった。老人は秋子の傍らに行って屈み床に倒れた秋子を抱き起こした。
「大丈夫ですかいの」
「え、ええ」
秋子は顔を赤らめて言った。
「今日は特に暑い日だて。暑い中をまた歩いて、日射病で倒れるとようない。少し、家で休んでいきんしゃい」
「え、ええ」
言われるまま、秋子は家に上がった。老人は麦茶を盆に載せて持ってきた。秋子は遠慮がちに一口飲んだ。老人は秋子をじっと見つめている。老人はいやらしい目つきで秋子のミニスカートの奥の方に視線を向けている。秋子は思わずスカートをそっと押さえた。老人は薄ら笑いしながら。写真集を秋子の前に差し出した。SM写真集だった。老人は一項一項めくってみせた。秋子は、恐ろしさと妄想が現実だったことにおののいた。しかし、それは甘美な酩酊でもあった。
「ふふ。あんた。こういう風にされたいんやろ。わしをスケベな老人にして、妄想にふけっていたんじゃろ。わしに、この写真のように縛られることを想像してたんやろ」
秋子は言葉が出なかった。
「ふふ。わしもあんたの思うとおり、あんたを裸にして縛る想像をして楽しんでおったわ」もう秋子は蜘蛛の巣にかかった蝶だった。老人は麻縄を持ってくるとそれを秋子の前にドサリと落とした。
「さあ。裸になりんしゃい。あんたの夢をかなえてやるけん」
秋子は頬を紅潮させTシャツを脱いだ。ブラジャーをつけていなかったため豊満な乳房が露わになった。スカートも腰を浮かせて脱いだ。パンティーも脱いで丸裸になった。そこの毛はきれいに剃られていた。老人はそれを見て、
「ふふふ」
と笑った。秋子は胸と秘部を覆いながら座り込んだ。秋子は丸裸で見下されることに甘美な陶酔を感じていた。老人は秋子の後ろに回って、胸と秘所を隠している秋子の手を後ろに捩じ上げた。
「あっ」
秋子は反射的に声を漏らした。老人は秋子を後ろ手に縛った。そして、その縄尻を前に回し、乳房の上下に二巻きずつ縛った。乳房がきつい縄の縛めによって縄の間からはじけ出た。
「さあ。立ちんしゃい。腰縄をしてやるけん」
老人に立つように言われて秋子はヨロヨロと立ち上がった。老人は縄を二つに折って秋子のくびれた腰にしっかりとくくって腰縄をつくった。そして、その縄尻を秋子の女の谷間に通し、後ろに回し、しっかりと尻の割れ目に食い込ませ、グイと引き絞って、横に走る腰縄に結びつけた。縄が女の敏感な所に食い込む感覚に秋子は、
「ああー」
と声を洩らした。
「ふふ。縄が食い込んで気持ちいいじゃろ。しかし、この縄は女の秘所を隠す役目もするからの。どんな格好をしても、恥ずかしい所は手で隠さずとも見えぬからの。心置きなく好きなポーズをとりんしゃい。まだ、あんたは羞恥心を捨てきれんでいるからの」
老人は等身大の姿見の鏡を秋子に向けた。秋子は胸縄と縄褌で縛められた自分を見て赤面した。が、まさに自分が夢にまで見た、みじめ極まりない姿になれたことに被虐の快感を感じていた。秋子は力無くクナクナと座り込んだ。が、意地悪な縄褌はきびしく食い込んだままついてまわる。
「さあ。うつ伏せになって、膝を立てて尻を上げんしゃい」
言われるまま、秋子はうつ伏せになって、膝を立てた。秋子は顔を畳につけ尻だけ高々と上げているというみじめ極まりない格好になった。後ろ手に縛められているため、上半身の体重が顔と肩にかかって、顔が押しつぶされる。
「ふふ。乳房が押しつぶされて、綺麗に見えるわ。それに尻も丸見えじゃ。しかし、恥ずかしい所はしっかり縄に隠されて見えんから、安心してもっと股を開きんしゃい」
老人に言われるまま秋子は脚を開いた。体はすべて丸見えでも、食い込み縄のため、恥ずかしい所は隠されると思うと秋子は意地悪な食い込み縄に感謝する思いだった。
(どんな恥ずかしいポーズをしても、恥ずかしい所は見られないんだわ)
そう思うと気持ちが大胆になって、
(さあ。もっと見て。秋子の恥ずかしい姿をうんと見て)
と心の中で叫んで、脚を開いた。老人はしばらく尻を高々と上げた秋子の恥ずかしい姿を見ていた。
「この姿のまま、股の縄を解いて浣腸するのもいいものじゃが、どうするかの」
「こ、こわいわ。許して」
「ふふ。わかった」
その代わり、と言って老人は熊の毛で突き出た尻や恥ずかしい所をスッとなぞった。
「ひいー」
秋子は悲鳴を上げた。
「ふふ。かわいいの。つらさと恥ずかしさには、こうやって耐えるんじゃ」
そう言って老人は秋子の背中で縛められている手を掴むと親指を残りの四指で握らせた。
「ほれ。力を込めて親指をしっかり握ってみんしゃれ。物を握る力が、つらさを逃がし、隠しているという気持ちが恥ずかしさを弱めてくれる」
言われて秋子は親指を残りの四指でギュッと握った。老人の言ったとおりだった。秋子はこの後、ずっと親指を握り続けようと思った。しばしたった。
「もう疲れたじゃろ。その苦しい姿勢は、もうやめて、正座しんしゃい」
言われて秋子は手の使えない苦しい姿勢から体を捩じらせて上半身を起こし腿をピッチリ閉じて正座した。背後には大黒柱がある。正面の鏡には裸の体を縄で縛められている、みじめな自分の姿が写っている。乳房が縄でいじめられているようで恥ずかしい。谷間に食い込む縄も少しの体の動きによって、意地悪く敏感なところをこすってくる。
「ふふ。これは反省のポーズじゃよ。さっきのは屈辱のポーズじゃ。今までわしを挑発した自分をしっかり反省しんしゃい」
そう言って老人は垂れている乳房を毛筆でスッとなぞった。
「ああん」
動くと股縄が敏感な所をズイと刺激する。
「ふふ。これで髪を縛って、吊るす、という責めもある。やってみるかの」
「いえ。許して下さい」
秋子は顔を紅潮させ首を振った。
「そうか。じゃあ、このまま柱に背をもたれんしゃい。あんたも疲れたじゃろ」
秋子は背後の大黒柱に寄りかかった。
「ふふ。柱を背に立たせて縛るのが縛りの基本なのじゃがの。まあ、今日はよかろう。これからは、この柱はお前さんの柔肌のぬくもりを思うさま吸い取る責め柱じゃ。これからが楽しみじゃの」
「さあ、そう脚を閉じてばかりおらんで、大きく開いてみんしゃれ」
言われて秋子は脚を大きくM字に開いた。鏡に、恥ずかしい姿が写る。何もかも全てが丸見えだが、股縄が割れ目にしっかり食い込んで、割れ目の奥は見えない。老人は女の部分のあたりをを筆でスッと刷いた。
「ああー」
みじめさと恥ずかしさのため、恥ずかしい肉が膨らんでいき、あたかも肉が縄をしっかり挟んでいるかのごとくになった。
「ふふ。被虐の快感に我を忘れて酔うがいい」
老人はしばし大黒柱を背に大きく足をM字に開いている秋子を薄ら笑いで眺めていた。
「こんどは片足吊りをしてみるかな」
「いいわ。やって」
ほとんど叫ぶように秋子は言った。老人は秋子を大黒柱からはずして畳の上に仰向けに寝かせた。
老人は秋子の右足首を縄で縛った。そして天井の梁にかけて、ゆっくりと引き上げていった。片足が引き上げられていき、ついに一直線にまでなった。秋子は仰向けに畳の上に寝て、片足を高々と吊られているというみじめ極まりない格好になった。老人は、
「ふふふ」
と笑った。
「ふふ。これは片足吊りのポーズじゃ。簡単な縛りじゃが、これでは大の男でも抜けられはせぬ。その上、恥ずかしい所は縄がなければ丸見えじゃ。縄に縛られている事に感謝しんしゃれ」
それは確かに抜けられぬ、この上ない恥ずかしいポーズだった。
「ふふ。乳房も尻も秘所も縄が無ければ丸見えじゃ。どうじゃな。今の気持ちは」
「ああっ。いいわっ。見て。私の恥ずかしい所を。見て。私の体を隅々まで」
秋子は被虐の喜悦の悲鳴を上げた。
「ふふ。縄があるから恥ずかしい所は見えんよ。どうじゃね。股の縄の感触は」
「いいわっ。このいやらしい感じ、最高だわ」
「ふふ。このまま肉に洗濯バサミをつけたり、蝋燭を垂らしたり、顔や乳房を足で踏んだりする事も出来るが、どうじゃな」
「い、いいわ。何をして下さってもいいわ。メチャクチャにして。私を生きたまま恥の地獄に落として」
老人は、ふふ、と余裕の笑いをした。
「ふふ。今日は何もせぬがよかろう。このまま被虐の法悦境にしばし何もかも忘れて浸るがよい」
しばしの時間がたった。
「ふふ。この屈辱縄をとったら、全てが丸見えになるが、どうするかの」
「とって。お願い。そして私の恥ずかしい所を見て。私のすべてを見て」
秋子は叫んだ。秋子のアソコはじっとりと濡れ、縄もその粘液が浸み込んでいる。
「ふふ。今日はすべて見るのはやめておこう。そのかわり、縄は解こう」
そう言って老人は秋子のパンティーをそっと、秘所の上に載せた。そして屈辱縄を解いた。
「ふふ。どうじゃな。今の気持ちは」
「ああっ。いいわっ」
「そうじゃろ。パンティーは、ただ載っているだけで、手で除ければ恥ずかしい所は丸見えじゃ。いつ見られるか、わからない恐怖感が被虐心を煽るんじゃよ」
「そ、そうよ。その通りよ。この恐怖感が最高」
「よし。足も疲れてきたことじゃろう。今日はこのくらいにしておこう」
そう言って老人は梁の縄を少しずつ下ろしてゆき、足が床につくと足首の縄を解いた。そして後ろ手の縛めも解いた。秋子はしばし、我を忘れて裸のまま横向きに瞑目していた。ツクツクホウシが鳴き出した。老人に揺り動かされて秋子は起きた。老人は秋子に下着と服を渡した。
「シャワーを浴びてきんしゃれ。わしは覗きはせんから安心しんしゃれ」
「ありがとう」
秋子は服を胸に抱えて浴室に行きシャワーを浴びた。そして服を着て戻ってきた。
「ふふ。どうじゃったな。今日は」
「最高に気持ちよかったわ」
「ならばまた来るかの」
「はい」
「よし。じゃあ、今度はどんな縛りをされて、何をされたいか、考えてくるがよかろう。縛りも無数。責めも無数じゃ。蟹縛り、胡坐縛り、狸縛り、海老縛り、吊るし縛り、机上縛り、椅子縛り、大股開き。責めも、棒つつき、蝋燭、剃毛、擽り、顔踏み、浣腸、虫責め、錘吊るし、梯子責め・・・と無数じゃ。今度は仲間を呼んできて多数の男に取り囲まれて、見られ、責められるというのも、一人に増していいものじゃ。ただし勇気がいるがの。無理じいはせん。わしはあんたの素性も住所も聞かん。また本だけ買いに来るのもよかろう」
「いえ、必ず来ます」
「まあ、無理せんでもええ。あんたはここの住所と電話番号は知っておるのじゃから、あらかじめ手紙なりと、してほしい責めと日にちを知らせてくれれば、抜かりなく用意しておこう」
「どうしてそんなに親切にしてくれるんですか」
「わしはあんたが来るかどうか、分からないのも、楽しみじゃからよ。世の中、すべて分かってしまっては面白うはない。見捨てられるもよし。この道では嫉妬も不安も喜びなのじゃ。ただ、あんたのため、本はちゃんととっておこう」
「有難う。私も一度だけ楽しませといて、捨てるなんてのも面白いわね」
「ふふ。それがあるからあんたを少しでも気を損ねることは出来ないのじゃ」
秋子は微笑して本を小脇に抱え、帰っていった。
「複数の男の人の前で晒し者になりたい。日にちは・・・。秋子」
という手紙が老人の所に来たのは二日後の事であった。

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M嬢の物語 (小説)(1)

2020-07-07 07:43:12 | 小説
M嬢の物語
(1)
その年、私は大学を卒業して、ある都内の会社に入社しました。元来口ベタである上にドモリがあり、特に女の人の前ではどもってしまうのです。おなじ課で、私より一年先輩の優子さんは何故だか私に親切にしてくれるのです。分からないことを教えてくれたり。昼、一人で自分の席で弁当を食べていると、いきなり私の隣の席について、
「はい。これ。どうぞ。」
と言って、お茶を入れてもって来たりするのです。私があせって、
「ど、どうもありがとうございます。」
というと、彼女は
「純さんてまじめでえらいわね。」
と言って、クスッと微笑んだりします。私には、どうして彼女が私に好意をもってくれるのか、わかりません。きっと私が無口で内気だからでしょう。ある時、彼女が私のところにやってきて、
「今晩、いっしょにお食事しませんか。」
と言いました。レストランで私がうつむいて食べているのを彼女はニッコリ笑ってみながら、食べていました。私は内心、明るくてきれいな彼女に好感をもっていたのですが、彼女は私をどう思っているのか分らず、ともかく食事に誘ってくれたりするのですから、私に好意をもってくれていることは間違いなさそうと思うのですが、女性が男に本気で恋したら、もっとそれは、切なさ、や、恥じらいから遠慮した言い方になる、のでは。そうでないのは、友達のような感覚、彼氏ができるまでの一時的なつきあい、私の内気さを、からかい半分のような気持ちなのかもしれません。本命の彼氏ができるまでのタイクツしのぎ、なのかもしれません。私は自分自信を顧みても、どこにも自分が女性に好意をもたれる理由を見つけられません。女の心をとろけさせるような美形でもないし、性格も臆病でクライ。彼女の口ぶり、からも私に対する「恋愛」の感情は感じられません。もしかすると、彼女は私に親しくすることで、私の、彼女に対する「思慕」を募らせて、私が真剣な「告白」をしたとき、みなで笑いものにするコンタンなのかもしれません。そんなことになったら、私の弱い神経ではとても耐えられない。それで私は、彼女に告白できぬまま、彼女が持ち出す話題にあたりさわりのない相槌を打つだけでした。でも、少なくとも私にも一つ、女の好意を引く点があるのかもしれません。それは私があまりに内気なため、対等な男女関係がもてないため、相手の女性に、この男なら安全だ、と思われる点、ではないかと思います。この男ならテキトーに付き合って、ふってもしつこく付き合いを強要する、ことなどなさそうだ、とみえる点は私の唯一の長所かもしれません。実際私は引っ込み思案で、恋したことは何度もありますが、すべて、心の中での片思いでした。そんな悶々とした気持ちの中での、ある日のこと、彼女に誘われて、彼女の車で、レストランへ向かっている時でした。
「あっ。そうそう。レストランもいいけど、今日は私の手料理はどう。」
と言いました。私が小さな声で、「はい。」と言うと、彼女は元気よく、ハンドルを自宅のマンションの方へと向けました。
   ☆   ☆   ☆
彼女の部屋に入り、食卓につくと、私はただただ緊張のあまり、赤面して、膝をカタカタさせていました。女性が自分の部屋へ男性を招く、そして男がそれを諒解する、しかも、付き合っている間柄で。これはもう、双方合意の諒解です。普通の男ならいきなり女をおしたおす場面でしょう。しかし、私にはそういうワイルドな男性らしさが全くない。もしかすると、「レイプされた」といって訴えないかわりに慰謝料を要求する気なのかもしれないと思っていました。彼女がつくってくれたピザを食べ終わると、私はまた、もとのように、うつむいていました。ちょっとここまでいくと被害妄想的だと自分でも思っています。しかし、ともかく私が彼女に諒解を求めて、彼女が拒絶したら、これまた私は、その恥ずかしさ、に、耐える勇気もありません。そんな私の不安を見透かしているかのように彼女は、
「大丈夫よ。純さん。考えすぎよ。私がそんな性悪な女にみえる?」
と言ってクスクス笑います。彼女はさらに続けて言います。
「もう、かくしごとはやめにして本心を言うわ。確かに私は純さんの、しつこくなさそうな性格に目をつけて、いつでも別れられる、一時の付き合い友達にできると思ったことは事実なの。普通の男の人にこんなことをヌケヌケと言ったら、おこる人も多いわね。ごめんなさい。でも、もう一つ、別の理由があるの。」
と言った後、彼女から朗らかな様子が消え、まるで今までの私の態度のように、
「あ、あの…。」
と口唇をピクピクと恐怖に震わせながら、切り出そうとしますが、なかなか切り出せず、それが彼女をますます赤面させていきます。しかしとうとう彼女は思い切りをつけて、「ある別の理由」を語り出しました。
「わ、私、実はマゾなんです。」
と言って彼女は赤面して続けました。
「これはもう物こごろつく頃からあって、生まれつきのものなんです。子供の頃から私の性的な夢想は、いつも、裸にされて、縛られて、みじめの極地にされることでした。中学になってはじめてSMという言葉を知って自分はマゾなんだな、と思い知らされました。古本屋で勇気を出してSM雑誌を買って家でそっと項をめくった時には自分だけの夢想と思っていたものが、現実に行われている、と知ってとてもショックを受けました。引出しの中に隠しておいたのですが、学校から帰ってそれをみる度に、だんだん羨望が募っていきました。私も彼女たちと同じようにされたい、と。でも私は中学生で、世間のことはまだ全然分りませんでしたし、そんな写真が全国にわたって、万一知人に知られたら、とてもとても私には耐えられるものではありません。本当に発狂してしまうかもしれません。二十歳を過ぎてもプライベートなSMプレイというのも、したい、と思いながらも出来ませんでした。というのは、たとえ遊びであっても、いじめられることは、こわかったんです。演技であっても、あらっぽく女性をいじめて快感を感じられる人っていうのは、いくらプレーの中だけ、といっても、そういう心があるからでしょう。ワガママで無神経な男にいじめられっぱなしっていうの、いやなんです。人をいじめて満足してるような無神経な男の人はイヤなんです。でも私のマゾの度合いは、とても強くて、激しいくらい強くて、うんとうんと惨い、いじめをされたくてしかたがないんです。それで…。」
といって彼女は頬を赤らめて、
「失礼で、申し訳ないんですけど、純さんに目をつけたんです。純さんならやさしそうだし。人をいじめることに快感を感じるような性格でもなさそうだし。私、純さんにうんと酷くいじめられたいんです。どうでしょうか。私をいじめてくださらない。こんな下心をもって近づいてきた悪い女をこらしめると思って。」
と言いました。私は正直なところ、今までわからずに悩まされてきた彼女の心を知れてほっとしました。また私が、彼女の異常な性欲をマンゾクさせるための道具のような役割、というのが、私に対する彼女の思い、というようなことが分っても、別に腹が立つどころか、むしろ無上にうれしく思いました。何はともあれ、彼女は私を選んでくれたのですから。しかもそれは私の「人格」に対してであり、私にとっては、片思いの女性の傍にいられる、ということだけで無上の幸福なのですから。彼女は私に、
「純さん。いい? 私をいじめてくれる? それともイヤ? そんな変なことするのイヤ?」
と聞きます。私自身はSMの心理というものはよく分らず、心の内に、あこがれている人をみると、ただただ矮小化してしまい、ムチ打ったり、虐めたりすることなど想像ですら恥ずかしくて出来ません。想像の絵画の中に、私という人物を入れることなど、臆病な私にはとても出来ません。ビキニ姿を想像するだけで、頭がボーとなり、下腹部が膨隆してきます。なのでSなどというおそろしい心はとてももちあわせていないことは、間違いありません。むしろ、恋する人に仕えることや、その人の持ち物を想像すると、いいようなく興奮するのですから、M的な心理はわかります。しかし、優子さんのような激しい自虐的な心理は理解できません。恋した時に、誰にでもおこるような軽いMの心理は、分ります。が、自己破壊的な、はげしいMの心理というものは分りません。しかし、ともかく彼女と付き合ってもらえるのであれば、何でもありません。私は小声で「は、はい。」と言って小さくうなづきました。すると彼女は、
「わー。うれしー。夢実現!!」
といって、跳び上がってよろこびました。
「もうこれで一人で悩まなくてすむー!!」
といって目をパチクリさせて、神仏に感謝するかのごとく手を組んだりするようなよろこび具合です。彼女は、
「ねえ。みてみて。」
といって私の手を引いて、隣の部屋に私を連れて行きました。そこには何やら拷問用の木馬らしきものがあります。
「これ。私がつくったの。休日、裸になって、手を後ろで組んで、木馬に跨って、悪漢につかまって責められる想像にふけってたの。でも一人での想像じゃ、やっぱりむなしくって。それに一人じゃ自分で自分を縛ることも出来ないし…。でも、これからは純さんに本当に縛られて、想像じゃない、本当の木馬責めにかけてもらえるのね。」
と彼女はうれしそうな口調で言います。私は思わず、彼女が裸になって一人、木馬にのっている姿を想像して勃起しました。また、今まで激しい性欲を一人むなしく自慰していた彼女が何ともかわいそうにも思われました。彼女は、それ以外にもくすぐり責め用の毛筆、麻縄、鼻輪、などの小道具を並べて見せて、自分で毛筆で脇をくすぐってみたり、鼻輪をつけて、紐でひっぱってみたりして、あらん限りの方法で自分をみじめにしていたことを話しました。
「私をいじめてくれる人がほしい。でもこわい。本当にやさしい人で、思いきり私をいじめてくれる人っていないかしら、ってずっと待ち焦がれていたの。」
「それで、純さんをはじめてみた時、ついドキンとしちゃったの。この人には本当のやさしさがある。この人になら身を任せられるって。でも、もしかすると私の変な願望を話したら、気味悪がってしまうんじゃないかって、不安もあったの。私、今日ほど幸せな日、生まれてはじめて!!」
「純さんにいじめ抜かれることを想像すると、もうワクワクしちゃってるの。」
彼女は一方的にしゃべった後、
「ねえ。純さん。こんな私を知って嫌いになった? 嫌いになったら、今からでもあきらめるわ。私、最初に、私をいじめてくださらないって頼んだ時、純さんが嫌そうな顔でなく、肯いてくれたことだけで十分過ぎるくらいうれしいの。もし、こんな変なこと、嫌だったら、今まで通りの普通のお付き合いでもいいわ。これからは純さんにいじめられることを想像して出来るから、ずっとマンゾクできるわ。」
「ねえ。純さん。こんな私、嫌いになった? 遠慮なさらなくていいのよ。」
私は答えました。
「とんでもありません。私をそこまで信頼して下さっていたなんて、私の方こそ無上の幸せです。でも私は気が小さいから、優子さんをいじめることなんて出来るだろうかって心配してます。」
というと彼女は、
「うれしー。ありがとう。本当にありがとう。」
と言ってギュッと私の手を握りしめます。
「これから私、純さんのドレイです。うんといじめぬいて下さい。泣き叫んでゆるしを乞うてもかまわずいじめ抜いて下さい。」
「そ、そんなこと言われても、憧れの優子さんに、はたしてそんなことができるかどうか。」
と私がためらいのコトバを言うと、
「いいの。私の命はもう純さんのものです。」
と言って、
「責め、の本もありますから参考にして下さい。純さんも気に入ってくれる責め方もあると思います。今度お会いする時には、竹や乗馬ムチ、とか、滑車、とか、もっと、責め、の道具をそろえておきます。」
彼女は子供のようにウキウキしています。彼女は、責め、の相手を見つけて有頂天のようでしたが、何を私がしてもいい、というなら、いじめないで、マッサージしたり、優しく髪を撫でたりするというのでもいいんだよな、とも思っていました。玄関で、
「今日は本当にどうもありがとうございました。」
と、先に言ったのは私の方です。玄関に向かう途中、先手をとろうと心の中で準備していたからです。
   ☆   ☆   ☆
その日から、私の心は上がりきっていました。
翌週の昼休み、私は始めて自分の方から声をかけて彼女を社内の喫茶店に誘いました。私がヘドモドして、
「この前はありがとうございました。」
と微笑みかけると、彼女は、
「いやです。私、気が変わったんです。もうあなたとの付き合いはおしまいにして下さい。」
と、ピシャリといって、レジをもって立ち上がると、私をのこしたまま、立ち去って行きました。私はガクゼンとしました。夢が一夜にして崩れ去ったような。しかし、ことが、ことですし、彼女のためらいの強い性格から、嫌気がさしてしまったことも十分わかり得ることです。気が変わると、最高の快感が最悪の嫌悪感に変わってしまうことは十分察しがつきます。その夜、勤務が終わると私はトボトボと家路へ向かいました。すると、後ろから車が小さな軋り音を立てて止まりました。彼女の白のカリーナでした。彼女はドアを開けると、「乗って。」と言います。その口調は昼間とは違う、きわめて明るいものでした。私が入ると彼女は人が変わったような陽気な口調で語り出しました。
「へへ。純さん。ゴメンなさい。昼の時のこと、全くのウソ、お芝居なの。あの日から気が変わったことなんか一度もないわ。でも、あんまりうれしすぎて。会社でも親しくするのって月並みすぎて、これから会社では、どういう顔で接しようかなって思って。会社でも親しくする、と、緊張がなくなっちゃうでしょ。だから会社ではあくまでビジネスとしての付き合いとして、二人きりの時は豹変した関係、というようなジキル博士とハイド氏のような、二面性にしたほうが面白い、と思ったの。いきなりおどかしちゃって御免なさい。こんな悪い女、お仕置きしようって気持ち、うんと起こして。」
私は天国に上り詰めたり、地獄に落とされたり、何か彼女に翻弄されているような気持ちになり、今、言っていることも彼女の本心かな、と思いました。もしかすると本当はイヤ気がさしたことがあったのかもしれないし、少し積極的になった私をピシャリと拒否して、私の出方を見ようという考えがあったのかもしれない、とも思いました。立場の弱い女性にはそれは当然のことのようにも思います。黙っている私をみて、それを察したのか、彼女は、
「へへ。純さん。ごめんなさい。ウソは言いません。いきなり純さんをおどかして、その反応をみてみたいという気持ちはありました。でも純さんがどうでるかは100%の確信で予想できていました。それを実感してみたかっただけなんです。不安感から、試してみたい、という気持ちはありませんでした。それと、純さんがしょげてさびしそうに帰る姿をみたくって。」
「いいです。優子さんがまた付き合って下さると言って下さっただけで十分幸せです。イヤになったらいつでもすてて下さい。」
「ごめんなさい。純さんて本当に控えめな方なんですね。今度の土曜、きっと来てくださいね。楽しみに待っています。」
と言いました。私が車から降りると彼女は勢いよく車を走らせました。
   ☆   ☆   ☆
 土曜になり、私は約束通り彼女のマンションへ行きました。どうなるものかとそれまで私は内心ヒヤヒヤしっぱなしでした。彼女がつくってくれた食事を食べながら彼女は言います。
「ふふ。こうして普通に向き合って会話しているのに、これから私だけ裸にされてみじめにされるのね。ゾクゾクしちゃうわ。」
彼女は食事がすむと、
「ちょっと待ってて。」
と言って隣室へ行きました。戻ってきた彼女をみて、私は真っ赤になりました。彼女は露出度の高いセクシーなハイレグの下着姿で来たからです。海で女が男を挑発するような。私は海に一人行くことがありましたが、何度、彼女達の姿に悩まされたことかしれません。
「さあ。純さん。私を吊るして。そしてムチ打って。」
と言って、彼女は天井につけられた滑車の下に立ち、立ち縛りにされて、鞭打たれることを要求します。しかし、私にはとてもそんなことをする勇気はもてません。彼女のビキニ姿をみているだけでビンビンに勃起して、それだけでもう十分マンゾクでした。私が黙っていると、
「私に恥をかかさないで。おねがい。」
と、ひれ伏すような口調で言います。しかし私がためらって決断できないでいると、彼女は強い、皮肉っぽい口調で、
「そう。やっぱりダメなのね。こんな変なこと。じゃあ、もうお付き合いも終わりですね。」
と言います。彼女にふられてしまうのでは大変なので、
「わ、わかりました。いたします。」
と私はあわてて言いました。
「ふふ。」
と彼女は笑いました。
「ふふ。きりふだね。」
と言います。確かにそのセリフは彼女にとって決定的に有利な、そして私にとって決定的に不利な「切り札」のセリフです。
「純さん。座って。はらばいになって。」
と言います。私は彼女に命じられることは、むしろうれしいので、「はい」と言って、どうするのかギモンに思っていると、
「手をだして。」
と言います。どうするのかな、と思っていると彼女は玄関からハイヒールをもって来て履き、いきなり私の手の甲を、ヒールで踏みつけてきたのです。しかも体重を全部のせて。私は痛み、に、こらえきれず、
「ああー。」
と悲鳴を上げました。
「私をいじめてくれないバツよ。」
と言います。これは女王様とM男の図です。しかし、無上にしたっている彼女にされているのですから。苦痛の中に私は快感さえ感じていました。Mの快感とはこういうものなのか、と思いました。しかし、彼女はMを強く訴えたのに、こういうサディスティックなこともためらうことなく楽しんでいる様子が感じられ、Sの性格もあわせもっているのかもしれない。と思いました。もしかすると彼女はMなのではなくSで、私をいたぶりたい、というのが本当の彼女の願望で、Mを装って私に近づいてきたのかもしれない、とも思いました。すると彼女がみせた木馬や、責めの道具は、すべて私に向けられることになるのかもしれない。彼女が訴えた激しい責めがすべて実は私に向けられることになるのかもしれない。しかし、私はそれでも一向にかまわない、という心境になっていました。今の彼女のヒールの本気の痛みを受けても快感さえ起こったのですから。彼女は私をだましたのだ。でもかまわない。しかし、私が彼女の責めにどこまで耐えられるか、耐えられなくなったら、ひたすらひれ伏して許しを乞おう。と思っていると、彼女は予想に反し、
「ゴメンなさい。純さん。いきなりひどいことをしちゃって。」
と言ってヒールをおろしました。
「私、純さんをいじめたい、なんて思っていません。でもやさしい純さんのことだから、私を本気でいじめてって言ってもきっとすくんでしまうと思ったの。だからこうして純さんをシゲキとして少しいじめて、私を本気でいじめる口実と感情を起こさせたい、と思ったの。私の本性はMです。安心して。」
「いえ。いいです。今、踏まれて気づいたんです。私がいじめられる方があってるって。本気で踏まれて、快感が起こったのですから。」
「そういう純さんだから安心して身を任せられるんです。今のいたずらを本気にしないでね。」
「でも、切り札のセリフは本当かもしれないわ。」
と言って彼女は、
「ふふふ。」
と笑いました。私は何か少し彼女に対する躊躇の気持ちに、踏ん切りがついたような思いでした。いきなり踏みつけることで彼女に対する私の煮え切らない気持ちを捨てさせようとした彼女の作戦通りなのです。私も少し彼女に笑顔をつくって話せるような気持ちになってきました。
「では、優子さんをいじめたらその後、仕返しに今のように私もいじめ返してください。それならば何とかできる様な気がしてきました。」
と言いました。
彼女は座って立て膝になり、手で前を覆いながら、自らパンティーを抜きとってしまいました。そして同様にブラジャーもはずし、覆うもの何一つない丸裸になりました。彼女は両手を後ろにまわすと、
「さあ。純さん。縛って。」
と言って背中で手首を重ね合わせます。私は彼女に言われるまま、彼女の手首を縛り、縄尻をとりました。彼女は覆うもの一枚ない丸裸という格好で手を後ろで縛られたまま、立膝で何とか下を見られないように立て膝で脚を寄り合わせています。女は男と違って、裸で手を縛られても、脚をピッタリ閉じて、重ね合わすことで最も恥ずかしい部分をかろうじて隠すことができます。しかし、お尻までは隠せません。覆うもの何一つない丸裸という屈辱的な姿勢になっても、それでも最恥の部分は死守しようと力んでピッタリと脚を寄り合わせている姿。それはなんとも言いようなく艶かしく、私は頭に血が上り、モヤモヤした気分になってきました。
「おねがい。みないで。」
と彼女は言ったりします。彼女自身の、彼女の想像の性欲のイメージの自分を満足させるための哀願のコトバだと思いますが、私をモヤモヤした気分にさせるため、もあるかもしれません。実際私はモヤモヤしてしまっているのです。私は子供の頃から、単なる女のヌード写真をみても勃起したことはありません。むしろきわどい水着姿に興奮します。それと、最も興奮させられるイメージというのは、女性が裸にされて縛られて、必死で男の淫靡な視腺から身を守ろうと、むなしい、あがき、をしている図でした。私の性向として、女性をムチ打ったり、責めたりすることには、とてもこわくて想像でも出来ませんでした。恥ずかしがって困っている女性の姿が最も私をシゲキしました。テレビの時代物でも、女性が縛られて、悪役に縄尻をとられて歩かされている場面を見ると何とも下半身がムズムズしてきてしまうのです。私が悪代官になって、女性を裸にしたい、という欲求もありましたが、それ以上に、縄尻をとられて、おびえている女性の姿態と、困惑した表情に無上のエロティックな美しさを感じてしまうのです。
彼女はハードな責めを願望しましたが、そういうソフトなMの願望もあるに違いありません。
「純さん。さあ。私をどうか立たせて、部屋の中を引き回して下さい。」
と言って彼女はゆっくりと立ちあがりました。1mくらいの感覚で縄尻をとると、彼女は引き回されているかのように、シズシズとゆっくり歩き出しました。背中の真中で華奢な手が縛められ、その下ではムッチリした豊満な尻が歩くたびに左右にプルプルとゆれますが、その尻を見られたくない心理もあるためでしょう、ピッチリと尻を閉じあわそうとして力んでいるため左右の肉が、押し合わされて、谷間の割れ目がよけい、くっきりと強調されて見えます。彼女は、
「あん。」
と言って、わざとか本当か、つまずいて、そのまますくんでしまいます。そのときピンと縄尻の手応えが伝わり、何か私は彼女の演技のうまさに引き込まれ、彼女を引き回す悪代官の嗜虐的な快感のようなものが徐々に生まれてきました。
私は自分の官能の欲求が、困惑している女性が放つ美、に、懊悩する、受身から、行為者の能動的なものへと少し変わっているのに気づきました。私の臆病な性格に、加虐心を起こさせようとの彼女の意図に見事に私はかかってしまいました。彼女はうずくまったまま、
「あん。ゆるして。」
と言って泣きそうな、おびえた顔をこちらに向けます。立ち往生、ならぬ、座ったままでいるわけにもいかず、私は、
「さあ。立って。」
と言って、彼女の縄尻をグイと引きました。彼女の巧みな演技で刺激されていなければ、「立って。」という命令的なコトバは言えなかったでしょう。「立って下さい。」とも言えず、彼女が自分の意志で立つまで座りこんでしまったでしょう。こうして私はだんだん彼女の演技に引き込まれていくようになりました。私に命じられて、彼女は、
「はい。」
と言って、ソロソロと立ちあがりました。部屋を一回りして、はじめの場所に戻ってくると、彼女は再び座りこんで脚を寄り合わせ、ピッチリ閉じて、体を震わせて、裸の縛めの屈辱に耐える姿をつくっています。彼女の媚態は私にとって強力な強精剤となってしまい、私は彼女に飛びついて、むしゃぶりつきたいくらい、私の一部は、はちきれんばかりに怒張し、みなぎっていました。彼女の傍らには、さっき彼女が自ら脱いだセクシーなハイレグの下着があります。私の本能を押さえる理性は限界を超していました。私はそのことを表明するようにことさら声を大に、
「もう。がまんできない。」
と言って彼女のパンティーをとると餓えた野獣が肉をあさるように彼女の、特に女の部分が当たるところに鼻を押し当てて、一心にむさぼり嗅ぎました。彼女は、
「いや。」
と言って顔を赤らめて、首を振ります。つい、「いや。」というコトバが彼女の口から出たので、私は少し躊躇しそうになると、彼女は、
「いいのよ。本気にしないで。何をしてもいいのよ。また、この部屋にある物は何でも、自由に使って下さいね。」
と言います。私は安心すると同時に、再び、押さえられない興奮に襲われ出しました。私は再び彼女のパンティーに鼻を当てました。彼女は、
「ねえ。純さん。私、少しおなか空いてしまって何か食べたいの。でも手が使えないから自分ではなにも出来ないわ。何か食べさせて下さらない。」
と言うので私は食卓にあったコーンポタージュスープをレンジで温めて、もって来ました。彼女の傍らに座ると一瞬、食事のために彼女の縛めを解こうかという気が起こりましたが、それを彼女は察したらしく、
「うん。縛られたままじゃ飲めないわ。食べさせて下さらない。」
と鼻にかかったあまい声で、ねだるように言います。私がスープをスプーンですくって、彼女の口元までもっていくと彼女は口を大きく開けます。私はこぼれないように注意して口の中にスープをそそぎこみました。ゴクリと飲みこむのをみると何とも彼女が生きた人形のように思われてきて、愉快な気分になります。彼女は、
「もっと。」
とねだるので、
「はい。口を大きく開けてアーンして。」
と言ってスープを飲ませました。
「ねえ。吊るして下さらない。」
と彼女が言います。もう私は彼女の要求に躊躇する心境はなくなりました。彼女は両手首を頭の上で縛ってほしい、と言うので、いったん後ろ手の縄を解き、頭の上で両手首をはずれないようしっかり縛りました。そして彼女に言われて、洗面所からヤカンを持ってきて、結び目に水をかけました。水を含んだ縄は収縮して固くなり、自力ではまずはずすことが出来ない状態となりました。天井を見ると梁に滑車がとりつけられてあります。
「あれに縄のあまりを通して、つま先立ちにして下さい。」
と言います。私が滑車に縄のあまりを通して、引き上げていくと、否応なく、だんだん彼女は立たされていきます。両腕がピンと張るようになって腋下が丸見えになり、形のいい胸があらわになります。もともと胸の隠しはありませんでしたが、後ろ手で縛められても女性にとっては胸も恥部の一つですから、前かがみになって、肩で覆うようにします。見えてもあらわ、からは守れる。精神的には隠している、という心理が起こります。しかし、吊るすと背はピンと張らされ、胸は隠しようなく、全貌があらわになってしまいます。尻も前の最も恥ずかしい所も同じです。つま先立ちの立ち縛り責め、は、苦痛と同時に、いや、それ以上に女にとって耐えがたい羞恥責めでもあります。彼女は、
「ああ。おねがい。みないで。」
と言って腿を寄り合わせようとします。全裸で立ち晒しになっても、最後まで最も恥ずかしい所は隠そうとする女の抵抗の姿はなんとも艶めかしく、いじらしくみえます。隠す覆いが全くなくなっても脚の寄り合わせによって、かろうじてギリギリ最後の秘所だけは隠せるところに女の体の構造の苦しさ、つらさ、が、あります。
「ああ。純さん。恥ずかしくて、みじめだわ。でもこのみじめさ、がたまらないの。冷蔵庫に、飲み物やおつまみがありますから、どうか、みじめな私をとっくりと笑って下さい。」
彼女に言われるまま、私は冷蔵庫へ行きました。酒は飲めないのでジュースと、つまみ、をもって来ました。彼女は前面を避けようと、側面に向けようとしたりしますが、側面では、ヒップにつづく美しい下肢の姿がまちうけていて、それを見られるのも、これまた恥ずかしく、結局、特定のポーズを固定してしまうことは全裸を見られることに対する抵抗のあきらめ、であり、見られたくないという気持ちがある以上絶えず一定のポーズから逃げるように、体をモジつかせなくてはなりません。その姿は一層かえって逆に女性を艶めかしい、苦しい、恥じらいのショーにしてしまいます。彼女はとうとう脚の疲れに耐えきれなくなって、
「ああ。純さん。おねがい。」
と哀願的な口調で言いました。
「何でしょうか。」
と私が聞くと、彼女は顔を真っ赤にして、
「ああ。純さん。どうか何か、身につけるものを。贅沢はもうしません。どうかお慈悲を。箪笥の中にバタフライがありますから、せめてそれを…つけることをお許し下さい。」 
と身をくねらせて言います。
「はい。」
と言って私は箪笥の中を探すと、女の最低限の所を隠すだけのハート形の小さなピンクのバタフライがありました。その覆いには腰に取り付けておくために三方に糸がついているだけでした。これではお尻も丸見えで、本当に女の最低限だけを隠すことしか出来ない覆いです。私がそれを彼女に取り付けると、彼女は、
「ありがとうございます。お慈悲を下さって。」
と言って、
「さらに要求するあつかましさをお許し下さいましょうか。」
と言います。
「何でしょうか。」
と聞くと、彼女は真っ赤にした顔をそむけ、
「ど、どうか。胸にも。箪笥に、小さいビキニのブラジャーがありますので。どうか、それもお慈悲で。」
と言います。引出しを開けると、確かにそれらしきものがありました。しかしそれはブラジャーというにはあまりにも、胸を隠す部分が小さく、ほんの乳首だけを隠すような、胸のバタフライとでもいうような物でした。私はそれも彼女に取り付けました。彼女は上下の最低限を隠せた安心感から、ほっとして、
「ありがとうございます。」
と深く頭を下げました。彼女はもう、最低限を隠す必要がなくなって、私の正面を向いて、うつむいています。後ろからみれば、お尻は丸見えで全裸同様です。私はただでさえ女性のビキニ姿に最も興奮する上に、最低限のバタフライの姿になった彼女に、かえって欲情を制止できなくなり、見栄も外聞も忘れ、彼女の腰に抱きついて、
「ああ。優子さん。好きです。もうガマンできません。」
と大声で言いました。彼女のつま先立ちがつらそうなので、私は、縄の張りを少し緩め、踵が床について、疲れないようにしました。私はむさぼるように彼女の体のあちこちにキスしました。
「純様。つま先立ちを許してくださってありがとうございます。どうぞ遠慮なさらず、好きなように責めなぶって下さい。」
と丁寧な口調で言いますがとてもそんなことできず、返答に窮していると、
「隣の部屋に乗馬ムチがありますから、思う存分ムチ打って下さい。」
と言います。が、
「そ、そんなこと、できません。」
と言うと、
「それならば、くすぐり抜いていじめて下さい。この前お見せした毛筆が二本、ガペンも隣の部屋にありますので、くすぐり抜いていじめて下さい。」
と言います。私はくすぐり責めならば、痛みも、キズもつかないし、それならばやってみようと思いました。しかし、くすぐり責め、は、触覚の敏感な人にとっては大変つらい責め、であり、江戸時代には立派な拷問法の一つです。彼女は、
「純さん。立ったまま責めるのはお疲れになるでしょう。椅子をもって来てどうぞそれに腰掛けて責めて下さい。」
と言います。私は椅子をもって来ました。
「どうすればいいのでしょうか。」
と私がとまどっていると、彼女は、
「好きなようになさって下さい。両方の脇の下をくすぐって下さい。そこが一番つらいんです。私が耐えられなくなって、許しを求めても、泣き叫んでも無視して下さい。」
と言います。
彼女に言われたように、私は隣の部屋から、毛筆などの小道具を持って来ましたが、どのようにしたらいいのか分らず、躊躇していると、彼女は、
「さあ。いじめてください。やさしい純さんの心を、もてあそんだり、ヒールで踏んだりした悪い女です。」
と言います。が、どうしても、思いきりがつかないでいると、彼女はそれを察したかのように、
「鼻の穴を洗濯バサミで挟んで牛のように鼻輪をして下さい。そうすれば、きっと純さんもフンギリがついて、いじめれる心境になれると思います。」
と言います。私は、おそるおそる彼女の鼻の穴に、洗濯バサミをを入れて、そっと手を離しました。洗濯バサミのバネの力で、キュッと彼女の鼻がはさまれました。私はこれは、うまい手だな、と思いました。いきなり、「ムチで打って。」と言われても、すくんでしまったでしょうが、洗濯バサミなら、私の意志と別に、独立して彼女を、いたぶりの状態に出来るのですから。そして、これは、痛さと同じに、みじめ、に、おとしめる責めでもあります。鼻は顔の中でも気品をあらわす個所であり、その鼻に洗濯バサミをとりつけると、美しい女性が、あたかも鼻輪をとりつけられた家畜のようになった様な気もしてきます。彼女は首を振って、
「ああ。みじめだわ。こんな姿、恥ずかしくって、とても人には見せられないわ。でも、そのみじめさがいいの。手を縛られているから、自分ではどうにもできないわ。裸同然の格好にされて、こんなことされているなんて、友達がみたら、どんなに笑うことかしら。」
とか、
「今までは、自分でとれたけれど、今は自分ではとれないもの。うれしい。」
などと喜びの告白をします。心なしか、彼女の目に涙さえ浮かんでいるようにも思えました。私は思わず彼女の均整のとれた体を我を忘れて食い入るように見つめていました。女性にとって最羞の部分である、秘部と乳首を小さなハート形のバタフライを貼りつけてあるだけで、全裸と変わりなく、むしろその小さな覆いは全裸より一層男を挑発し、悩ませる覆いであり、彼女も見られていることを意識してか、秘部に視線が固定するのを恐れて脚をモジつかせます。紐だけで繋がれたバタフライは、自分の意志で身に着けている覆いというより、加虐者の意地悪なフザケによっと取りつけられた覆いであり、それは、かえって被虐者をもてあそんでいる道具にすぎず、豊満な胸、といい、キュッとしまった腰のくびれといい、その下に続くしなやかな脚線といい、あまりに美しく、この世にこれ以上、美しい形、というものがあるだろうかと、美しい芸術品を鑑賞するように、しばし陶然として、ボーと見惚れていましたが、いつしか私は我を忘れて彼女の前に屈み込み、ピッタリと、男を惹きつける色香を発散している女の最も女である部分にくっついたバタフライに、吸い寄せられるように、その部分を固唾を呑んで凝視していました。それをみて彼女は紅潮して首を振り私の視線を払おうと脚を左右に振ります。するとそれはクネクネとした一層男を挑発させる腰の動きに見えてきて、私は一層見入ってしまっていました。後ろに廻るとお尻は丸見えで、バタフライを繋ぎ止めておくための糸の一つは、割れ目に食い込んでいるように見え、糸の褌をはいているようにも見え、それもかえって、みじめさをつくるだけに見えます。糸でもかろうじて覆いであり、それにすがろうとする気持ちがかえって女性を苦しめて、臀筋に力を入れてピタリと閉じ合わせ、もどかしそうに尻を左右に振ります。
「あん。いや。そんなに見ないで。」
と、鼻にかかった声で言います。尻は大きく、弾力があって、視線から避けようとしても、避けようがなく、こればかりは見られることを諦めるしかなく、それが女性を苦しめます。「ああ。みじめだわ。こんな姿、人が見たらなんて言うかしら。こんなみじめな目にあうなんて死にたいくらい恥ずかしいわ。でもそれがいいの。純さん。みじめな私をうんと笑って下さい。」
と言って尻をモジつかせます。私は耐えられず、
「ああ。優子さん。好きです。」
と言って、彼女の弾力のある尻にしがみつきました。
「ああ。いや。」
と言うのもかまわず、そのムッチリした二つの肉の盛り上がりに顔を推しつけると、柔らかい弾力が戻ってきます。私は耐えられなくなって、前に廻り、腰をしっかり掴んで、顔を谷間にうずめるようにバタフライに鼻先を強く押し当てました。
「ああっ。いやっ。おねがい。」
と彼女は激しく首を振りますが私はもう無我夢中でそこを貪り嗅ぎました。すると彼女に特有の色香がむっと嗅覚に伝わってきました。しばししてやっと落ち着きを取り戻し、私は彼女の腰から顔を離しました。すると彼女もほっと一息ついて落ち着いた表情になりました。
「鼻の洗濯バサミ、痛いでしょう。とります。」
と私が言うと、
「ええ。少し。でもいいんです。こうされていることがうれしいんですから。純さん。みじめな晒し者の私を笑ってください。」
私は立ち上がって彼女の洗濯バサミをとりました。
「ああ。純さん。お慈悲をありがとうございます。」
と彼女は言います。我を忘れて均整のとれた彼女の体をじっと眺めていると、彼女は顔を赤くして、
「ああ。純さん。そんなに見ちゃいや。恥ずかしいわ。でも幸せ。私、子供の頃から、ずっとこうされたかったの。うんと困らせて。私、子供の頃から、テレビでもマンガでも、多くの人に寄ってたかって、どうしようもなく、いじめ抜かれ、笑われている場面を見ると、いじめられてる子がすごくうらやましかったの。なぜだか分らないわ。純さんはなぜだか分りますか?」
「いえ。わかりません。」
「こんな変な女、嫌いになった?」
「いえ。とんでもありません。一層好きになってしまいました。」
「私のこの変な性格、人に言わないでくださいね。」
「いいませんとも。」
と私は誓うように、声に力を込めて言いました。
「純さん。」
「はい。なんですか。」
「私、恥ずかしい告白を全部してしまったわ。でも純さんは恥ずかしがって警戒しているわ。純さんも何をしてくださってもいいのよ。私も誰にも言わないわ。」
私が黙っていると彼女は、
「おねがい。私に恥をかかせないで。」
と言います。私が躊躇していると彼女は、
「ごめんなさい。無理な注文をしてしまって。一方的に私の妄想の世界に引きずり込んでしまって、それを聞いて下さって、それだけでも十分幸せなのに、無理矢理、純さんの告白を要求するなんて。私、ワガママ過ぎるわね。純さんには純さんの立場がありますものね。ごめんなさい。今の要求は取り消しますので忘れて下さい。」
さらに彼女は語を次ぎました。
「ごめんなさい。気になさらないで。一方的に見られる、というのもすごくみじめでうれしいんです。」
(2)
 私は確かに彼女の言う通りだと思いました。確かに一方的に彼女に恥をかかせてしまうというのはずるい。精神的にも肉体的にも、恥をかいているのは彼女だけであって、自分は彼女に要求された、という口実で、うまい汁だけ吸っているというのは、ひきょうだ。という気持ちが強く起こってきました。私は立ち上がり、彼女の背後に廻って、肩を掴みました。
「ごめんなさい。優子さん。一方的に恥をかかせてしまって。確かに優子さんの言う通りです。女の人に一方的に恥をかかせっぱなしにするなんて男として最低です。僕の告白も聞いて下さい。」
と言って私は話し出しました。
「僕も優子さんをはじめて見た時から心臓がドキンと高鳴りました。親しくしてくれるにつれ、思慕は一層つのりました。何度も寝苦しい夜を過ごしました。僕の優子さんに対する夢想は、せいぜい、優子さんのビキニ姿どまりです。僕は気が弱いので、女性を犯すことは、想像でも、とても出来ません。優子さんが身に着けている物がほしい、と、悩まされていました。優子さんに踏まれた時は、優子さんにいじめられたい、とも思うようにもなりました。僕は、子供の頃から、困っている女性の姿を見ると、すごく興奮してしまう性格があるんです。でも、自分が手をかけたいという気持ちはありませんでした。その場面に興奮してしまうんです。でも優子さんの、演技も混じっていると思いますが、困っている姿、を見ているうちにだんだん優子さんのような人になら、自分も悪代官になって、女の人を困らせたい、という気持ちが起こってきました。」
「ありがとう。」
と彼女は言いました。
「優子さん。それじゃ、いじめあいっこにしませんか。一方的にいじめる、というのはどうも出来にくい。それでは私の気がすみません。私が優子さんをいじめたら、その後、優子さんがマンゾク出来るだけ、私をいじめる、というのはどうでしょうか。」
「ありがとう。純さんてやさしいんですね。でも、そうしなくてもいいの。双方の合意があって、双方とも快感を得ている、といっても、いじめている人の方がずっと多く搾取していることは間違いないと私は思います。いじめる人には、肉体的なキズはつきませんが、いじめられる人には傷痕がつきますもの。でも純さんの場合は、私がいじめられることに、私が一方的に快感を得ているだけですもの。貸借関係はありません。私が受け取っている分の方がずっと多いんですもの。気になさらないで。」
「それは違います。私は優子さんから快感を貪ってしまいました。僕の気がすみません。」
というと彼女は、
「じゃあ。私もちょっと純さんをいじめちゃおうかしら。」
といって、「ふふ。」と笑いました。私は、
「はい。そうしてください。」
と言いました。私は心にフンギリがついた思いがしました。もしかすると私は、このような関係にしようとした彼女の最初からの計算に、まんまとひっかかってしまったのかもしれません。でももう運命共同体です。もう心をすべて明かしてしまった以上、ためらい、も、消えてしまいました。彼女は笑って、
「ふふ。純さんの秘密きいちゃった。人に言っちゃおうかしら。私ってけっこう口が軽いかもしれないわよ。」
などと言います。
「そんな事されたんじゃたまらない。それじゃあ、責めますよ。覚悟してください。」
と言うと、彼女は、「はい。」とカンネンした口調で言いました。私は毛筆を二本とると、彼女の背後に立ち、両脇をそっとくすぐり始めました。両手首を縛られて吊るされているのですからこれでは逃げようがありません。彼女は触覚が敏感とみえて、毛筆が触れたとたんに、「あっ。」と言って、身震いして必死に毛筆から逃げようとします。彼女がどれほどつらがっているかは、頭の上で縛められた手をギュッと握りしめ、足指を力強く、挟んだりして、何とか、つらさ、を、そちらに逃がそうとしている様子でわかります。
「お、おねがい。純さん。ゆるして。」
私はかまわず、くすぐりつづけました。だんだん拷問者の快感が私に起こってきました。私は責めるのに良い口実を思いつきました。そしてそれは本当に私に分っていなく、知りたい事実なのです。私は一時、くすぐりの筆を休めました。
「優子さん。本当は私をいじめたいと言う気持ちもあったんでしょう。」
と言うと彼女は、
「いえ。決してそんな気持ちはありません。私がいじめられたかっただけです。」
「それにしては、いきなりヒールで踏む、というのはおかしいじゃありませんか。事実、結局、いじめあいっこという条件になってしまっているじゃありませんか。優子さんは、最初からこういう関係にしようと思ってたんですね。」
「いえ。決してそんなことありません。」
「いえ。信じられません。何か、僕はだまされてしまったような気がしてます。本当のことを言ってください。白状するまで責めつづけますよ。」
と言って、私は再び毛筆を彼女の両脇に当てました。彼女は身を震わせて、
「ああ。ゆるしてください。」
と全身をゆすって訴えます。だんだん彼女の息は荒くなっていきました。私の口調は、だんだん拷問者の強気な口調になることに抵抗を感じなくなり始めました。
「さあ。白状して下さい。」
と私は責めつづけます。
「純さん。」
「なんですか。」
「お、おねがいがあるの。」
「なんですか。」
と、私は言いました。彼女は頬を赤くして、言いづらそうな困惑した表情を作っていましたが、おそるおそる、ためらいがちに口を開きました。
「あ、あの。尿意がしてきたんです。」
本当かどうか分りませんが、彼女は脚をピッチリつけ、足踏みするように下肢をモジモジさせています。演技かもしれませんが、もしかすると本当かもしれない。くすぐりの、もどかしい刺激は反射的に尿意を起こさせることは生理的にも事実なのですから。尿意があるというのを無理に続けるわけにはいきません。もらしてしまって床が濡れてしまってはかわいそうです。
「おねがい。耐えられない。」
と、彼女は、油汗を流しながら、身をよじります。
「わかりました。じゃあ、今、縄尻を解きますので。」
と言って、つなぎ止めてある縄尻を外そうとしました。すると彼女はあわてて、
「あっ。まって。」
と言って制し、
「ごめんなさい。本当は尿意は起こってないの。どうぞ責めつづけてください。」
と言います。私はまんまと彼女にいっぱい食わされた自分を自覚して恥じるとともに、私より一枚上手な彼女に舌を巻きました。人間は、分らないところに魅力があります。一体彼女の本心は何なのか。人を翻弄しているのか、それとも誠実なのか。現に私は彼女に翻弄されているようなものですが、しかし同時に私は翻弄されていることに、うれしさも感じていました。そして彼女の本心を言わせるために責めてみたいという気持ちが本気で起こりました。すべて彼女の念入りな計算に、まんまと私がはまっているのかもしれません。しかし、彼女には誠実な性格があることも間違いない、とも確信しています。そもそも、いじめられたい、と思う感性は、人をいじめてよろこぶ無神経な感性とは正反対の、弱く、美しい感性です。どっちが翻弄されているのか分らない。しかし私はもう細かく考えることをやめようと思いました。これほど魅力のある謎の人に翻弄されていることは無上にうれしいのですから。私が彼女の心を揣摩憶測するより、私は私の思いに忠実になれば、それでいいのだ、と思いました。私は彼女の肩を掴んで抱きしめました。彼女は肩をゆすって、
「あん。純さん。私は悪い女です。やさしくしないで、いじめてください。」
と言います。
「優子さん。私はあなたの心の底は分らない。責め、を利用してあなたの本心を聞き出そうかとも思いました。私はまんまとあなたの思惑にはまってしまったのかもしれない。でも、それはもうどうでもよくなりました。あなたのような魅力的な人に翻弄されるのなら無上の幸せです。」
そう言ってさらに私は、
「では私も手加減しませんよ。好きなことをさせてもらいますよ。」
と言うと彼女は、
「はい。」
と小さく肯きました。私は後ろから両手で彼女の胸を掴みました。掴むというよりは、手で彼女の胸をブラジャーのように覆ったという程度です。彼女の胸のふくらみの感触を私はしばし、我を忘れて浸っていました。私にとっては、憧れの優子さんにこんなことが出来るとは夢のような思いでした。こんな機会をまたもつことが出来るのか、もしかするとこれが最後かもしれない。慎重な私はそんな心配も起こってきて、一生この感触を覚えておこうとじっと手をのせていました。彼女の胸の感触がかえってきます。彼女の両手は頭の上でピンと縛められているので、抵抗できません。私は自分が何か女性の部屋に忍び込んで、おびえる女性を縛り上げ、強姦している悪漢になったような気がしてきました。会社では体にピタリとフィットする制服のスーツ姿しか見ることができませんでしたが、はたして彼女も夏、海水浴場に行ったりするのだろうか、行くとすればどんな水着を着るんだろうか、セクシーな水着で男を挑発しようなんていたずらな心も持っているのだろうか、私はいつも会社で彼女をみる度にそんな事が気になっていました。しかし、私は床につくと、彼女がセクシーな水着を着て、胸を揺らしながら、天真爛漫の笑顔で、真夏の太陽のもと、波打際をかけていく姿が勝手に浮かんできて夢精してしまったこともあります。女性の胸は男の側から見れば、男を悩ませ、ひきつける魅力の房です。しかし、女性の側からすればそう単純ではない。女性に矛盾した二重の感覚を与える器官です。一つは男の視点に一致した男を挑発し、引きつけ、悩ましてやろうという天性のアクセサリーです。しかし、もう一つ、それとは正反対の否定的な一面も持っているはずです。それは女性が自分の意志で身につけている、いつでも着脱できるアクセサリーではなく、造物主によって押しつけられたアクセサリーであり、人間として行動する時、絶えず気にしていなくてはならない、厄介なものでもあるはずです。そもそも生物学的にも、女性の胸は自分の子供に栄養を与えるために存在する器官であるのに、男に乱暴に揉まれることにもその目的とプライドを持っているのですから、女とはかわいそうな存在です。私がそんなことを考えながら、彼女の胸を触っていると、彼女は、
「あん。純さん。恥ずかしいわ。ゆるして。」
と言います。
「だめです。優子さんは悪い痴漢にあってるんです。」
私はだんだん興奮してきて、息が荒くなってきました。しかし、もう彼女に性格を軽蔑されようとも、自分の思いをすべてさらけ出してやろうという開き直りの心境になっていました。私は片手を胸から離し、みぞおち、からヘソ、へと、体の上をゆっくりと下のほうに手を這わせていきました。この鈍行の目的地は、女性なら分るはずです。彼女は、
「ああっ。いやっ。」
と言いながら目的地に手が達することを何とか避けようと、腰の向きを変えようと身をくねらせています。しかし頭の上で手首を縛られて吊るされている以上、何をされても逃げる事は出来ません。目的地に達すると私は女の部分に胸と同じように手をピッタリと当てました。手のブラジャーと手のパンティーで覆っているようなかたちです。彼女のぬくもりが伝わってきます。
「どうです。痴漢に襲われている気分は?」
「い、言えません。」
「言ってください。言ってくれなければずっとこのままですよ。最も僕はずっとこのままの方がいいですけど。」
彼女がいくら腰を引いても私はピッタリと手をくっつけて離しませんでした。彼女も、ついに腰を引く抵抗を諦めました。ジーンと彼女のぬくもりが伝わってきます。
「優子さんは痴漢にあったことはありますか。」
「あ、ありません。で、でも…。」
「でも何です?」
私はもう心の内を知られることに抵抗を感じない心境になっていたので、むしろことさら本心を言ってやりたいという開き直りの心境になっていました。
「僕は電車の中で痴漢してみたいと思ったことはありません。もちろん、きれいな女性を見ると頭がクラクラしてしまうことは何度もありました。が、女性に訴えられて、社会的ハメツになることを思うと、とても気の小さい僕にはそんな勇気はありません。僕には女性が、美の化身に見えることもあれば、夜叉に見えることもあるんです。僕には痴漢する人の気持ちが分りません。勇気があるというのか、自制心がないのか。女性に手を捩じ上げられて、衆目に晒されることを想像すると、恐ろしくってとても痴漢などしたいという欲求なんか起こりませんでした。ただ、ギューギューずめの満員電車で、女性と体が触れると不可抗力であることをいいことに女性の体の柔らかいぬくもりを感じていたことは何回もあります。」
と私は彼女に後ろから抱きついたまま言いました。
「でもこうして痴漢のようなことをしているとすごく興奮してしまっているのですから、僕にも痴漢願望というものはあったんですね。それを優子さんが目覚めさせてしまったんでしょう。」
「もう僕は痴漢になりきります。」
そう言って私は彼女の乳首をキュッと掴んでみたり、腰のくびれをなぞってみたり、臍のごまをとろうとしたり、しなやかな脚を念入りに触ったり、揉んだりしました。そしてお尻の割れ目をスッとなぞってみたりしました。彼女は、
「あっ。いやっ。」
と言って、腰を前に突き出そうとしたので、私は待ってましたとばかり彼女の秘部に右手を当てました。彼女はあわてて腰を引きました。そのため閉じられていた尻の割れ目がパックリ開きました。今度は逃げられないよう左手を尻の割れ目にピタリと当てがって、逃げ場をなくしました。こういった行為は、私の心に秘めていたいやらしい欲望を彼女に行為で告白しているようなもので、彼女より私のほうがずっと恥ずかしい気持ちです。ずっとそのままの状態を続けていると彼女は耐えきれなくなって、
「恥ずかしいわ。」
と顔を赤くして言いました。
「どんなところがですか?」
と聞くと彼女は赤くなった顔をそむけました。
「痴漢にあったことはあるんですか。」
私は女性の痴漢に対する心理を聞きたい探求心から、やや、真面目な口調で聞きました。彼女は首を振って否定しました。
「純さん。私が恥ずかしいのは、はじめてでもありますけど、真面目な純さんにさわられているということがずっと恥ずかしいんです。痴漢にあったことはありません。でも満員電車で男の人と体が触れると複雑な心境でした。」
と私は告白しました。下を見るとピンク色のペディキュアの施されている彼女の美しい足指が目に止まりました。私は思わず責めの手を離し、彼女の足元に屈み込みました。
「美しい足ですね。ペディキュアがよく似合っていますよ。僕、女の人の足にすごく魅力を感じるんです。夏、サンダルでペディキュアのぬられた女性の素足を見ると、モヤモヤした気持ちになってしまうんです。」
私がじっとペディキュアの施された彼女のきれいな足指を見ていると彼女は顔を赤くして、
「あん。そんなに見ないで。」
と言ってもどかしそうに足をモジつかせました。
「でも見てほしいからペディキュアをするんでしょう。」
「い、いじわる言わないで。」
そう言って彼女はもどかしそうに足をモジつかせました。私は逃げようとする彼女の足首を掴んで、丹念に検査するように足指の股を一本一本広げてみたり、イヤ、イヤ、という彼女の制止を無視して、鼻を近づけてクンクンと匂いをかいでみたりしました。私は彼女の薬指を口そっとに含みました。彼女は反射的に、
「あっ。純さん。いや。そんなこと。」
と言いますが、私はかまわず、薬指から小指へと全部の指を、そして一方が終わると、もう一方の足へと同じことをしました。そして足を元に戻しました。彼女の立ちっぱなしの体重を支えている足がかわいそうに思えてきます。ある、不埒ないたずらが私の心の中で思いつかれました。
「優子さん。」
「は、はい。何ですか。」
「優子さんの美しい静止した姿を見ているうちに何か優子さんが美しい人形のように見えてきてしまいました。女の子の人形って、着せ替えて遊ぶものでしょう。」
「そ、そうですわね。」
と彼女はおそるおそるの口調でやむを得ずの同調の相槌を打ちました。
「僕、優子さんの水着姿がむしょうに見たくなってしまったんです。水着に着せ替えてもいいですか。」
彼女はコクリと肯きました。
「は、はい。私は純さんの奴隷ですもの。拒否する資格なんてありませんわ。」
「水着はどこにありますか。」
「引出しの下の段の中にあります。」
引出しを開けると幾組かの水着がありました。私はピンク色のビキニを取り出して、彼女の傍らに寄りました。
「じゃあ、ビキニを着けるためにバタフライをとらせていただきます。」
「は、はい。純様。で、でも。恥ずかしいんです。どうかお慈悲を。で、できれば後ろから、お、お願いします。」
と、消え入りそうな声で言いました。そういえば私は彼女の体つきは目に焼きつくくらい十分にみてしまいましたが、決定的な羞恥の部分は、まだ見ていませんでした。
「はい。そうします。見ませんよ。」
そう言って私は彼女の上下のバタフライを取り外しました。覆うもの一枚ない全裸になった彼女は、
「あっ。いやっ。恥ずかしい。」
と言って脚を寄せ合わせました。前は見られていなくても、脱がされるという行為は女性にとってこの上なく恥ずかしいものです。前に気まぐれで廻られたら、見られてしまうのですから。
「ふふ。困っている優子さんってとってもかわいいです。見てみたいな。でも約束は約束だからな。」
と言ってじらせたりします。
「そうだ。鏡台を前に置けばいいんだ。」
私はそんなことを一人言のように行って無防備の姿の彼女の時間を長引かせようとします。今までつけていたかろうじての覆いのバタフライでも覆いは覆いであり、それを体につけておく糸は、裸同然でも体を隠す衣類を身につけているという感覚を起こします。しかし、今は完全な全裸で、しかも立ち縛りの状態です。恥ずかしくないわけはありません。後ろからでも、あらわになった胸の輪郭が脇の下から、くっきり見えます。私はしばし、我を忘れて、彼女の全裸の後姿に見惚れてしまいました。
「お、おねがい。純さん。」
「何ですか。」
「お、おねがいです。」
と言って彼女は身を震わせました。彼女の、お願い、とは、聞かずとも分ります。しかしそれを口に出すのも恥ずかしいことは十分わかります。脱がされるのも恥ずかしいが、身につけさせられるのも恥ずかしい。他人による着脱は、もてあそばれている、みじめな感覚しか起こしません。私が行動を起こさないので、ついに彼女は耐えきれなくなったとみえ、
「ビ、ビキニを身につけさせてください。」
と声を震わせて言いました。私はビキニのブラジャーをできるだけ、彼女の肌に触れないように後ろからつけました。胸を覆い隠せて彼女は少しほっとした様子です。ある不埒な考えが私に起こり、私は座り込みました。しばししても行動を起こさない私に彼女は不安を感じ出し、
「み、水着をつけさせて下さい。」
と声を震わせて言いました。私はそらとぼけて、
「水着はつけたじゃありませんか。」
と開き直るように言うと、彼女は顔を真っ赤にして、
「し、下もお願いします。」
と消え入るような小さな声で言いました。
「上だけちゃんとつけて下がないのって面白い格好ですね。少し鑑賞させてもらおうかな。」
と意地悪を言うと、
「お、お願い。どうか下も。」
と、彼女はお尻をプルプル震わせて言うので、私は足をつかみ、片足ずつ水着を通して引き上げていき、ピチンと腰の位置で離しました。ビキニは尻の下がかなり露出されている挑発的な水着でした。しかし恥という観念は社会の共通意識によって造られるものなので、そこには恥ずかしさはさほど生まれず、彼女は完全な衣類をまとえた安心感からほっとした表情で、
「ありがとうございます。」
と言って、もう安全領域に入れた安心感から困惑の震えはなくなりました。他人によってつけられた屈辱は、いったん身につけてしまえばもうなくなり、かえって彼女は心なしか自分の水着姿を自慢するかのごときポーズをとっている感が見えました。彼女の顔から屈辱が消え栄光がもどりました。私は前に廻りました。縛められているとはいえ彼女に、もはや困惑はありませんでした。むしろ女の体の稜線がつくりだす美を見せつけて誇るプライドを満喫しているような様子です。私は思わず唾を飲んで、
「き、きれいだ。優子さん。美しすぎる。」
と言いました。彼女は小さく「ふふふ。」とゆとりの笑いをもらしました。
「優子さん。」
「何ですか。」
「優子さんは毎年、夏、海に行くんですか。」
「…。」
彼女は少し答えることを躊躇している様子です。
「どこの海へ、何の目的で行くんですか。」
と私が再度聞いても彼女は黙っています。
「言わないなら言うまで責めますよ。」
私は毛筆をとって彼女の背後に廻り、毛筆の先を無防備の両脇に当てました。触れたとたん、彼女は、
「あっ。」
と言って、
「お、おねがい。ゆるして。」
と言って体をプルプル震わせました。
「言えばやめます。言わなければいつまでも続けます。」
私は丹念に、最もくすぐったい腋下の窪みの所を執拗に擽りつづけました。彼女はとうとう耐えきれず、
「わ、わかりました。言います。言いますから、ゆるしてください。」
彼女はハアハアと一息ついた後、荒い呼吸がもとにおさまると、私の聞いた二つの質問に答えました。
「海は毎年行きます。出来るだけ遠いところへ。目的は体を焼く、というより裸に近い姿を多くの人に公然と見られたかったからです。」
「悪い人だ。そういう女の人の挑発的な姿がどれだけ男を悩ませていることか。そのことが気になって勉強が手につかず、第一志望を落としてしまった受験生だっているんですよ。」
「ご、ごめんなさい。」
「少しお仕置きしておきましょう。」
と言って私は再び毛筆を彼女の腋につけてゆっくりと刷きました。
ある不埒ないたずらのアイデアが浮かびました。
「優子さん。水着を着ていると海に来ているような感覚が起こりませんか。」
「ええ。少し。」
「じゃあ、ここは海水浴場です。優子さんは誰かに日焼け用オイルをぬってもらったことはありますか。」
「い、いえ。」
と彼女は顔を赤らめて言いました。
「じゃあ、僕が体中くまなくぬらせていただきます。」
「そ、そんな。」

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M嬢の物語 (小説)(2)

2020-07-07 07:40:47 | 小説
水着のある箪笥の引出しを開けた時、コパトーンがあったので、私はそれを持ってきました。彼女のためらいを無視して私はコパトーンをたっぷり掌にぬって、彼女にぬり始めました。足首から腿へ。じっくり時間をかけて。私はオイルをぬるという口実に名を借りて、じっくり彼女の体を隅々まで、その感触を感じ取っていました。しなやかな腿からはゴムマリのような弾力が返ってきて、オイルを塗ることが、ただ触ることより、いっそう感触の記憶を頭に定着させ、私はエステティシャン、や、マッサージ師の微妙な役得とはこういうものなのだな、と思いながら丹念に塗り込んでいきました。下肢の前面を塗り終わると私は後ろに廻りました。
「安心して下さい。塗り残しの部分がないよう、くまなく塗りますから。」
そう言って半分近く露出されている彼女のお尻に堂々と触れていきました。
「あっ。い、いや。」
彼女の制止を無視して、尻の部分を塗り終わると、そのまま這い上がって行って背中をくまなくぬり、背後が終わると私は再び前に廻りました。今度は彼女の上半身を塗ろうと、良くくびれたウエストから腹全体へとくまなく塗り込んでいきました。
「縦長のかわいいお臍ですね。お臍の穴にもちゃんと塗りますから安心して下さい。」
などと表面は真面目な口調で臍の穴に執拗に塗り込んでいきました。
「あっ。い、いや。くすぐったい。ゆ、ゆるして。」
「だって塗り残しができたら良くないじゃありませんか。」
ブラジャーの境界線いっぱいまで塗ろうとするので手の甲が豊満な乳房の感触に触れるのを避け得ず、さらに腋下の窪みにまで丹念に塗りました。
「あ、ああ。くすぐったい。ゆ、ゆるして。」
私はオイルを塗るという口実で公然と彼女の脇の下を素手でくすぐる意図も含めて、ゆっくり塗り込んでいきました。彼女は耐えられなくなって、
「ああ。純さん。おねがい。ゆるして。」
と髪を振り乱して声を大にして言います。もうほとんど全身にくまなく塗ったので私はオイル塗りをやめ、彼女の真正面でドッカと座りこみました。私は彼女の体の感触の余韻に浸りながらあらためて彼女のビキニ姿に見入っていました。ビキニ姿を誇るつもりだったのが、隅々まで体をもてあそばれ、彼女はみじめそうな表情で、ガックリ首を落としています。しかし、塗られたオイルのため、体がテカテカ光り、私は何か美しい人魚の像を手入れしたような気分でした。しばしの間、私は彼女を美しい彫像を鑑賞するように我を忘れて見入っていました。これほどまじまじと女性の体を目前に見たことは始めてだったので、私は女性の体とは何と美しい形なのかとあらためて思い知らされたような気分でした。
「ごめんなさい。優子さん。いたずらしちゃって。今、拭きます。」
と言ってタオルのある場所を聞き、オイルを丁寧に拭き取り、もう数度タオルを水で絞って、完全にオイルを拭き取りました。私は彼女のビキニ姿をこうまで、まじまじと見る機会が今後あるだろうかという気持ちに襲われて、恥も外聞も忘れ、食い入るように、女の部分を見入っていました。すると彼女は私の視線がそこに固定しているのに気づき、
「あん。恥ずかしい。あんまり見つめないで。」
と言って脚を寄り合わせます。
「すみません。あんまり美しいもので。でも、ビキニって男に見られたいために着るんでしょ。」
「い、いじわるゆわないで。」
彼女にそう言われて私は視線を床に落とすと、彼女が脱いだ下着が目に止まりました。ある不埒なイタズラを思いつきました。
「優子さん。」
「何ですか。」
「せっかくつけた水着で申し訳ありませんが下着につけ替えさせてもらってもよろしいでしょうか。」
「私は純さんのドレイです。純さんの言うことにはさからう資格なんてありません。」
「それじゃあ。」
と言って、私は彼女の下着をとって彼女の背後に廻りました。私はビキニを外して再び彼女を裸にしました。彼女は着せ替え人形のようにおとなしく、されるがままになっています。私は下着をブラジャーから着ける意地悪をしないで、パンティーを先につけ、次いでブラジャーをつけました。彼女はほっと一安心したような様子でした。前に廻って彼女をみつめても、彼女は視線をそらそうとはせず、私の行為をやさしさ、と思ったのか、やっと落ち着いたというような様子でした。私が微笑むと彼女も僅かに微笑しました。
「やっぱり純さんてやさしいんですね。」
「そうみえますか。前は僕もそう思っていました。でも今はそんなにやさしい人間じゃないように思えてきました。むしろ意地悪な人間なのかもしれない。」
彼女はキョトンとしています。
「どうして僕が下着に替えさせたか分りますか。」
彼女は黙っています。私は彼女の後ろに廻って屈み、パンティーのゴムに両手をかけました。
「こうするためですよ。」
と言って私は彼女のパンティーをグイと引きおろしました。そして膝と尻の中間の中途半端なところで放置しました。安全に隠されていたお尻が丸出しになりました。
「ああ。いや。」
と言って、彼女は反射的に膝をピッタリ閉じ、腰を引きました。彼女は最羞の前を隠すため、必死で腰を引こうとしますが、そうすると尻の割れ目が開かれてしまうため、どうすることも出来ない、といった様子でプルプルと尻を震わせながら困惑しています。胸はブラジャーで隠されているのに下は丸見えで、パンティーは自分の意志で引き上げることは出来ず、この上なくみじめな格好です。
「ああ。純さん。おねがいです。」
「何のおねがいですか。」
私はそらとぼけた返答をしました。
「パ、パンティーを。」
「パンティーをどうするんですか。」
「パ、パンティーを元に戻して下さい。」
「ごめんなさい。優子さん。僕は優子さんのこの姿が見たくてこうしたんです。」
「お、おねがい。純さん。パンティーをはかせてください。」
と言って彼女は油汗を流しながら必死で腰を屈めようとしています。
「あんまり腰を屈めるとお尻の割れ目が開いちゃいますよ。」
「ああ。いじわる言わないで。ああ。みじめだわ。こんな格好、死にたいほど恥ずかしいわ。」
「でも優子さんの困ってる姿、とっても美しいや。美しいものを美しいままにしておくことは良いことなんじゃないかなー。」
私はそらとぼけて一人言のように言いました。
「ムチ打って。好きなだけムチ打って下さい。その代りどうかお慈悲でパンティーだけは元に戻して下さい。」
「こんなきれいな柔らかい肌、鞭打つことなんてとても出来ません。それより優子さんのこの姿が一番美しいや。じゃあ、しばらくとっくり鑑賞させてもらいます。」
と言って私はドッカと腰を下ろしました。彼女は私に対して横向きになって視腺から身を守ろうとしています。
「横向き、もきれいだ。いや、横向きが一番きれいなのかもしれない。」
などと私が揶揄的な独り言を言うと彼女はパンティーを中途半端に下ろされているという、惨めな姿をみられている屈辱に耐えようと、必死で腰を引いて、全身をプルプル震わせながら、
「た、耐えます。みじめですけど純さんの命令には逆らえませんもの。」
と声を震わせて言います。
「でも優子さんは、こうされることが嫌なだけじゃなくて、気持ちよさも感じるんじゃないですか。僕にはよく分りませんけど。」
彼女は顔を真っ赤にして、
「い、いや。いじめないで。」
と言いました。私は立ち上がって彼女のパンティーを引き上げて元に戻しました。
「あ、ありがとうございます。」
私は黙って再び座りました。しばしたって羞恥の気持ちが消えると、安心感から笑顔も生まれたらしく、
「やっぱり純さんてやさしいんですね。」
と笑顔を私に向けました。彼女の下着姿もいいものだな、と私は思ってしばし眺めていましたが、時計を見るともう九時をまわっていました。彼女は笑顔を向けていますが、いいかげん長時間立ったままで吊るされているのですから疲れているのは間違いありません。彼女も長年の願望がかなって、うれしいのだろうと思いますが、気分が乗ってきた私を慮ってくれているに違いありません。
「優子さん。疲れたでしょう。もうこのくらいにしておきましょう。」
と言って、私は吊りを解き、手首の縛めも解きました。彼女はお礼を言うと、
「純さん。すみませんが、ちょっと後ろを向いていて。」
と言いました。私が後ろを向くとゴソゴソと音がします。
「もういいわ。」
と言われて振り返ると、彼女は白のブラウスにアイボリーホワイトのタイトスカート姿で微笑んでいました。私は一瞬、「うっ」と喉をつまらせて、何ともいえない気持ちになりました。エロティックな感情は日常が非日常に移るとき起こりますが、その逆に非日常が日常に戻ったときにも起こるものだとつくづく思いました。普段着姿の彼女を見ると今までずっと裸近い姿だった彼女とが、頭の中で比較されてしまい、自分が、かくも美しい人に、本能のまま、はしたない事をしてしまったことがいやおうなく思い出されてしまいます。そして、もう手が出せないことに、ちょっぴり寂しさを感じるとともに、それと反対に、手が出せないことが女性の魅力だと思うと、何とももどかしい快感が起こりました。また、彼女も私にそういう気持ちを起こさせようとの魂胆があって、私に後ろを向かせている間に普段着を着て、いきなり日常に戻った姿を見せつけたのに違いありません。実際、彼女からは美の持ち主の優越感を見せつけて楽しんでいるような様子が感じられます。彼女に促されて私たちは食卓に向かい合わせに座りました。
「純さん。ありがとう。モヤモヤした欲求が解消して、とてもすっきりしました。」
私は恥ずかしさに耐えきれず、彼女の足元に土下座して、床に頭をつけ、
「ごめんなさい。ひどい事をしちゃって。お願いです。どうか存分にけって下さい。」
と叫びました。彼女は私の手をとって元の椅子に座らせ、朗らかな口調で、
「いいのよ。私が頼んだことじゃない。純さんが謝る理由なんてどこにもないわ。」
「で、でも、それでは僕の気がすみません。さっきのようにヒールで思いきり踏んでください。」
「そんなことできるわけないわ。純さんの性格に合わない、私の一方的な要求を一生懸命して下さったのに。お礼を言うのは私の方だわ。つかれたでしょう。」
「い、いえ。」
私はヘドモドして答えました。
「また、いじめてくださいね。ストレス解消として、何をなさってくださってもいいのよ。」
「で、でも・・・。」
私がためらっていると彼女は思い出したように、
「あっ。そうそう。こんなことしてることが万一、会社にわかって噂になったら、いやだから会社ではあまり親しくしないで、付き合いのない関係のように、装ってもいいかしら?」
「ええ。もちろんです。」
彼女はチーズケーキと紅茶をだしてくれたので、私はあわててそれを食べると、お礼を言って彼女のアパートを出ました。
 私は夢心地でアパートに帰りました。もう夢じゃない、自分はもう彼女と深いつながりを持てたんだ、と思うと床に就いても彼女との夢のような一連の遊戯が浮かんできてなかなか寝付くことができませんでした。
   ☆   ☆   ☆
翌週の月曜から再び会社での勤めが始まりました。会社では彼女が言ったとおり、彼女は私に事務的に接するだけです。よもや私たちがプライベートではあんな事をしていると思いつく人はいない、彼女の隠れた秘密を知っているのは私だけ、と思うと何か愉快な気分になりました。確かに彼女が言ったとおり会社では事務的に接する二面性をつくっておいた方が面白い、と言う彼女の言葉通りだと思いました。昼休みも社員食堂で一緒に食事するという事も、私の隣に来て笑顔で話しかけるという事もなくなりました。何しろ事が事ですから、会社で親しくして、人に少しでも二人の関係を感づかれることを恐れる彼女の気持ちはわかります。
しかし、しばしするうちに私は何か言いようのない寂しさを感じるようになりました。昼休みなど、彼女は同僚の女友達と屈託ない笑顔で笑い合っています。同僚の女友達だけでなく、彼女は男の同僚とも、誰とも親しく付き合うことが出来ます。しかし私は元来内気で、人付き合いが苦手なため、友達も少なく、昼休みなど一人でポツンとしてしまうことが多いのです。そんな時、友達と屈託なく笑っている彼女がとてもうらやましく見えてきて、そんな時はとてもさびしい気持ちになります。彼女の誰とでも話せる外交的な明るい性格の前では、彼女の裸を触ったことなどに少しの自慢の気持ちも起こりません。もし彼女が私との付き合いを拒否すればもう私は彼女に指一本触れることも出来なくなるのです。私は彼女のオナニーの道具のようなものです。もしかすると彼女は私をこのような惨めな立場にするために、公私を分ける二面性にしたのかもしれません。いたずらな性格もある彼女のことですからもしかするとそうなのかもしれません。会社で私に惨めさを感じさせて優越感に浸る意地悪をしようという気持ちがあるのかもしれません。しかしそれでも私はかまいませんでした。たとえ彼女のオナニーの道具でも、手も届かないと思っていた彼女とあんなに親しくなる機会を一度でも持てたのですから。
   ☆   ☆   ☆
 そんな状態で数日過ごしました。そんなある日、仕事が終わってトボトボとアパートへ向かっている時でした。後ろから彼女の白のカリーナが軋り音を立てて止まりました。彼女はドアを開け、私を車の中に入れました。彼女は屈託ない笑顔で言いました。
「へへ。純さん。さびしい思いをさせちゃって御免なさい。私、悪意で純さんをさびしがらせようなどと計画してませんでした。でも純さんがさびしそうにしてるのを見ると何かちょっぴりうれしい気持ちが起こってしまいました。私って悪い性格なのね。本心では私、純さんを弄ぼうなんて気持ちありません。だって純さんしか心を許せる人いませんもの。会社でも少しは個人的に話す機会もつくろうと思います。でも純さんがさびしそうにしてる姿、とてもかわいかったでした。ごめんなさい。今度の土曜、また来て下さいね。待ってます。」
そう言って彼女は私を降ろすと勢いよく車を飛ばしました。
私は彼女の隠し事のない本心を聞けて飛び上がりたいほどうれしい気持ちでした。
(3)
 約束の土曜になり、彼女のアパートへ行くと、彼女は満面の笑顔で私を迎え入れてくれました。彼女の用意してくれた料理を、食卓に着いて、向かい合わせに食べていると、彼女はワクワクした様子で、
「うれしい。今、こうやって対等にしているけど、これから私だけ裸にされて、みじめのどん底に落とされるのね。そう思うとゾクゾクしちゃうわ。」
と、喜びの内にも少し不安と緊張の混ざった口調で言います。彼女のこういう性格は、前回で十分わかっていたので、黙って料理を食べていましたが、ことさら喜びの表明をしたことに思わず私はクスッと笑ってしまいました。彼女も緊張が解けたのか、身を乗り出して、
「ねえ。純さん。この前はお手柔らかだったけど、今度はもっと徹底的に、情け容赦なくいじめ抜いて。一人暮らしの女のアパートに忍び込んだ強盗になったつもりで、うんと乱暴して。物をこわしたり、殴ったり蹴ったりして下さってもかまわないわ。いえ、むしろそうしてほしいの。」
と言いますが、私はたじろいで、
「で、でも、いくらなんでもそんな事は・・・。」
と尻込みしていると彼女は椅子から立って床にうつ伏せになって、
「さあ。純さん。私を踏んで。」
と催促します。私はやむを得ず立ち上がって、彼女の肩にそっと足をのせました。が、何もしないでいると、彼女は物足りないもどかしさを訴えるように、
「純さん。もっと体重をのせて、力いっぱい踏みつけて。」
と、叱るような強い口調で訴えます。私はのせていた足に少し体重を加えてみました。が、そうすると柔らかい、華奢な、ちょっとでも荒く扱うと壊れそうな女性の体の感触が伝わってきて、私はそれ以上、体重をのせることに耐えられず、彼女の元にペタリと座り込んで、
「ごめんなさい。優子さん。僕にはとてもそんなこと出来ません。」
と何度も頭を下げました。彼女はゆっくり起き上がると、穏やかな笑顔で、
「いいのよ。純さん。無理な注文をしちゃってごめんなさい。」
と慰めるように言いました。彼女はしばし何かを悩んでいるらしく、口唇を噛んで手をモジモジさせていましたが、ついに決断がついたらしく、それじゃあ、と言って立ち上がり、洗面所から石鹸や泡だて器、タオルなどを洗面器に入れて持って来て、私の前にトンと置きました。そして隣の部屋から一冊の本を持って来て私の前に置きました。
それはSM写真集でした。彼女は手を震わせながら、おそるおそるある項を開き、私に見せました。
「こ、こうしてほしいんです。」
と言って彼女は顔を真っ赤にしてうつむいてしまいました。その写真を見て私はびっくりしました。何と全裸の女性が片足を吊り上げられている写真です。手は後ろで縛られて拘束され、秘部は泡立てられた石鹸が塗られていて隠されています。そしてその横で男が剃刀を持って、女の毛を剃ろうと待ち構えています。私があっけにとられていると、彼女は彼女は顔を真っ赤にして、
「こ、この写真のようにしてください。」
と言います。私はあせって、
「い、いいんですか。こんなことして。」
と聞き返しましたが、彼女は、
「押し入り強盗なら、このくらいのこと平気でするでしょ。」
と紅潮した顔を床に向けて言いました。
ただでさえ全裸で片足を吊り上げられる、という姿を見られるだけでもこの上ない恥ずかしい事なのに、その姿のまま、人に毛を剃られるなどということは普通の神経の女性にはとても耐えられるものではないはずです。私は彼女の裸姿は前回十分見て知っていますが、彼女の決定的な部分はまだ見ていませんでした。このようなことをすれば彼女の決定的な部分をまじかに見てしまうことになります。当然それは彼女もわかっているはずです。何か彼女は自分を極限状態に追い詰めるようなことばかりしますが、私には彼女にそうさせようとする衝動がいったい何なのかまったくわかりません。私としては彼女の決定的な部分は見ないほうが緊張感があっていいと思っていました。しかしともかく、彼女の言うことは何でも聞くと約束した以上、しないわけにはいきません。彼女は服を脱いで全裸になると、天井の梁に取り付けられている滑車の下に座り、
「さ、さあ。写真の様にしてください。」
と言って両手を後ろに回しました。私が彼女を後ろ手に縛ると、彼女は床に横たえました。
「さ、さあ、足を縛ってください。」
と言われて、私は彼女の片足を縛り、縄尻を滑車に通しました。
彼女に言われて、もう片方の脚は足首と膝を縛りました。彼女はピクピクと全身を震わせています。
「こ、こわいわ。」
「じゃあ、やめましょうか。」
「い、いえ。純さんにお任せした身ですもの。」
「では。」
と言って、私は縄尻をゆっくり引き上げていきました。
「ああー。」
と、つらそうな声を上げ、後ろ手に縛られた背後で、親指を隠すようにぎュと握りしめています。女性の秘所をせめても威容をもって隠そうと叢生している茂み。その下の女の最も恥ずかしい部分もはや全貌があらわになっていきます。
「ああ。みないで。」
と彼女は赤面した顔を横にそむけて言います。でもこれはどうしても避けられないので止むを得ません。
「できるだけみないようにします。」
と言って私は剃毛にかかりました。まず毛をハサミで大雑把にジョキジョキ切っていきました。そして刷毛を水にぬらし、石鹸で泡立てて、お尻の穴の周りまで丁寧に湿らせて、床屋のように一度蒸しタオルを載せ、再びシャボンをつけ、ショリショリと剃っていきました。
「あ、ああ。みじめだわ。」
彼女の艶のある長い黒髪が床の上に開扇状にこぼれ、睫毛をフルフル震わせています。視線を戻して私は彼女の羞恥の意味を解しました。石鹸の泡とは別の、粘りけのある液体が、いつの間にか、涌き出た泉のように女の窪地を満たし、ついに溢れて一筋の水路をつくっていました。
「純さん。何か言ってください。笑って。言葉で笑いものにしてください。純さんがどう思っているか、わからないとこわいんです。」
私が黙っていると彼女は耐えられなくなったような口調で、
「純さん。私のグロテスクな所を見てゲンメツしてしまったのね。いいです。私を笑って。蹴って。そして捨ててください。」
と涙がかった口調で言いました。私は黙って、かまわず仕事を続けていきました。ついに全部きれいに剃り終えると、私は丁寧にシャボンを拭き取り、毛を剃られて全貌があらわになっている女の最も羞恥の部分にタオルをのせて、そこを見えないようにしました。私は彼女の耳元に口を近づけてささやきかけるように、
「ゲンメツなんかしていません。優子さんの体は、どこも美しいです。それに僕は忘れっぽいから見たものはすぐに忘れてしまいます。」
「あ、ありがとう。ウソでもうれしいわ。」
「ウソじゃありません。優子さんも疑い深いですね。」
タオルで秘部だけ覆われた姿は全裸以上にエロティックで、狂おしいほど欲情をかきたてさせます。
私はこれをいい機会に彼女の体をくまなくうっとりと髪の先から足の先まで見惚れていました。腰までとどくつややかな髪が開扇状にばらけ、口は屈辱に耐えようとキュッと真一文字に閉じられ、睫毛が微かにピクピク震えています。美しく整った形の下顎から喉仏。その下ではいやでも男の注目を惹いてしまう二つのたわわに実った房がペタリと体に貼り付き、それは思わず触れてその弾力を確かめてみたくなる感情を起こします。それは、「こぶとりじいさん」の話しのように、女を困らすためにむりやり意地の悪い鬼に取り付けられた、瘤のようにもみえ、その下では雨だれによって、穿たれたような縦長のヘソ。見事にくびれたウエストがあり、その下では実用の些細な動作まで困らせるほどの分量で肉付けされた豊満な尻が華奢なつくりの胴から反発するようにもりあがっています。
私が彼女に見惚れていると、
「純さん。な、なにを考えているの。」
「いえ。あまりにも優子さんの体が美しいものでつい見とれていました。」
彼女は顔を赤くして、
「い、いや。あんまり見ないで。は、恥ずかしいわ。」
「ふふ。優子さん。猟師が仕掛けた罠にはまったエモノのようだ。」
私は彼女が自由を奪われているのをいいことに、彼女の足の指を開いてみたり、しなやかな脚を足の先から付け根の方へとゆっくり手を這わせてみたりしていました。そのたび彼女は、
「い、いや。恥ずかしいわ。」
といって顔をそむけます。
「優子さんの体、くまなく調べてみたいな。でも優子さんが、いや、ということはしませんよ。」
というと彼女は声を震わせて、
「い、いえ。は、恥ずかしいですけど、私の命は純さんのものですもの。なさりたいことは何なりとなさって下さい。私は必死で耐えます。」
恥ずかしさ、から目をそらして体の自由を奪われている彼女が、何をしてもいい、人形のように思えてきて、私は、あることを思いついて洗面所から歯ブラシや歯磨き粉とコップ、水、洗面器、を持ってきました。私は歯磨き粉を歯ブラシにつけて、目をつぶっている彼女に、
「優子さん。口を大きく開けて下さい。」
「な、何をなさるの。」
「歯ミガキです。」
「えっ。」と、驚いた彼女にかまわず、私は歯ブラシを彼女の口の中へ入れ、片手で顎を掴み、奥の方から磨きだしました。口が開いて、歯並びのいい前歯がみえます。
「きれいな歯ですね。まるで真珠か、美しい貝殻のようだ。」
私は丹念に全部をみがきおえると、
「はい。クチュクチュして。」
と言って、彼女の口にコップをあてがいました。彼女は言われたまま、クチュクチュ音をさせて、口の中をゆすぎました。
この時、ある子供じみた、いたずらに私は内心で苦笑していました。
てっきり吐き捨てる洗面器をあてがってもらえると思っていた彼女の顔を私は、何もしないで黙ってみていました。時間がたっても洗面器があてがわれないので、私の意地悪に気づいた彼女は目をパッチリ開いて、救助を求めるように私をみながら眉を寄せて、苦しげな表情で鼻から「んーんー」と苦しげな訴えをしています。歯磨き粉でゆすいだ水をのむのは何とも気持ちが悪いものですし、かといって床に吐き捨てるわけにもいきません。
こらえていると唾液がたまってきてどんどん苦しくなっていきます。
もう限界だ、と見えたところで彼女の口に洗面器をあてがいました。
彼女は、ゲホゲホッと咽びながら勢いよく吐き出しました。
「ごめんなさい。優子さん。つい、イタズラしたくなっちゃって。」
と、照れ笑いしながら言うと、彼女は、「フー」と、息を取り戻し、
「あー。苦しかった。でも純さんが自分の意志でいじめてくれてうれしかったわ。今みたいに私をもっともっと、どうしようもないように追いつめて、困らせていじめてほしいの。ありがとう。」
「もうニ、三回ゆすぎましょう。一回だけじゃ気持ち悪いでしょ。」
と言って、二回目の水を彼女の口にあてがいました。彼女はチラと私を不安げな眼差しで一瞥しました。私は笑って、
「ダイジョーブですよ。もう意地悪はしませんから。」
と言うと彼女は私を信じて安心して口をゆすぎました。ゆすぎ終わったころあいをみて、私は彼女の口に洗面器をあてがいました。彼女は口をゆすいだ水をその中に吐き出しました。
「胸、恥ずかしいでしょう。」
と言って、私は箪笥からブラジャーを取り出して彼女の胸の上に載せて彼女の乳房を隠しました。私は出来ることなら、されるがままの人形の状態の彼女を傍らでずっと見守っていたく思いました。
もうこんなチャンスはめったにないかもしれないし。で、彼女の髪をとかしたり、二の腕を揉んだり、体を拭いたりしました。
「純さん。私を踏んで。竹で叩いて。」
「そんなこと出来ませんよ。」
「純さん。強盗がそんなやさしくする? 悪人がそんなやさしくする?」
彼女は少し寂しげな口調で言いました。彼女の言葉には真剣に訴えるような切実さ、がこもっていました。
「純さんが私の頼みを聞いて下さっただけで、もう十分うれしいんですけど…。」
と言って彼女は語り出しました。
「純さんには分らないかもしれないですけど、私、もっと本当の拷問のように嬲られ尽されたいんです。なぜそんな衝動がおこるのか私にもわからないんですけど、本当なんです。子供の頃からテレビでも、悪者につかまっておびえている人質ってとってもうらやましかったんです。その後どうされるかと思うと。夢想はどんどん膨らんで、三、四人のサングラスをかけた角刈りのヤクザに捕まえられ、丸裸にされて縛られ、土足で踏みつけられ、ありとあらゆる意地悪な拷問にかけられたかったんです。私が泣き叫んでも容赦なく平手打ちされて。純さんにもそれを期待してたんですけど、純さんはやさしいから、やっぱり無理ね。」
とさびしそうに語りました。私はそれをすりかわすように、腕組して、考え深げに頭を垂れ、
「ウーン。わからないなー。確かに悪者に捕まっておびえている女性の顔ってとても哀愁的な魅力を僕も感じます。でも悪に本当に嬲られたいって気持ちは僕にはわからないな。」
と言いました。
   ☆   ☆   ☆
翌週になり、再び会社勤めの生活が始まりました。数日の間は、彼女と二人きりで過ごした無常に心地のいい遊戯の一つ一つが、自然と思い出されてきて、夢心地のような気持ちでした。彼女を陰ではかくまで自由に弄んでいる事を会社の誰も知らない、と思うと痛快でした。もし私たち二人の関係を知ったら、どんなに仰天することか。彼女が同僚と屈託なく笑っているのを見ると、その笑顔からは想像もつかない、美しい悪魔的な性癖を持っていると思うと、何か女の謎に翻弄されているようで、その神秘性のため、よけい彼女がキラキラ輝いて見えます。
 しかし日が経つにつれ、だんだん私は再び寂しさを感じるようになりました。しょせん私は彼女の性欲を満足させるための道具であり、彼女が声をかけてくれなければ私は一人きりなのです。私はそれでも一向にかまいませんが。
 私の方から彼女に話しかけたり、あの不埒な遊戯をまたやろう、と提案する自由はあります。彼女も本心から喜んで応じてくれる可能性は十分あるでしょう。しかし彼女が了解しても、あれは極度に神経の緊張を強いるものです。私は気が小さくて、神経質で、気を使ってしまう性格のため、彼女に少しでも気を使わせることを恐れて、あの遊戯は、私の方からは決して持ち出さないで、彼女の欲求が耐えられないほどつのって、彼女の方から私に持ちかけてきた時だけ応じようと思いました。そもそも私がそういう性格だからこそ彼女は私を選んでくれたのですから。夢心地が消え、一人でポツンとしていると、消極的な性格の私には過去の楽しかった事も悲観的な見方に塗り替えられて思い出されてきます。前回、彼女が、「強盗がそんなにやさしくする?」と、寂しげに訴えたのを私は真剣に受け止めて考えようとせず、「うーん。わからないなー。」などと適当にすりかわしてしまったことが妙に気にかかりだしました。私は何か気にかかることにとらわれると、他のことは手につかなくなって、その事ばかりとことん考え込んでしまう性格です。一日考え抜いた末、ついに私は無意識の内に誤魔化しつづけていた自己欺瞞の正体をはっきりと掴み取りました。それはこうです。
彼女をむごくいじめることが出来ないのは、彼女に対する思いやり、と私は思い続けていましたが、その実、その裏には自分は善でありたい、自分を悪にはしたくない、彼女に自分をこの上ない善人のように見せておきたいという打算があった事。自分は善人なんかではない。自分だって人と同じように悪い心は持っているのに、気が小さいから実行できないだけのずるい人間ではないか。.前回、彼女が
「強盗ゴッコをして。」
といった時、私が躊躇していた時、
「強盗がそんなやさしくする?」
「悪人がそんなにやさしくする?」
と、寂しげな口調で言った彼女の訴えを真剣に聞いていなかった自分を恥じました。私は自分が悪人になりたくなさに、真剣でなかった。しかし彼女は真剣だった。彼女は真剣に心の病の救済を求めていたのに、私は自分にとらわれていた。私は、「いじめられる女性」に、美を感じ、それに踏み込んではならない、という、自分の理屈を優先させ、「暴虐的にいじめられる女」になりたいという彼女の願望を楽観視していたのだ。私は、彼女に最初、「いじめてほしい。」といわれた時、それを引き受けたではないか。彼女は恥をしのんで告白した。私はそれに従う義務がある。彼女の真剣な訴えを私は真剣に受け止めていなかった。軽くみていたじゃないか。そんな、さまざまな自分を責める思いが次々と連想されてきました。
そんなことで沈みがちでいた、ある日の昼休みのこと。
いきなり、彼女にぽんと肩を叩かれました。
「純さん。どうしたの? 元気ないわね。」
彼女の天真爛漫な笑顔があります。私が黙っていると彼女は、屈託ない調子で、
「よかったら、お昼、外でいっしょにしませんか。」
と言います。私は彼女に手を引かれるように、外へ出ました。会社の前の車道を渡り、ある大きなビルの地下の静かな喫茶店に入りました。彼女はサンドイッチと紅茶に決めたので私も彼女と同じものにしました。
「純さん。何か悩んでいるの?」
「いえ。」
彼女はしばし私を黙って見つめていましたが、
「いいのよ。いいたくなければ。無理に聞き出すの悪いもの。」
と言って、おだやかに微笑んで紅茶を一口飲みました。彼女の温かさ、が伝わってくるようです。私は勇気を奮い起こし、自分の心の内をのべ、彼女に対して不誠実であったことをわびました。
「いいのよ。純さんには十分感謝しているんですもの。純さんが疲れない範囲でいいのよ。自分の性格に合わないことを演じるのってすごく疲れちゃうわ。やさしい純さんに、本気で悪になりきって、なんて言った私の頼みの方が自分勝手すぎたわ。無理な注文をしちゃって困らせちゃってごめんなさい。」
「いえ。優子さん。僕は優子さんに感謝しているくらいなんです。僕は自分のずるさに気づかされました。悪い心は人と同じように持っているくせに、自分はそれに手をそめずに人には善人で通すというのは、ずるい、と気づかされたんです。優子さんが勇気を出してカラを破ったように、僕もカラを破ろうと思います。それに女の優子さんが勇気を出してカラを破ったのに、男の僕がカラから抜け出す勇気を持てないでウジウジしているのって、男として情けない、とも思いました。」
彼女はスプーンでクルクル紅茶をかき混ぜていましたが、
「純さんて考えが深いんですね。」
と言って微笑して紅茶をすすりました。
「でも、うれしいわ。そこまで私のことを考えていてくれたなんて。そういう誠実な純さんだから身を任せたいって思うの。でも何だか純さんにわるいわ。一方的に私の妄想に巻き込んでしまって。純さんのマイペースを掻き乱してしまうのは、わるいわ。やりたくない役をやるのってストレスがたまるでしょうから、あまり無理なさらなくて、できる範囲でいいです。」
「いえ。僕は固く決心しました。どんな役でも演じきってみせます。」
「ありがとう。うれしいわ。じゃあ、どうしようかしら。」
と言って彼女はしばし目の玉を天井に向けて、考えていましたが、思いついたようにパッと視線を戻し、
「じゃあ。この前と同じように強盗ゴッコでいいかしら。」
というので私は、
「それじゃあ僕は強盗になりきります。優子さんも覚悟しておいて下さい。」
と力強く答えました。彼女は笑顔を私に向け、
「うれしい。ワクワクするわ。じゃあ、今週の土曜、楽しみに待ってます。私も強盗に入られておびえる女になりきります。」
と言って目をパチクリさせました。私は心を鬼にして凶悪な強盗になりきろうと決意を新たにしました。
時計を見ると昼休みの時間も残り少なくなっていました。彼女はレジをみて、財布を取り出そうとしましたので、私はそれを取り上げて、黙って彼女の腕をグイと掴み上げてレジへ行き、支払いをしました。男らしさとはこういうものなのだなと私ははじめて感じました。
「ありがとう。純さん。」
と彼女はニコッと微笑みましたが、私はムスッとした表情で、うるさそうに一瞥して、背広の前をはだけ、肩で風切るようにズンズン歩きました。彼女は腕を私の腕に絡ませてきて、
「わー。純さんて逞しいわー。頼もしいわー。どこまでもついて行きたい。」
と言って身を寄せてきました。正直言って私はこういう風に女性と歩くのははじめてでした。でも何か自分が本当に男らしくなったような気分がしてきました。
   ☆   ☆   ☆
約束の土曜日になりました。
私はサングラスに髪形はオールバックにし、ギンギラのヤクザっぽい身なりで彼女の家へ行きました。彼女は私を見ると、
「あっ。純さんですね。私のためにわざわざヤクザっぽい格好をしてきてくれたんですね。ありがとう。どうぞあがって。」
私は何も言わずズンズン上がるといきなり彼女の腕を後ろにねじ上げ、
「おい。金を出せ。」
「出さないときれいなお顔に傷がつくぜ。」
と、ポケットから取り出したナイフで彼女の頬をぴちゃぴちゃ叩きました。
「お、お金はありません。」
彼女は震える声で言います。
「そんなことはねえだろ。キャッシュカードと、暗証番号を教えろ。」
「お金はそんなにありません。それに大切な人との結婚資金なんです。」
私はピシリと容赦なく彼女の頬を平手打ちしました。
「そんな事俺の知ったことじゃねえ。俺は今、指名手配で追われているんだ。当分ここに住まわせてもらうぜ。」
と、ドスのきいた声で言いました。
「おめえは当分かりの女房ってとこだな。」
私は床にあった一本鞭を拾い上げると威嚇するようにピシリと床をたたき、
「おい。俺は腹が減っているんだ。何か作りやがれ。」
と恫喝的な口調で怒鳴りつけました。彼女は、
「は、はい。」
と言って台所へ行き、おかずの野菜をトントン切りだしました。私はそっと背後から忍び寄って、両脇から手を通していきなり彼女の胸をムンズとつかみ、荒々しく揉み始めました。彼女は、
「ああー。」
と言って、包丁の動きを止めました。刃物を扱っているので集中できずに手がすべる危険を恐れたからでしょう。
「ふふ。料理を続けるんだ。」
私は胸をジワジワと揉みつづけながら命じると彼女は、
「は、はい。」
と言って、「あっ。あっ。」と、時々うめきながら、時々仕事の手が止まりそうになりながらも苦しげに料理を続けました。私は片方の手でスカートをたくし上げ、手をそろそろ這い入れて、女の部分にピッタリとあてがいました。彼女は、「ああー。」と言って、脚をピッタリ閉じ、くなくなと倒れそうになりました。
「料理を続けるんだ。」
と叱りつけて、立たせたままにし、スカートの中に入れた手を気味の悪い節足動物が這いまわっているような運動に似せて怖がらせながら、彼女のピッチリ閉じた太腿や尻などの感触を思う存分楽しみました。彼女が耐え切れなくなり、
「ああー。」
と言って手を止めそうになると刺激を一時止め、
「料理をつづけるんだ。」
と命じました。私はだんだん興奮してきて、
「一度これがやってみたかったんだ。」
と息を荒くして言いました。
料理ができたので彼女は恐る恐るそれをテーブルにのせました。私は遠慮なく食卓に着くと、
「うまい。うまい。」
と言いながらバクバク食べました。立っている彼女に、
「おい。お前も座りな。」
と向き合わせに座らせました。料理は二人分ありましたが私は彼女に分けてやらなかったので、彼女は一人でポツンとしています。
食事がすんでタバコを一服すると、おびえている彼女に、
「素っ裸になりな。」
と命じました。彼女は、
「え。」
と、聞き漏らしたコトバをもう一度たずねるように小さく言ったので私は彼女に怒鳴りつけるように大きく、
「素っ裸になれ、と言ってるんだ。女を人質にしたら逃げられないようにするために素っ裸にするのは常識だろう。」
と言って、鞭でピシリと床を叩いて威嚇しました。
「ゆ、許して。それだれは。」
おびえる彼女のブラウスの胸元を掴んで遠慮なくピシリと頬を平手打ちし、ナイフを頬にピシャピシャ当ててから、ブラウスの胸元に刃をあて、
「手間を取らすんじゃねえ。脱がねえんなら、引き裂くまでだぜ。」
と脅すと彼女は、か細い声で、
「はい。」
と言って、服を脱ぎだしました。女性が怯えながら一枚、一枚、服を脱いでいく姿は何とも扇情的で、ブラウスから、スカート、ブラジャーへと、覆いが自らの手で抜き取られていきます。最後の一枚になると彼女は、
「お願い。これだけは許して。」
と哀願しますが、私は彼女の頬をピシリと平手打ちし、艶やかな髪を荒々しくムズと掴み、「手間を取らせるんじゃねえ。脱がねえんなら、髪を切っちまうぞ。」
とナイフの峰を、掴んだ髪にあてがいました。彼女はあきらめて最後の一枚をためらいがちに脱ぎ下ろしました。
脱ぎ終えると彼女は、くなくなと屈み込んでしまいました。彼女は見られないように、胸と秘部をピッタリ押さえています。私は彼女の前に立つと威嚇的にムチをピチピチ体にあてて、
「俺は女にゃ恨み骨髄なんだ。俺がこうなっちまったのも女に騙されたのがもとなんだ。女なんて男を騙すことしか考えてねえ性悪な動物だ。お前だってそうだろう。たっぷり折檻してやるから楽しみにしてろ。」
と吐き捨てるように言いいました。
「こ、こわいわ。」
とおびえて震えている彼女をムチでピシリと床を叩いて威嚇しながらテーブルまで歩かせました。
「そら。その上にのりな。」
「の、のせてどうしようというのです。」
と彼女は胸と秘部を手で覆いながら聞き返しました。
「別にどうもしねえよ。裸の女がテーブルの上にのっちゃいけねえって法はねえだろ。とっとと載りな。」
言われて彼女は恐る恐るテーブルに載って、さっきと同じように胸と秘部をピッタリ手で隠しながら立て膝でじっと屈辱に耐えています。
「どうだ。料理を載せるテーブルの上に素っ裸で載ってる気分は。うれしいか。」
「み、みじめだわ。は、恥ずかしいわ。」
「ほら。手を後ろに回して組みな。そして踏ん張ってウンコする格好するんだ。」
彼女は、「えっ。」と驚きの声を上げた後、悲しげな声で、
「お、お願い。そんなことだけは。許して。」
なかなか行動に移せない彼女の尻をピシャリと平手打ちして、
「ほら。そんなに見られたくねえなら恥ずかしい所はちゃんと隠させてやるから。」
と言って、私は彼女の両手をグイと後ろで握らせて、花のいけてあった花瓶を彼女の秘部の前に置き、両膝をグイと力いっぱい開きました。秘所は花瓶で隠されていて、かろうじて見えませんが、それは全裸以上に逆説的なエロスを生み出しています。
「あ、ああ。みじめだわ。こんな姿、死にたいほどみじめだわ。」
何とか隠そうと、花瓶にくっつくほどに女の部分を密着させて尻を蒟蒻のようにフルフル震わせています。
「ふ。熱烈に寄りつかれて、花瓶が赤くなって火照っているぜ。」
「い、いや。」
と彼女は羞恥心から激しく首を振りました。
「まるで、ガマガエルだな。でっかい尻で踏ん張って。大和撫子は恥じらいの心が無くちゃいけねえぜ。」
などと言って揶揄すると、
「お、お願い。も、もう許して。」
と訴える彼女を無視して、彼女の肩に陶器の皿をのせました。
「な、何をするの?」
と言う彼女を無視して、
「いいか。落とすなよ。落としたら皿がガッシャーンだぜ。10分我慢できたらおろしてやる。」
そう言って私は身動きが取れないのをいいことに両手を後ろで組んでいるために、あらわになっている彼女の両方の乳首を引っ張りました。彼女は眉を寄せ、
「ああー。」
と、苦しげな声を出しながらプルプル体を小刻みに震わせながらも皿を落とさないよう、必死で背筋を伸ばして体を保っています。彼女は身動きの取れない不自由な体を弄ばれながらも10分耐え抜きました。私が不満そうに10分経ったことを伝えると彼女は安心したようにほっと一息つきました。
「ふん。このままこのテーブルに縛りつけて女体盛り、をするってのも面白いけれど勘弁してやらあ。ほら。降りな。」
と言って肩の上の皿を下ろしました。彼女は秘所を押さえながらテーブルを降りると床にうずくまりました。
「ほら。運動して腹が減っただろう。エサをやるから四つん這いになりな。」
躊躇している様子が少しでもみられると、私はムチでピシャリと床をたたいて威嚇しました。彼女はやむを得ず、観念して犬のように四つん這いになりました。私は彼女の前に皿をおいて、イヌにエサをやるように牛乳をそれに注ぎました。
「ほら。イヌのように手を使わずに舌でペチャペチャ舐めな。」
言われて彼女は美しい長い黒髪を床に散しながら、イヌのように舌を出して皿の中の牛乳を掬っています。
「自分が作ったゴーカな料理にはありつけず、イヌのような格好で牛乳一杯とはみじめなもんだな。」
と私は惨めな姿の彼女を揶揄しました。
「ほら。もっとイヌらしく足を開きな。」
と言うと彼女は命令に素直に従って少し足を開きました。一瞬私は、無言で四つん這いで牛乳をすくっている彼女が本当に美しい雌犬になったような錯覚におちいりました。
「さあて。そろそろ拷問にかかるとするか。」
と言って彼女の両手を掴んでグイと後ろにねじ上げ、高手小手に縛り上げようとすると彼女は、
「な、なぜ私を拷問するのですか?」
と激しく聞き返しました。私はフンと不満げな表情のまま、答えようとせず、両手を背後に回し、手首を縛り上げてから縄のあまりを前へ廻し、豊かで形のいい乳房の上下を二巻三巻、強く締め上げてから彼女にさめた視線を向け、
「お前もどうせ男をダマしたことがあるんだろう。」
と言って彼女の顎を掴んでグイと上げました。
「い、いえ。そんなことありません。」
彼女は悲しそうな視線をそらして否定します。
「フン。嘘をつくな。女なんて心の中じゃあ、男をいいように利用しようとしか考えてないんだ。特にお前のような、小奇麗な女はな。だから本心を吐かすのよ。白状するまであらゆる方法で責めてやる。」
彼女はイヤイヤをするように激しく首を振りました。
「お前も気の強い女だ。だがどこまで耐えられるかな。ふふふ。」
私は後ろ手縛りの縄尻のあまりを天井の梁に取り付けられた滑車に通してグイグイ引っ張って彼女を立たせ、縄を固定し彼女を立ち縛りにすると、両足首をそれぞれ縄で縛り、グイと無理やり引っ張って脚を開かせました。そして股の間に椅子を置いて、その上に胴の太い蝋燭を立て、それに点火しました。炎は女の肌の最も弱い所へ向いています。黙々と休むことなく垂直に吹き上げるように放射されつづける炎の熱は、炙るように女の柔肌を過熱しつづけます。
彼女は、「あっ。」「あっ。」と、叫び声を上げつま先立ちになり、
「あついー。」
と言って炎から逃げようと必死で腰を引いています。彼女は下肢からつづく尻をプルプル震わせて、ポロポロ涙をこぼしながら、
「ゆ、許してください。」
と、哀しげな目を私に向けてひたすら哀れみを乞いつづけます。
彼女の身をよじっている苦しみの姿をみていると、私の中に加虐的な欲情が起こっているのに気づかされました。不思議にも残酷な気持ちはありませんでした。つま先立ちのため、ただでさえ長い脚がスラリと強調され、そのピクピク小刻みに震えているしなやかな脚からつづく均整のとれた体、悲哀、苦悩の表情、そのすべてが無上の「美」に見えてきたのです。加虐的行為の観照者とはなり得ても、行為者にはなり得ない、という私の確信がゆらいだのを私は感じました。彼女のあまりにも美しい悪魔的感性が、私の中にあった小さな加虐心を増幅させ、膨張させてしまったのでしょう。しばし茫然と我を忘れて、みていた私を現実が引き戻しました。彼女は火責めの熱さ、に耐えきれなくなって、とうとう恥を忘れ、生理的な手段で消火活動を行いだしました。ねらいを定めて放出された流水によって炎は消されましたが、一度開放された水門は閉じる抵抗力をもてず、消火後も虚しく、みじめに椅子から床へと水滴を滴らせています。それは彼女の心境の涙のようにもみえました。私は蝋燭の載せてある椅子をとりのぞき両方の足首の縛めも解きました。彼女はグッタリと自失したようにうなだれています。
「あーあ。びちゃびちゃにしやがって。恥知らずなやつだ。」
言われても彼女は黙って俯いています。
「ふふふ。何だ。前は。つるつるじゃないか。よく見えるぜ。」
そんなヤクザっぽい揶揄をかけても私は何の違和感も感じませんでした。
「よーし。前に鏡を置いてやる。」
と言って私は等身大の鏡を持って来て、彼女の前に置くと。グッタリうなだれている彼女の顎をつかんでグイと鏡のほうに向かせ、
「みるんだ。」
と恫喝的な口調で命じました。彼女はチラと自分のみじめな裸の縛めの姿を鏡の中にみると、自失から現実に気が戻り、
「いや。恥ずかしいわ。おねがい。許して。」
と激しく身もだえします。私は長い一本鞭を持って彼女の後ろに立ち、調教師が猛獣を従わせるため威嚇するようにピシリと床をたたきました。
「ふふ。火責めにはその手があったな。じゃあ鞭打ち責めといくぜ。永遠に終わりのない鞭打ちだ。」
と脅しつけました。彼女は、
「こ、こわいわ。」
と言ってこれから受ける責めにおびえて体を縮めて全身を小刻みにプルプル震わせています。私は痛快さに心の中で笑いました。
おびえる人間を威嚇することは何と楽しいことなんだろう。
拷問者の気まぐれにおびえている人間は何と滑稽なんだろう。
そして何と悲哀の美しさの魅力があるのだろう。
私は容赦なく後ろから彼女を鞭打ちだしました。
ムチは彼女の体に絡まるように巻きついた後、先端に近づくにつれ、遠心力によって速力を増し、最後にピシリときびしい一撃を加えます。そのたび彼女は、
「ああー。」
と言って顔をのけぞらせます。彼女の肌にはどんどん線状の赤いミミズ腫れが刻まれていきます。彼女は目からポロポロ涙を流し、
「許して。許して。」
と叫びつづけます。容赦ない呵責の鞭がピシリときびしく振り下ろされると、「ああー。」と苦痛の悲鳴を上げてキリキリと舞い踊ります。拷問者の気まぐれな意志におびえて、絶えず小刻みに体を震わせて時々、拷問者の哀れみを乞う弱々しい目を向けながら耐えている姿は悩ましいほどの哀愁の美しさを醸し出しています。
だからといって手加減する気は起こりませんでした。容赦なくいじめれば、いじめるほど、彼女は魅力的に美しくなっていくのですから。
いじめることの甘美な快感の魔力に駆り立てられるように、私は憑かれたように彼女の許し乞いの叫びなど無視して、無我夢中で鞭打ちつづけました。私はもう身も心も本当の拷問者になっていました。
「止めてほしかったら言うんだ。男を騙したことがあるかどうかを。」
と言いながら私は鞭打ちつづけました。
「い、言います。言いますからどうかお許しください。」
私が鞭打ちを休めると彼女はしばらくハアハア呼吸を取り戻していました。私はもう加虐心でいっぱいでした。
「言うんだ。」
と言って尻をピシリと思いきり一打ちしました。「あっ。」と悲鳴が上がり、反射的にキュッと尻に力が入って割れ目の閉じ合わせが強まります。
「お、男の人をだましたことはあります。」
「どんな風に。」
「テレクラで呼び出しといてすっぽかしたり。世の中って女に有利に出来てますから、そういう機会はいくらでもありました。」
「よし。正直に白状したからもう鞭打ちは許してやる。」
「あ、ありがとうございます。」
すべての縛めを解くと彼女は、くたくたと床に倒れるように伏してしまいました。よほどこの責めはつらくて、疲れ果ててしまったたのでしょう。彼女は眠ってしまったかのごとく、目をつぶって微動だにしません。私はもう、責め、も、演技も、もうこれで終わりだなと思いました。彼女の無言の休息も、もう終わりにしてほしいとの意志表示に違いありません。憑かれたような、激しい無我夢中の、役になりきった演技が終わりになって興奮が冷めて我にかえると、弱々しい柔肌に激しい鞭打ちの跡を残して人事不省のように黙って倒れている彼女が、あらためて、一刻も早く救急手当てをしなければならない患者のように見えてきて、私はとんでもない事をしてしまった自分に後悔しながら、あたふたしました。
「優子さん。ごめんなさい。さんざんひどい事をしちゃって。もう終わりにしましょう。」
彼女は目を閉じたまま柔らかい微笑を浮かべて、
「はい。」
と返事しました。ベッドに彼女を運ぼうと、彼女を抱き上げようとすると彼女は、
「あっ。待って。」
と言って制し、
「ダイジョーブです。起きられます。」
と言って上半身を起こしました。彼女は裸のまま、ベッドに行くとパタリと倒れ伏すと、
「ゴメンなさい。純さん。少し休ませて。」
と言って目をつぶってスヤスヤと心地よい寝息をたてています。
(4)
 私は彼女に布団をかけ、彼女の下着や服を持ってきて、ベッドの元に置きました。私は雑巾を持って来て蝋燭責めの時に濡れてしまった椅子や床を拭いて、ちらかっている縄や蝋燭を片付けて、部屋を元の状態にしました。私は椅子に腰掛けて、すまない事をしてしまったと、後悔していましたが、ほどなく彼女は目を覚ますと、いつもの快活な声で私を呼びました。
「もういいわ。純さん。ちょっと手をかしてくださらない。」
言われて行くと彼女がブラジャーのホックを後ろではめようとしているところでした。私がホックをはめると、彼女は、
「ありがとうございます。」
と言ってスカートを手にとり、片足をくぐらせました。言い知れぬ官能が私を襲いました。何故かは分りません。本来の姿にもどってしまって、もう裸がみれない未練、の、さみしさ、のせいか、イヌのようにまでして裸にしてさんざん拷問にかけていたのにもうそれは出来ず、手が届かない、今まで通りの、女性という「美」を見せつけられるだけの、くやしさ、のせいか、そんな気持ちからだろうと思います。私は元の気の小さい男にもどり、間違っても「もう一度脱いで」などと言う勇気はありません。私はあくまで彼女が求めてきた時だけ彼女の願望に応じようとの固い決意をしていました。彼女に「もう一度脱いで」と言えば、彼女は笑って私の要求に答えてくれるでしょうが、私の気の小さい性格から、とてもそんなことは言い出せません。彼女はスタスタと歩いてテーブルにつきました。拷問をうけた後とはとても思えず、さっきの疲労も、もう完全に回復して、全く何事もなかったかのようです。
「純さんも来て。」
と明るい声で言われて、私はコソコソと向かいの席につきましたが、彼女の顔を見ることも出来ないほど恥ずかしい思いで、俯いていました。手もとどかない美しい優子さんに、抱いていたいやらしい心の欲求を見られて、見下げられている様なみじめさでいっぱいでした。彼女はニコニコ笑って、
「純さん。ありがとう。モヤモヤした欲求が解消して、とてもすっきりしました。」
私は申し訳なさに耐えきれず、彼女の足元に土下座して、床に頭をつけ、
「ごめんなさい。ひどい事をしちゃって。お願いです。どうか存分にけって下さい。」
と叫びました。彼女は私の手をとって元の椅子に座らせ、朗らかな口調で、
「いいのよ。私が頼んだことじゃない。純さんが謝る理由なんてどこにもないわ。」
「で、でも、それでは僕の気がすみません。いつかのようにヒールで思いきり踏んでください。」
「そんなことできるわけないわ。純さんの性格に合わない、私の一方的な要求を一生懸命して下さったのに。お礼を言うのは私の方だわ。つかれたでしょう。」
「い、いえ。」
「私はちょっと疲れたかもしれないけど、純さんの精神的な疲れの方がずっと大きいと思うわ。お料理の味、どうでしたか。」
「お、おいしかったです。」
私は彼女の手作りの料理を食べておきながら、彼女には四つん這いにして牛乳を舐めさせてしまった事を思い出して消え入りたいほど恥ずかしい思いになりました。だからといって、彼女の作った料理を、「どうぞ食べて下さい」と言うわけにもいかず。
「優子さん。ムチの跡、大丈夫ですか。」
「ええ。二週間くらいすれば、跡形もなく元通りに消えるわ。」
「二週間もかかるんですか。」
「ええ。あのムチってけっこう痛いものよ。純さんは打たれたことがないから感覚が分らないんだわ。でも、手加減して、とも、言いにくかったし。」
「ごめんなさい。」
彼女は笑いながら、
「いいのよ。いちいち謝らなくても。」
「いえ。白状します。はじめは確かに演技だけでした。でもだんだん優子さんを本当にいじめたいという気持ちになってしまったんです。」
「それも私のせいだわ。私が純さんの心を刺激してしまったからだわ。気になさらないで。」
「ともかく僕の気がすまないんです。何か、どんな方法でもマンゾク出来るだけ僕をいじめ返してください。」
彼女は少し困った様子で天井を見ていましたが、やや経ってて、パッと顔を戻し、
「また私をいじめに来て下さる?」
「は、はい。」
「じゃあ、その時ちょっといじめちゃおうかしら。」
と言って「ふふふ」と笑いました。
「は、はい。存分になさってください。」
その後少しくつろいだ会話をしてから私は彼女の笑顔に見送られながら、彼女のアパートを出ました。
   ☆   ☆   ☆
 翌週になり再び会社勤めの生活が始まりました。先週のプレイ以来、私はずっと不安と後悔に悩みつづけました。プレイの時、私はサディストになりきって暴虐の限りを尽くしました。いくら彼女の方から望んだ事とはいえ、普通の女性なら、あんなことをしてしまっては、もう付き合いはおしまいです。彼女は私が意志を持って彼女をいじめることを望み、私は私の本能に従った意志で彼女をいじめました。彼女も私がためらいを捨てた時の私の姿を彼女なりにイメージしていたはずです。はたして私が本能のままとった行動が彼女の期待に合っていたのか、それとも期待とはぜんぜん違って幻滅してしまったのか、私には知る由もありません。彼女は暴虐的になぶられたい欲求はありながらも、そんな事が出来ない私だからこそ、私に好意を持ってくれているのです。それに私自身、女性に対してあんな乱暴を平気で行える人間であったことに気づかされて、ずっと自己嫌悪に陥っていました。また彼女もプレイの時は被虐の快感に酔っていたでしょうが、プレイが終わってさめてしまった後に、あれほどの暴力的陵辱がはたして心地よい快感として思い出されるでしょうか。
 私は我を忘れてサディズムの快感を貪り尽くしてしまいましたが、嵐が去って平常の気持ちに戻った時には、彼女には痛々しい鞭の跡だけしか残らなかったのではないでしょうか。そしてその鞭の跡を見るたびに私に対する幻滅と嫌悪感が起こったのではないでしょうか。こんな考えは気の小さい私だからこそ起こってしまう取り越し苦労の気があるかもしれませんが、いったい虐められっぱなしで何とも思わない人間などいるでしょうか。彼女も性的には被虐心が強くても、それから離れれば喜怒哀楽の感情は他の人と何ら変わりのない良識的な一人の女性です。私は本能のまま行動してしまった事を悔やみました。何より貸し借りの関係がついていないことがすっきりしませんでした。今は彼女を一方的にいじめてしまった、借り、の立場ですので今度のプレイでは彼女に十分に満足できるだけ、徹底的に虐められて、ともかく早く借りを返したい気持ちでいっぱいでした。
それと彼女の本心を知りたい気持ちでいっぱいでした。
会社での昼休み、彼女に誘われて社外のビルの喫茶店に入ってテーブルに着くと私は人目も構わず土下座して、
「ごめんなさい。この前はひどいことをしちゃって。この次はうんと私を気の済むまでいじめて下さい。」
と床に頭をこすりつけて謝りました。彼女は驚いて私の手をとって立たせ、テーブルに着かせました。私が心の内をすべて語ると彼女はクスクス笑って、
「純さん。考えすぎよ。純さんの考え、全部はずれてるわ。鞭の跡を見る度に私は本当に拷問を受けたんだと実感できてうれしくて仕方なかったわ。」
私は彼女は小さいことにこだわらないおおらかな性格なんだと思い知らされました。そして自分を基準にして人を見ていたあさはかさに気づかされました。
「でもそういう風に謝ってしまう性格だから純さんが好き、ということだけはあたってるわ。」
私は彼女に見捨てられずにすんだ事がうれしくてほっとしました。私は強気の口調で、
「とにかく今度は僕を気の済むまでいじめて下さい。優子さんが何と言おうと僕の気持ちがすっきりしないんです。それに次の時は僕をいじめると約束したじゃありませんか。」
と、問い詰めるように言いました。彼女はしばし迷っていましたが、ポソッと、
「今週もいじめられる事を楽しみにしていたんだけど・・・そこまで言うなら仕方がないわ。」
と、あっさりした口調で言いました。
   ☆   ☆   ☆

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M嬢の物語 (小説)(3)

2020-07-07 07:38:29 | 小説
 約束の土曜になり、私は彼女のアパートへ行きました。今日はうんと彼女にじめられて、借り、を返せると思うと晴れ晴れした気持ちになります。どうせ弱々しい女のすること、しかも彼女はやさしい性格で、根っからのMで、主体的にキビしい拷問など出来ず、竦んでしまって、ママゴトのような責めになるだろうと思うと、何かくすぐったさを感じました。私はあらかじめ、責め、のメニューを考えておきました。彼女が同情して、「もういいわ。」と言っても、「いえ。これだけでは私の気がすみません。もっとつづけて下さい。」と言って、つづけさせ、十分、貸し借り、を清算できたと思うまで私がリードして彼女に責めさせようと思いました。私は責めに耐え抜く雄々しさを示せることにうれしさも感じていました。私のイメージは天体を支えるヘラクレス、岩盤につながれたプロメテウス、権力者の拷問に耐え抜く殉教者などの勇者の姿でした。私もその勇者の一人に加われると思うと何か心地よい気持ちでした。
 しかし現実はそれとはかけ離れたものになってしまいました。
チャイムを押すと彼女の明るい声が返ってきて、笑顔で私を向かい入れてくれました。彼女は何かウキウキした様子です。彼女はおおらかで、私と違い積極的な強い意志を持った性格です。そういえば以前、私の手をヒールで踏みつけたり、私を無視して困らせてみたりと、イタズラな面も持っています。今まで彼女は、ずっとMの役だったので、彼女のSなど想像すらしていませんでしたが、人間とはそんな単純なものであるはずがありません。彼女がSの役になった時、はたしてどう変わるのか、それが全くわからないことに私は少し不安を感じ出しました。彼女はずっとMの役ばかりやって、Sの役はやらなかっただけで、それはSが出来ないという証明にはなりません。私は彼女がSの立場になった時、どうなるかは全く考えてもみなかった、というより、私の勝手なイメージを作り上げてしまっていたことに気づきました。もしかすると彼女のこだわりのない積極的な性格からすると、わりとSもかなり平気で出来るのではないか、という不安が起こってきました。食事の最中も、
「今日は私が純さんをいじめる番ね。」
と、屈託ない口調で笑いながら言います。そんな笑顔の彼女を見ると、私の不安はいっそう募っていき、握っていたナイフとフォークはピクピク震えてきました。相手が絶対的に弱いものだという前提が崩れると、持ち前の臆病な心がフツフツと起こってきて、私は射竦められた小禽のようにおびえの気持ちでいっぱいになってしまいました。食事がおわると彼女は、
「それじゃあ責めさせてもらおうかしら」
と言って、彼女は、
「ふふふ」
と笑いました。私は、
「はい」
と緊張して答えました。彼女に、
「じゃあ服を脱いで」
と言われて私は服を脱いでいきました。黒のビキニのサポーターパンツ一枚になるとそれ以上脱ぐことにためらいを感じて、私は隆起した、その部分を両手で必死におさえていました。
「わあ。黒のビキニだわ。黒のビキニって男の人がもっともセックスアピールする時のだわ。私のために準備してくれたのね。うれしい」
彼女は私をじっと見ながら続けます。
「でもそれも脱いでくれなきゃ裸とは言えないわ。脱いで」
私は逆の立場に立たされて裸になって、見られることのつらさを知りました。
「こ、これは許してください」
私は彼女に哀願しました。
「どうして?」
「は、恥ずかしいんです」
「女が裸をみられることを恥ずかしがるのは分るけど男の人は裸になるのを恥ずかしがったりはしないわ。わけを聞かせて」
彼女は予想していたのとは違う、強気な命令的な口調で言いました。
「い、言えません。許してください」
私が困惑していると彼女はスッと立ち上がって、私の脱いだ服を取り上げてしまいました。
「女の人の裸は美しいですけど男の裸は美しくなくて、みっともないだけです」
「でも約束を守るってこと大事なことじゃないかしら。私だって純さんにさんざんはずかしめられたわ」
彼女はちょっと考えた後、言いました。
「わかったわ。じゃあ、しっかり隠せるものをあげるわ。だから脱いで」
「あ、ありがとうございます」
私は後ろを向いてビキニパンツを脱ぎました。
「こっちを向いて」
と言われて私は、
「はい」
と答え、隆起した部分を必死で押さえていました。彼女は「あっ」という私にかまわずビキニパンツを取り上げてしまいました。「ふふ」と彼女は笑っています。
「どうしてそんなに恥ずかしがるの」
「そ、それは、あこがれの優子さんだからです」
「お世辞はいいわ」
「い、いじめないで下さい」
「何をされてもいいと言ったのに何でそんなにいやがるの」
「そ、それは。サポーターは履いたままで、ムチ打たれたりとか、竹で叩かれたり、とか男にふさわしい責めだと思ったからです」
「そういう早とちりしちゃうと、長い人生で人に騙されちゃうわよ。世の中には悪い人がいっぱいいるんだから」
「ずっとこうしているのもいいわね。そうしようかしら」
「さ、さっきビキニを脱ぐかわりに覆うものをかしてくださると言ったじゃないですか」
「そうね。約束は約束ね」
と言って彼女はポイと私に手に隠していたものを投げました。
「あっ」
と私は声をだしました。それは女のパンティーでした。優子さんのでしょう。
「こ、これはパンティーじゃありませんか」
「そうよ。私のパンティーよ。それは覆い隠せるものじゃなくって?」
私が戸惑っていると、
「履きたくないのならいいわよ。どっちにする」
私は迷ったあげく、裸でいるよりは、と、後ろを向いてソロソロとそれを身につけました。男が女のパンティーを履くなんてみっともないものです。優子さんは私をみじめのどん底に落とそうとしているのだ。優子さんはSの性的嗜好も、かなり強くもっているのだ、と鈍感な私は今になってやっと気づきました。履いて私は「あっ」と叫びました。それは以前優子さんに履かせたビキニのようにお尻が半分近くみえてしまうようなものだったからです。だからといって一度履いたものを脱ぐことも出来にくいものです。私は隆起した部分を必死に手で押さえていました。
「純さん。後ろを向いて」
と言われて、後ろを向くと彼女はグイと手を後ろに回し、縛り上げました。
「さあ。立って。部屋を一周しましょう」
私はおそるおそる立ち、彼女に縄尻をとられ、部屋を一回りしました。女のパンティーを履き、縄尻を取られて歩かされるなんてみっともないものです。
部屋をまわり終わると彼女は縄尻を滑車に通し、私を立ち縛りにしました。
彼女は椅子に座って困惑している私を楽しそうに見つめています。
「どう。女の子になった気分は。」
「誰にも言わないわ。純さんも心も裸になっちゃいなさいよ。いい子でいると疲れるわよ。」
「女の下着をつけて興奮するなんて、純さんて本当は女装趣味があるんでしょう。」
私が膝をモジつかせていると彼女はそんな揶揄の言葉を投げかけます。私には女装趣味はありません。私はデパートでも女性の下着売り場の前を通っただけで興奮してしまうくらい女性の下着に対する拝物的な欲求を強く持っています。しかしそれはあくまで女性の付属物、代替物として惹かれるのです。私には女装趣味の男の心理が分かりません。分からないというより嫌悪を感じつづけていました。私には男性的なたくましさが生来ないため、女を征服する対象とはみなせず、女性は崇拝の対象でした。崇拝が昂じて崇拝の対象である女そのものになりたいという女性化願望は当然のごとく起こりました。指をくわえて美を崇めているのもいいが、美そのものになれたらどんなに幸せなことか。自慰自涜する時、私の精神は完全に女になっています。しかしこれはあくまで想像の中だけでの性転換であって、それは醜悪なものとは思いません。しかし女の下着を実際に履くなどという事は醜悪で、嫌悪感しか感じませんでした。もし私が女のような美しい容貌で女の下着を履いてもグロテスクでないなら私は女装趣味を受け入れられたかもしれません。いや、きっとそうしたと思います。しかし私の顔はとてもそんな女装姿が絵になるような美形ではなく、女装などしたらグロテスクなだけです。物事をすべて、美、という価値観から見る私にはとても出来るものではありませんでした。男の女装趣味は、それが似合って、美になるような、まれな柔和な優男がすればいいのであって、そのような容色に生まれつかなかった男は想像の中でだけ女になって楽しめばいいのだ、と思っていました。美形でないのに自分の女性化願望にまかせて女装するような男は、美、という観念が欠けているのだ、と軽蔑していました。
しかし嫌悪していたはずの女装が彼女の巧妙な言葉の誘導で少しずつ揺らぎ始めました。
彼女は後ろ手に縛められて、立っている私の背後から手を廻して胸にピッタリあてがってゆっくりじらすように揉みながら、
「どう。女の子になった気分は。」
とか、
「誰にも言わないわ。純さんて女装趣味があるんでしょ。誰にも言わないから本心を白状しちゃいなさいよ。」
などと悪魔の誘惑を耳元でささやきます。私は必死に首を振って、
「そ、そんなものありません。」
「じゃあ、どうしてパンティーを履いて興奮しているの。むくむくよ。ほら。」
と言って隆起した部分に手をあてがいました。私は、
「ああー。」
と声をあげ、歯をカチカチ噛み鳴らして必死で耐えていましたが、彼女は面白がってますます責めを強めていきます。女性にこんな風に弄ばれれば男なら誰だって興奮してしまいます、などと言っても弁解などすればするほど猜疑心を強めてしまいます。もう何も言うまい、黙って耐えようと思って無言でうなだれていると、彼女はますます嵩にかかって、
「そう。そんなにパンティー履くのがいやなら脱ぎましょうね。無理に履かせてしまってごめんなさい。」
と言ってパンティーをさげ始めました。
「あっ。」
と私が叫び声を上げた時にはもうすでに遅く、尻が丸出しになり、私は必死でそれ以上、下げられないよう膝をより合わせました。
「どうしたの。パンティー履くのいやなんでしょ。」
彼女は空とぼけて言います。もともと責めは覚悟していた私です。
たとえ彼女の方から頼んだ事とはいえ、一方的に彼女をいじめるというのは、どうも気持ちがすっきりしない。それで、いじめた分、いじめ返されることに私は貸し借りの清算を心待ちに思っていました。しかしそのいじめは、ブリーフは、履いたままで鞭打たれたり、命令に服従したりと、男にふさわしい責めだと思っていました。そして天体を支えるヘラクレスのように責めに絶える雄々しさを憧れの女性の前で示して見せてやる、ということに、うれしささえ少なからず予期していました。しかし彼女のいじめとは予想していたものとは全然違う、心を徹底的になぶる羞恥責めです。これからどうなるのか、彼女がどんなことをするのか、自分が自分でなくなってしまうような、恐ろしさにおののいて、私は身動き出来なくなってすくんでしまいました。彼女は続けて言います。
「どうしたの。パンティー履きたくないんでしょ。」
「お、お願いです。」
「なあに。」
「パ、パンティーを・・・。」
恥ずかしくてその先を言うことが出来ないでいると、
「なあに。パンティーをどうするの。はっきり言ってくれなきゃ分からないわ。」
と言って彼女は含み笑いして、
「でも困ってる純さんて女の子みたいでかわいいわ。ずっとこうしているのもいいわね。」
などといって椅子に座って紅茶を飲み始めます。私は惨めな姿をさらしつづけることに耐えられなくなって、声を振るわせながら、
「パ、パンティーをあげてください。」
と声を震わせて言いました。すると彼女は、
「あげるってどうするの。箪笥の中のパンティーを箪笥の上に載せること。それとも誰か人にあげてっていうの。もっと分かりやすく、はっきりと具体的に言って。」
「パ、パンティーを元のように履かせてください。」
言うと彼女は、してやったりという得意顔で椅子からぴょんと飛び降り、
「わー。やっぱり純さんはパンティーを履きたいのね。やっぱり女装趣味があるんじゃない。恥ずかしくて言えなかったのね。」
と彼女は手をたたいて喜び、パンティーを引き上げました。強制的に言わさせられたとはいえ、惨めなものです。ガックリうなだれていた私の後ろに彼女は廻って、
「ふふふ。純さんが女装趣味があるなんて知らなかったわ。純さんは電車の中で痴漢にあっている女の子よ。本当はこうやって女の子みたいにいじめられたいんでしょ。正直に本心を白状しちゃいなさいよ。」
と言って、痴漢のようにパンティーの辺りを、誘惑するような手つきで巧みに手を這わせたり、胸を揉んだり乳首をキュとつまんだりします。彼女の巧みな誘惑の愛撫が私の心に悪魔の官能を起こし、私の男の部分はびんびんに隆起していました。私は歯をカチカチ噛み鳴らしながら、首を振り、必死で耐えながら、
「優子さん。お願いです。やめてください。」
と首を振りながら叫びました。しかし、彼女は聞く耳を持たず、巧みな愛撫を続けながら、
「純さん。何をしてもいいと言ったじゃない。」
と、うそぶきます。
「ム、ムチ打ってください。好きなだけムチ打ってください。そ、そのかわり、こんなことだけはやめてください。」
と言いますが、彼女は嵩にかかった口調で、
「あーら。何をしてもいい、と言って、条件なんかつけなかったじゃない。約束を守るってこと大切なことじゃないかしら。」
と、突っぱねます。
「純さんが本心を白状するまでずっと続けるわ。」
と言って巧みな愛撫をつづけます。彼女は時々、私の耳元に口を近づけて、
「誰にも言わないわよ。」
とか、
「白状すると楽になるわよ。」
などと悪魔のささやきかけをします。私の頭は彼女の誘惑の愛撫が起こす悪魔の官能でいっぱいで、冷静に考える思考力も麻痺していました。私はもうただ、彼女のしている、じらし責めから逃れたい一心で、もう自分が自分でなくなってもかまわない、という自暴自棄的な気持ちになって、彼女に屈する覚悟をしました。
「わ、わかりました。優子さん。言います。言いますから、どうかもう許してください。」
「そう。じゃ、言って。でもウソっぽかったらダメよ。」
と言って、手の動きを止めました。私には女装趣味はありませんでしたし、女性化願望も精神的なものでした。しかし今は違っています。これは彼女の誘導尋問ですが、もうどうでもよくなっていました。私は検察官の尋問を受けている容疑者がラクになりたさにウソの自白をしてしまう心理をつくづく実感しました。
「私は優子さんの言うとおり、女装趣味があります。一人でいる時は女の下着をつけて興奮していました。私は身も心も女の子になりたいと、ずっと思っていました。夢を叶えて下さった優子さんに感謝しています。どうか、私を女の子のように責めてください。」
と言うと彼女は手をたたいて笑い、
「わー。やっぱりそうだったのね。思ってた通りだったわ。わかったわ。純さんを女の子のようにやさしく虐めてあげるわ。」
と言って彼女は私にアイシャドーをしたり、足に赤いペディキュアをつけたりします。無理に言わせられたとはいえ、彼女の責めに負けてしまった以上、もう恥も体裁もどうでもよくなり、私はもう本当に彼女に女の子のように責められたい、という願望がふつふつとわいてきました。
彼女は再び、私の後ろに廻って痴漢のように体をもてあそび出しました。
「優子さん。」
「なあに。」
「そんなお手柔らかなのじゃなく、もっと徹底的に、めちゃくちゃにして下さい。」
と言うと彼女は「ふふふ。」と笑い、
「わかったわ。じゃ、ちょっと待ってて。」
と言って隣の部屋へ行きました。しばしして戻ってきた彼女を見てびっくりしました。彼女は本格的な黒い皮の女王様ルックで戻ってきたからです。Tバックの、露出度のきわめて激しいハイレグで、一見するときわめて男の欲情をそそるセクシーな姿ですが、ピッチリと体に密着して、わずかに秘部だけ覆っているだけのその衣装は、丈夫な皮の光沢が、厳重な鎧のような感じを呈し、男の侵入を許さない絶対者のような威厳で無言のうちに男を威嚇しているように見えます。目には仮面舞踏会の時するようなアイマスクをし、手にはこの前私がムチ打った一本鞭を握っています。アイマスクで表情が見えないため、彼女が何を考えているのかわからず、それがいっそう恐怖心をつのらせます。彼女はMなのに、こういう女王様ルックも持っているとはどういうことなのでしょうか。彼女もMなだけではなく、男を奴隷にしていじめたいという女王様願望も有るのかもしれません。彼女は、「ふふふ。」と笑い、私の後ろに回ってピシリと床をたたいて威嚇しました。私は恐怖に身をすくませました。彼女は一本鞭で遠慮なく私をムチ打ち出しました。私は激痛のため、見栄も外聞も忘れ、
「ああー。」
と苦痛の叫びを上げ、タップダンスのように足踏みしながら首を激しく振りました。ムチは痛いものだとは思っていましたが、一本鞭がこれほど痛いものだとは知りませんでした。しかし私は最前までは、これをこそ望んでいたのです。前回、彼女を徹底的にいじめてしまった、一方的な借りを、逆に彼女に徹底的にいじめられることによって返せることを心待ちにしていたのです。私はさらに、それを口実に彼女に男らしさを示せるまたとない機械になることにワクワクさえしていました。どんなに容赦なく鞭打たれ続けても黙って耐え続ける姿を見せることによって、一見小心で臆病に見えても、どんな苦難にも耐えぬける強い精神力も持っていることを誇示できるまたとない機会だと思っていたのです。私のイメージは、黒いビキニのサポーター一枚で、天体を支えるヘラクレスのように、黙々と責めに耐え抜く勇者の姿でした。そして、とうとう彼女が根を上げない私に根負けし、同情し、「純さん。痛かったでしょう。ごめんなさい。もうはずします。」と言って縛めを解いても私は平然と何も無かったように、「いえ。大丈夫です。」と答える。
そんなシナリオを無意識のうちに描いていました。
しかし現実は予想とはかけ離れた惨めなものになってしまいました。私は彼女の巧みな愛撫責めに屈してしまいました。一度敗北を認めた以上、もう元へは戻せません。一度屈してしまった後に撤回を求めるなど女々しい悪あがきをする人間だと侮蔑の目で見られるだけです。むしろ一度屈してしまった以上、約束通り行動する方が、せめてもいさぎよさ、を示せます。それにもう私の頭は混乱して、捨て鉢な気持ちも加わって、誰にも知られないことをいいことに心身ともに女の子になりきって、その喜びを味わいつくしたい気持ちでいっぱいになっていました。私は女物のパンティーを履き、身も心も女になりきって、体を震わせながら、
「ああ。優子さん。お願いです。許してください。」
と、泣きながら何度も憐れみを乞いつづけました。私は嬲られる女の心になりきって、何度も哀れみを乞う弱々しい目を向けました。しかし彼女は無言で容赦なくムチ打ち続けるだけなので、私は耐え切れなくなって、
「優子さん。何か言ってください。優子さんが何も言ってくれないとこわいんです。」
と、泣き叫びながら言いました。すると彼女の休む暇なく続いていた呵責の鞭はスッと止まりました。彼女は前に廻って泣き崩れた私の顔を黙って見詰めました。節穴のように小さくくりぬかれたアイマスクの覗き穴から見える表情のわからない不気味な目はいいようのない恐怖感を放っています。彼女がムチ打ちを止めてくれたことに対し、ペコペコ頭を下げ、涙を流しながら、
「あ、ありがとうございます。お許しくださって。」
と言うと、彼女は、「ふふふ。」と笑い、私の頬をやさしく撫でて、
「ふふ。弱虫ちゃんね。」
と言って椅子に座って膝組みし、タバコを取り出して一服しました。彼女はパンティーを履いて恐怖におびえている惨めな姿の私をさも楽しそうに眺めまわしています。黒い女王様ルックに身を包んで、厳しい拷問をしたことなど忘れているかの様なくつろいだ様子の彼女を見ていると、彼女が本格的な女王様のように見えてきます。もしかすると彼女はMだけでなく、強いS、女王様願望の欲求も持っているのかもしれません。しかし彼女の本心を知る由はありません。しかし私はパンティー一枚で彼女の前に惨めにうなだれている自分を思っても抵抗を感じませんでした。気の小さい私には彼女をいじめるより、こうやって虐められている方が合っているんだと何かほっとした気持ちさえありました。しばし黙ってみじめな姿の私を楽しげに見て、タバコを吸いながら一休止していた彼女は、タバコを揉み消すと、ついと立ち上がり、
「さあ。一休みしたからまた始めましょう。」
と、さも当然のように非情に言いました。私はギョッとして、
「ま、まだつづけるんですか。」
と、驚きと恐怖で聞き返しましたが、彼女はそっけない口調で、
「そうよ。当然じゃない。」
と言って私の後ろに廻りました。私は恐怖に耐え切れず、
「お、お願いです。優子さん。どうか鞭打ちだけは、これ以上はお許しください。うんと満足いくまでみじめにして下さい。ですがムチ打ちだけはどうか許してください。」
そう強く訴える私を無視して彼女は私の後ろから容赦なくムチ打ち出しました。激しい痛みに加え、いつ終わりになるのかわらない恐怖感で私はバタバタ足を踏み鳴らし、泣き叫びながら許しを乞う叫びをつづけました。が、私が足をバタバタ踏み鳴らすので、彼女は、「ちょっとこれが邪魔ね。」
と言って私の足元に屈み込んで両足首を縛り、動けないようにして再び遠慮容赦なくムチ打ちだしました。

かなりの鞭打ちがつづいた後、情けをかけてくれたのか、一休みとろうと思ったのか、宙を飛び交っていた鞭の動きが止まりました。私が恐怖におびえる弱々しい視線を彼女に向けると、彼女は私の顎をグイとつかみ、彼女の方に振り向かせ、
「ふふ。純さん。私、本当は純さんをこうして奴隷にしたかったの。私はMの願望が強いけど、純さんを見た時からこうして純さんをいじめ抜いて従わせたいと思ってたの。これから一生、私の奴隷として従うなら許してあげるわ。どう?」
「は、はい。」
私は涙の中に答えました。
「これからは優子さん、じゃなく、優子女王様と呼んで、私の言う事は何でも聞くのよ。」「は、はい。」
私が弱々しく答えると彼女は私の頬をピシャリと平手打ちし、
「はい、じゃなく、はい。優子女王様でしょ。」
と、厳しく叱りつけます。
「はい。優子女王様。」
と私は弱々しく言いました。
「じゃあ、ちゃんと今、奴隷になる宣言をして。そうしたら縄を解いてあげるわ。」
「な、何と言えばいいのでしょうか。優子女王様。」
「それは自分で考えて。それくらい自分で考えられるでしょ。」
私はしばし考えた後、恐る恐る口を開いて奴隷の宣言のコトバを言いました。
「私はこれから一生、優子女王様の忠実な奴隷として、優子女王様の言う事にはすべて従います。」
彼女は、
「上出来。上出来。じゃ、縄を解いてあげるわ。」
と言って、足首と手首の縛めを解きました。私はムチ打ちの疲れからクナクナと力なく座り込んでしまいました。私は少し休みたいと思いましたが、彼女は縄のついた首輪を私の首にはめ、
「さあ。四つん這いになって。」
と命令します。私が犬のように四つん這いになると、
「純さんは犬よ。お散歩しましょうね。」
とムチで尻を撫でながら促します。私は縄尻を取られたまま、四つん這いで部屋を一周しました。彼女は四つん這いになっている私の背中にドンとのると、
「ふふふ。来週もまた来るのよ。たっぷり虐めてあげるわ。」
と言って、首輪の縄をグイと引きました。その後、犬のように皿に盛られた料理を四つん這いのまま食べたり、彼女の命令に従って、足指をぺろぺろ舐めたりと、さんざんみじめな目にあいました。
   ☆   ☆   ☆
 翌週になり私は寂しい思いで会社に出勤しました。もともと彼女のような明るい性格の、美しい女性を、無口で内気な性格の私が自由にいじめる何ていう事は分不相応な夢のような事だという引っかかりは持っていました。彼女が計算家で、まんまと彼女の計画にかかってしまったことは確かにさびしい事でした。しかしこうなる事が私にはふさわしいのだという思いもありました。私はフワフワした夢から覚めて現実へはっきり戻れたことに気が休まる思いでした。それに私は彼女の奴隷になっても悔いはありません。私は彼女にだまされたわけですが、彼女は根本的には真面目で明るい、魅力的な女性なのです。私は彼女が好きで、たとえ奴隷になっても彼女と関係を持てることが十分嬉しいのです。ただ彼女が私をどう思っているのかは、気にかかりました。彼女は私に少しでも好意を持ってくれているのだろうか。人を奴隷にして、いじめたいという気持ちに、はたして愛が少しでも在るのだろうか。彼女にとって私は便利な小間使いで、ストレスを解消できる何の愛もない単なる道具なのではないか。そう思うと寂しさを感じずにはいられませんでした。
彼女にとって私は、何の想いもない、単なる道具なのか、それともほんの少しでも私に好意を持ってくれているのか、それだけは今度会ったら勇気を出して聞いてみようと思いま
した。
   ☆   ☆   ☆
 約束の土曜になり私は陰鬱な気持ちで彼女のアパートへ行きました。チャイムを押すと、
「あっ。純さんですね。今開けます。」
と、予想に反した明るい声が返ってきました。私はSMに関する作法というものを知らないので、いったん奴隷となった以上、対等な挨拶などというものは無く、会ったときから絶対服従するものだと思っていたのでちょっと戸惑いました。ドアが開くと、さわやかな白のブラウスにフレアースカート姿の彼女が笑顔で迎え入れてくれたので、また拍子抜けしてしまいました。私はてっきり彼女は女王様ルックで、アイマスクをしているものだと思っていました。
彼女に手を曳かれてテーブルの前まで来ると、私は恐怖心からあわてて土下座して、
「優子女王様。今日もよろしく御調教よろしくお願い致します。」
と床に頭をこすり付けんばかりにして精一杯心を込めた、恭しい口調で言いました。
こうやって心を込めて絶対服従の意思を示せば、ハードな拷問にも少しは手加減してくれる情けが入ってくれるのではと、そればかりを祈るような思いでした。
彼女は黙って私の手をとって立たせ、テーブルに向かい合わせに着きました。テーブルには手をかけて作った料理が二人分、用意されています。彼女は私を見ると、「ふふふ。」と笑い、照れくさそうに話し出しました。
「純さん。一週間いじめちゃってゴメンなさい。私、純さんを奴隷にする気なんて全く無いわ。私が純さんに絶対服従する奴隷だわ。私は大雑把な性格だから、こんなイタズラも平気でやっちゃうけど、純さんはデリケートな性格だから恐怖感におびえているだろうことは十分察しがついたわ。本当に悪い事をしちゃって、すまないな、と思っていたけど、一週間だけ辛い思いをさせて、今日一気に喜ばせてあげたいと思ったの。本当にゴメンなさい。今日はその仕返しでうんといじめて。」
そう言って彼女は立ち上がり、縄や首輪を持って来て、床に置き、着ていた服を全部脱いで丸裸になり、腰を下ろして立て膝の姿勢になると、両手を後ろに回して手首を重ね合わせ、
「さあ、縛って。そしてうんといじめてください。」
と言いました。私は彼女を力強く抱きしめて、
「ああ。優子さん。好きです。世界一好きです。」
と泣きながら大声で叫びました。

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少年と二人の女 (小説)(上)

2020-07-07 06:36:17 | 小説
少年と二人の女

夏休みになった。純は夏が好きだった。純は今年こそはクロールで泳げるようになろうと、毎日、プールに自転車で行った。海が見える市営プールである。純は平泳ぎで50mは、泳げたが、クロールでは、どうしても50m泳げなかった。純はどうしても美しいクロールで、泳げるようになりたかったのである。
大きな更衣室で海水パンツに着替えてプールサイドに出た。
昼近くに、プールから戻って、更衣室で着替えた。ここには、カーテンの仕切りのボックスも当然あるが、なかには、仕切りの外で着替える人もいる。純は恥ずかしがり屋なので、着替えは、いつもカーテンの仕切りの中でした。海水パンツ一枚になり、更衣室に出た。純は思わずドキンとした。男子更衣室の右は監視所につながっていたが、監視所から女の監視員が出てきたのだ。彼女は短いジーパンにTシャツという格好だった。更衣室では着替えている裸の男達もいる。サッと通り抜けたが、ちょっとうつむき加減で紅潮した彼女の心はわかった。男が女の更衣室を通る事は出来ない。そんな事をしたら女達は、その男を奇異の目で見るだろう。しかし逆は必ずしもいえない。男は女の裸を見てはならないが、女が男の裸を見てはならない、という事は社会通念ではない。それを利用して、彼女はさりげなく、更衣室にいる裸の男達を見ているのだろう。
「女の人にもエッチな人がいて、あの女の人は男の裸を見たがっているんだ」
敏感な純は彼女の心を瞬時に感じとった。同時に興奮して心臓がドキドキした。
純は彼女に裸を見られたい願望が起こった。

   ☆   ☆   ☆

翌日、プールへ行った時、純は、今までのようにカーテンの仕切りに入らず、更衣室のテーブルの前で上着とズボンをゆっくり脱いだ。彼女が監視室から出てきた。彼女はモップで濡れた更衣室の床を拭き出した。純はドキドキしながらランニングシャツを脱ぎ、パンツを脱いだ。彼女に丸裸を見られていると思うと、純のおちんちんは激しく勃起した。純は、ゆっくり海水パンツを履き、何事もなかったかのようにプールへ出た。

泳ぎおわって、純は更衣室に、もどった。更衣室には純しかいない。彼女はモップで更衣室の床を拭いていた。純は海水パンツを脱いで裸になって、タオルで体を拭くと、裸のまま、洗面所の洗面器で海水パンツをわざと時間をかけて洗った。彼女が近くまできた。純は、おちんちんを見られている事に興奮した。純は裸のまま海水パンツを洗いおえると、机にもどって、荷物をカバンにしまい、服を着てプールを出た。

家に戻ると純は、彼女の事が気になって気になって仕方がなくなった。彼女に裸を見られることは、非常な甘美な快感であった。

   ☆   ☆   ☆

数日後、純は胸をドキドキさせながらプールに行った。少し曇り空で雨が降りそうだったが、純にはそんな事どうでもよかった。むしろ、客が少なくなる事が嬉しかった。交差点を渡るとプールの門が閉まっていた。「本日休業」と看板が出ている。そういうば今日は特別休館日だった事を純は思い出した。

ちょっと残念に思いながら、純は踵を返して歩き出した。すると駐車場に止まっていた赤い車が純の方にやってきて真横に止まった。窓が開いて女性が顔を出した。あの女性だった。
「残念だったね。ボク」
女は笑顔で言った。純ははじめて声をかけられてドギマギした。顔は真っ赤になった。
「は、はい」
「私は水質検査のために来て、もうそれも終わったから、これから家に帰るの。ボクはこれから、どうするの」
「い、家に帰ります」
「よかったら送っていってあげるわ。乗らない」
そう言って女は助手席のドアを開けた。
「で、でも悪いです」
「いいわよ。遠慮しないで乗りなさいよ」
「は、はい」
純は女の強気の態度に気圧されて、車に乗った。助手席にチョコンと座った。女は直ぐに助手席のドアを閉めてロックし、純にシートベルトをつけた。
「さあ。いくわよ」
そう言って女はエンジンをかけ、いきおいよく車を出した。道路沿いに夏の海が一望される。ビーチは海水浴客達でいっぱいだった。
「ボク。名前は」
「岡田純です」
「いい名前ね。私は佐藤京子。よろしくね」
「よ、よろしく」
道路沿いに夏の海が一望される。ビーチは海水浴客達でいっぱいだった。
「純君は海では泳がないの」
「は、はい」
「どうして」
「あ、あまり泳げないんで」
「そんな事ないわよ。海は体が浮きやすいから、プールで泳ぐより楽よ」
純は黙っていた。純が海で泳がないのは、友達がいなく、海水浴場に入るのが恥ずかしかったからである。京子は、ニコッ、と笑った。
交差点で信号が赤になった。純の家の方へ行くには左折である。
「純君の家は、真っ直ぐ。それとも左?」
京子が聞いた。
「ひ、左です」
純は小さな声で答えた。
信号が青になった。京子は左折せず直進した。
「あっ」
純は咄嗟に声を出した。
「あ、あの。今の所、左なんです」
「ごめんね。ちょっと買う物があるから、信号の先のコンビニに寄りたいの。いい」
「はい」
そう言うと京子は道沿いのコンビニに車を入れた。すぐに京子はコンビニから出てきた。
「ねえ、純君。よかったら私の家に寄ってかない」
「は、はい」
純は緊張して答えた。純は気が小さいので車の中では黙っていた。海沿いの道から離れて、車は路地に入っていった。周りに家の無い一軒家に着いて車は止まった。
「さあ。純君。降りて」
言われて純は車から降りた。
「ここ私の家なの。さあ。入って」
京子の後について純は、その家に入った。
京子が食卓の椅子を引いたので純は座った。京子はニコリと笑って向かい合って座り、純をじっと見た。
純は恥ずかしくなってうつむいた。
「純君」
「は、はい」
「これは私の想像なんだけど、純君は、裸を見られたくないような仕草をしながら、本当は私に裸を見られる事に興奮していたんじゃないの」
「は、はい。そうです」
純は真っ赤になって言った。京子はニコッと笑った。
「やっぱりね。大体わかったわよ。だって私が近づくと、体が震えてたもん」
京子はさらにつづけた。
「純君はおとなしいからウブで、優しいからマゾなのよ」
純は顔を真っ赤にして黙っている。
「ねえ。純君。純君の夢を叶えてあげるわ。私が見ててあげるから、ここで服を脱いでみない」
「は、はい」
もう純は心まで見透かされているので、躊躇いはなかった。京子は、足を交差させて、余裕の表情で椅子に座っている。純は立ち上がって、服を脱ぎ出した。上着を脱ぎ、ズボンを脱いだ。パンツ一枚になって、いよいよこれから、それも脱ごうとする時、純はチラッと京子の方を見た。京子は余裕の表情で、足を組んで、見世物を見るように純を見つめている。純は、いつも京子に自分の心を知られていたのだと思うと、急に羞恥の念が起こってきた。純は、いつものように、腰を引いてゆっくりとパンツを下げていった。なるべく、おちんちんが見られないように。とうとう純は丸裸になった。一方の京子はブラウスに短めのスカートを履いている。自分だけ裸になって見下されている事に、純は恥ずかしくなり、思わず、おちんちんを両手で隠した。
「どう。純君。今の気分は」
「は、恥ずかしいです」
「恥ずかしいだけ?」
「は、恥ずかしいですけど、何か気持ちいいです」
「ふふ。やっぱり純君はマゾなのね」
京子は近くにあるカバンを開けて本を取り出し、あるページを開いて裸の純の前に置いた。純は真っ赤になった。それはSM写真集で、裸の女が緊縛されている写真だったからである。純は興奮で真っ赤になった。純のマラは、激しく勃起した。
「ふふ。純君。興奮してるのね」
京子は笑いながら言った。
「ふふ。純君は、おとなしくてマゾだから、こういう風に、みじめな姿の女の人に感情移入して、興奮しているんでしょ」
「そ、そうです」
「純君は本当は女の子に生まれたかったんでしょ」
「そ、そうです」
純は、もう隠す必要がなくなって、躊躇せずに言った。
「そして、こういう写真の女の人のように、裸になって、恥ずかしい姿を人に見られたいと思っているんでしょ」
「そ、そうです」
「わかったわ。じゃあ、純君の夢を叶えてあげるわ。じゃあ、私の前では、純君は女の子になりきっちゃいなさい。うんと恥ずかしくしてあげるから」
「は、はい」
純は震える声で言った。純は口が裂けても、そんな自分の本心など人に言えない。そんな事をしたら、自分の人格が崩壊してしまう。しかし、今は、京子と二人だけである。他に人はいない。そういう自分の秘密が密室の中で十分、守られている条件があったから純は、京子の提案を受けいれる事が出来たのである。勿論、決断するには大変な勇気が要った。
「さあ。純君。その写真のように、座って膝を立てて大きく足を開いて」
その写真は、後ろ手に縛られた女がM字に足を大きく開いている写真だった。純は言われたように、床にペタンと座り込んだ。だが足は恥ずかしくて開けない。
「純君。手を後ろに回して」
京子が言った。
「はい」
純は言われたように手を背中に回して、背中で両手を握りしめた。もう手で純は激しく勃起した物を隠す事が出来ない。純は勃起した物を京子に見られないように、必死で膝を閉じ合わせた。
「ふふ。いちいち縛るのは面倒だから、縛らないわよ。さあ、純君。足を大きく開いて」
「は、恥ずかしいです。京子さん」
足を開いては勃起したマラをもろに見られてしまう。そんな事をするのを受け入れられるほど、純は大人ではなかった。まだウブだった。そんな事を受け入れたら自分の人格が崩壊してしまうような気がして、純は足を開けなかった。京子はバスタオルを持ってきた。
「さあ。純君。恥ずかしい所は、これで隠してあげるわ。だから足を開いて」
そう言って京子は純の、おちんちんの上にバスタオルをのせた。
「さあ。これで足を開いても恥ずかしい所は見えないわよ。さあ。足を開いて」
京子が言った。確かにこれなら恥ずかしい所は足を開いても隠される。純は、少しずつ足を開いていった。ついに足はM字になった。何も無ければ、丸見えだが、股間にタオルがのっているため、恥ずかしい所は隠されている。しかしそれは自分が身につけている物ではなく、京子のお情けによって置かれた物である。京子の意志一つで簡単にとられてしまうのである。京子が意地悪をして、タオルをとろうとしたら、純は京子に許しを請うしかないのである。そんな事を思うと純は恥ずかしさと被虐の興奮のため、純のマラはムクムクと勃起していき、タオルを押し上げていった。タオルは、あたかもテントを張ったかのようにせり上がった。
「ふふ。純君。どんな気持ち」
「は、恥ずかしいです」
純は顔を真っ赤にして言った。
「それだけ?」
京子は執拗に聞いた。純は黙っている。
「でも、おちんちんがこんなに勃起してるわよ。凄く興奮してるからでしょ。どうして興奮するの。はっきり言って。言わないと、タオルとっちゃうわよ」
京子は悪戯っぽい口調で言った。そんな事を言われて純の被虐の興奮は一層、激しくなっていった。
「は、はい。言います」
純は焦って言った。もう純は、どうにでもなれ、という捨て鉢な気持ちになっていた。
「僕は、マゾで京子さんの前で、こんなみじめな姿にされている事が嬉しくって興奮しているんです」
純は言った。言った事で、もう純には躊躇いの気持ちは完全になくなった。
「ふふ。そうだと思ったわ。じゃあ、純君は私の奴隷になる?」
「は、はい。なります」
「じゃあ、犬になって、四つん這いで私の足元に来なさい」
「は、はい」
言われて純は背中で組んでいた手を離し、両手を床について、四つん這いになって、京子の足元の所まで歩いた。目の前には、京子の形のいい素足がある。
「さあ。純君。純君は犬よ。足をお舐めなさい」
そう言って京子は、素足を純の鼻先に突きつけた。
「は、はい」
純の目の前には京子の形のいい足指があった。
純は目の前の京子の足の指を、四つん這いのまま、手を使わず、舌でペロペロと舐めた。はじめは抵抗もあったが、だんだん慣れてきた。
「ふふ。純君。指の付け根までしっかり舐めて」
京子が笑って言った。
「は、はい」
純は京子に言われたように足指をしっかり口に含み、ゆっくりと付け根まで舐めた。
「純君。どんな味?」
「ちょっと酸っぱいです」
「ふふ。昨日の夜、シャワーを浴びた後から、洗っていないの。汚いわよ」
「いえ。京子さんの足なら、何でもないです。むしろ、嬉しいです」
そう言って純は一心に京子の足指を舐めた。
「ふふ。純君のこんな姿、純君のお父さんとお母さんが見たら、どう思うかしら」
京子は笑って言った。
「ああっ」
純は咄嗟に真っ赤になった。自分のみじめな姿を母親と父親に見られる事が頭に浮かんで、急に羞恥の念が起こったのである。
「京子さん」
「なあに」
「お願いです。そういう事は言わないで下さい」
「わかったわ。言わないわ」
「有難うございます。言わないでくれれば何でもします」
純は貪るように京子の足指を舐めた。
「ちょっと待って」
そう言って京子は立ち上がった。そして台所から皿を持ってきて純の目の前に置いた。
「さあ。純君。お腹が減ったでしょう。お食事よ」
そう言って京子は純の目の前に皿に、炊飯器から御飯を出して皿に盛った。京子は、純の様子を見ながら笑っていた。京子は笑いながら、御飯にふりかけをかけた。そして、そっと、皿の御飯に足をのせて、足指でグチャグチャに御飯を踏み潰した。
「ふふ。さあ、純君。どうする。食べる?食べたくないなら食べないでいいわよ」
純はチラリと京子を見た。
「食べます」
そう言って、純は京子によって踏み潰された御飯を無我夢中で食べた。
「どう。吐き気がしそう?」
「いえ。おいしいです。京子さんの足の裏の汗が浸み込んでいると思うと、余計、おいしいです」
そう言いながら純は一心に御飯を食べた。
「ふふ。そうじゃないかと思ったわ」
ようやく純は御飯を食べ終わった。純は犬のように舌を出して皿をペロペロ舐めた。
「はい。純君。残さずよく食べたわね。おりこうさん。じゃあ、ご褒美にマッサージしてあげるわ」
そう言って京子は床に薄い敷き布団を敷いた。
「さあ。純君。この上にうつ伏せに寝て」
言われて純は敷布団の上に、うつ伏せに寝た。京子は大きなタオルを裸の純の上に掛けた。そして、純のマッサージを始めた。脹脛から太腿、背骨、肩と京子は揉んでいった。
「どう」
「気持ちいいです」
純は京子のマッサージに身をゆだねた。タオルがあるため、かろうじて恥ずかしさから救われた。
しばし京子は一心に純の体をマッサージした。しばしして無言のうちにマッサージが止まった。そしてそーっとタオルの下の方が捲り上げられて、フワリと背中の方に、のせられた
「ああっ」
純は、思わず声を出した。タオルの覆いがとられ腰から下の尻が、京子に丸見えになっていると思うと、恥ずかしくなったからである。しかも上半身は、今まで通りタオルで覆われている。尻だけ丸出しになった姿が何ともアンバランスでみじめで恥ずかしかった。京子の触れるか触れないかの微妙な感覚の指が純の尻や足の上をすっと掠った。
「ああっ。何をするんですか。京子さん」
純は思わず言った。
「ふふ。純君。これは回春マッサージというものなの。じっとしていて」
京子の繊細な指の先が純の体の上をすーと這い回った。ほんの僅か触れている感触が何ともいえず、激しく純を興奮させた。
「ああー」
純は、丸出しの尻を見られてる恥ずかしさと、指の苦しい感触のため、声を上げた。
「ふふ。どう。純君」
「は、恥ずかしいです。それに、くすぐったくて辛いです」
「純君。これはマッサージなのよ。もう何も考えないで、力を抜いてごらんなさい。気持ちよくなるから」
「は、はい」
京子に言われて、純は、恥ずかしさを忘れて京子に身を任せた。すると、くすぐったくて辛かった、京子の指の感触がだんだん気持ちよくなってきた。
「純君。気持ちいい?」
「は、はい」
「じゃあ、もっと気持ちよくしてあげるわ」
そう言うや、京子は純の足首をムズとつかんで足を開かせた。足を開かされたことによって、閉じ合わさっていた尻の割れ目が開いた。そして京子が開かれた足の間に入ってきた。京子の目の前には純の尻がある。尻の割れ目をもろに見られていると思うと、純は恥ずかしくて死にたいほどだった。再び、京子は軽やかに指先を純の尻や太腿の上に這わせた。京子がどんな顔で純の開かれた尻の割れ目を見ているかと想像すると純は恥ずかしくなった。
ニヤニヤ笑って純の尻の割れ目をじっくり見ている顔つきが想像される。その時である。
「ひいー」
純は悲鳴を上げた。京子が、いきなり純の尻の割れ目を指でスッとなぞったからである。純にとって、それは飛び上がらんばかりの激しい刺激だった。
「ああっ。京子さん。何をするんですか」
「ふふ。これも回春マッサージなのよ。力を抜いて」
京子は笑いながら言った。足が大きく開かれて、その間に京子がいるので純は足を閉じる事は出来ない。いつまた京子が尻の割れ目をなぞるかと思うと、純は耐えられない思いになった。純は京子の攻撃にそなえて、両手で布団をギュッと握った。京子の指は純の尻の肉の上を軽やかに動いていたが、時々、尻の割れ目を押し広げたり、すーっと割れ目に沿って下降していったりした。指が尻の穴に触れた時、純は、
「ひー」
と叫び声を上げた。もう尻の穴も京子に丸見えである。京子に尻の穴まで見られていると思うと純は、たまらなく恥ずかしくなった。
「純君。どう」
「は、恥ずかしいです」
「気持ちいい?」
「は、はい」
「そう。じゃ、もっと気持ちよくしてあげるわ。純君。膝を立てて」
「は、はい」
純は京子に言われたように膝を立てた。腕を立てようと肘を伸ばそうとすると京子がそれを制した。
「手は伸ばさないで。顔は布団につけたままでいいわ」
京子が言った。ので純は、伸ばしかけた肘を縮めて、顔を布団につけた。
「あ、ああー」
純は思わず叫んだ。顔を床につけたため、尻だけ高々と持ち上がってしまっている。膝が開かれているため、尻の割れ目もパックリと開いて、その下の、おちんちんも見られてしまっている。こんな屈辱的な姿はなかった。それはSM写真の女の人の屈辱の基本姿勢だった。京子がそれを、まじまじと見ていると思うと、純は恥ずかしさに耐えられなくなったのである。
「どうしたの。純君」
「は、恥ずかしいです。京子さん」
「我慢して。マッサージのためだから」
そう言って京子は、尻を突き出している純の尻を指先で巧みに撫で出した。
「ああー」
純は、恥ずかしさに耐えられず、時々、声を出した。その度、京子は、
「ふふふ」
と笑った。京子は、パックリ開かれた純の尻の割れ目をなぞったり、爪ですーっと撫でたりした。そのうち、京子の指は純の脇腹や、おちんちんの回りを這い出した。純は、布団をギュッと握って、くすぐったさと恥ずかしさに耐えた。ことさら、その勃起した部分を避けている、わざとらしさ、もどかしさ、が余計、純を興奮させた。純の、おちんちんは、カチンカチンに激しく勃起した。
「ふふふ。純君。どう。気持ちは」
「は、恥ずかしいです」
「でも、おちんちんが勃起しているわよ。感じちゃってるんでしょう。純君はマゾだから、本当はこうされる事が嬉しいんでしょう。どうなの」
「は、はい。僕はマゾで、本当は、こうやって、みじめになる事が嬉しいんです」
純は、もうどうとでもなれ、という捨て鉢な気分になって、自分の今の思いを言った。
「ふふふ。やっぱりね」
京子は余裕の口調で言った。京子は純の玉袋をいじりだした。
「ああー」
純は思わず声を出した。興奮してプルプル体を震わせている純にかまわず、京子は純の玉袋をそっと掌で包み、袋の中の玉を弄ぶように、ゆっくりと揉んだ。
「ふふ。純君。気持ちいい?」
「は、はい」
「男の人の玉袋って、何かみじめね。プラプラとぶら下がってて。そして、その中にプニョプニョした玉が入ってるんだもの。まるで、弄るために、あるみたい」
そんな事を言いなから、京子は純の玉の感触を楽しむように、純の玉袋をゆっくりと揉んだ。
京子は純の尻の割れ目をグイと開いた。ただでさえ、丸見えの尻の割れ目が、余計、割りさかれた。
「ふふふ。純君。お尻の穴が丸見えよ」
京子は、ことさら純の羞恥心を煽るように言った。純は、瞬時に顔が真っ赤になって、尻の穴を窄めようとした。が、膝を開かされている上、京子に尻を割りさかれているため、どうしようもない。純の尻の穴はヒクヒク動いた。
「ふふ。純君。窄めようとしたってダメよ。お尻の穴がヒクヒク動いているわよ」
京子は笑いながら意地悪く言った。ふっと京子が窄まった純の尻の穴に息を吹きかけた。「ああー」
純は咄嗟に悲鳴を上げた。反射的に純の尻の穴は窄まった。京子にもろに尻の穴を見ている事が実感されて純は、あらためて恥ずかしくなった。京子は玉袋を揉みながら、ビンビンに勃起した純の棒を撫でた。それは京子に撫でられて、余計、激しく勃起した。京子は、玉と棒と尻の穴を、思うさま弄んだ。もう純は、弄ばれるまま、弄ばれつくしたい、という開き直りの気持ちになっていた。
「ふふ。純君。どう。今の気持ちは?」
「み、みじめです」
「それだけ?」
「き、気持ちいいです」
「そうよね。純君はマゾなんだから。純君は、SM写真の、裸にされて縛られて弄ばれているマゾの女の人に感情移入してたんでしょう」
「そ、そうです」
「じゃあ、夢が叶って嬉しいでしょう」
「は、はい。幸せです」
京子は、しばし丸出しになった純の玉と棒と尻の割れ目に思うさま手を這わせた。
「純君。顔に上半身の体重がかかって辛いでしょう。手を伸ばして四つん這いになって」
「はい」
純は肘を伸ばして両腕をピンとつっかえ棒のように立て、四つん這いになった。今までは尻だけ高々と上げた屈辱的な姿勢だった。もしその姿勢で手を背中で縛れば、まさにSM写真の女の屈辱的な姿である。今度は丸裸の四つん這いで、まさに犬のようである。純は犬のようになったみじめさを感じた。
「ふふ。純君。どう。今の気持ちは」
「は、恥ずかしいです」
「動いちゃダメよ。気持ちよくしてあげるから」
「はい」
純は犬の像のように、手と膝にグッと力を入れて、突っ張って銅像のようになろうと思った。それが純に出来る唯一の忍耐の方法だった。つまり自分の肉体から精神を切り離そうとした。だが京子は、まるでペットショップで、犬を買う人が、飼う犬を選定するように、純の顔や髪の毛や腕、腹、脚などを丹念に調べるように念入りに触った。
「ふふふ。純君。どう。今の気持ちは?」
「まるで犬になったみたいです」
「そうよ。純君は犬よ。私、この犬、気に入ったわ。飼うわ。いいでしょ。純君」
「あ、ありがとうございます。京子さんのような素敵な人に飼われるなら幸せです」
「その代わり私の言う事はちゃんと聞かなくちゃダメよ」
「はい。何でも言う事をききます」
そんな事を言って京子は純の鼻を摘んだり、耳を引っ張ったりした。
「じゃあ、気持ちよくしてあげるわ」
そう言って京子は銅像のように、四つん這いでじっとしている純の体にまた、指先を這わせ出した。京子の指先が純の脇腹や腹、背中などを、すーっと這い回った。純は、くすぐったさに、体をプルプル震わせながら黙って耐えた。だが京子は執拗に純を責める。首筋や乳首など感じやすい所を京子は執拗に責めた。純は体をプルプル震わせながら黙って耐えた。もう純は我慢の限界だった。京子は、それでも、くすぐり責めをやめない。京子は、一番くすぐったい腋の下の窪みに手を這わせ出した。
「ああっ」
純は、とうとう耐えられずに声を出した。
「どうしたの」
京子がとぼけた口調で聞いた。
「く、くすぐったくて辛いです」
「そう。でも純君は、忠実な飼い犬なんだから、どんな事でも我慢しなくちゃダメよ」
そう言って京子は笑いながら純の腋の下をくすぐった。純は腕を突っ張っているので、腋の下を隠す事は出来ない。さっきの尻や太腿の指の接触は、快感だったが、これはもう、耐えられないほど辛い責めだった。
「京子さん。お願いです。許して下さい」
純は、とうとう我慢できず、京子に哀願した。
「ダメ。純君は、私の忠実な飼い犬で、私の言う事は何でも聞く、って言ったばかりじゃないの。我慢しなさい」
京子は厳しい口調で言って、腋の下のくすぐりを続けた。
「お願いです。許して下さい。もう耐えられないんです」
純は瞳を潤ませながら京子に向かって言った。
だが京子は、くすぐり続ける。
「ああー」
純はとうとう体を揺すりはじめた。全身がガクガクしている。
「京子さん。もう許して下さい。もう耐えられないんです」
純は瞳を潤ませながら京子に向かって言った。
「何が耐えられないの?」
京子は爪で純の脇腹を撫でながら言った。
「あ、あの。くすぐったくて、オシッコが出ちゃいそうなんです」
純は言って真っ赤になった。
「そうだったの。なら、もっと早く言いなさい。じゃあ、四つん這いのまま、こっちへいらっしゃい」
そう言って、京子は立ち上がって歩き出した。純は四つん這いのまま、這って、京子のあとについて行った。京子は風呂場の戸を開けた。
「さあ。お入り」
京子に言われて純は、這って風呂場に入った。風呂場にはマットレスが敷いてあった。純はその上に四つん這いになった。
「さあ。もうこれで、いざという時も、これで安心よ」
京子はそう言うと、しゃがみ込んで、再び純の脇腹や、首筋、腋の下などをくすぐり出した。京子は、くすぐり責めを一層、激しくした。
「ああー。もうガマン出来ないー」
純は体を激しく揺すって叫んだ。
「出そう?」
「はい」
純は情けない顔つきで京子に訴えた。
「じゃあ、耐えられなくなったら、出しなさい。ちゃんと犬のように、片足を上げてするのよ」
「は、はい」
そう言うと京子は、再び、くすぐり責めを一層、激しくした。
「ああー。もうガマン出来ないー」
純は、さっと片足を犬のように上げた。京子は、それでも笑いながらくすぐり続けている。
「ひいー」
純は叫んだ。とうとう堰を切ったようにシャーと小水が放出された。京子は、犬のような格好で小水を放出している純を笑って見ながら、さらにくすぐり続けた。勢いよく出た小水は、だんだんジョロジョロと細い流れになっていき、ついに出きってしまうと、放水はとまった。京子は笑って、くすぐりを止めた。
「どうだった。純君?」
純は真っ赤になって黙っている。
「正直に言いなさい」
京子が強気の口調で言った。
「き、気持ちよかったです」
純は顔を真っ赤にして言った。
「飼い主に、オシッコが出るまで愛撫させるんだから。まったく世話が焼けるわね」
京子はあきれた顔つきで言った。
「ご、ごめんなさい」
純は情けない顔つきで言った。京子はシャワーをとって栓をひねり、純のしたオシッコを洗い流した。
「さあ。純君。足を開きなさい」
京子に言われて純は四つん這いの膝を広げた。京子は純の尻の割れ目やおちんちんにシャワーをかけた。そして、バスタオルで、濡れた所を拭いた。純は犬同様である。
「あ、ありがとうございます」
純は恥ずかしそうに言った。
「さあ。純君。元の所に戻るわよ」
「はい」
風呂場から出る京子のあとを追って純は四つん這いで、ノソノソと歩いた。純は再び、布団の上で四つん這いになった。
「あー。疲れちゃった。ちょっと一休みするわ」
そう言って京子は四つん這いの純の背中に跨った。
「純君。重い?」
そう言って京子は腰を揺すった。
「い、いえ。重くありません」
そう言いながらも純の細い腕はピクピク震えていた。
「純君。どう。こうやって馬乗りにされる気分は」
「気持ちいいです」
「どんな風に?」
純は答えない。顔を真っ赤にしている。
「答えないと、こうしちゃうわよ」
そう言って京子は、純の両方の腋の下をコチョコチョとくすぐった。
「ああっ。許して下さい。答えます」
純は、あわてて言った。
「あ、あの。京子さんの柔らかいお尻の感触が背中に伝わってきて、気持ちいいです」
言って純は真っ赤になった。
「嫌ねえ。純君ったら。エッチな事ばかり考えて」
そう言って京子は、片手を伸ばし、純の玉袋をそっと掴んだ。
「ああっ」
純は反射的に声を出した。
「この中にある二つのプニュプニュした物が、純君にエッチな事ばかり考えさせるんでしょう」
そう言って京子は、二つの胡桃を掌の中で転がすように、純の二つの玉を掌の中で転がした。
「ああっ」
純は、玉を弄られて思わず叫んだ。京子が背中に乗っているため、逃げようがない。京子は、ふふふ、と笑いながら、純の玉を揉んだり、尻の割れ目をすっと、なぞったりした。さらに、純が動けないのをいい事に、腋の下を、コチョコチョとくすぐった。
「あ、ああー。京子さん。そこは許して下さい」
純は突っ張った両手をプルプル震わせながら言った。
「ふふふ。いいじゃない。もう、オシッコも出しきって、もれる心配もないでしょう」
そう言いながら京子は純の首筋や脇腹、腋の下などを、くすぐった。
「ああー」
くすぐられる度に純は、声を出した。京子の体の重みと、くすぐりの辛さのため、とうとう耐えられなくなって、純は地盤沈下のようにグシャっと潰れてしまった。
「ご、ごめんなさい。京子さん」
純はうつ伏せの姿勢で背中の京子に言った。
「ふふふ。ごめんね。悪戯しちゃって」
京子は、うつ伏せになった純に馬乗りしながら言った。
「でも、仕方ないわよね。ずっと四つん這いだったんだもの。疲れちゃったでしょう。私も少し疲れちゃったわ。じゃあ、交代しましょう。純君。休ませてくれない?」
「はい」
京子は純の背中から降りた。純は脇にどいた。京子は布団の上に、どっとうつ伏せに体を投げ出した。
純は思わずゴクリと唾を呑んだ。美しい女の体が布団の上に横たわっているのである。京子は全く無防備という様子だった。
「純君。今度は私をマッサージしてくれない」
京子はうつ伏せに寝て言った。
「は、はい」
純は緊張した口調で答えた。そして、うつ伏せに寝ている京子のマッサージを始めた。純は、エッシ、エッシと力を入れながら、京子の脹脛を揉んでいった。太腿に移ると、ミニスカートの短い裾から大きな尻を覆うパンティーがかすかに見えた。純は興奮して勃起した。京子は、うつ伏せで目を瞑っているので、純は見えない。それをいい事に純は京子のスカートの中をそっと覗いた。
「ふふふ。純君。スカート覗いているでしょう。手つきで分かるわよ」
京子が目を瞑ったまま言った。
「ご、ごめんなさい。京子さん」
純はあわてて目をそらした。そして再び、一生懸命マッサージした。柔らかい女の体に触れるのは、これが初めてだったので、しかも自分は裸なので、純は興奮しっぱなしだった。スラリと伸びた脚、太腿、大きな尻、華奢な腕、繊細な手の指。それらが一体となって美しい女の体が出来あがっていた。
「純君。エッチな事したい?」
京子が聞いた。
「い、いいえ」
純は、焦って答えた。
「いいわよ。純君。何をしても」
京子は笑いながら言った。
「ほ、本当に何でもしていいんですか」
「ええ。いいわよ」
純はゴクリと唾を呑み込んだ。
「ああ。好きです。京子さん」
純は、叫んで飛びつくように京子の尻に抱きついた。
「ああっ。柔らかい。温かい」
純は京子の尻に顔を埋めながら言った。
「ふふ。純君は甘えん坊なのね」
「は、はい。そうです」
純は感激したように京子のスカートの上から京子の尻を触ったり揉んだりした。
「いいわよ。純君。もっと好きなことして。私を裸にしちゃってもいいわよ」
「い、いえ。そんな事とても出来ません」
「どうして」
「こうする方が興奮するんです」
そう言って純は、さかんに京子の体を服の上から隈なく触りまくった。純は京子の足を掴むと、もう耐えられないといった様子で京子の足の裏をペロペロ舐めだした。
「ああー。京子さん。好きです」
と言いながら。
「ふふ。純君。なんで足を舐めるの。汚いわよ」
「ここが一番好きなんです。汚くなんかないです。僕には女の人の足が一番、好きなんです」
「どうして。普通の男の子だったら、そんな事しないわよ」
「僕には京子さんほど、きれいな女の人は勿体なくて申し訳ないからです」
「純君って、可哀相なマゾなのね。でも私、容赦しないわよ。純君をうんと虐めちゃうから」
「はい。京子さんに虐められるのなら幸せです」
京子は仰向けになった。純は耐えられないといったような様子で京子に飛びついた。
「ああ。京子さん。好きです」
純は顔を京子の胸に埋めた。
「どうして純君は、足なんかに興奮するの」
純は黙っている。
「純君。学校に好きな子はいる?」
「います。でも片思いです」
「その子に彼氏はいるの?」
「いません」
「じゃあ、どうして告白しないの?」
「好き、と告白して断わられる事が怖いんです」
「純君は意気地なしなのね」
「はい。そうです」
京子は同情的な顔で純を見た。
「そんなウジウジした性格じゃ、いつまでたっても彼女なんか出来ないわよ」
言われても純は黙っている。
「よし。私が純君を、勇気のある男の子に鍛えてあげる」
「ど、どんな事をするんですか」
「それは、まかしといて。このままじゃ純君は一生、一人ぼっちで老人になっちゃうわ」
「わ、わかりました。僕もそんな人生、嫌です。京子さん。僕を逞しい男に鍛えて下さい」
そう言って純は京子にペコリと頭を下げた。
「わかったわ。じゃあ、また明日、会ってくれる?」
「はい」
「じゃあ、純君。服着て」
「はい」
純はパンツを履いて、ズボンとTシャツも着た。裸だった事がもう、当たり前のような感覚になっていたので、パンツに足をくぐらした時、はじめて、今まで裸だった事に羞恥の感覚が起こってきた。だが、ズボンとシャツを着てしまうと、直ぐに恥ずかしさは無くなった。
「純君の携帯、かして」
「はい」
純は京子に自分の携帯を渡した。京子はピピピッと携帯を操作して純に返した。
「はい。私の携帯のメールアドレスを入れといたわ」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、駅まで送るわ」
「ありがとうございます」
京子は純を車に乗せて最寄の駅まで送った。

   ☆   ☆   ☆

その晩は、今日の刺激的な体験のため、純は布団に入っても、なかなか寝つけなかった。逞しい男に鍛えるとは、具体的にどういう事をするんだろう、きっと腕立て伏せとか、縄跳びとかでスパルタ的に鍛えるんだろうと純は思った。そんな事を考えているうちに、睡魔が襲ってきて純は眠った。

   ☆   ☆   ☆

翌日は雨だった。純は、9時頃、起きて食事し、家を出て京子の家に向かった。純がチャイムを押すと、戸がガラリと開いて京子が出てきた。
「いらっしゃい。純君」
京子は嬉しそうな顔で純を家に入れた。
「純君は朝御飯は食べた?」
「い、いえ」
「じゃあ、食べて」
純は京子の作った料理を食べた。
「さあ。純君。行きましょう」
食べおわると、さっそく京子が言った。
「ど、何処へ行くんですか」
「だから、昨日も言ったでしょう。純君を勇気のある男の子に鍛えてあげるわ」
そう言って京子は純を車に乗せた。車は走り出した。純の知らない道である。
「ど、何処へ行くんですか」
純は不安になってきた。
「純君。××の町に行く事はある?」
「いえ。一度もないです」
「そう。それはよかったわ」
京子はそう言っただけで、何処に行くのかの質問には答えなかった。しばしして、ある町のスーパーに着いた。屋上の駐車場に車を止めてスーパーに入った。京子は純を女性の下着売り場に連れて行った。純は真っ赤になった。純はウブなので、女性の下着売り場を通ると頭がクラクラして、ビンビンに勃起してしまうのである。レジにはきれいな女の店員がいた。
「さあ。純君。彼女にこう言うのよ。『僕の好きな人にパンティーをプレゼントしたいのですが、どんなのがいいか、教えて下さい』ってね」
京子はレジの女を指差して言った。純は真っ赤になった。
「そ、そんなの恥ずかしいです」
「だから、その恥ずかしさを克服する事が、鍛えることなのよ。私がついているじゃない。それと買うパンティーは大人物よ。わかった」
念を押すように京子が言った。
「わ、わかりました」
「それと私が携帯でメールを送るから、着信音が鳴ったら、それに書いてある事を言いなさい」
「は、はい」
純は訳がわからないまま、レジの店員の所に向かった。とりどりのパンティーやブラジャーの間を通っているうちに、純はもう頭がクラクラしていた。ビンビンに勃起して、射精してしまいそうになるほどだった。純はヨロヨロとよろめきながら、レジの女性の所に行った。女性は純に気づくとニコッと微笑んだ。
「いらっしゃいませー」
女性はペコリと頭を下げ満面の笑顔で純に挨拶した。
「何を、お探しでしょうか?」
女性が聞いた。
「あ、あの・・・」
と純は顔を真っ赤にして、口ごもった。女性は、穏やかな笑顔でニコニコしている。純は、もうどうとでもなれ、といった捨て鉢な気持ちになって、京子に言われた事を目をつぶって、喚くように言った。
「ぼ、僕の好きな人にパンティーをプレゼントしたいのですが、どんなのがいいか、教えて下さい」
純は言って、そっと目を開けた。レジの女性は落ち着いてニコニコしている。
「はい。わかりました。同級生の彼女にプレゼントするのかな。それじゃ、中学生用ね」
店員はホクホクして言った。
「ち、違います。大人用です」
言って純は真っ赤になった。店員は、ふふふ、と笑った。
「わかったわ。それじゃあ一緒に探しましょう」
店員はそう言って、目ぼしいパンティーをとっては、
「これなんか、どうかしら。フリルがついていて、かわいいわよ」
そう言って店員はフリルのついたパンティーを取って、純に見せた。その時、ピピッと携帯のメールの着信音が鳴った。そっと開けてみると、それにはこう書かれてあった。
<僕が世界一愛する人へのプレゼントなので、うんとセクシーなのにして下さい。あなたが選んで下さい>
純は真っ赤になって、その文を読んだ。
「ぼ、僕が世界一愛する人へのプレゼントなので、うんとセクシーなのにして下さい。あなたが選んで下さい」
店員は、腹を抱えて笑った。
「わかったわ。じゃ、これなんかどうかしら」
そう言って黒いハイレグカットのパンティーを店員は差し出した。その時、またピピッと携帯のメールの着信音が鳴った。そっと開けてみると、それにはこう書かれてあった。
<それでいいです。プレゼントするので包んで下さい>
純は、真っ赤になって言った。
「そ、それでいいです。プレゼントするので包んで下さい」
店員はニコッと笑った。
「はい。わかりました」
店員はパンティーをレジに持って行き、プレゼント用の紙につつんで純に渡した。
「これなら、きっと彼女も喜ぶわよ。はい。1500円です」
純は、ポケットから財布を取り出して、1500円を震える手で渡した。
「どうもありがとうございましたー」
店員が微笑して言った。その時、ピピッと携帯のメールの着信音が鳴った。そっと開けてみると、それにはこう書かれてあった。
<僕の好きな人というのは、あなたなんです。前からずっと好きだったんです。どうか受けとって下さい。と言って店員に包みを差し出す>
純は真っ赤になって、もう捨て鉢な気持ちになって、その通りに言った。
「僕の好きな人というのは、あなたなんです。前からずっと好きだったんです。どうか受けとって下さい」
そう言って純は真っ赤になって包みを差し出した。女店員は、一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったようにあっけにとられていたが、直ぐにニコリと笑った。
「ありがとう。嬉しいわ。ありがたく頂きます。どうもありがとう」
店員は、包みを受け取った。
少年が焦って、その場から逃げ出そうとすると、女の店員が呼び止めた。
「ねえ。ボク。ちょっと待って」
そう言って店員はレジから出てきて純の手を掴んだ。女の店員は笑顔で純を見ている。純は、焦りと恥ずかしさと、不安で真っ赤になってドギマギしている。
「順子―。ちょっとレジ見てて」
店員は大きな声で言った。商品のチェックをしていた別の女店員が、振り向いて走ってきた。
「どうしたの。玲子。何の用?」
玲子の所に来た店員が聞いた。
「ちょっと、この子がね、スーパーの中で落し物しちゃった、って言うから、一緒に探してあげようと思うの。その間、レジを見てて」
そう言って、包みを渡された店員は、純の頭を撫でた。
「ああ。そうなの。わかったわ」
玲子に呼ばれた順子という店員は、レジのボックスの中に入った。
「さあ。ボク。行きましょう」
そう言って店員は純の手を引いて歩き出した。
「ど、どこへ行くんですか?」
純は不安になって聞いた。だが店員は黙って純の手を握って歩いていった。店員は純を連れて女子トイレに入った。
「な、何をするんですか」
純は震えながら、真っ赤になって聞いた。女店員は後ろ手で戸を閉めるとは、ニコッと笑って両手を純の肩にかけた。そして、しゃがんで、目線を純と同じ高さにして、純をじっと見た。
「ボク。私が好きなの」
「え、ええ」
乗りかかった船で、純はそう言った。というより、この場合、この状況で、純にそれ以外に他に言う言葉があるだろうか。それに、実際、純は、はじめて会ったこの女店員が一目見た時から好きになってしまったのである。だからそれは純の本心でもある。
「ボク。名前は何というの」
「純です」
「私、ボクのこと気づかなかったわ。でもとっても嬉しいわ。私は黒木玲子。よろしくね」
女はそう言って、いきなり純の唇に自分の唇を合わせた。純は真っ赤になった。女は純の頭を掴むと、引き寄せて口と口を合わせ、純の口の中に舌を入れてきた。
「さあ。ボクも舌を私の口の中に入れて」
初めてのキスに純は真っ赤になった。純は言われたように、恐る恐るそっと舌を出した。女はうっとりした表情で、舌を伸ばして、純の舌と合わせると、さかんに舌と舌を絡めあった。キスは初めてなので純はボーとなっていた。女は貪るように純の舌を弄った。歯や頬の内側など口中に隈なく舌を伸ばす。女は純の頭をしっかり押さえて離さない。純の口中からは次から次へと、とめどなく唾液が出てきた。女はコニッと笑って純の唾液を啜った。それでも唾液は、とどまる事を知らず出つづけた。女は、それを全部飲み込んだ。
「プハー」
いいかげん長くキスして疲れたのだろう。女は純から口を離し、大きく呼吸した。そしてじっと純を見つめた。そしてニコッと笑った。
「嬉しいわ。ボクのような可愛い子に好かれていたなんて。さあ。ここを揉んで」
そう言って女は、しゃがみ込んだまま、純の両手をつかんで、自分の豊満な胸に当てた。
「さあ。揉んで」
玲子は言った。
「あ、あの。こんな事しては、いけないんじゃないでしょうか」
純は怖れながら手をプルプル震わせながら聞いた。
「いいの。だって私がいいって言ってるじゃないの。それとも純君は本当は私が嫌いなの?それとも、あの告白は悪戯だったの?」
「ち、違います。僕は本当にお姉さんが好きなんです」
玲子はニコッと笑った。
「嬉しい。じゃあ揉んで。女は好きな男の子にならエッチな事をされれたがるものなのよ」
そう言われて純は恐る恐る玲子の胸を服の上から、ゆっくり揉み始めた。だが純の震える手つきは、恐る恐るで、服の上から触れているだけのほんの申し訳程度である。
「あん。じれったいわ。純君は私の事、本当に好きなの」
玲子はもどかしそうな口調で言った。そして純をじっと見つめた。
「は、はい」
「じゃあ、ちゃんと揉んで」
「は、はい」
純の頭は興奮より、ただただ緊張だけだった。玲子の機嫌を損ねないように、純は力、といっても子供の力だからたいしたものではないが、を入れて一生懸命、制服の上から玲子の胸を揉んだ。豊満で柔らかい玲子の胸を揉んでいる内に純もだんだん興奮してきた。
「ああん。いいわっ。気持ちいいっ」
玲子は、淫らに半開きに口を開きアハンと上擦った口調で喘いだ。女が興奮すると我を忘れて言葉がなくなる。玲子は、純に注文せず、純に胸を揉ませるのに任せた。純も興奮してきて、もはや躊躇いは無くなり、積極的になって柔らかくてエッチな玲子の胸の感触を楽しむように、たっぷり揉んだ。もう純は激しくビンビンに勃起していた。玲子も純も気が投合していた。沈黙のまま、しばし玲子は純に胸を任せていた。
「さあ。純君。今度はお尻を触って」
そう言って玲子はスックと立ち上がって後ろを向き両手を壁につけた。
「さあ。純君。触って」
純の目の前には制服の膝までの紺のタイトスカートに覆われた大きな尻がムッチリ盛り上がっている。
「さあ。純君。触って。うんとエッチな事して」
純は目をパチクリさせた。純はゴクリと唾を飲み込んだ。
「ああっ。玲子さん。好きです」
純は叫ぶように言うや玲子の尻にしがみついた。純が女の体で一番惹かれるのは尻だった。つまり純は、甘えん坊なのである。純は女の尻に頬っぺたを押しつけるようにくっつけ、ガッシリと両手で玲子の腰をタックルのように前に回して抱きしめた。
「ああっ。幸せです。玲子さん」
純は、あられもない告白をして、しばらく玲子の尻にスカート越しに、その柔らかい弾力のある肉を枕のようにしてピッタリと顔を尻にくっつけた。玲子は首を後ろに回して、尻にしがみついている純を見て、ふふふ、と笑った。純がじっとしているので玲子はハワイアンダンスのように腰をゆっくり揺らした。純は手をほどいて顔を離した。純が手を離すと玲子も腰の動きを止めた。純は目の前にある玲子の大きな尻をじっと見つめていたが、そっと手を伸ばして触ると、尻の感触を確かめるように、ゆっくり触ったり、撫でたりした。
「ああっ。柔らかい。最高の感触です。玲子さん」
純は興奮して上擦った口調で言った。
「純君」
「はい。何でしょうか」
「スカートの中に手を入れて触ってもいいわよ」
純は一瞬、ためらったが、小さく、
「はい」
と言って、スカートの中に手を忍ばせた。
「ああっ。柔らかい。温かい」
純は太腿に触れると、思わず声を出して言って、太腿を抱きしめた。そうなのである。純は母親の愛情を受けずに育ったため、やさしさに飢えているのである。太腿の次は、玲子に言われたようにパンティーの上から尻を触った。あまりにも柔らかくて温かくて、また、こんな事をするのは生まれて初めてなので、純は興奮してハアハアと息を荒くした。マラはビンビンに勃起している。特にパンティーの縁の部分に純は興奮した。しかしスカートの中で触っているので、実際のパンティーや尻は見えない。まるで痴漢のようである。しかし見えないという事は余計、純の想像力を掻き立てて、純を興奮させた。
「ふふ。いいわよ。純君。私、一度、かわいい小さな男の子に痴漢されたいと思っていたの」
純の思いを察している事を知らしめるかのように玲子が機先を制するように言った。純の手がピクンと震えた。だが、もう純は捨て鉢になって、どんなに軽蔑されてもかまわないという心境になっていたので、思うさま玲子の尻を触りまくった。ちょうど見えない福引きの箱の中を手探りでかき回すように。
「純君」
「は、はい。何でしょうか」
純の手がピクンと動いた。
「ここも触って」
そう言って玲子は純の手を掴んで、前に持っていき、女の盛り上がりの部分に当てた。
「ここも触って」
純は真っ赤になって心臓の鼓動がドキドキと速くなった。
「は、はい」
純は蚊の泣くようなか細い声で言った。女の其処を触るのは生まれて初めてである。触るという事は、自分の人格を相手に知られてしまう事である。純は恥ずかしがり屋なので、なかなかそれが出来ない。其処に当てられているのは玲子の意志による誘導で純の意志ではない。しかし、何かをする事は出来ない。しかし、かといって離す事も出来ない。離すと恥ずかしがっている事がわかってしまって、それも出来ないからである。純は蛇ににらまれた蛙のように、其処に触れている手を石のようにじっとさせていた。
「あん。純君。お尻のように、うんと触って」
純が何もしないので玲子がじれったそうな口調で言った。
「は、はい」
純はあわてて返事をした。玲子の要求という口実が出来た。ので純は其処を触りだした。女の盛り上がりの肉がパンティーによってピッチリ収められていて、摘もうとすると、プニュッと程よい弾力があって気持ちいい。何回か揉んでいるうちに、だんだん純も心の抵抗がなくなってきて、積極的に触るようになった。純は蕩けるような酩酊の感覚で、其処を揉んだ。もう一方の手で太腿や尻を触りながら。
「ああー。か、感じちゃうー」
玲子は苦しげな喘ぎ声を出した。玲子の体はプルプル振るえ、弱々しい内股気味になっていた。玲子は胸の前で両手を交叉させ、胸を押さえ、純の責めに耐えた。
その玲子の仕草は純の性欲を激しく刺激した。純はパンティーの縁のゴムを摘み上げて離し、ピチンと音をさせたり、女の部分をパンティーの上から指でスーとなぞってみたり、太腿を指先でスーと膝の上から女の部分へゆっくり這わせたりした。その度に玲子の太腿はピクンと震えた。純は友達がおらず、いつも一人でそんな事ばっかり想像していたので、初めてとはいえ、そういう事が上手いのである。気のせいか玲子の女の部分が膨らんできたように見えた。
「じゅ、純君」
玲子の口調は震えていた。
「は、はい。何でしょうか。玲子さん」
純は淡白に答えた。
「あ、あの。お願いがあるんだけど聞いてくれる」
「は、はい」
「パ、パンティーの中に手を入れて直接、触ってくれない」
「は、はい。わかりました」
純はパンティーの縁から手を入れて直接、女の部分を触った。よくパンティーの縁を引き絞ってTバックのように尻や前を露出させる人がいるが、純はそれが趣が無いと思っていて嫌いだった。そのため、そんな事はしなかった。それよりパンティーの形はそのままで、中に指を入れてモソモソ這わせるのが趣味だった。そのため、そうやった。純は、生まれて初めて触る女の部分に、激しく興奮しながら触った。純は女の割れ目を探り当てた。其処は湿っていた。純は女の割れ目に指を入れた。其処はヌルヌルともっと粘っこい液体でベタついていた。純は其処に指を当てて前後に動かした。もう一方の手は後ろからパンティーの縁の中にいれ、尻を触ったり、コチョコチョくすぐったり、尻の割れ目に指を入れて、割れ目を指先でなぞったりした。前の割れ目は、相変わらず、指で前後になぞりながら。純はスケベなので、こういう事は上手かった。
「あ、ああー。感じちゃうー」
玲子は下肢をプルプル震わせながら、苦しげな口調で喘ぎ声を洩らした。玲子の女の割れ目からは、ネバネバした液体がどんどん出てきて、純が割れ目をなぞる度にクチャクチャ音を立てるようになった。
「玲子さん。パンティーが濡れちゃいます」
純は玲子の下着が濡れる事を心配して言った。
「い、いいの。大丈夫。それより、後ろの方に穴があるでしょ。そこに指を入れて」
純は割れ目の後ろの方をまさぐった。穴があった。純は指を立てて穴の中に指を入れた。ベチャベチャに濡れているので、それが潤滑油となって、指は容易に入った。入ると直ぐにキュッと指は締めつけられた。それは玲子の意志で締めつけているのか、それとも何かが入ると反射的に締めつけようとするものなのかは、純には、初めてなので、どっちなのか分からなかった。そもそもまだ学校の授業でも習っていない。ので分かりようがない。穴の中は、外より、もっとヌルヌルしていた。純はまるで秘境のジャングルに足を踏み入れた探検家のように指で穴の中をあちこち触った。
「あ、ああー。そ、そこ。感じちゃうー」
玲子は髪を振り乱して苦しげに言った。
「ゴ、ゴメンなさい」
純は、女にとって辛い所を触ったのだと思って、あわてて指を離した。
「い、いいの。大丈夫。お願い。もっと其処をうんと触って」
玲子は苦しげに眉を寄せた顔を純に向けて言った。
「つらくないんですか」
純は恐る恐る聞いた。
「大丈夫。つらいような叫び声を上げちゃうかもしれないけど、構わないでうんと刺激して」
玲子は顔を赤くして純に言った。
「わ、わかりました」
純はわからないまま、京子に言われた所を念入りに指先で刺激した。
「あ、ああー。い、いいわー」
玲子は髪を振り乱して叫んだ。純は玲子がとてもつらい思いなのだろうと思って一旦、指を動かすのを止めた。そうすると玲子は、落ち着きを取り戻し、荒かった呼吸がだんだん、落ち着いてきた。やはり、触られるとつらい所なのだと純は確信した。しかし、玲子が、
「つらいような叫び声を上げちゃうかもしれないけど、構わないでうんと刺激して」
と言っているし、
「いいー」
と叫んだので、つらいけど気持ちがいいのだろうと思って、玲子の息が落ち着くと、また指先で其処をコチョコチョと押したり擦ったりした。すると玲子は直ぐに、プルプルと体を震わせながら、
「あっ。ああー」
と苦しげな喘ぎ声を上げ始めた。まるでスイッチを押すと動き出す人形のようである。そんな事を何回か繰り返した。純も何か訳のわからないまま面白くなってきた。
「純君」
「はい」
「今度は指を出そうとしたり、入れようとしたりして、上下に動かして」
「はい」
純は元気よく答えた。そして玲子に言われたようにゆっくり、穴に入れている指を前後に動かし出した。
「あっ。ああっ」
また玲子が苦しげな喘ぎ声をあげ出した。しかし、これも前のと同じで、辛いけど気持ちがいいんだろうと思って、玲子の反応に構わず、自分の意志で指を往復運動させ、そして時々、休んだ。そうする事が玲子が一番、望んでる事だと思ったからである。玲子は、さっきと同じように、まるでスイッチを押すと動き出す人形のようである。動かすと悶え出し、止めると落ち着いてくる。純はまた、そんな事を何回か繰り返した。何回か後に、玲子が、辛そうな、しかし物欲しそうな顔を純に向けた。
「ね、ねえ。純君」
「はい。何ですか」
「今度は休みを入れないで続けてやって」
「大丈夫ですか」
「大丈夫よ」
「はい。わかりました」
純は玲子に言われたように、今度は休みなく、ゆっくりと指を往復させた。
「ああっ」
玲子は喘ぎ声を出し、体は震えだした。休みがなくては、辛いだろうと思って純はゆっくり往復させた。しばしすると玲子はねだるような顔を純に向けた。
「純君」
「はい。何ですか」
「お願い。もっと速く激しくやって」
「大丈夫ですか」
「大丈夫。お願い」
「はい。わかりました」
純は玲子に言われたように、往復運動の速度を速めた。
「ああー」
京子は大きく叫んだ。しかし純は玲子の要望どおり、休まず続けた。このまま、どうなるのか、純には分からなかった。
「純君」
「はい」
「もっと速く、もっと激しく、やって」
玲子は何かを必死で求めるように命令的な口調で言った。
「はい」
純は返事して、玲子に言われたように、速く激しく往復させた。手加減はしなかった。玲子は、
「ああー」
と悶えて苦しんでいるように見えるが、それを望んだのは玲子である。玲子は、とうとう全身がガクガク震え出した。
「ああー。いくー。お願い。純君。もっと激しくやって」
玲子が叫んだ。純は、分からないまま、ますます速く激しく指を往復させた。
「ああー。いくー」
玲子は、ひときわ激しい叫び声を上げた。玲子の体は激しく痙攣した。何かが玲子に起こったのだと純は感じた。そのため純は指の往復を止めた。そして指も抜いた。玲子は、ハアハアと激しく肩で呼吸していたが、だんだん落ち着いてきて、ついに平常の呼吸に戻った。玲子は純に見られないよう背を向けると、トイレットペーハーを少し切り取り、女の濡れた所を拭いた。さらに玲子はトイレットペーパーを少し切り取って、純に振り向いた。玲子はニコッと笑って純を見た。
「純君。手を出して」
純は手を差し出した。
「純君。ありがとう。いっちゃったわ。すごく気持ちよかったわ」
玲子はベトベトになった純の指をトイレットペーパーで丁寧に拭いた。
純には、このベトベトした液体が何だかわからなかった。
「玲子さん。このネバネバした液体は何ですか」
純に聞かれて玲子は恥ずかしそうに顔を赤くした。
「女はエッチな気持ちになるとアソコが濡れちゃうの。ゴメンね。純君の手を濡らしちゃって」
純の手を拭きおわると玲子は純の手を握った。
「純君。ありがとう。気持ちよかったわ。お礼に今度は純君を気持ちよくさせてあげるわ」
そう言うと玲子はしゃがみ込んだ。玲子は純のズボンのベルトを緩め、チャックを外して、ズボンを降ろした。そしてパンツも降ろした。いきなりズボンとパンツを脱がされて、純は恥ずかしさで真っ赤になった。丸出しにされた、おちんちんは玲子に見られて、恥ずかしさのため、直ぐにビンビンに硬く勃起した。天狗の鼻のようにそそり立ったそれを見られている事が恥ずかしく、純は真っ赤になった。が、小心な純は玲子のする事に対して何もする事が出来ず、精神的に呪縛にかかったかのように、じっとしていた。丸出しのおちんちんは、ますます勃起した。
「ああっ。玲子さん。何をするんですか」
純は真っ赤になった顔で聞いた。
「ふふふ。こんなに大きくなっちゃって。私を好きなのね。ありがとう。嬉しいわ」
そう言って玲子は純の股間に顔を近づけ、そっと口を開けて、そそり立ったおちんちんを口に含んだ。
「ああっ」
純は死にそうなほど驚いた。
「ああっ。玲子さん。何をするんですか」
純は焦って言った。玲子は口に入れたおちんちんを一先ず離した。
「気持ちよくしてあげるわ。じっとしていて」
玲子は笑顔で言った。
「や、やめて下さい。そんな所、汚いです」
純は焦って言った。玲子はニコッと笑った。
「汚くなんかないわ。大人の男と女では皆やってることなの。安心して」
そう言って玲子は再び、純のおちんちんを口に含んだ。そして、ゆっくりと口を往復させ始めた。
「ああっ」
女におちんちんを舐められる事など生まれて初めてなので、純は何がなんだか分からなくて頭が混乱していた。ただ、いつもオシッコをしている汚い所をきれいな女の人が舐めているのが不思議で、可哀相に思った。女の裸は「美」だが、男の裸、ましてや、おちんちんなど汚いだけだと思っていた。大人の男と女がそんな事をしていると思うと、何か嫌な気持ちになった。女はきっと、男の命令で仕方なくそんな事を嫌々しているんだろうと思った。だが玲子の顔には嫌がっている様子は見られない。むしろ恍惚としてうっとりしているような感じである。純は疑問に思いながら変な事をしている玲子を見た。純と視線が合うと玲子はニコッと笑った。そしておちんちんから口を離した。
「どう。気持ちいい?」
「わ、わかりません。そんな所、汚くて玲子さんに悪いです」
「汚くなんかないわ。何も考えないで私に任せて。必ず気持ちよくしてあげるから」
そう言って玲子は再び純のおちんちんを口に入れた。純は、京子に言われたように、あまり考えないことにした。京子は今度は口の中で舌を出して、純のおちんちんの色々な所を舐め出した。気持ちよくはないが何か不思議な気持ちになった。玲子は、しばし舌で舐めた後、口を離した。そして今度は両手を後ろに回して、尻を指先ですーと撫でたり、尻の割れ目に指を入れたりした。
「ああっ」
純は思わず声を出した。だが玲子はニコニコ笑いながら、純の尻の丘を撫でたり尻を割り開いて、尻の割れ目をすーと指でなぞったりした。
「ああー」
純は思わず声を出した。
「どう。気持ちいい?」
「は、はい。くすぐったいですが、気持ちいいです」
純は正直に答えた。
「そう。それはよかったわ」
そう言って玲子は尻を触りながら、脇腹や背中を爪先で、触れるか触れないかの程度で、すーと撫でたり、腋の下をコチョコチョくすぐったりした。
「どう。純君。気持ちいい?」
「は、はい。死にそうなほど、くすぐったいですけど気持ちいいです」
玲子はニコッと笑った。
「我慢してね。くすぐったさが気持ちよくなるんだから」
そう言って京子は爪先を純の尻や背中や太腿に、すーと這わせた。純は口を閉じて眉をしかめ、手をギュッと握りしめ、くすぐったさに耐えた。玲子は繊細な手で純の玉袋をそっと包むと、ゆっくりと玉を掌の中で揉み始めた。残りの片手で純の体をくすぐりながら。だんだん純は気持ちよくなってきた。玉を揉まれる感覚も何か気持ちがいい。
「どう。純君。気持ちいい?」
「は、はい」
純は自分の気持ちを正直に答えた。
「そう。それは良かったわ。私も弾力のあるプニュプニュした玉を揉む感覚が気持ちがいいわ」
そう言って玲子は片手で玉を揉みながら、片手で尻や太腿の内側をすーと撫でた。しばらくそうした後、玲子はまた純の玉袋を口に含んだ。
「ああっ」
思わず純は声を出した。玲子は舌で玉を転がしたり、少し歯を立てたりした。手で純の尻や太腿を撫でながら。
「どう。純君。気持ちいい?」
玲子が口を離して聞いた。
「は、はい。気持ちいいです」
「そう。それは良かったわ」
「でも、噛んだりしないで下さいね。怖いんです」
「大丈夫よ。噛んだりなんかしないから。でも、そうされてしまうかもしれない恐怖感がスリルがあって気持ちいいでしょ」
そう言って玲子は、また玉袋を口に含んで舌で玉を転がしたり、舐めたりした。時々、少し歯を立てながら。手で太腿や尻の割れ目を撫でながら。純は、はじめは、おぞましいと思っていたこの行為に慣れてきて、気持ちが良くなってきた。しばし玉をしゃぶっていた玲子は、口を離し、今度はおちんちんを口に含み、舌で舐めたり、前後にゆっくり往復させ出した。手で太腿の内側や尻の割れ目などの敏感な所を、爪先でそーと撫でながら。もはや純はためらいなく、気持ちよくなっていた。純は身も心も玲子に任せた。はじめは大人の男女がこんな事をするのは汚いと思っていた嫌悪感も薄れて、大人がそんなことをするのも少し理解できた。玲子は一心に口に含んだおちんちんを、ゆっくり往復させている。純は、だんだん自信がついてきて、玲子の美しい黒髪を撫でたり、柔らかい二の腕や華奢な肩を触った。それは柔らかくて気持ちが良かった。玲子は純と視線が合うとニコッと微笑んだ。何か純は大人になったような気がした。女はこうする事が嫌ではなく、かえって好きなんだとも思えるようになった。純はちょっと王様になったような気分になった。
「ああ。玲子さん。汚い所を舐めさせてしまって申し訳ないですけど、気持ちいいです」
純はため息まじりに言った。
「ふふ。純君も大人になったのね」
玲子は、そんな事を言って、また純のおちんちんを口に含んで往復させた。その表情は、嫌がるどころか、むしろ我を忘れて楽しんでいるようだった。
「玲子さん」
「なあに」
「そんな汚い所を舐めるのが気持ちいいんですか」
純は直截的な質問をした。
「ええ。気持ちいいわ。純君にはまだ分からないでしょうけど。特に純君のように若くてピチピチで身も心もきれいな、おちんちんは最高だわ」
玲子もあられもなく答えた。そしてまた純のおちんちんを口に含んだ。もはや純に躊躇いはなくなっていた。純はおちんちんを舐められる快感に身も心もゆだねた。その間、純は玲子の髪をやさしく撫でた。かなりの時間、京子は舐めつづけたが、ようやく口を離した。

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少年と二人の女 (小説)(下)

2020-07-07 06:34:26 | 小説
「じゃあ、時間も無いから、これでおわりにするわ」
そう言って京子は純のパンツをあげて履かし、ズボンもあげて履かせた。
「どう。気持ちよかった」
「え、ええ。とても。でも、やっぱり玲子さんに悪いです」
「そういう、やさしい純君って好き」
そう言って玲子は純の背中に手を回して純を抱きしめた。純は最高に幸せだった。玲子も嬉しそうだった。しばしの抱擁の後、玲子は純の両肩に手をのせて純をじっと見た。
「純君。いつから私のことを見てたの」
「そ、それは・・・半年くらい前からです」
純はとっさのデタラメを言った。
「ふーん。全然気づかなかったわ」
「・・・だって、気づかれないよう、男子用の下着売り場から、そっと見てたんですから・・・」
「ふーん。そうなの。全然、気づかなかったわ。店員はね、万引きしてる人がいないか、無意識の内に周囲をさりげなく見回す習慣があるから、普通なら気づくはずなのに・・・。私って鈍感なのかしら」
「ち、違います。一ヶ月に一回か二回くらいの割り合いでしか来ませんでしたから・・・」
「ふーん。そうなの。それじゃあ仕方ないわね。よかったわ。私が鈍感じゃなくて」
純はほっとした。だがそれも束の間。
「でも、どうして今日、あんな大胆な事を言う決断をしたの」
「そ、それは・・・」
と言って純は一瞬、言葉に詰まった。
「それは、学校で担任の先生に、お前は内気すぎるから、もっと積極的にならないと内申書の性格で、内気、と書かなきゃならないから進学に不利だぞ、と言われたんです」
純は苦し紛れの理屈を言った。
「ふーん。そうなの。じゃあ、私は純君の進学のために内申書の成績を良くするための練習なのね」
玲子はさびしそうな口調で言った。
「ち、違います」
「どうして」
「確かに、練習という意味もありますけれど、好きな人にじゃなきゃ、あんな事、言いません」
「確かにそうね」
玲子は納得したようにニッコリ笑った。
「純君。携帯もってる?」
「はい」
純はズボンのポケットから携帯を取り出した。
「ちょっと貸して」
玲子が言ったので純は携帯を京子に渡した。玲子は携帯をピピピッと操作して、純に返した。
「はい。メールアドレスと住所を入れといたわ。純君は勉強熱心そうで遊びに夢中にならないように電話番号は入れなかったわ。また、私に会いたくなったら、いつでもメールしてね。お店は忙しいから、これからは、お店で会うことは、あまり出来ないわ」
「あ、ありがとうございます。京子さん」
純は礼を言って携帯をズボンのポケットに入れた。
「じゃあ残念だけどもう出ましょう」
「はい」
「ちょっと待ってて。人がいないか見るから」
そう言って玲子はトイレを出た。そして直ぐに戻ってきた。
「大丈夫。誰もいないわ。まず私が先に出るわ。人が来ないように見張ってるから、純君を呼ぶわ。純さん、て言うわ。そしたら、急いで出てきて」
「はい」
玲子は、直ぐにトイレを出た。
「純さーん」
玲子が呼ぶ声がした。女子トイレから男が出てくるのを人に見られたら大変である。純は急いで女子トイレを出た。外には誰もいなかった。玲子がニコニコ笑っている。
「じゃあ、私、仕事があるから、ここでお別れね。私に会いたくなったらいつでもメールしてきてね」
そう言って玲子は手を振って、急いで小走りにレジの所に戻って行った。
純はほっとして、京子のいた所に戻った。京子はいない。純は携帯を取り出した。メールが一通、来ていた。京子からのメールだった。
「なかなか帰ってこないので、三階の喫茶店にいます」
と書いてあった。
純は礼儀正しい性格だったので急いで、玲子にお礼のメールを書いて送った。それには、こう書いた。
「玲子さん。今日はどうもありがとうございました。またお会いしたいです。純」
純は急いで三階に上がった。喫茶店で京子が窓際の席に一人で座ってポカンと外を見ていた。純は喫茶店に入って急いで京子のテーブルに向かい合わせに座った。
「おかえり。随分、長かったわね」
「は、はい」
「純君。何か食べる?」
「い、いえ。いいです」
京子がアイスティーだったので、純もアイスティーを注文した。
「どうだった。ちゃんと、メールに書いたように店員に愛の告白をした?」
「は、はい。恥ずかしいけど、ちゃんとメールに書いてあるように言いました」
「そしたら相手は何て言った?」
「ありがとう。嬉しいわって言って受けとってくれました」
「そう。それは良かったじゃない」
京子はストローでアイスティーを掻き回した。
「自信ついたでしょ」
「はい。少し。でも、怒られました」
「何て」
「あんな事、私だからいいけど、もうしちゃダメよ、って注意されました」
「ふーん。でも、随分、長い時間だったけど、何をしていたの」
「・・・えーとですね。私だからいいけど、真面目な人だと叱る人もいて、叱られると、よけい自信がなくなっちゃうから、十分考えてから行動しなさいって、いうような事を長々と説教されてしまったんです」
純はウソをついた。玲子と仲良くなったと言うと、京子に嫉妬されると思ったからである。
「ふーん」
京子はストローでアイスティーを掻き回しながら聞き流すように言った。半信半疑の顔つきである。確かに、長めの説教といっても長すぎる。説教にそんなに時間がかかるわけはない。
「じゃあ、行きましょう」
「は、はい」
純は、急いでアイスティーをゴクゴク全部、飲んだ。そして京子と喫茶店を出た。二人は車に乗った。そして京子の運転で、京子の家に向かった。純は内心、ウキウキしていた。スーパーの店員の玲子の方が京子より美しく、好きになってしまったからである。それを察してか京子は何か不機嫌そうだった。帰りの車の中でも純に話しかけてこなかった。
京子の家に着いた。京子と純は家に入った。二人は向き合って食卓についた。京子はじっと純の顔を見た。その時、ピピッと携帯にメールが来た音がした。しまった、マナーモードにしておけばよかったと思った。メールが来た以上、直ぐに開けて見ないのは不自然である。純はポケットから携帯を取り出してメールを開いた。玲子からだった。それにはこう書いてあった。
「純君。メールありがとう。今日は楽しかったわ。また会いたいわ。 玲子」
純はドキンとした。玲子の方が、京子よりきれいだし、甘えられると思うとホクホク嬉しくなった。純の心はもう京子から玲子に移っていた。
「純君。携帯、見せて」
純が携帯をポケットに仕舞おうとすると京子が、それを制した。
「えっ」
と、純は焦ったが、見せない理由もなく、見せないのは、不自然である。京子は純から奪いとるように携帯をとった。純は焦った。さっき玲子に送った「今日はどうもありがとうございました。またお会いしたいです」という純のメールもある。京子は、眉を寄せて携帯を見ていたが、携帯を片手に純に疑問に満ちた目を向けた。少し不機嫌そうである。
「純君。さっき言った事ウソでしょ。一体、何があったの」
京子は問い詰めるように言った。
「い、いえ、その・・・」
純は答えられない。
「純君。着てる物を全部、脱ぎなさい」
京子は厳しい口調で言った。
「は、はい」
純は京子の厳しい口調に怯えながら着てる物を全部脱ぎ、裸になった。おちんちんを手で隠しながら。
「純君。本当は何があったの。言いなさい」
京子は厳しい口調で問い詰めた。
「で、ですから、さっきも言ったように、少し、説教されたんです」
純は焦りながら言った。
「ウソだわ。説教されてメールアドレスを教えたり、楽しかったなんて言う?楽しかった、って玲子って人が言ってるけど、説教することが楽しい人なんている?」
「いると思います。誰でも説教されるのは、嫌ですが、説教するのは、いいたい事を言うのだから結構、いい気分なんじゃないでしょうか」
「それにしては、随分、長い時間の説教ね。メールも何か楽しそうな雰囲気ね。そんなに長々と何を話したの。言って御覧なさい」
「そ、それは・・・」
純は言葉につまった。
「純君。四つん這いになりなさい」
京子が強気の口調で命令した。
「は、はい」
言われて純は四つん這いになった。京子がドスンと純の背中の上に乗った。
「ああっ。何をするんですか」
「本当の事をいうまで拷問するわよ」
そう言って京子は両足を浮かせた。京子の体重が純の背中にかかった。
「ウソなんか言ってません。信じて下さい」
純は訴えた。純はどうしても玲子と友達になりたかった。心は京子から離れて玲子に移っていた。京子はそれを感じとって嫉妬しているのだ。
「純君。はっきり言うわ。私は玲子って人に嫉妬しているの。純君はメールで、玲子さんに、また会いたいです、なんて書いているでしょ。もう、私を捨てて、玲子って人と仲良くなるんでしょ。でも私が純君と玲子さんに、話すきっかけをつくってあげたのよ。スーパーで、あの人を見て、大人しくて優しそうな人だと思ったからなのよ」
京子は恩着せがましく言った。
「は、はい。その事は十分、わかっています」
純は突っ張った細い腕をプルプル震わせながら言った。
「私を捨てて、あの人に鞍替えするんでしょう」
そう言って京子は尻を揺すった。
「そ、そんな事、ありません」
純は必死に訴えた。
「じゃあ、あんなに長い時間、一体何をしていたの。彼女は、楽しかったって書いてるけど」
「ゲームセンターで一緒にちょっと遊んだんです」
ショッピングセンターの中にゲームコーナーがあるのを純は見ていたので、そんな出任せを言った。
「ゲームセンターで何をして遊んだの?」
「モ、モグラ叩きです」
「本当ね?」
「はい。本当です」
「これで純君がウソをついている事が完全に証明されたわ。あそこのゲームコーナーには、モグラ叩き、はないのよ」
京子は勝ち誇ったように言った。純は真っ青になった。
「さあ、純君。本当のことを言いなさい」
京子は強気に言うが、純はどうしても言いたくない。それを京子は察したかのような様子である。そして言った。
「しょうがないわね。じゃあ、本当のことを言うまで拷問にかけるわよ」
そう言って京子は純の腋の下をコチョコチョとくすぐった。純は、ああーと叫びながらも必死で耐えた。京子は脇腹を爪先ですーと撫でたり、金玉をつかんで、引っ張ったりした。だが、純は歯を食いしばって耐えた。
「さあ。純君。膝を伸ばしなさい」
言われて純は四つん這いだった膝を伸ばして下肢を一直線にした。だが、あいかわらず京子は純の背中に乗っている。
「さあ。純君。腕立て伏せをしなさい」
京子が命令的な口調で言った。
「ええー」
純は吃驚して思わず声を出した。
「さあ。はじめなさい」
そう言って京子は純の尻をピシャンと叩いた。仕方なく純は京子を背中に乗せたまま腕立て伏せをはじめた。ただでさえ、純は腕立て伏せは20回くらいしか出来ないのに、京子は容赦なく体重をかけて背中に乗っている。純は、京子を乗せたまま腕立て伏せを始めた。京子が乗っているので耐えられないほど重い。
「ほら。もっと、ちゃんと肘を深く曲げなさい」
腕の曲げ具合が少ないので、京子は容赦なく叱って、純の尻をピシャリと叩いた。
「は、はい」
純は恐る恐る言って、深く肘を曲げた。京子が背中に乗っているので肘を伸ばすのが大変である。10回くらいで、純はもう手がガクガクになり、意識が朦朧としてきた。もう限界だった。
「きょ、京子さん。許して下さい。もう耐えられません」
純は全身をガクガク震わせながら言った。
「ダメよ。許して欲しかったら、本当の事を言いなさい」
京子は突き放すように言った。純は仕方なく腕立て伏せをつづけた。だが、もう限界だった。とうとう純はグシャッと潰れてしまった。
「ダメじゃないの。ちゃんと起きなさい」
京子はうつ伏せになっている純の鼻を摘んで言った。
「も、もう出来ません」
純は泣きそうな顔で言った。
「だったら本当の事を言いなさい」
「な、何をですか?」
「とぼけないで。だから、二時間も彼女と、どこで何をしていたかよ」
そう言って京子は純の金玉をグッと握った。
「言わないと強く引っ張っちゃうわよ」
京子は威嚇して、純の金玉をグッと引っ張った。
「ああっ。言います。言いますから、許して下さい」
純は泣きそうな顔で京子に訴えた。
「わかればいいのよ。さあ。本当の事を言いなさい」
京子は純の金玉を握りながら言った。純は弱々しい顔を京子に向けて、京子の顔を窺いながら話し始めた。
「あ、あの。女の店員に女子トイレに連れて行かれました」
「そこで何をしたの?」
「いきなりキスされて、胸を触らされて、おちんちんを舐められました」
純は正直に答えた。
「それで気持ちよかった」
「は、はい」
「また、彼女と会うつもり?」
「わ、わかりません。それは・・・」
「ウソおっしゃい。彼女と別れてすぐに、また会いたいです、ってメール送ってるじゃないの。本当は会いたくて会いたくて仕方ないんでしょ。本当のこと言いなさい」
京子は純の金玉をつねった。
「は、はい。会いたいです」
純はあわてて苦痛に顔を歪めて言った。
「くやしいわ。私がお膳立てしてあげたのに、私は捨てられて、きれいな女店員に乗り換えられちゃうんだから」
その時、ピピピッと純の携帯がなった。京子は純の携帯を開けてみた。玲子からのメールだった。それにはこう書かれてあった。
「純君。明日、××の海水浴場にいかない。玲子」
京子は純を見た。
「純君。どうする。行く?」
「い、行きません」
純は京子の嫉妬を怖れてそう言った。
「いいのよ。行きなさい。行かなきゃダメよ」
そう言って京子は直ぐに返事のメールをこう書いた。
「はい。喜んで行きます。純」
そして京子はそのメールを玲子に送った。

   ☆   ☆   ☆

さて翌日になった。
××の海水浴場にセクシーなビキニ姿の玲子と純が砂浜の上にシートを敷いて座っていた。ビーチバレーをした後の一休みである。
「よー。玲子ー。随分、幼い彼氏じゃないかー」
浜辺にいた三人の男がひやかし半分に声をかけた。
「あら。あなた達、来ていたの。この子はね。私の従兄弟なのよ」
玲子は大きな声で男達に向かって言った。男達は笑いながら三人でビーチバレーをし出した。
「純君。あの男の人達は私の高校の時の同級生なの。ここは私の地元だから、結構、知ってる人に会っちゃうの」
玲子は純にそんな説明をした。
「あ、あの。玲子さん」
純は、恐る恐るの様子で玲子に声をかけた。
「なあに。純君?」
「あ、あの。スイカ割りを、し、しませんか」
純の声はなぜか震えていた。
「いいわ。やろう。じゃあ、スイカ買ってくるわね」
玲子は天真爛漫の笑顔で笑って、海の家に走っていった。玲子はすぐにスイカを買って、戻ってきた。玲子は小さなビニールを敷いて、その上にスイカを乗せた。
「さあ。純君。どっちがやる。私。それとも純君?」
「れ、玲子さんがやって下さい」
純は声を震わせながら言った。
「わかったわ。じゃあ、私がやるわ」
玲子は笑って言った。そうして目隠し用の手拭いを取り出した。
「あ、あの。玲子さん」
「なあに」
「スイカを割っちゃうと、汚くなって食べにくくなりますから、割らないで、目隠しして、スイカを当てるというようにしては、どうでしょうか」
「そうね。その方がいいわね」
「あ、あの。玲子さん」
「なあに」
「でも、それだけだと、ちょっと簡単になっちゃいますから、手を後ろで縛って、足だけで探すというようにしては、どうでしょうか」
「そうね。その方が面白そうね。いいわよ」
こうしてスイカ割りが始まった。純は玲子の目を手拭いで縛って目隠しをした。
「はい。純君。手も縛るんでしょ」
そう言って玲子は両手を背中に回した。純は、玲子の華奢な引き締まった手首を重ね合わせてハンカチで両手首をキュッと縛った。そして純は玲子の体をクルクルと回して方向を分からなくした。
「さあ。はじまり。はじまり」
純は曲馬団の団長のようにおどけた口調で言った。玲子は砂浜をスイカを求めてヨロヨロと歩き始めた。だが波の音で海の方向はわかる。だが、手が使えないで、足だけで探すというのは、かなり困難で、玲子は、かなり歩き回った後、立ち竦んでしまった。
「純君。参った。参った。降参。目隠しをとって」
玲子が言った。その時、砂浜の後ろに身を潜めていた京子がサッと出てきて、玲子の所に小走りに駆けて行った。京子はハサミを持っていた。京子は玲子のビキニの紐を上下ともプツン、プツンと切ってしまった。ビキニが上下ともパサリと落ちた。京子は覆う物何一つない丸裸になった。京子は純にハサミを渡すと、急いで浜辺の後ろの方に戻って行った。玲子は真っ青になった。丸裸で目隠しをして、後ろ手に縛られているので、恥ずかしい所を隠しようがない。ビーチの客達は一斉に玲子に視線を向けた。
「純君。なにをするの。お願い。すぐに目隠しと、ハンカチをとって」
京子は大声で叫んだ。純は、あわてて玲子の目隠しをとり、背中で手首を縛っているハンカチもとった。玲子は自由になると、急いでビキニを拾って身につけようとした。だが、紐が切れている。これではどうしようもない。玲子は純の近くにあるハサミに目を留めた。
「じゅ、純君。ハサミでビキニを切っちゃったのね。ひどいわ」
玲子は、胸と秘部を手で覆いながらシートの所に急いで行った。そしてシートにあるカバンから財布を取り出すと、胸と秘部を両手で隠しながら、急いで海の家に走って行った。
「よー。玲子。凄い格好じゃねえか」
さっきの男三人が丸裸で砂浜を走っている玲子を見て笑いながら揶揄した。玲子は真っ赤になった。ムッチリ閉じ合わさった尻が丸出しになり、ビーチの客達は目を皿のようにして、丸裸の玲子を眺めていた。玲子は急いで、海の家で、ビキニを買って、身につけた。そして、純の所に戻ってきた。
「純君。ひどいわ。悪戯といっても、していいものと、していけないものがあるのよ。純君がそんな子とは知らなかったわ。私、もう恥ずかしくて、街を歩けないわ」
そう言って、玲子は、バッグを持って、踵を返して海水浴場を去ろうとした。
「あ、あの。ち、違うんです」
純が焦って後ろから声を掛けようとしたが、玲子は耳を貸さず、急いでビーチを出て、車で帰ってしまった。
ポツンと純がとり残された。黒いビキニの京子がソロソロと純の元にやってきた。純は恨めしそうな顔で京子を見た。その時、ピピピッと純の携帯が鳴った。それは玲子からのメールだった。それにはこう書いてあった。
「純君。ひどいわ。もう君とは付き合いません。玲子」
京子が携帯を覗き込んだ。
「あーあ。純君。せっかくの彼女にふられちゃったわね」
京子は他人事のような口ぶりで、さも残念そうに言った。全ては京子が仕組んだ計画なのである。
「でも、純君は、女の子と付き合った経験がないでしょ。女の子にふられるのも、いい人生経験なのよ」
京子はもっともらしく言った。京子のビキニ姿も美しかった。純は京子とスイカを食べた。
夕方まで京子とビーチバレーをして遊んだ。京子のセクシーな美しいビキニ姿を見ているうちに純は楽しくなってきた。純は、自分が軽卒な人間だと思った。



平成22年1月21日(木)

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老人とテニスと二人の女 (小説)(上)

2020-07-07 06:18:37 | 小説
老人とテニスと二人の女

あるテニススクールである。どこのテニススクールでもそうだが、ここでは週一回の、ある曜日の、ある時間に、ある特定のコーチについてレッスンを受けることになっていた。週一回で、それを二ヶ月だから合計8回のレッスンである。勿論、何かの用事で、受けれない日が出来てしまったら、振り替えで、他の曜日にレッスンを受ける事が出来る。
京子は、明るい元気なテニス好きな女である。アパートで一人暮らしの大学二年生である。
彼女は性格が明るいので、スクールに入ると直ぐにスクールの全ての生徒と友達になった。晴れわたった青空の元、太陽の日差しを受けながら、心地良い汗をかいてするテニスは、最高の快感だった。
ある時、一人の老人が、そのテニススクールの、京子のクラスに入ってきた。体がヨボヨボで、見るからに、運動など無縁の人生を送ってきた、体力の無さそうな老人だった。元気なコーチは、クラスの皆に老人を紹介した。
「皆さん。新しく入った生徒さんを紹介します。根暗太郎さんです」
コーチはそう言って老人の肩をポンと叩いた。
「ね、根暗太郎です。よろしくお願い致します」
コーチに紹介されて、老人はオドオドと挨拶した。
「私は佐藤京子といいます。よろしく」
老人の隣にいた京子が天真爛漫な笑顔で老人にペコリと頭を下げて挨拶した。レッスンが始まった。老人はテニスは、全く初めてのようで、ストロークもボレーも全然、振り遅れで、空振り、か、ネットかオーバーのどれかだった。その度に老人は、
「すまんのう。すまんのう」
と謝りつづけた。コーチもやれやれといった様子である。見かねたコーチは、大きな声で京子に声を掛けた。
「おーい。京子さん。すまないが根暗さんにテニスの基本を教えてやってくれないか。方法は君にまかせるよ」
コーチとスピードの速いラリーをしていた京子は、ニコッと笑って、
「はい。わかりました」
と答えた。京子は老人の元にパタパタと小走りに駆けて行った。老人は、おどおどしている。
「おじいさん。テニスは初めて?」
「あ、ああ。そうじゃけん」
「じゃあ、私が基本を教えてあげるわ」
「すまんのう。よろしゅうお願いつかわっされ」
そう言って老人は、ペコペコと卑屈に頭を下げた。
「おじいさん。ラケットの握り方は知ってる?」
「い、いや。知らん」
「じゃあ、まずラケットの握り方を、教えるわ」
そう言って京子は、ラケットを体の正面に立てた。
「さあ。おじいさんもやって」
言われて老人も、ラケットを体の正面に立てた。
「次はラケットの面に掌を当てて」
そう言って京子はラケットの面に瑞々しい繊細な指を大きく開いて掌をラケットに当てた。小指には、お洒落な指輪がはまっていた。老人も京子と同じように、干乾びた皺だらけの掌をラケットに当てた。
「そうそう。それで、そのまま手を下の方に下ろしていってグリップを握って」
京子は、ラケットに当てた手を、下ろしていってグリップを握った。老人も、京子の真似をして、手を下ろしていってグリップを握った。
「そう。それでいいわ。これをイースタングリップといって、フォアハンドストロークを打つ時の握り方なの」
「ああ。なるほどのう」
老人は皺だらけの顔をほころばせて納得したように言った。京子はニコッと笑った。
「おじいさん。じゃあ、少し打ち合いましょう」
そう言って京子は、パタパタと小走りに、ネットを越えて、ネットを挟んで老人と向き合った。
「じゃあ、おじいさん。いくわよ。ラケットを早目に引いて、下から掬い上げるようにして打って」
そう言って京子は、ポーンと山なりのゆっくりした球を打った。老人は、急いでボールの方に走って、ワンバウンドしたボールを打ち返そうと、あわてて、ラケットを引いて振った。だが、ボールに近づき過ぎてしまい、その上、振り遅れてしまったため、空振りになってしまった。
「すまん。すまん。お嬢さん」
老人は卑屈に何度もペコペコと頭を下げた。
「いいのよ。気にしないで。おじいさん」
京子は老人を優しく慰めた。そして、籠からボールをとった。老人は、極度の緊張から体がガチガチだった。
「おじいさん。緊張しないで、もっとリラックスして」
京子が、そう言うと老人の体の強張りは少し軽減した。
「はい」
京子は、ポーンと、さっきよりもっと、やさしい山なりのボールを出した。老人は、ミスしてはいけない、という思いでいっぱいだったのだろう。慎重にそーとラケットを振って、ワンバウンドしたボールに当てた。ボールはラケットに上手く当たり、ネットを越えた。
「うまい。うまい。それでいいのよ。おじいさん」
京子は小学生を誉めるような口調で、誉めて、戻ってきたボールを、ポンと当てて返した。京子がやさしいボールを返したので老人は今度もまたボールに当てる事に成功した。
「うまい。うまい」
京子はまた幼稚園児を誉めるような口調で誉めた。ラケットを持っていなかったら手を叩いていただろう。だが、老人はちょっと力みすぎたのだろう。ボールは京子の頭上を高く超えた。京子は猛ダッシュして、ボールを追いかけて、打ち返した。少し速めの返球だったが、老人は、京子とのラリーを続けたい思いで一杯だったのだろう。またしても老人は打ち返した。
「うまいわ。おじいさん」
京子は、また誉めて、返球した。たまにネットする時もあったが、老人は、ぎこちないフォームながら京子とのミニラリーが続くようになった。ネットを越せば、かなり遠くにボールが行っても、京子は全速力で走って、ボールを打ち返した。
「よーし。時間も少なくなってきたから一試合するとするか」
隣で、生徒とスマッシュの練習を指導していたコーチが、大きな声で言った。わらわらと生徒四人がコーチの元に集まってきた。老人も、急いでコーチの元に行った。
「よーし。ちょうど男二人に女二人だから、ミックスダブルスとするか」
コーチは朗らかな口調で言った。
「じゃあ。ジャンケンでペアを決めよう」
コーチに言われて、男二人と女二人はジャンケンをした。京子と老人が勝ってペアになることになった。
「よろしくね。おじいさん」
京子は微笑んでペコリと老人に頭を下げた。
「よ、よろしゅう」
老人は照れて顔を真っ赤にしながら、たどたどしい口調で京子に挨拶した。相手のペアは順子と、若い青年だった。
「ふふ。京子。負けないわよ」
順子が不敵な口調で笑って言って、ラケットの上を地面につけて、グリップを独楽のようにクルクルッと回した。ラケットはクルクルッと独楽のように回ってパタリと地面に倒れた。
「フィッチ」
順子が言った。
「スムース」
京子が元気に答えた。順子が地面のラケットを拾って、グリップの頭を見た。
「やったー。ラフよ」
順子が喜んで言った。
「じゃあ、サービスにするわ」
順子が京子を見て言った。4人はそれぞれの位置についた。順子がサービスで、京子がレシーブについた。老人は、どこにつけばいいのか、わからないといった様子でウロウロしている。
「おじいさーん」
京子が呼んだ。京子に呼ばれて老人は京子の方を見た。
「おじいさん。おじいさんはネット前で構えてて」
京子に言われて老人は、ネット前で構えた。
「いくわよー。京子。今日は負けないわよ」
順子は、高いトスを上げてスピンのかかった猛烈に速いサービスを打った。順子は猛スピートのサービスが得意だった。ボールは猛スピードでコートに入った。普通の人だったら、手も出せないサービスエースになってしまっただろう。しかし京子は打ち返した。だが、打ち返すのがやっとで、オーバーしてしまった。
「15-0」
コーチがカウントした。老人はテニスのルールがわからないと見えてウロウロしている。
「おじいさん。今度は、おじいさんがレシーブなの。後ろの線の所までさがって」
京子に言われて老人はベーススラインまでさがった。順子は、横にずれて、余裕の表情でポンポンと数回、ラケットでボールを地面にバウンドさせた。順子は一瞬、ニヤッと意地悪く笑った。順子はボールをトスアップすると、力の限りのスイングをした。猛スピードのボールが老人に飛んで行った。
「あわわっ」
老人はラケットを引く事すら出来なかった。ワンバウンドしたボールは老人の顔を直撃し、老人は尻餅をついた。
「大丈夫?おじいさん」
京子が倒れた老人に駆け寄った。
「だ、大丈夫じゃよ。すまんの。お嬢さん」
老人は京子にペコペコ頭を下げた。京子が、むくれた顔を順子に向けた。
「ちょっとー。順子。相手は、初心者なのよ。少しは手加減してあげようって優しさは、あなたには無いの?」
順子は冷ややかに微笑した。
「ふふ。京子。甘いわ。勝負は情け無用よ」
その時、枯れ木のようなヨボヨボの老人が立ち上がった。そして京子に顔を向けた。
「いいんじゃ。いいんじゃ。わしなんかに構わず、自由にやっておくれ。しかし迷惑をかけてしまってすまんの。お嬢さん」
老人は卑屈にペコペコ謝った。京子はネットの向こうの順子を憤りの目で見た。
「わかったわ。順子。あなたの人格が。それなら私も手加減しないからね」
順子は、したり顔で横に移動した。
「30-0」
コーチがカウントした。老人は、ベーススラインに仁王立ちした。京子に迷惑をかけないようにと必死なのだろう。
「おじいさん。今度は私がレシーブを受けるの。おじいさんは、さっきのように前に行って。レシーブの時はね、前後に移動するの」
言われて老人は、サービスラインに急いで、駆け足で行った。そして、今度は、ミスしてなるのもかというような気構えで、ラケットを構えた。京子も手に汗握る緊張感で順子のサービスに対して構えた。順子は、余裕の表情でポンポンとラケットでボールを地面に数回バウンドさせた後、ボールを青空の中にトスアップした。ビシーン。猛スピードのサーブがネットを越え、ワンバウンドした。京子は素早い体の回転で、コンパクトにボールにラケットを当てた。ゆっくりしたボールが順子の方のコートに入った。順子は、ニヤリと笑ってクロスではなく、ストレートで老人に猛スピードのボールを打ち返した。
「ああっ」
ちょうど、老人の正面だったので、老人はフォアで打ったらいいのか、バックで打ったらいいのか、分からず、あたふたした。老人の顔に猛スピードのボールが当たって、またも老人は、尻餅をついた。
「じゅ、順子。あ、あなたって人は。相手は、今日、はじめてテニスをした、年齢のいった、おじいさんなのよ」
京子はブルブル震える怒りの拳を握りしめて、順子に言った。だが、順子は黙ったまま余裕の表情で、横に移動した。
「い、いいんじゃ。いいんじゃ。わしが悪いんじゃ。迷惑かけてすまんのう」
そう言って老人は、よっこらしょ、と立ち上がった。
「40-0」
コーチがカウントした。今度は老人がレシーブの番である。老人は、ベースラインにさがった。京子は前衛にネットの前に出た。順子は、ツンとすました顔で横に移動し、ポンポンと数回ラケットでボールを地面に叩いた後、おもむろに構え、ボールをトスアップして、ラケットをビュッと勢いよく振った。ビシッ。ボールは時速130kmを越えるスピードでコートに入った。
「あわわっ」
老人はラケットを引く事すら出来なかった。ワンバウンドしたボールは、またも老人の顔に直撃し、老人はステンと尻餅をついた。
「ゲーム。よし。時間もなくなってきたからこのくらいにしよう」
コーチが言った。京子は倒れている老人の所に行った。老人の眼窩には、ボールが当たった跡が赤く腫れていた。
「おじいさん。大丈夫?」
京子はしゃがみ込んで、老人を抱き起こした。
「大丈夫じゃ。大丈夫じゃ。すまんのう。迷惑かけてしもうて」
老人は京子に支えられながらヨロヨロと立ち上がった。
さっそく次のクラスの生徒達がコートに入りだした。

順子と青年は、談笑しながらスクールの建物に向かっていた。老人もヨロヨロとスクールのクラブハウスに向かった。
順子は女子更衣室に、青年と老人は、男子更衣室に、入った。京子は、アパートでテニスウェアに着替えて、スクールに通っていたので、更衣室は使っていなかった。貴重品とスポーツドリンクの入ったバッグをコートの隅に置いていた。京子は、外のベンチで三人が出てくるのを待った。しばしして順子と青年が、普段着に着替えて出てきた。
「やあ。京子。おまたせー」
スポーツドリンクを飲みながら順子が、京子に呼びかけた。
「おじいさんは?」
京子が聞いた。
「まだ中で着替えてるわよ」
順子が素っ気なく答えた。
「順子。あんな、おじいさんに、どうして手加減してあげなかったの?」
京子は厳しい口調で問い詰めた。
「だってー。あんなダサい、おじいさん。ウザッたいじゃない。下手な人とやると調子、狂っちゃうでしょ」
順子はニヤニヤ笑いながらペロッと舌を出した。
「順子。あなったって、そんな人だったのね」
京子は、怒りに拳を震わせて、怒鳴るように言った。
「京子。お腹へったわね。デニーズに寄ってかない?」
順子が言った。順子と京子と青年は、テニスの後、近くのデニーズに寄って、一緒に昼御飯を食べる事がよくあった。
その時、老人がクラブハウスから出てきた。京子と目が合うと、恥ずかしそうに視線をそらして俯いて、そそくさと帰ろうとした。
「待って。おじいさん」
京子が老人を呼び止めると、老人は呪縛にかかったように立ち止まった。
「ねえ。おじいさん。これから4人で一緒にお食事しませんか?」
老人は卑屈な顔を上げて、三人を見回した。
「わ、わしはいい。遠慮する。用事もあるでの」
老人は卑屈な口調で言った。
「そんな事いわないで行きましょうよ」
京子はまた熱心に誘った。だが老人は手を振った。
「い、いや。わしみたいな年寄りがおったら、むさくるしいじゃろう。皆に迷惑はかけたくはないて」
「そんな事ないわ。おじいさんの昔話、私、聞きたいわ」
京子は執拗に老人に参加を求めた。だが、老人は、手を振って頑なに断わった。
「ほら。京子。おじいさんもああ言ってる事だし、三人で行きましょうよ」
順子が言った。京子はキッと鋭い目つきで順子をにらんだ。そして優しい瞳を老人に向けた。
「おじいさん。家は何処?」
「家は××町じゃよ」
「私も××町のスーパーで買い物したいから、途中まで車で一緒に行きましょう」
「い、いや。ダメじゃよ」
「どうして?」
「わしは車を持ってないんじゃよ」
「ええっ?」
京子は、驚いて声を上げた。
「じゃあ、どうやって、ここまで来たの?」
「バ、バスじゃよ」
「ええー」
京子は、また驚嘆の声を上げた。京子はしばし思案げな顔つきで老人と二人を見つめたが、慇懃な口調で老人に言った。
「あ、あの。おじいさん。よかったら私が車で家まで送るわ。ここはバスの本数が少ないし、暑い中を待つのは大変だわ。どう?」
京子は老人を覗き込むように言った。
「あ、ありがとう。で、でも。い、いいんかね」
老人は、オドオドした口調で聞いた。
「いいわよ。大歓迎だわ」
京子は歓喜に満ちた口調で言った。そして順子に視線を向けた。
「私はおじいさんを家まで送るから食事は一緒に出来ないわ」
「わかったわ。京子。よかったじゃない。素敵な恋人が出来て」
順子は、そんな皮肉めいた冷やかしを言った。
「じゃあ、○君。今日は二人で食事しましょう」
順子は、青年に言った。
「その後、またアレをして、たっぷり楽しみましょう」
順子が思わせ振りに青年にウインクした。
「ええ」
青年もニヤリと笑った。4人は駐車場に向かって歩き出した。
「じゃあ、今日はこれでお別れね。またね。京子」
順子は、そう言うと、赤いスポーツカーに青年を乗せて、車を出した。京子と老人が残された。
「じゃあ、おじいさん。家まで送るわ。さあ、乗って」
そう言って京子は車の助手席のドアを開けた。
「す、すまんのう。お嬢さん」
老人はオドオドした様子で助手席に乗った。京子は運転席に乗って、エンジンをかけた。
「じゃあ、行くわよー」
京子は元気よく言ってアクセルペダルを踏んだ。京子は、恋人を乗せたようなウキウキした気分だった。老人は新品の××のラケットとスポーツバッグを大切そうに膝の上に乗せていた。
「おじいさん。そのラケットは、どこで買ったの?」
京子は隣の老人に話しかけた。
「こ、これかね。これはテニススクールの人が親切にも選んでくれたんじゃ」
老人は答えた。それはプロのトッププレーヤーが使っている5万円のラケットだった。
京子は思った。
『テニススクールの人も不親切だわ。まだテニスを始めたばかりの人に、そんな高額なラケットを勧めるなんて。スーパーのスポーツ用品売り場では、3千円のラケットもあるというのに』
老人の案内で京子は、老人の家に着いた。周りに人気のない、寂しい一軒家だった。
「あ、ありがとうのう。お嬢さん」
老人は車から降りるとヘドモドしなから、何度も頭を下げて礼を言った。
「いえ。何でもないわ。気にしないで」
京子はニコッと笑って言った。
「あ、あの。お嬢さん」
老人は顔を真っ赤にして言った。
「なあに?」
京子は嬉しそうに聞き返した。老人は、自分から話しかけておきながら、言いにくい事なのだろう。しばし顔を真っ赤にして、言おうかどうか、しばし迷っていたが、卑屈に蚊の泣くような声を震わせて、吃り吃り言った。
「お、お嬢さん。あ、ありがとう。お、お礼に、お茶でも飲んでいかんかね?」
老人は言って真っ赤になった。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて、お邪魔させて頂くわ」
京子は満面の笑顔で答えた。京子は車を降りて老人と一緒に家に入った。

   ☆   ☆   ☆

老人の家は古い日本家屋だった。京子は床の間に案内された。京子は大きな座卓の前に、礼儀正しく足を畳んで正座した。
「今、お茶を持ってくるけん。ちょっと、待っていておくれ」
そう言って老人は部屋を出て行った。床板には、「法為有法。限為有限」と、意味の分からない文の書かれた掛軸がかかっていた。しんと静まり返っていて人がいる気配が感じられない。しばしして老人が戻ってきた。盆に、茶と菓子を持って。老人は、盆を机の上に置くと、照れくさそうに座った。老人は、茶を入れて京子にすすめた。
「粗茶で口に合うかどうか分からんが、飲んでおくんなされ」
京子は、
「はい」
と返事して、茶を飲んだ。
「正座は足が疲れるじゃろ。くつろぎんしゃれ」
礼儀正しく正座している京子を慮って、老人が言った。京子はニコッと笑って、足を崩して、横座りになった。
「おじいさん。今日はごめんなさいね。順子が、あんな事したり、言ったりして。厳しく注意しておくわ」
自分がしたわけではないのに、友達のよしみで京子は順子の意地悪を老人に詫びた。
「いや。わしの方が悪いんじゃよ。あんたが、謝ることはないて。皆に迷惑かけてしもうて、本当に申し訳ない」
老人は卑屈にペコペコ頭を下げた。京子は老人のあまりの卑屈な態度をかわいそうに思った。京子は、あたりをキョロキョロ見回した。
「あ、あの。おじいさん。差し出がましい事を聞くのは申し訳ありませんが、奥さんは、買い物か何かで、出かけているのでしょうか?」
老人は俯いて黙っている。
「あ。ご、ごめんなさい。差し出がましい事を聞いてしまって」
京子は、老人がどういう境遇なのか、わからないのに、好奇心から聞いてしまった失礼を謝った。それに対し老人は、寛容に答えた。
「いいんじゃよ。わしは一人暮らしじゃ。昔は女房もいたが、性格が合わんかったけに、離婚してしもうたんじゃ。その別れた女房も5年前に死んでしもうた」
そう言って老人は茶を啜った。
「ご、ごめんなさい。おじいさん。言いたくない事を無理やり聞いてしまって」
京子はペコリと頭を下げた。
「いいんじゃよ」
老人は慰めるように言った。
「そ、それで・・・」
と京子は言いかけて、あわてて口をつぐんだ。老人は、京子が質問しようとした察したかのように、ニッコリ笑った。
「聞きたいのは、子供がいるか、どうかじゃろ」
老人は機先を制するように言った。京子の顔が少し赤くなった。老人は納得したように話し出した。
「わしには娘が一人おるんじゃ。もう20歳になる。しかし、こいつは、子供の頃からチャランポランでの。学校を出ても、就職もせず、遊んでばかりいて、どこに住んでいるやら。音沙汰なしじゃ」
そう言って老人はおもむろに茶を啜った。
「そうだったんですか。根掘り葉掘り、言いたくない事を聞いてしまって申し訳ありません」
京子はペコリと頭を下げた。
「いや。いいんじゃよ」
老人は慰めるように手を振った。
「あ、あの。また失礼な事をきいても、いいでしょうか」
「ああ。いいよ。何でも遠慮せず聞きんしゃい」
「あ、あの。どうしてテニスを始めようと思ったんですか?」
京子はちょっと、不躾な言い方をしてしまったと後悔して赤面した。老人はいなすように笑った。
「それはじゃの。一人というのは、さびしいもんじゃから。わしには趣味もないし、テニスでも趣味にしようかと思ってのう。体力も衰えているから体を動かそうとも思っての」
そう言って老人は茶を飲んで、ふーとため息をついて一呼吸おいた。
「しかし、今日、やってみて、やはり無理だと感じたわ。やめようと思う」
老人は寂しそうに言って俯いた。
「そんな。おじいさん。やめないで」
京子は熱心に訴えた。
「おじいさん。はじめは誰だって出来ないわ。でも、さっき、私と二人でミニラリーしたでしょ。初めてなのに、短時間で、どんどん上手くなったんで、私、びっくりしちゃったわ。試合では負けちゃったけど、順子はもう、三年もテニスをしている上級者だから負けるのは当たり前だわ。順子も、初心者に対して思いやりがないわ。少し手加減、するよう注意しとくわ」
京子はつづけさざまに熱弁をふるった。
「いや。いいんじゃ。若い者は思い切りやりたいじゃろ。それを、わしが邪魔してはわるいわ」
そう言って老人は手を振った。
「じゃあ、スクールの後、私とコートを借りてやりましょう。丁寧に教えてあげるわ」
「いいんかね。わしみたいな下手糞とやっても面白くないじゃろ」
「そんなことないわ。私も、いつか、アルバイトでコーチになりたいとまで思ってるの。絶対、上手くしてあげるわ。上手くなったら、また今日のペアのダブルスの試合で順子を負かしてやりましょう」
何としても老人を引き止めようと京子は熱弁をふるった。老人はしばし黙って目を瞑り、腕組みをしていたが、おもむろに目を開いた。
「わかったわ。あんたが、そこまで熱心に勧めてくれるのなら、その好意を無視するのは失礼じゃ。テニスはつづけるわ」
「本当。よかったわ。嬉しい」
京子は欣喜雀躍とした口調で言って老人の手を握った。

京子は和菓子を食べて、茶をゴクゴクと全部、飲んだ。時計を見ると、もう5時だった。京子は、ふと、老人の食生活は、どうなっているのか、気になった。
「おじいさん。お食事はどうしてるの?」
京子が聞いた。
「わしは料理は作れんし、面倒がり屋じゃけん。コンビニの弁当やカップラーメンだけじゃよ」
「あ、あの。おじいさん」
「なんじゃね」
「台所みても、いいでしょうか」
「ああ。いいとも」
老人が許可したので、京子は床の間を出て、台所へ行ってみた。料理がされている気配がない。ステンレスは、埃をかぶっており、流しには、食べ終わったカップラーメンの容器と、缶ビールの空き缶が、積み重なっていた。何かを温めるために使ったと思われる水の入った鍋が、ガス焜炉の上にのっている。流しも汚れていて、洗っていないようである。冷蔵庫も埃をかぶっていた。開けると、缶ビールが数本、並んであるだけである。床も掃除をしている気配がなく、埃っぽく、換気もしていないのだろう。家の中は澱んだ空気が停留していた。京子は、床の間に戻った。老人はしょんぼりしていた。
「おじいさん」
「なんじゃね」
「今日の晩御飯は、私が鍋焼きうどんをつくるわ。いい?」
「それは、うれしいの」
老人は微笑んだ。
「じゃあ、材料を買ってくるわ」
そう言って京子は、老人の家を出て、車を飛ばして近くのスーパーで、鍋焼きうどんの食材を買って、また、老人の家に戻ってきた。
「おじいさん。鍋焼きうどんの材料を買ってきたわ。つくるから待ってて」
京子は老人に元気よく言った。
「ありがとよ。お嬢さん」
老人はペコペコ頭を下げて礼を言った。京子は台所で、料理して鍋焼きうどんをつくった。すぐに出来た。京子は、台所の隣の食卓に、出来た鍋焼きうどんを用意した。
「おじいさん。出来たわよ」
京子が呼ぶと、老人は、立ち上がって、食卓についた。卓上には、ぐつぐつと鍋が湯気を出して、小さな振動音を出している。その晩は、京子と老人は和やかな雰囲気で、鍋焼きうどんを食べた。

食事が終わると、京子はあとかたずけをして、老人の家を出た。老人は、
「ありがとよ。ありがとよ」
と何度も礼を言った。京子は心地良い思いで車を飛ばした。

   ☆   ☆   ☆

さて、一週間が過ぎた。京子はウキウキした気分でテニススクールに行った。老人が早く来ないかな、との思いで一杯だった。車で迎えに行こうかとも思ったが、それでは、強引に連れてきてしまうような感じになるので、老人が自分の意志で来てくれるのを待つ方が楽しかったのである。京子はテニススクールのクラブハウスで着替えて、コートに出た。順子の車がやって来た。順子は車を駐車場にとめるとラケットを入れたバッグを持ってクラブハウスに入って行った。すぐに順子は、着替えてコートに出てきた。

すぐに、このあいだの青年もスクーターでやってきた。そして、コートにやってきた。順子は、青年を見るとニヤリと笑った。開始時間が近づいているのに、老人が来ないので、京子はだんだん心配になってきた。京子は順子の傍に行った。
「ねえ。順子」
「なあに」
「お願いがあるんだけど・・・」
「なあに」
「試合の時は、おじいさんに、もうちょっと、手加減して欲しいの」
京子は手を合わせて頭をペコペコ下げて言った。だが順子は、ふん、と鼻でせせら笑った。
「いやよ」
順子は無下に断わった。
「どうして」
京子が聞き返した。
「だってー。あんな、じいさん。ダサいじゃん。全然、打てないし。老人にはテニスは合わないわよ。老人はゲートボールでもしてりゃいいのよ」
順子は、茶色く染めた髪を掻き揚げて、ピアスをいじりながら言った。京子は真っ赤になった。
「順子。あなたって、そんな人だったのね。見損なったわ。あなたには、弱い人をいたわる気持ちなんて、かけらも無いのね」
京子は怒鳴るように言った。時間になり、コーチがコートに降りてきた。
「よし。はじめようか」
コーチが言った。
「あ、あの。コーチ」
京子が問いかけた。
「何だね」
「根暗さんは?」
「ああ。根暗さんは、今日は休むと、さっき連絡してきたよ」
それを聞いて京子はがっかりした。レッスンが始まった。いつものように、念入りなストレッチをしてから、レッスンが始まった。今日はスマッシュの練習だった。コーチがロブをあげて、それをスマッシュで打つラリーだった。勿論、京子は上級者だから、コーチの上げるロブは全部、歯切れのいいスマッシュで返した。
「よし。じゃあ、あと残り時間10分だから、最後は試合をしよう」
コーチが腕時計を見て言った。
京子は振り替えの人とペアを組み、順子は、この前の青年とペアを組んだ。京子は、怒りの感情で一杯だったので、ファーストサーブから怒りを込めて全力でボールを打った。順子も、負けじとばかり、全力で戦ったが、京子のペアの振り替えの人は、かなり上手く、結局、京子のペアが勝った。
京子は、口も聞かず順子と別れた。

   ☆   ☆   ☆

レッスンが終わった後、京子は老人のことが心配になって、車をとばして老人の家を訪ねてみた。ピンポーン。京子はチャイムを押した。しばしして、玄関の戸が開いて、老人が出てきた。
「こんにちは。おじいさん」
京子は礼儀正しく頭を下げた。
「ああ。お嬢さんか。どうぞ中へ入りんしゃい」
老人に言われて京子は家に入った。そして、この前と同じように床の間に通された。
「お茶をもってくるけん。待ってておくれ」
そう言って老人は部屋を出て行った。京子は部屋を見回した。しばしして、老人は、すぐに茶に和菓子を持って部屋に戻ってきた。老人が茶を入れて京子に勧めた。京子は茶を飲んだ。
「あ、あの。おじいさん」
「なんじゃね」
「どうして今日、テニススクールに、来なかったんですか?」
老人は黙ってうつむいた。しばし黙っていたが、重たげに口を開いた。
「この前は、お嬢さんが熱心に誘ってくれたんで、行こうと思ったんじゃが・・・。やはりレッスンの日になると、人に迷惑かけるのが悪く思えてきての。足が向かんかったんじゃ」
老人は言って溜め息をついた。
「そうだったの」
京子は寂しそうに頷いた。
「それで、おじいさん。これからテニスはどうするの」
「迷っておるんじゃ。わしは、今まで運動をしたことがないて。自信が無くての。わしには運動は合わんように思うんじゃ」
「そうなの」
京子はがっかりしたような口調で言った。老人は、京子の繊細な指の手をそっと持ち上げた。
「きれいな手じゃの。瑞々しくて。手首もよう引き締まっておる」
老人は、京子の手をじーと見つめながら言った。京子は、恥ずかしくなって赤くなった。
「体の関節も柔らかそうじゃの」
そう言って老人は京子の背後に回って、手首を背中に回した。はじめは右手だけだったが、左手も背中に回した。京子は自分の体の柔らかさを自慢するようにうっとりしていた。その時、老人が、ササッと京子の手首を重ね合わせ、隠し持っていた縄で京子の手首をササッと縛り上げてしまった。
「ああっ。おじいさん。何をするの」
京子は焦って言った。手首の縛めを解こうと、もがいてみたが、ダメだった。老人は、さらに京子の手首を縦と横にカッチリと縛った。老人は、縛りおえると、縄尻を持って、京子の横に戻った。そして、じーと京子を見た。京子は縄を解こうともがいてみたが、手首が引き締まっているため、ダメだった。ついに京子は諦めた。
「お、おじいさん。何をするの」
京子は、恐る恐る聞いた。
「す、すまん。いきなりこんな事をしてしまって」
老人はペコペコと頭を下げて謝った。
「わ、わしには、変態な趣味があっての。あんたのようなきれいな人を見ると縛って、裸にして悪戯したくなってしまうんじゃ」
そう言って老人は、床の間の押し入れの戸を開けた。
「まあ」
京子は吃驚して思わす声を出した。押し入れには、SM写真集が、山のように積まれていたからである。麻縄や色々な小道具もあった。老人は、襖を閉めた。そして、京子の後ろ手の縄尻を大黒柱に縛りつけた。老人は横座りになっている京子の足首も縛り上げた。
「す、すまん。お嬢さん。あんたには、散々、世話になっていながら、こんな事をしてしもうて。しかし、あんたが、あまりにも可愛いもんじゃから、我慢できなくなってしもうたんじゃ」
そう言って老人はペコペコ頭を下げた。老人は、京子をじーと見つめた。京子は恥ずかしくなって顔を赤くした。
「お、おじいさん。わかったわ。私を好きなようにして」
京子は勇気を出して言った。
「そうかい。ありがとうよ」

老人は、大黒柱に縛りつけられて、横座りしている京子のブラウスのボタンを、手を震わせながら上から外していった。そしてボタンを全部、外すとブラウスを大きく開いた。京子の豊満な乳房を収めて、大きく膨らんでいる、フロントホックの白いブラジャーが顕わになった。京子は恥ずかしくなって顔を赤くした。だが、京子は、「やめて」とも言わず黙っていた。相手は、何の楽しみもない可愛そうな一人暮らしの老人である。人もいい。勇気を出して、テニスを始めてみようと思ったが、それも歳のため出来そうもない可愛そうな老人である。やさしい京子は、老人が楽しみを感じてくれるのなら、どんな事をされても耐えようと思ったのである。

老人は、押し入れから箱を持ってきた。老人が、おもむろに開けると、箱の中には、毛筆、割り箸、蝋燭、縄、目隠し、洗濯バサミ、などの小物がいっぱい入っていた。


老人は、毛筆を取り出すと、
「すまんの。お嬢さん」
と言って、京子の首筋や脇腹などをすーと刷いた。触れるか触れないかの微妙な感触が京子を襲った。
「ああー」
京子は、体をくねらせて、悶え声を出した。
「お、おじいさん」
「なんじゃね」
「く、くすぐったいわ」
京子は眉を寄せて苦しげに訴えた。だが老人はニヤニヤ笑いながら、京子を筆でくすぐり続けた。
「ああー。やめてー。おじいさーん」
ついに京子は耐え切れなくなって叫んだ。老人は、毛筆を離して、くすぐるのを止めた。京子はハアハアと肩で荒い息をした。額には珠の汗が滲み出ていた。
「すまなかったの。お嬢さん。しかし、わしは、あんたのような可愛い女子が苦しむのを見るのが一番、興奮するんじゃ。あんたには、すまんが、わしは凄く興奮してしもうて、まるで若返ったみたいな気分じゃ」
老人はニコニコ笑いながら言った。
「わ、わかったわ。おじいさんが楽しくなってくれるのなら、私、何をされても我慢するわ」
京子は言った。
「いや。初めての人に、くすぐり責めは辛いじゃろから、やめておこう」
その代わり、と言って、老人は毛筆を箱にもどした。そして代わりに割り箸を取り出した。老人はニヤニヤ笑いながら、京子の豊満な乳房を収めて、大きく膨らんでいる、フロントホックの白いブラジャーを、割り箸の先で突いた。柔らかいブラジャーに割り箸の先がめり込んで、そこだけブラジャーは窪んだ。老人は、京子の乳房の弾力を楽しむように、ブラジャーのあちこちを、割り箸の先で突いた。
「ふふ。どうじゃね。こうされる気分は」
老人は笑いながら聞いた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は顔を赤くして、顔を反らした。
「ふふ。すまんの。しかし、わしは、こういう悪戯が大好きでの」
そう言って老人は、割り箸で京子の胸を弄んだ。老人はちょうど乳首の所を、割り箸の先で突いたり、撫でたりした。
「ああっ」
乳首がブラジャーに擦れる刺激に京子は思わず声を出した。しかし、それは辛いだけでの感覚ではなかった。京子の乳首は大きくなった。それがブラジャーの上からも見えた。
「ふふ。大きくて形のいい乳首じゃの。根元をタコ糸で縛れば、乳首にタコ糸が結び付けられそうじゃの」
老人はそんな揶揄をした。ブラジャーを割り箸で弄ぶうちに、老人はだんだん息が荒くなっていった。股間の所が勃起しだした。老人は、ハアハア息を荒くしながら股間を擦った。
「お、お嬢さん。わしは、もう興奮して自分が抑えられんようになってしもうた。スカートを外してもいいかね」
老人はハアハアと息を荒くしながら聞いた。
「い、いいわ。おじいさん。好きなようにして」
京子は恥らいながらも素直に許可した。
「す、すまんの」
そう言って老人は京子のスカートのファスナーを外し、スカートを下げて、京子の足先から抜きとった。京子は下半身はパンティーだけとなった。上半身は、後ろ手に縛られ、ブラウスを捲られて開かされ、ブラジャーを顕わにしている、という何ともアンバランスで奇矯な姿になった。京子は恥ずかしそうに顔を赤くして太腿をピッチリ閉じ合わせた。
「ふふ。しなやかでムッチリした美しい太腿じゃの」
老人は、そんな事を言って、京子の体をいやらしい目つきで眺め回した。
「パンティーも降ろしていいかの?」
老人が聞いた。
「い、いいわ。好きなようにして」
その返事には、もうどうなってもいいという捨て鉢な感じがあった。
「それじゃあ、降ろさせてもらうけに」
そう言って老人は京子のパンティーのゴムをつかむと、ゆっくりとパンティーを降ろしていった。京子は思わず、
「あっ」
と叫んでプルプル体を震わせた。だがパンティーが下げられるにしたがって、白桃のような大きな尻が顕わになった。老人はニヤリと笑って、尻が丸出しになった所でパンティーを降ろすのを止め、手を離した。尻は顕わになっているが、正面からは見えない。横から、尻の横の肉が見えるだけである。京子は太腿をピッチリ閉じた。京子は上半身は、後ろ手に縛られ、ブラウスを捲られて開かされ、ブラジャーを顕わにしながら、パンティーを中途半端に降ろされているという何ともアンバランスで奇矯な姿になった。老人はそんな京子の姿を楽しむように、股間をゆっくり擦りながら、じっと京子を眺めている。
「ふふ。どうじゃね。こういう姿にされる気分は」
老人はニヤニヤ笑いながら聞いた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は顔を赤くして言った。
「ふふ。どんなところがじゃね」
「中途半端に脱がされているのが余計、恥ずかしいわ」
「じゃあ、いっそのこと、抜きとってしまった方がいいかね」
老人は意地悪な質問をした。
「え、ええ」
京子は顔を真っ赤にして小さな声で答えた。
「よし」
老人はホクホクした様子で太腿の付け根あたりに引っかかっているパンティーのゴムをつかむと、スルスルと降ろしていき足先から抜きとった。京子は下半身、覆う物が全くなくなった。恥ずかしさのため、見られないよう太腿をピッチリ閉じ合わせた。
「どうじゃね。今の気分は」
「は、恥ずかしいわ」
「ふふ。あんたの両親や友達が、あんたのこんな姿を見たら、びっくりするじゃろな」
老人は、京子をことさら辱めるように言った。
「い、いや。そんなこと言わないで。おじいさん」
京子は父母、友達の顔が頭に浮かんで、急に羞恥の念が襲ってきて顔を真っ赤にして言った。
「すまん。すまん。もう言わんて。ここでは誰にも見られる事がないけに安心しんしゃれ」
老人は頭を掻いて言った。老人は太腿をピッチリ閉じ合わせている京子をじーと見つめた。隙あれば、女の秘部を見てやろうというというように。京子は老人に、そこだけは見られないようピッチリ太腿を閉じ合わせた。しかし不思議なことに、それが真面目な京子にも快感に感じられてきたのである。誰にも知られることなく、しかも相手は人のいい体力のない老人である。
「どうじゃね。今の気分は」
「は、恥ずかしいわ。でも何だか、その恥ずかしさが気持ちいいわ」
京子は頬を赤らめて小さな声で言った。
「ふふ。あんたもついに、被虐の快感を知るようになったの。ここは誰も見ていんけに。安心してうんとマゾの快感を味わうがええ」
そう言って、しばし老人は太腿をピッチリ閉じ合わせている、恥ずかしい姿の京子を黙って眺めた。京子は後ろ手に縛られた手の親指を残りの四つの指でギュッと握りしめた。そして全身を固くして恥ずかしさに耐えた。
「お嬢さん。そう脚をピッチリ閉じていないで、思い切り開いてみてはどうかね」
老人がニヤリと笑いながら言った。
「ええー。そ、そんな」
京子は驚いて、真っ青になって大声で言った。
「ふふ。安心しんしゃれ。恥ずかしい所にはタオルを載せて隠すけに。見られることはないて」
老人は京子を安心させるように言った。京子は、しばし迷って、困惑した顔つきでいた。老人は手拭いを出して京子の前に出した。
「ほれ。これで恥ずかしい所は隠すけに。どうじゃの」
京子はしばしためらっていたが、決断した。
「わ、わかったわ」
京子は言った。老人はニヤリと笑った。
「それじゃあ、足を開きんしゃい」
老人に言われて京子は、横座りの膝を立てた。だが膝はピッチリ閉じている。
「さあ。足を開きんしゃい」
老人はちゅうちょしている京子を促した。
「お、おじいさん」
「なんじゃね」
「あ、足を開いたら、す、直ぐにタオルを載せて下さいね」
京子は顔を真っ赤にして言った。
「ああ。わかっとるとも」
老人は落ち着いた口調で言って、手拭いを持って、待ち構えた。京子は、恐る恐るそっと膝を開いた。
「お、おじいさん。早く載せて」
京子は焦って言った。
「よっしゃ」
老人は、おもむろに、僅かに開かれた京子の膝の間から、手を入れて、京子の恥ずかしい部分の上にタオルを載せた。
「さあ。これで足を開いても、恥ずかしい所は見えんけん。安心して足を開きんしゃい」
言われて京子は足を開いていった。
「ちょっと待ちんしゃれ。いま、いい物を持ってくるけん」
そう言って老人は部屋を出て行った。すぐに老人は戻ってきた。等身大の姿見の鏡を持って。老人は鏡を京子の正面の壁に立てかけた。京子は顔を真っ赤にしてサッと顔を鏡から反らした。ブラウスが捲られ、ブラジャーが丸出しになって、下半身は裸という惨めな姿が鏡にもろに写し出されたからである。
「ふふ。どうじゃね。こうやって自分の姿を見るのは」
老人はえびす顔で聞いた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は顔を真っ赤にして答えた。
「その恥ずかしさが快感になるんじゃ。さあ、もっと足を開きんしゃい」
京子は足を開いていった。それは老人に言われて、というより、京子に起こり始めた怪しい快感を求めてだった。徐々に京子の足は開かれていき、ついに両足がパックリと開ききられた。足はM字の形である。何もなければ女の恥ずかしい部分が丸見えだが、ちょうど其処にタオルが載っているので、其処は隠されている。しかし其処だけ隠されているというのは、余計エロチックだった。
「ふふ。鏡を見て、よう自分の姿を見てみんしゃい」
老人に言われて京子はそっと、鏡を見た。ブラウスをはだけられ、裸の下半身を大きく開いている奇矯きわまりない惨めな姿の自分の姿が、鏡に写っていた。秘部は隠されているが、しかし其処だけ隠されているという姿は、惨め極まりなかった。
「ふふ。どうじゃの。自分の姿を見る気分は」
「は、恥ずかしいわ」
「ふふ。そうじゃろ。花も恥らう美しい女子が、こんな格好を晒しておるんじゃからな。しかし、誰も見ておらんし、わしは誰にも言わん。女子には、みな淫乱な血が流れておる。普段はいつも理性でそれから目を避けているだけじゃ。さあ。もう何もかも忘れて、淫らな自分を解放するがええ」
老人に言われて京子は、そっと鏡を見た。老人以外だれもいないし、誰にも知られることもない。鏡に写っている自分の恥ずかしい姿を見ているうちに、だんだん京子は淫らな気分になっていき、その心地良い気分を貪りつくしたくなってきた。京子は、自分の意志で足をさらに大きく開いていった。ハアハアとだんだん呼吸が荒くなっていった。
「ふふ。どうじゃね。今の気分は」
老人がニヤリと笑って聞いた。
「い、いいわー。き、気持ちいいー」
京子はとうとう、体だけでなく心も裸になって、あられもない告白をした。
「ふふふ。そうじゃろ。もう何もかも忘れて自分に陶酔するがいい」
老人は笑いながら言った。京子は口をだらしなく半開きにし、虚ろになった目で、鏡に写っている自分の姿を見入った。ことさら恥ずかしい所を見てくれとばかりに足を大きく開いた。
「ああー。いいー」
京子は喜悦の叫びを上げた。
「お、おじいさん」
京子はハアハア喘ぎながら言った。
「なんじゃね」
「ブ、ブラジャーのホックを外して」
京子は、あられもない要求をした。
「ああ。いいとも」
老人はニヤリと笑って、京子のブラジャーの肩紐を降ろし、フロントホックを外した。豊満な京子の乳房を締めつけていたブラジャーがプチンと外れて、大きな二つの乳房が顕わになった。もう京子は丸裸同然だった。女の秘部の上にはタオルが載せられていて、其処は隠されて見えないが、それは履いている物ではなく、ただ単に載せられているだけである。老人は、ふふふ、と笑いながら、丸裸の京子の隣に座った。そして、毛筆で京子の乳首をコチョコチョとくすぐり出した。
「ああー」
京子は思わず声を出した。だが老人は念入りに、京子の乳首を毛筆で刷いた。乳首がだんだん大きくなっていった。老人は割り箸をパキンと割って、京子の乳首を摘み、クイと引っ張った。乳首が引っ張られるにつれて、それにつづく乳房も引っ張られてせり上がった。そうしてから、老人はまた、毛筆で丹念に乳首を刷いた。だんだん京子の乳首が固くなって大きくなって尖りだした。京子の呼吸はハアハアと荒くなった。
「ふふ。どうじゃね。こうやって乳首を弄ばれる気分は」
老人は、京子の乳首を毛筆で刷きながら言った。
「い、いいわー。き、気持ちいいー。もうメチャメチャにしてー」
京子は眉を寄せて苦しげな表情で言った。もう京子の全体は珠の汗でいっぱいだった。


老人はニヤリと笑って、裸になった京子の体を毛筆でくすぐり出した。丸出しになった乳房、脇腹、臍の穴、太腿の付け根、などを丹念に刷いた。その度に、京子は、
「ああー」
と苦しげな喘ぎ声を出した。念入りな悪戯がかなりの時間つづいた。
「もう、疲れたじゃろ。今日はこのくらいにしておこう」
そう言って老人は毛筆の悪戯をやめた。老人はすっくと立ち上がると居間を出た。そして、すぐに戻ってきた。水を入れた洗面器とタオルを持って。老人は、洗面器を京子の前に置くと、タオルを水に浸して、湿らせてギュッと絞った。
「全身、汗でぐっしゃりじゃのう。拭いてやるわ」
そう言って老人は濡れタオルで京子の体を拭きはじめた。乳房や太腿の付け根などは特に念入りに拭いた。そして、時々、タオルを洗面器に入れて湿し、ギュッと絞った。全身をタオルで念入りに拭かれる感覚は、全身を触られて弄ばれているような感覚で、京子は恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。老人は、特に京子の乳房や太腿の付け根を念入りに拭いた。まるで揉まれているようだった。
「あん。おじいさん。もういいわ」
京子は恥ずかしくなって言った。老人は京子に言われて拭くのをやめた。
「どれ。服も着させてやろう」
そう言って老人はスカートとパンティーを持って、京子の前に座った。老人は、外れて縮んでいるフロントホックのブラジャーを胸の前に持ってきて、ブラジャーのカップに京子の大きな乳房を収め、フロントホックをつないだ。これで顕わになっていた京子の乳房がブラジャーで隠された。
「さて、今度は下着を履かせてやろう」
そう言って老人は京子のピチピチのパンティーを京子の前に出した。
「あん。おじいさん。下着は自分で履くわ。それより背中の手首の縄を解いて」
京子は、老人に下着を履かされる様子が頭に浮かんで、恥ずかしくなって首を振った。
「まあ、そう遠慮せんと、履かせてやるけに」
老人は、京子のパンティーを広げ、まず右足を通し、次いで左足を通した。そうして下腿から膝、膝から太腿の付け根へとスルスルとパンティーを引き上げていった。そうして、床についている尻も通して、元通りの腰の位置でパンティーの縁のゴムをピチンと音をさせて離した。これで京子はパンティーとブラジャーを身につけさせられた。さらに、老人はスカートも同様に足をくぐらせて太腿の所まで引き上げた。京子はもう老人のなすがままに着せ替え人形になろうと思った。だが、老人は、スカートから手を離した。
「じゃあ、縄を解くけに」
そう言って老人は、京子の背後に廻って、京子の手首の縛めを解いた。京子は、老人の行為の意味が分からなかった。しかし、ともかく後ろ手の縄が解かれたので、京子は完全に自由になった。自由になった京子はあわてて、中腰になってスカートを引き上げ、ホックをとめた。そして、広く捲られているブラウスをあわてて胸の間で閉じ合わせ、ブラウスのボタンを急いではめた。そしてブラウスの裾をスカートの中に急いで入れた。京子は老人が途中で縄を解いた理由を理解した。老人は、京子が、羞恥心から慌てて服を着る様子を見たかったのだ。そしてその通り、老人は京子が慌てて服を着る様子を、さも楽しげにじっと眺めていた。服を着てしまうと京子はほっとした。

「お嬢さん。どうじゃったかの」
老人が聞いた。
「恥ずかしかったわ。でも、凄く興奮しちゃったわ。こんな快感を味わったの、生まれて初めてだわ」
「ふふ。一度、この快感を味わうと病みつきになるて」
「そうなの。私、なんだか怖いわ」
老人はニヤリと笑った。
「ふふ。お嬢さん。家に帰ったら、アソコの毛をきれいに剃るとええ」
「どうして」
老人はニヤリと笑って、箱からある厚みのあるオールカラーの写真集を取り出した。それはSM写真集だった。老人は本を京子の方に向け、おもむろにページを捲っていった。
「まあ」
京子は真っ赤になった。ページをめくる度に、裸の女が、様々な奇態な格好に縛られている姿の写真が出てきたからである。写真の女は後ろ手に縛られ、胸は豊満な乳房を厳しく上下に挟むように縛られ、アソコの毛はきれいに剃られ、縄がアソコの肉に食い込むように取りつけられていた。それはインピ極まりなかった。
「ふふ。どうじゃね。アソコの毛が剃られて無い方がすっきりしているじゃろ。しかも、縄のため、アソコが隠されて、足を大きく開いてもアソコは縄で見られることはないて」
確かにその通りだった。尻の割れ目から女の谷間に食い込んでいる縄は、女の恥ずかしい所をかろうじてギリギリに隠していた。老人は、箱から麻縄をとり出して、SM写真集と一緒に京子に渡した。
「ほれ。麻縄と写真集をあんたにやるけん。今日、家に帰ったら、アソコの毛を剃って、自分でアソコに縄を食い込ませて縛ってみんしゃれ。気持ちようなるて」
「い、いやだわ。おじいさん。変なこと言わないで」
京子は顔を赤らめて言った。だが老人は強引に、縄と写真集を京子のバッグの中に入れた。
「さあ。あんたも疲れたじゃろ。もう今日は帰んしゃれ」
「はい」
京子は素直に返事した。
「家に帰ったら、アソコの毛をきれいに剃って、自分で自分を縛ってみんしゃれ。気持ちようなるて」
老人はニヤニヤ笑って言った。
「いやだわ。おじいさん」
京子は老人の肩をポンと叩いた。
「わしは、今日のあんたの姿が忘れられんわい。あんたが帰ったら、わしはあんたの裸を思い出して、うんと恥ずかしい格好に縛っていじめる事を想像して楽しむけん。今日は寝られそうもないわ」
そう言って老人は京子の手をギュッと握った。
「いやだわ。おじいさん。変なこと言わないで」
京子は顔を赤くして老人の肩をポンと叩いた。そして立ち上がってバッグを持って居間を出た。京子は老人に見送られながら車に乗ってエンジンをかけた。京子は微笑して手を振りながらアクセルベダルを踏んだ。

   ☆   ☆   ☆

京子は家に着いた。京子はクタクタに疲れていたため、すぐにパジャマに着替え、ベッドに横になった。すぐに眠気が襲ってきて、疲れのため、京子は泥のように、ぐっすり眠り込んだ。

   ☆   ☆   ☆

目を覚ますと、もう外は暗くなっていた。ぐっすり眠ったため、疲れもとれて、京子は大きな欠伸をしてウーンと体を伸ばした。しばし布団の中でじっとしていると、きっきの老人の家での痴戯が思い出されてきた。鏡に写った、大きく足を開いた裸の自分の姿、老人に乳首を毛筆や割り箸で弄ばれて興奮した事、全身を毛筆でくすぐられた事、あられもなく、気持ちいいと大声で告白した事、などが鮮明に思い出されてきて京子はだんだん興奮してきた。京子は老人に乳首を毛筆や割り箸でくすぐられた事を思い出して自分の乳首を指でそっと摘んでみた。コリコリ弄んでいる内にだんだん興奮して息が荒くなってきた。
「ああっ」
京子は、小さな喘ぎ声を出した。京子は老人から貰った写真集が気になり出した。それでベッドの横のカバンから、老人が入れたSM写真集を取り出した。開いてみると、そこには、丸裸で縛られて、ありとあらゆる惨めな格好をさせられた女達の写真があった。縛り方は様々だが、後ろ手に縛られ、乳房を挟むように胸を縛られ、そして、アソコの毛はきれいに剃られて、女の谷間に縄を食い込ませるようにして、縛られているのが多かった。それ以外でも、後ろ手に縛られて、うつ伏せで膝を開いて尻を高々と上げている姿、柱を背にして、柱に縛りつけられている姿などの姿の写真が多かった。女の毛は、剃られているものもあったが、剃られていないものもあった。しかし老人が言ったように確かに、きれいに剃られているアソコに縄が食い込んでいる方がエロチックだった。写真を見ているうちに京子はだんだん興奮してきた。胸を揉む手の動きは激しくなり、アソコに手を持っていって其処を揉んだ。
「ああー」
京子は興奮して喘ぎ声を出した。京子はだんだん、自分も写真の女のように、裸にされて縛られてみたいと思うようになった。京子は、ベッドから起き上がった。前には等身大の姿見の鏡が立てかけてある。京子はパジャマを脱いで、ブラジャーを外し、パンティーも脱いで、一糸纏わぬ丸裸になった。そして鏡の前に立った。自分の裸をまじまじと見つめるのは、恥ずかしく、京子は乳房と秘部を手で覆った。京子は、柱に縛られている女の写真を見ながら、自分も写真の女のように、背中に柱があることを想像して、両手を後ろに廻して手首を重ね合わせてみた。二つの豊満な乳房が丸出しになり、京子は、恥ずかしくなって膝を重ね合わせて女の部分を隠そうとした。丸裸にされても見られないように隠そうとする動作は何とも言えない蕩けるような甘美な快感があった。京子は、だんだん興奮してきて、床にうつ伏せになって、尻を高々と上げてみたり、床に横に寝て片足を高々と上げてみたり、と色々なポーズをとってみた。京子は、いっそう興奮していった。なにしろ、鏡の前でこんな事をするのは生まれて初めてなのである。京子は、今日、老人にされたように、鏡の前に座って、両手を後ろに回し、足を大きくM字に開いてみた。全てが丸見えである。老人に、自分がこんな格好を晒したかと思うと、京子はあらためて恥ずかしくなった。それで、床の上にある、脱いだパンティーをとって、女の部分の上に載せて隠した。それで再び、両手を後ろに組んで、足をM字に大きく開いてみた。パンティーが載っているため、アソコは隠されて見えない。しかし、その方が丸裸よりかえってエロチックだった。京子はもう激しい興奮でメロメロになっていた。ハアハアと息も荒くなってきた。一休みしようと、京子は足を閉じて、裸のまま、SM写真集をめくってみた。確かに、毛が生えているより、きれいに剃ってしまってある方がエロチックだった。
京子は、自分も毛を剃ってしまおうと思った。


京子は立ち上がった。そして、ビニールとハサミを持ってきた。京子は、ビニールを鏡の前の床の上に敷くと、その上に座って足を広げた。そして恥毛を摘み上げると、ハサミでジョキジョキと切っていった。其処の毛を切るのは生まれて初めてで、京子はドキドキした。京子は一人で、鏡の前で、丸裸になって、こんな事をしている自分が恥ずかしくなってきた。恥毛の大部分が無くなった。アソコは芝刈りをした後のようになった。京子は、裸のまま風呂場へ行き、洗面器にお湯を入れた。そして、ボディーソープと剃刀を持って、鏡の前に戻ってきた。京子はビニールの横に湯の入った洗面器と、ボディーソープと剃刀を置いた。そしてビニールの上に座った。京子はボディーソープを洗面器の湯の中に垂らして、かき混ぜて泡立てた。そして、股を開き、洗面器の泡立った湯をすくって、アソコを湿らせた。そして、剃刀で恥毛を剃っていった。アソコの毛はハサミで切って、坊主刈りのようになっているので、簡単に剃れた。アソコが乾いてくると、その都度、洗面器の湯をすくって湿らせた。そして、また剃っていった。とうとう全部、きれいに剃れた。京子は洗面器やボディーソープなどを持って、風呂場へ行った。そして、シャワーでアソコをきれいに流した。そしてタオルで体を拭いて、寝室に戻ってきた。京子は鏡の前に立ち、毛のなくなった自分の体を見た。アソコの毛が剃られ、まるで子供の時のようである。何とも言えない恥ずかしい気持ちになった。京子は、バッグから老人に渡された麻縄をとり出してみた。そして、写真にあるように、縛ってみた。縄を二つに畳んで二本にした。そして、まず、くびれた腰の上をベルトのように、巻いて臍の所でキュッと結び合わせた。そして、その結び目をクルリと背中の方へ持っていった。そして、縄の余りを尻の割れ目に食い込ませてから、前に持っていき、閉じ合わさっている女の肉を開いて、二本の縄をしっかりとアソコの割れ目の間に食い込ませ、キュッと引っ張って、臍の前の所で、横向きの腰縄にカッチリと結びつけた。これで完全な股縄が出来上がった。京子は股縄をした自分の裸を鏡で見た。二本の縄は女のアソコに食い込んで、実にいやらしく見える。踵を返して後ろを向くと、縄は尻の割れ目にしっかりと食い込んで、ムッチリした尻の肉が縄を飲み込んでしまっているかのようで、尻はピッチリ閉じ合わされて縄は見えず、尻の割れ目の上のあたりから縄が現れて、腰縄にカッチリと結び付いている。まるで相撲取りのようである。ほの暗い快感が京子に起こってきた。いやらしいものではあるが、何かセクシーなようでもあり、それでいて縄は京子の柔らかい肌に食い込んで、はずれない。Tバックを履いた感覚にも近いが、はずす事は出来ない。自分で、締めたのだから、とる事は出来るが、もし他人に後ろ手に縛られて、このように取りつけられたら、どんな気持ちだろうと京子は思った。京子は鏡の前に座って、立て膝で足を大きく開いてみた。裸だったら、アソコが開いて丸見えになるはずだが、女の割れ目に食い込んでいる二本の縦縄が、そこを隠していた。そして、まさに、そこだけが隠されていた。女の毛も剃られて、女の恥ずかしい部分は全部、丸見えも同然だった。今度は京子は、鏡に尻を向けて、膝を大きく開いて、尻を高く上げてみた。そして鏡を見てみた。立った時には、尻はムッチリ閉じ合わされて、縄はその中に埋もれてしまって見えなかったが、四つん這いで膝を大きく開いて尻を高く持ち上げると、尻の割れ目がパックリ開いてしまっている。もし裸だったら尻の穴が丸見えだが、尻の割れ目に二本の縄が、しっかり食い込んでいて、尻の穴は縄に隠されて見えない。京子はそれ以外にも色々なポーズをとってみた。カッチリと取りつけられた腰の縄は、はずれることなく、京子の柔肌に食い込んで、ついてまわる。少しでも動く度に、しっかり取りつけられた縄が、微かに動いて京子の敏感な所を刺激した。京子はだんだん興奮して息が荒くなってきた。まるで縄が意地悪く京子を責めているように感じられた。ハアハアと息が荒くなった。疲れてきたので、京子は股縄を外した。やっと意地悪な縄から開放されて京子はほっとした。京子はパンティーを履き、ブラジャーをつけた。そしてパジャマをきた。そしてキッチンに行ってカレーライスをレンジで温めて食べた。もう夜の11時を過ぎていた。食べおわると京子は風呂に入って、丁寧に体を洗い、ゆったりと湯船に浸かった。風呂から出ると、京子はパンティーを履いて、スケスケのネグリジェを着て、ベッドに潜り込んだ。部屋の明かりを消したが、サイドテーブルの明かりを点けて、写真集をじっくり見た。後ろ手に縛られて、その縄尻を天井の梁に吊り上げられ爪先立ちしてる姿、足首を縛られて逆さ吊りにさせられている姿、縛られて蝋燭を垂らされている姿、片足を高々と吊り上げられて、アソコがパックリと丸見えになっている姿、机の上に仰向けに縛られて、乳首やアソコに選択バサミを取りつけられている姿。など無数のバリエーションがあった。さらに着物も、すべて全裸ではなく、上はブラウスは着ているのに、下半身は丸裸だったり、パンティーも中途半端に降ろされていたり、片足に引っかかっていたり、全裸なのに、足袋だけ履いていたりした。それは、ことさらに女を辱めていた。女は羞恥心から、たとえどんな姿にされようとも、必死で足を閉じ合わせて必死でソコだけは隠そうとしていた。京子は激しく興奮した。写真を見ながら、胸を揉んでみたり、パンティーに手を入れてアソコを擦ってみたりした。
「ああ。私もこんな風に、色々な格好に縛られたい」
京子の被虐願望は、もう抑えられなくなっていた。一時間以上も京子は写真を見ていたが、0時を過ぎ、2時頃になると、眠気が起こってきた。京子は写真集をサイドテーブルに置いてサイドランプのスイッチを消した。いつしか、京子は深い眠りに入っていった。

   ☆   ☆   ☆

翌日。10時頃、京子は目を覚ました。ぐっすり寝たので疲れは完全にとれていた。今は夏季休暇で大学の授業はない。京子は裕福な家庭なので学費や生活費の仕送りも親が十分してくれるので、アルバイトはしていない。それより京子は真面目な性格だったので、大学の勉強にうち込んでいた。皆は、授業に出ず、アルバイトをして、試験は、過去問の一夜漬けで単位を取っていたが、それでは、意味も分からず、卒業したら、大学で学んだ知識はパーと忘れてしまう。そんな事は実に勿体ないと京子は思っていた。京子は、貪婪な知識欲から授業は全部出て、分からない事は大学の図書館で調べ、手当たり次第に文学書や哲学書や社会問題の本を読んでいた。そのため学校の成績は主席だった。皆がやっている合コンなどには出なかった。誘われた事もあるが、断わった。男と酒を飲んでカラオケを歌って、お喋りしたり、遊んだりしてダラダラと付き合うのは時間の無駄だと思っていた。そんな真面目一筋の京子だったが、昨日から、気持ちが一変してしまった。真面目で自分をよく律する人間ほど、一度、心の枷が外れると、一挙に雪崩れくずれてしまうものである。男は年中、発情しているが、女の性欲は受動的である。しかし女が一度、性欲に目覚めてしまうと、それを求める激情は自分では、もう抑えが利かなくなってしまうのである。京子は、昨日、まさに性に目覚めてしまったのである。しかし京子は、目覚めてしまった性欲を、そのまま発散させる事には、まだ抵抗を感じていた。性欲を受け入れて、それに、はまってしまって、本当に大切な学問を疎かにしてしまうことを恐れた。京子はまだ性欲と勉強のバランスのとり方がわからなかった。それで、京子は、キッチンに行って、朝食と昼食を兼ねた、トーストとサラダとチーズを食べた。食べおわると、卓上にあった、「ヘーゲル 弁証法による歴史解釈」という読みかけの本の続きを読み出した。これは大学で歴史を教えている教授が書いた本で、観念的で難しかった。だが難しいゆえに、あえて読みこなそうと挑戦したのである。しかし、だんだん話が難しくなっていき、分からなくなってきた。すると、官能の悩みが京子を襲い出した。京子は緊縛された女の写真が見たくて見たくてたまらなくなった。だんだん息も荒くなり出した。
「もうダメ」
京子は立ち上がるとフラフラと寝室に行き、ベッドに身を投げ出して、SM写真集を開いた。京子は写真の惨めな格好の女に感情移入して、自分が惨めになることを想像した。ハアハアと息が荒くなり出した。京子は、胸を揉んでみたり、パンティーの中に手を入れてアソコを揉んだりした。だが、それだけではとても我慢できなかった。京子はフラフラと立ち上がると、財布を持って、家を出た。そして駐車場に泊めてある車に乗ると、エンジンをかけて車を出した。京子はもう何も分からなくなっていた。ともかく、老人の家に行こう。そして、昨日のように惨めな格好にしてもらおう。そうしなければ、自分はおかしくなってしまう。そう京子は思いながら、老人の家に向かって車を運転した。運転している時もハアハアと呼吸は荒かった。交差点で赤信号で停止すると、早く青にならないかと待ち遠しくて仕方がなかった。

   ☆   ☆   ☆

ようやく老人の家に着いた。京子は車から降りると、チャイムを鳴らした。ピンポーン。チャイムが家の中に響く音が聞えた。直ぐに玄関の戸が開いて、老人が出た。

老人は京子を見るとニヤリと笑った。
「よう来たの」
「こんにちは。おじいさん」
京子は高鳴る興奮を抑えて、落ち着いた口調で挨拶した。
「さあ。上がりんしゃい」
老人に言われて京子は、家に入った。老人は京子を昨日の居間に案内した。京子はペタンと畳の上に座り込んだ。
「今日は何の用かの」
老人は落ち着いた口調で聞いた。だが京子は返事をしなで顔を赤くしている。それで老人がさらに言った。
「昨日、あんたが帰った後、わしは、あんたの事を思い出して、眠れんかったわ。あんたがまた来てくれてわしは、すごく嬉しいんじゃ」
老人はニコニコ笑いながら言った。
「ふふ。家に帰ってから、アソコの毛を剃ってみたかね」
「あげた縄で自分を縛ってみたかね」
老人はニコニコ笑いながら言った。京子はうつむいて顔を真っ赤にしている。老人は、押し入れの戸を開けて、SM写真集を取り出して、京子に見せるように開いた。裸で縛られている女の写真が次々とあらわれた。京子は真っ赤になった。
「お、おじいさん」
京子は震える声で言った。
「なんじゃね」
「私を裸にして。そして縛って。私をみじめの極地にして」
京子は吐き出すように言って、老人に身を投げ出した。
「よっしゃ。よっしゃ」
老人は嬉しそうに言って、京子の華奢な肩をつかんだ。老人はホクホクした顔で京子のブラウスのボタンを外していき、ブラウスを脱がせた。京子の豊満な乳房を収めて、大きく膨らんでいる、白いブラジャーが顕わになった。上半身はブラジャーだけになった。老人はさらにスカートのジッパーもはずして、スカートも抜きとった。ムッチリした大きな尻と女の恥肉を収めているパンティーが顕わになった。これで京子はもう、ブラジャーとパンティーだけ、という下着姿になった。老人は、ホクホクした顔つきで、京子のブラジャーの肩紐を降ろし、フロントホックを外した。豊満な京子の乳房を締めつけていたブラジャーがプチンと外れて、二つの大きな乳房が締め付けから開放されてプルンとはじけ出た。さらに老人は京子のパンティーのゴムを掴むと、スルスルと降ろしていった。
「ふふ。毛をきれいに剃ったんじゃな。気持ちよかったじゃろ」
老人は京子の毛がきれいに剃られているのを見つけると、そんな揶揄をした。だが京子は黙ったまま顔を火照らせて老人に身を任せている。老人は京子の背中に廻って、両手をグイと捻り上げた。
「ああっ」
思わず京子は声を洩らした。老人は京子の引き締まった手首を重ね合わせると、麻縄でカッチリと手首を縛り上げた。そして、その縄尻を胸の前に持っていき、乳房を挟むように、上下に二巻きずつ廻して胸を縛ってから、手首の所に結びつけた。正面の鏡には、一糸纏わぬ丸裸で後ろ手に縛られ、大きな乳房を挟まれるように縛られている自分の姿があった。縛りの基本の形である。昨日は、股を縄で縛ったが、手首や胸は自分では縛れない。二の腕に縄が食い込んで、へこむほどきつく縛られているため、乳房は上下の縄の間から苦しげに、搾り出されているかのようである。胸の下の方の二本の縄は、大きな乳房の下垂によって隠されてしまっている。もう、こう縛られてしまっては、自分では、どうすることも出来ない。老人に何をされようとも。老人は京子の前にSM写真集を開いて、パラパラとページをめくった。様々な格好に縛られた裸の女の写真が次々と出てきた。
「ふふ。どんな風に縛られたいかの」
老人は、さも京子を捕獲したかのように縄尻を持ちながら、京子に聞いた。
「も、もう、好きにして」
京子の頭は激しい興奮と、蕩けるような官能で真空になっていた。

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老人とテニスと二人の女 (小説)(下)

2020-07-07 06:16:12 | 小説
「ふふふ。わかったわ。それじゃあ、あんたに辱めの極地の快感を味あわせてやるけん」
そう言って老人は等身大の鏡を京子の前の壁に立てかけた。
「さあ。鏡を見てみんしゃい」
老人に言われて京子は、そっと鏡を見た。丸裸で、後ろ手に縛られ、乳房を挟むように胸の上下に、それぞれ二本の縄をかけられている、みじめな自分の姿が其処にあった。まさに写真集のみじめな姿の女に自分もなったんだ、という実感が起こった。恥ずかしさから、思わず、手で胸と秘部を隠そうと、手が動いたが、手首と胸の縛めは、それを阻止した。もう自分は手を使えないんだ、という事があらためて実感された。胸はもう隠しようがない。しかし、つつましい女の恥じらいの気持ちが、何とかアソコは隠そうと働いて、京子は太腿をピッチリ閉じ合わせた。そして、実際、そうする事で、何とかアソコは隠された。
「ふふ。どうじゃの。今の気持ちは」
ニヤニヤ笑いながら京子を見ていた老人が声をかけた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は太腿をピッチリ閉じ合わせて言った。
「ふふ。恥ずかしいだけかの」
「は、恥ずかしいけど何か気持ちがいいわ」
「ふふ。そうじゃろ。その恥ずかしさが気持ちよさになるんじゃ。さあ、立ってみんしゃれ」
老人に言われて、京子はヨロヨロと立ち上がった。
「さあ、鏡をしっかり見てみんしゃれ」
老人に言われて京子はそっと鏡を見てみた。後ろ手に縛られた丸裸の自分の立ち姿が見えた。毛の無いアソコの部分が丸出しである。京子は、
「あっ」
と叫んで、咄嗟に膝を寄り合わせた。そうする事によって恥ずかしい部分はかろうじて隠すことが出来た。
「ふふ。いい格好じゃな。しかし、尻は丸見えじゃよ」
老人は京子の後ろから声をかけた。ピクンと京子の尻が震えた。前は隠せても尻は隠せない。鏡から老人は、京子の前も見ているため、膝を寄り合わせて前も隠さなくてはならない。もう、どうしようもない状態である。足がプルプル震え出した。
「ふふ。どんな気分じゃね」
「は、恥ずかしいわ」
「こうやって裸で縛られた事はあるかの」
「な、ないわ。生まれて初めてだわ」
「ふふ。それじゃあ、恥ずかしかろう。では恥ずかしい所が見えんよう隠してやろう」
そう言って老人は麻縄を持って、裸で立っている京子の傍らに行った。
「ふふ。縛ることによって、恥ずかしい所を隠すことが出来るんじゃよ」
そう言って老人は、長い麻縄を二つ折りにした。
「昨日は自分で縛ってみたかの」
老人は京子の横に屈んで言った。京子は足をプルプル震わせながら黙っていた。老人は京子を縛ろうと縄を持って京子に近づいた。京子の腰には、昨日、縛った縄の痕があった。
「おお。縄の痕がある。昨日、自分で縛ったんじゃな」
老人はホクホクした口調で言って京子を見上げた。京子は真っ赤になって足をモジモジさせた。老人に、心まで見られてしまった事がどうしようもなく恥ずかしかった。
「ふふ。自分で縛って病みつきになってしまったんじゃな。では、また、わしがカッチリと縛ってやろう」
京子は真っ赤になった。老人はホクホクした顔つきで、京子を縛り出した。老人は京子の背中に廻って、二本の縄を、京子の腰のくびれの所に巻きつけて、尻の上でキュッと結び合わせた。そして、その縄の残りを京子の尻の割れ目に入れて股の間をくぐらせ、前に出した。
「ほれ。アソコが見えんよう、しっかりと食い込ませるけん。足を開きんしゃい」
老人に言われて京子は、顔を真っ赤にしながら、閉じていた足を開いた。老人は、ニヤリと笑って、京子の女の肉の割れ目を開き、その間に二本の縄をしっかり食い込ませた。そして、グイと縄を引き絞って、ヘソの所の腰に巻いてある腰縄にカッチリと結びつけた。


これで完全な股縄が出来上がった。女の割れ目にカッチリ食い込む二本の縦縄のため、アソコは隠されて見えない。股縄が女の敏感な所に食い込んで、京子を辛い刺激で責めた。
「さあ。後ろを向いてみんしゃれ」
老人に言われて、踵を返して後ろを向くと、縄は尻の割れ目にしっかりと食い込んで、ムッチリした尻の肉が縄を飲み込んでしまっているかのようで、尻はピッチリ閉じ合わされて縄は見えず、尻の割れ目の上のあたりから縄が現れて、腰縄にカッチリと結び付いている。老人は京子を、また前に向かせた。アソコは、縄で隠されて見えないといっても、極めて、いやらしく恥ずかしい姿である。京子は恥ずかしさに耐えられなくなり、クナクナと座りこんだ。少しでも動く度に縄が動いて、京子の敏感な所を刺激した。まるで縄が京子を責めているかのようだった。
「さあ。柱を背にして足を大きく開きんしゃい」
そう言って老人は、京子の背を柱にもたれかけさせた。そして閉じ合わさっている膝をグッと大きく開いた。脚はM字の形になった。
「さあ。鏡を見てみんしゃれ」
老人は京子の顔を正面の鏡に向けた。
「ああー」
思わず京子は声を出した。鏡には、柱を背に、丸裸で後ろ手に縛られて、胸と秘部を縄で縛られた、みじめな姿の京子があったからである。ほとんど裸同然だった。しかし、女の割れ目に食い込んでいる二本の縄のため、割れ目の中は隠されて見えなかった。
「ふふ。どうじゃな。こんなに足を開いても恥ずかしい所は見えんじゃろ」
老人は京子の膝を開きながら言った。
「ふふ。どうじゃね。今の気分は」
「は、恥ずかしいわ」
「しかし、股縄のため恥ずかしい所は、どんな格好をしても見られんわ。安心しんしゃれ」
老人は箱から、割り箸を二本と輪ゴムをとり出した。そして京子の前でパキンと割った。そして老人は京子の乳首を割り箸で挟んだ。
「な、何をするの」
京子が脅えた口調で聞いた。
「ふふ。楽しい事じゃよ」
そう言って老人は京子の乳首を挟んだ割り箸の両端を輪ゴムで括った。
「あっ」
と京子が声を出した。老人は、すぐにもう片方の乳首も同じように割り箸を取り付けた。割り箸は京子の乳首にしっかり取り付けられてしまって、どうにもならない。後ろ手に縛られているため、手が使えないので割り箸をとる事は出来ない。鏡には両方の乳首に割り箸を取りつけられて、縛られている、惨めな姿があった。あたかも割り箸が京子の乳首を責めているかのようである。京子の胸はほどよく大きかった。ブラウスを着ても、胸の所が形よく膨らんだ。街を歩いていても、すれ違う男達は思わず生唾を飲み込んで京子の胸を見た。京子は恥ずかしさに顔を火照らしたが、そうやって男達に見られる事は、ちょっぴり自慢でもあった。その男を悩ます自慢の胸が、今は、みじめに丸出しにされ、搾り出されるよう縄で縛られ、さらに乳首には割り箸が取りつけられているのである。京子は、恥ずかしさに顔を火照らした。
「ふふ。もう何もかも忘れてしまいんしゃい」
老人は、そんな揶揄をした。老人は京子の体を抱くようにして、そっと京子の上半身を畳の上に倒した。そして片方の足首を縄で縛った。老人は椅子を持ってきて、縄を持って椅子の上に乗り、縄を天井の梁に引っ掛けた。そして椅子から降りると、片手に縄を持って京子の横にドッカと胡坐をかいて座った。老人はニヤニヤ笑っている。
「な、何をするの」
京子は恐怖感から声を震わせて聞いた。
「ふふ。こうするんじゃよ」
そう言って老人は持っていた縄をぐいぐい引っ張り出した。それにつれて足首を縛られた片足が天井へ向かって吊り上げられていった。
「ああー」
京子は思わず声を出した。だがどうすることも出来ない。ついに京子の片足がピンと一直線に伸びた。老人は縄を箪笥の取っ手に結び付けた。
「ふふ。こうすれば、もう逃げることは出来んわ。さあ、鏡を見てみんしゃい」
老人に言われて京子は鏡を見た。片足を垂直に吊られ、足が大きく開いてしまって、尻の割れ目がパックリ開き、女の恥ずかしい部分も丸出しになっていた。だが、割れ目に食い込んでいる二本の縄のため、アソコの中と尻の穴は、かろうじて隠されている。だが、これは、もう丸裸も同然である。しかも後ろ手に縛られ、乳房を搾り出すように縛られ、その上、両方の乳首には割り箸が取りつけられているのである。これ以上、恥ずかしい姿があろうか。激しい羞恥心が京子を襲った。
「ああー。は、恥ずかしいわー。みじめだわ」
京子は眉を寄せて苦しげな顔で叫んだ。
「ふふ。恥ずかしいかの。恥ずかしさには、こうやって耐えるんじゃ」
そう言って老人は、後ろ手の京子の親指を、残りの四指で隠すよう握らせた。
「ふふ。あんたが今、隠せるのは親指だけじゃ。親指を体だと思って、隠そうと思ってギュッと握ってみんしゃれ」
老人に言われたように京子は親指をギュッと握りしめた。確かに何かを隠しているという感じがあった。京子は親指を隠して握りしめることによって、恥ずかしさに耐えようと思った。
「もう、あんたは、わしが何をしても逃げることは出来んわ」
そう言って老人は京子の体を弄び出した。毛筆ですーと吊られている足の脹脛や太腿を刷いたり、筆で足の裏をくすぐったりした。
「ああー」
京子は、辛い感触に声を出した。老人は毛筆を畳の上に置くと、今度は指で直に京子の体を触り出した。指先ですーと、脹脛や太腿を這わせた。
「ああー」
京子は辛さに耐えられずに叫んだ。触られた所がピクピクと震えた。京子は親指をギュッと握りしめ、足指もギュッと締め合わせて、責めに耐えた。老人は、京子の大きな柔らかい尻を、その弾力を楽しむように撫でたり、ただでさえパックリ開いている尻の割れ目を、さらにグイと割り開いてみたり、女の肉を撫でたり、揉んでみたりした。京子の体はプルプル震え出した。アソコからは、白い粘っこい液が、出始めた。老人はティシュでそれを拭いたが、粘っこい液は止まることなく、出つづけた。
「ふふ。どうじゃの。今の気持ちは」
「い、いいわー。もっと責めて。私をメチャメチャにしてー」
ついに京子は被虐の快感の叫びを上げた。
「ふふ。ついに言いおったの。わかった。あんたをメチャメチャにしてやるけん」
老人は立ち上がった。
「顔を踏んでいいかの」
「いいわー。踏んで」
老人はニヤリと笑って、京子の柔らかい頬に足を乗せ、グリグリと揺すった。京子の顔は老人に踏まれて歪んだ。
「ああー。いいわー」
京子は被虐の快感の叫びを上げた。老人は京子の乳首の割り箸をとった。そうして剥き出しになった乳房を足でグリグリ踏んだり、肩や脚の付け根や尻を、足の裏でグリグリと踏んだ。
「いいわー。最高だわー」
京子は被虐の雄叫びを上げた。アソコからはドロドロと白くネバネバした液が溢れつづけた。京子の体がブルブル震え始めた。全身が激しく痙攣しだした。
「ああー。いくー」
京子は激しく叫んだ。京子の体は、しばしヒクヒクと小刻みに振動しながら、石のように固くなっていたが、だんだん力が抜けていき、ついにグッタリと脱力した。老人はニコニコ笑って、京子のアソコに溢れ出ている白濁液をティッシュで丁寧に拭いた。
「ふふ。ついにいったな。ちょっと待ってんしゃい。風呂を沸かしてくるけん」
そう言って老人は部屋を出て行った。京子は足を吊られて縛られたまま放心状態で目を瞑って畳の上に横たわっていた。ジャーと湯が流れ出す音が聞えた。老人が戻ってきた。老人は取っ手に結び付けてある縄を解いて、スルスルと梁から縄をはずした。ピンと一直線に伸びていた京子の片足が下がっていき、ついに畳みの上に降りた。老人は京子の足首を縛っていた縄を解いた。足首には、縄の痕が赤くついていた。老人は京子を抱き起こした。そして腰部にカッチリと結びついていた股縄もはずした。縄の女の部分の所に当たっていた所はぐっしょり濡れていた。そして胸を縛っていた縄も解いた。これで京子の縛めは後ろ手の手首の縄だけとなった。京子は、後ろ手に縛られたまま、太腿をピッチリ閉じて正座した。
「気持ちよかったかの」
「え、ええ」
京子は老人の質問に頬を火照らせて答えた。
「どれ。もう風呂もいっぱいになったじゃろ。止めてくるけん。待ってんしゃい」
そう言って老人は部屋を出て行った。水が流れる音がピタリと止まった。すぐに老人はもどってきた。
「風呂がいっぱいになったけん。いい湯加減じゃて。入りんしゃい」
そう言って老人は縄尻を持ったまま京子を立たせた。
「さあ。行きんしゃい」
老人は京子を風呂場へ促すように、肩を押した。
「あっ。おじいさん。待って。縄を解いて」
縛られたまま、風呂に連れられていくのかと疑問に思って京子は焦って言った。
「縄は風呂場で解くけん。一度、あんたを、引き回すように連れて歩きたかったけん。許してくれんかの」
「わ、わかったわ」
京子は縄尻を後ろで老人にとられたまま、裸で歩き出した。
「ふふ。まるで悪代官に捕まった女の引き回しのようじゃ。ムッチリ閉じ合わさった尻が揺れて、色っぽいわ」
老人は京子の背後から言った。
「あっ。いやっ。恥ずかしいわ」
京子の尻がピクンと動いた。京子は膝をピッチリ閉じて歩いた。風呂場の戸は開いていて湯気が出ていた。京子は風呂場に入った。浴槽には湯がいっぱい満たされていた。京子は、いつ老人が縄を解いてくれるのか、気になったが、自分から、解いて、というのものきまりが悪かった。それで黙って、洗い場の椅子に尻を乗せた。老人は桶で湯船から湯をすくって京子の肩にざあっとかけた。そして老人はスポンジをとって、それに湯を湿らせ、さらに石鹸をなすりつけて泡立てた。
「どれ。わしが洗ってやろう」
そう言って老人は、泡立ったスポンジを京子の乳房にピタリと当てた。
「あっ。いやっ。やめて。おじいさん」
このまま後ろ手に縛られたまま、老人に体を洗われるかと思うと、京子は恥ずかしくなって肩を振った。
「ふふ。そうじゃな。縛られたまま体を洗われるのは恥ずかしいじゃろ。では、それはやめて、縄を解いてやろう」
そう言って老人は京子の手首の縄も解いた。これでやっと京子は完全に自由になった。
「ありがとう」
京子は頬を火照らせて礼を言った。
「ほれ。これで洗いんしゃい」
そう言って老人は京子にスポンジを渡して、風呂場から出た。
「ありがとう」
京子はまた礼を言って、桶で湯船から湯をすくって自分の肩にざあっとかけた。そしてスポンジを胸に当てた。ふと見ると老人が、風呂場の戸の隙間から京子を見ている。
「ああ。おじいさん。恥ずかしいわ。見ないで」
京子は慌てて、胸と秘部を手で覆った。
「ふふ。すまん。すまん。ゆっくり洗って温まりんしゃい」
そう言って老人は擦りガラスの戸を閉めた。京子は、内鍵をかけた。

京子は髪を束ねて上げ、輪ゴムで縛った。やっとほっとしてスポンジで体を洗い始めた。手首や胸にクッキリと縄の痕があった。京子は丁寧に体を洗って、湯船に浸かった。激しいスポーツの後の入浴のような気がして、気持ちが良かった。十分、湯に浸かってから京子は風呂場を出た。脱衣場にはバスタオルがなく、小さな洗顔用のタオルしかない。京子は洗顔用のタオルで体を拭いて、ギュッとタオルを絞った。バスタオルではないので、体に巻きつける事は出来ない。京子はタオルで体の前を隠した。だがタオルは乳房と秘部を覆うので精一杯で、背中やムッチリした尻は丸出しになった。京子は胸の前でタオルをギュッと握りしめて、そっと老人の部屋に行った。
「おじいさん」
京子は襖を開けて、そっと声をかけた。
「なんじゃね」
老人が答えた。
「あ、あの。下着と服を渡してもらえませんか」
京子は小声で言った。
「はは。もう恥ずかしがることはなかろう。服は、ここにあるから部屋の中で着んしゃい」
老人は余裕の口調で言った。この格好で部屋に入るのは恥ずかしい。しかし、そうするより他に仕方がない。京子はタオルで体の前を隠して部屋に入った。老人が胡坐をかいて笑って座っている。部屋には服がない。
「おじいさん。服は」
京子は焦って言った。
「ふふ。まあ、そう焦らんともいいじゃろ。タオル一枚で隠しているあんたの姿も色っぽいの。服はこの部屋のどこかに隠してあるけん。探しんしゃい」
京子は仕方なく、タオルで前を覆いながら、服を探し出した。タオル一枚で部屋の中を歩き回る京子の姿は、色っぽかった。前は隠せても、背中やムッチリした尻は丸見えである。片手でタオルを押え、片手で、服を探そうとするものだから乳房もタオルから、かなりはみ出していた。もう、ほとんど裸同然だった。京子は、やっと押し入れの箪笥の三番目の奥に下着と服を見つけた。京子は急いでパンティーを履き、ブラジャーを着けた。そしてスカートを履き、ブラウスを着た。これでもう安心である。京子は、ほっとして老人の前にペタンと座った。
「ふふ。今日はどうじゃったかの」
「は、恥ずかしかったわ。でもすごく興奮しちゃったわ」
「ふふ。あんたの体は隅から隅まで見てしまったからの」
「は、恥ずかしいわ」
京子は、さっきの狂態を思い出して頬を赤くした。
「股縄を締められた感じはどうじゃったかの」
「は、恥ずかしかったわ」
「買い物をする時など、外に出る時は、股縄をしてみんしゃれ。気持ちようなるて」
「いやだわ。おじいさん。変なこと言わないで」
その光景が頭に浮かんで京子は顔を赤くした。
「ふふ。一度、股縄の食い込む快感を知ってしまったら、もう止められなくなるて」
老人はいやらしそうに笑って言った。
「いやだわ。私、そんな事しないわ」
京子は顔を赤らめて手を振った。
「どれ。お茶を入れるけん。飲んでいきんしゃい」
そう言って老人は、立ち上がって部屋を出た。すぐに老人はお茶を持ってやってきた。京子はお茶を飲んだ。
「ふふ。今日のあんたの姿は、一生、忘れんわい。気が向いたらまた来んしゃい。色々な責め方があるて」
京子は答えず顔を赤くした。
「今日は突然、おじゃましちゃって御免なさい。それじゃあ、私、帰ります」
茶を飲み終わると、京子は老人にペコリと頭を下げてカバンを持って立ち上がろうとした。
「待ちんしゃい。写真集をあげるけん」
そう言って老人は箱の中から、SM写真集を三冊とり出して、京子のカバンに入れた。京子は、恥ずかしそうにペコリと頭を下げて老人の家を出た。そして車を飛ばして家にもどった。

   ☆   ☆   ☆

家にもどった京子は、寝室のベッドにどっと身を投げ出した。あまりにも色々な事があり過ぎて頭が空白だった。京子は何も考えないでしばしベッドに横たえていた。しかし、時間の経過とともに、意識がだんだん現実にもどってきた。京子は老人にされた事を思い出してみた。
淫乱な気持ちに耐えられず、老人の家に車で行った事。丸裸にされて後ろ手に縛られた事。股縄をされた事。乳首に割り箸をつけられた事。片足を吊られた事。そしてさんざん体を弄ばれた事。顔を踏まれた事。いってしまった事。老人は、それらの姿を全て鏡に映して見せたため、その恥ずかしい姿がありありと思い出されてきた。自分があんな事をしてしまったかと思うと、京子はだんだん興奮してきた。京子はベッドから立ち上がると、割り箸と輪ゴムを持ってきた。そしてベッドに寝た。京子はブラジャーをはずして、さっき老人にされたように割り箸て乳首を挟んで、両端を輪ゴムで縛ってみた。プルンと胸を揺すってみたが、とれない。割り箸は適度な刺激で乳首を締めつけた。京子はだんだん淫乱な気持ちになってきた。京子は割り箸を乳首からとった。そしてバッグから老人に貰ったSM写真集を3冊とり出して貪るように見た。またまた様々な恥ずかしい姿に縛られた裸の女の写真が次々と出てきた。女達は、始めは服を着たまま後ろ手に縛られているが、徐々に脱がされていって、ついに丸裸にされて、様々な辱めの極地の格好にされてしまう。それぞれの女に、タイトルと、女の心境を書いた短い文がついていて、小さなストーリーになっている。それが一層、現実性を感じさせ、妄想をかきたてた。縛られて蝋燭を垂らされている裸の女の写真、体中に選択バサミをとりつけられている写真。様々な恥ずかしい格好で宙に吊られている写真などが次々と現れた。空中に吊られてしまっては、もう何も出来ない。いやらいし男に、どんな事をされても逃げることは出来ない。京子は、写真を見ている内にだんだん興奮してきた。自分も丸裸にされて大きく両手、両足を開いて天井に梁に吊られ、老人に様々な悪戯をされる事を想像した。京子はハアハアと息が荒くなっていった。さらに京子は、蝋燭を垂らされて、苦しげな顔をしている女の写真に見入った。女の全身には、丸い蝋涙が無数にこわばりついていた。女は眉を八の字にして、大きく口を開き、苦しそうな顔をしている。蝋燭はどの位、熱いものなのか、京子は関心が出てきた。蝋燭責めは、SMの中でも多くある責めで、火傷するようなものではないだろうと思った。しかし見るからに熱そうで、辛そうに見えた。京子は蝋燭を垂らされる熱さが知りたくなった。しかし部屋には蝋燭がない。京子はブラジャーを着けて、ブラウスを着て、スカートを履き、財布を持って、急いでアパートを出た。そして車を飛ばしてスーパーに行った。雑貨売り場には蝋燭があった。京子は、ほっと安心した。京子は、いつものように食品売り場に行って、必要な食材を買った。そして、雑貨売り場に行って、蝋燭を買い物カゴに入れた。レジにカゴを出した時、男の店員が、蝋燭を見つけると、ちょっと訝しそうな顔つきになって、京子の顔を一瞬チラリと見た。京子は恥ずかしくなって心臓の鼓動が高まった。買った物をビニール袋に入れて、車にもどった。そして車を出して、アパートにもどった。京子は食品を冷蔵庫に入れた。そして蝋燭を持って寝室に行った。京子はブラウスを脱ぎ、スカートを降ろした。そしてブラジャーを外して、パンティーも脱いだ。丸裸になった京子は、ベッドの上にビニールを敷いた。そして、その上に乗った。京子は蝋燭をとると、ライターで蝋燭の芯に火をつけた。ぽっと蝋燭の火が燈った。すぐに皿の部分が溶け出した。京子は、胸をドキドキさせながら、そっと乳房の上で蝋燭を傾けてみた。蝋涙がポタリと落ちて京子の乳房にくっついた。
「熱いっ」
思わず京子は声を出した。京子は、ふっと息を吹いて蝋燭の火を消した。乳房には、ひしゃげて丸く平べったくなった蝋がくっついていた。なるほど、蝋燭の熱さは、このくらいのものかと思った。蝋が肌に触れた瞬間は、とても熱いが、熱さは、その一瞬だけだった。京子は、爪で乳房にくっついている蝋を剥がした。蝋はペリッと、とれた。なるほど、火傷はしないが、かなり熱い責めなのだなと京子は思った。これを縛られて、身動き出来ない状態でされたら、怖い、と思った。自分がいくら、許しを乞うても、止めてくれるかどうかは男の胸先三寸にある。女はひたすら許しを乞うしかないのだ。京子は、再び、蝋燭に火を点けた。そして乳房に蝋燭を垂らした。蝋燭がポタポタ垂れて、京子の乳房に貼りついた。
「熱い。熱い」
と叫びながら、京子は、老人に後ろ手に縛られて、こうやって責められる事を想像した。「許して。許して」と泣きながら叫びつづけても、老人はニヤニヤ笑って蝋燭を垂らしつづける。いつまで責めが続くかはわからない。そんな事を思うと京子は、激しく興奮して鼻息が荒くなっていった。乳房が蝋でいっぱいになった。京子はさらに腹に垂らした。腹にも蝋の斑点がいっぱいになると、やっと京子は蝋燭の火をふっと吹き消した。乳房は蝋の斑点でいっぱいだった。京子は丁寧に、乳房の蝋を爪で剥がした。腹の蝋も剥がした。京子は裸のまま、しばらく蝋燭による自慰の余韻に浸っていた。しばしして、気持ちが落ち着くと、京子は裸のまま、ベッドの上でうつ伏せになった。もう外は暗くなっていた。京子は、パジャマを着て夕食をつくって食べた。食べ終ると、また直ぐベッドに行って横になり、写真集を見入った。その晩、京子は夜遅くまで、写真集を見た。気持ちが興奮して、なかなか寝つけなかった。

   ☆   ☆   ☆

翌日。9時に京子は目を覚ました。しばらく布団の中で惰眠を貪っていたが、サイドテーブルに置いてあるSM写真集に手を伸ばした。京子は、布団の中で写真集を繰り返し見た。もう京子はSMの妄想の世界にメロメロに溺れていた。女は一度、性欲に目覚めると、もう止まらなくなる。京子は、写真集の女達のように被虐の快感を貪り尽くしたくなって、体が疼いていてしかたがなかった。今日は、テニススクールのレッスンの日である。京子はパジャマのまま、トーストと玉子焼きとサラダを食べた。そして、またベッドに潜り込んで、SM写真集を見て、妄想の世界に浸った。昼近くになった。京子はテニススクールに行こうと、スポーツウェアに着替えた。ラケットを持って、アパートを出ようとしたが、ふと、ある事を思いついて京子は足を止めた。京子は寝室にもどると、鏡の前でスポーツウェアを脱いだ。そしてブラジャーを外し、パンティーも脱いで丸裸になった。

京子は、麻縄を手にした。そして縄を二つに畳んで二本にした。そして、くびれた腰の上をベルトのように巻いて、臍の所でキュッと結び合わせた。そして、その結び目をクルリと背中の方へ持っていった。そして、縄の余りを尻の割れ目を通し、前に持っていき、二本の縄をしっかりとアソコの割れ目の間に食い込ませ、キュッと引っ張った。麻縄が食い込む感触に京子は、
「ああっ」
と喘ぎ声を出した。そして、その縄を臍の前の所で、横の腰縄にカッチリと結びつけた。京子は、そのまま、ジャージのスボンを履き、ジャケットを着た。そして、再び、ラケットとスポーツドリンクの入ったバッグを持ってアパートを出た。京子はテニススクールに向かって車を走らせた。だが運転中も京子は股間に食い込む縄の感触に悩まされた。

   ☆   ☆   ☆

テニススクールに着いた。コートは4面あって、各コートで、生徒達が気持ち良さそうにプレーしていた。だが京子のクラスのコートには、まだ誰も来ていなかった。京子はラケットを持ってコートに降りた。京子は、回りでプレーしている人達を見て、恥ずかしくなって顔を赤くした。ジャージの下は、パンティーもブラジャーも無い丸裸なのである。そして、股間にはカッチリと食い込むように股縄がとり付けられているのである。もし、この事がわかってしまったら、と思うと京子は、激しく興奮した。否、京子は、むしろ、ジャージの上も下も脱ぎ捨てて、股縄だけしている自分の惨めな姿を人に見られたいと思った。
その時、順子の赤いスポーツカーが来た。いつもの連れの男を乗せていた。二人は車から降りてスクールのクラブハウスに入った。すぐに二人は着替えて、コートに降りてきた。
「あら。京子。今日は、野暮ったいジャージじゃない。いつもの白のテニスウェアは?」
「せ、洗濯してるの」
京子は顔を火照らせて言った。ジャージの下は股縄だけの丸裸であることの意識が、京子に激しい羞恥心を起こした。
「あの、おじいさん。きっと今日も来ないわよ。もう、やめちゃったんじゃないかしら。老人はゲートボールでもやっていりゃいいのよ」
順子は軽率な口調で京子を挑発するように、せせら笑った。だが、そんな事を順子が言っても京子は黙って顔を火照らせている。
「あら。京子。怒らないの?」
正義感の強い京子が怒って反論してくると予想していたのに、反論してこないので、拍子抜けしたのだろう。順子は、じーと京子の顔を疑問に満ちた顔つきで覗き込んだ。
「や、やりたくないのに無理に誘うのも悪いと思うの」
京子は顔を火照らせて言った。
「あら。京子。やけに素直になったじゃない。どういう心境の変化?」
順子がまた、からかうような口調で聞いた。
「お、お年寄りの人は、体が弱いから、無理に体を動かしては、よくないでしょ」
京子は、ジャージの下の股縄の食い込む感触に体を震わせながら言った。
「あら。京子。あなたも角がとれて人間が出来てきたじゃないの」
順子は、ケラケラ笑いながら、そんな事を言った。その時、順子の連れの男がコートに降りてきて順子の傍らに立った。その後すぐにコーチが、コートに降りてきた。
「さあ。今日はこの三名だ。はじめよう」
コーチが言った。
「それじゃあ、さっそくグラウンドストロークだ」
コーチに言われて、順子は、コーチの方のコートに入った。そして京子と向き合った。青年はコーチと向き合った。
「いくわよー」
順子は元気に言って、ポーンとのボールを京子の左側に出した。京子はサッとバックハンドに構えて、ボールの方にステップした。
「ああっ」
思わず京子は声を出した。動いた事によって、股縄が女の股間の谷間に食い込んで、女の敏感な所を刺激してきたのである。京子はタイミングが狂って空振りした。
「何よ。京子。どうしたのよ」
緩いボールを空振りした京子に向かって順子がふくれっ面で言った。
「ご、ごめんなさい」
京子は謝って、構え直した。
「しっかりしてよ」
そう言って順子は、またボールをポーンとボールを出した。今度はフォアだった。ボールを追って走る事によって、またジャージの下の股縄が動き、京子の敏感な所を刺激した。
「ああっ」
また、京子は、タイミングを狂わせて、空振りした。
「何よ。京子。どうしたの。あんな球もとれないなんて」
順子は、ふくれっ面で京子を叱った。
「ご、ごめんなさい。今度はちゃんと返すわ」
京子は顔を火照らせて順子に謝った。
「しっかりしてよ」
そう言って順子は、三度目のボールを出した。バックハンド側だった。京子は、敏感な所を擦る股縄の刺激に耐えて、何とか打ち返した。順子とのラリーが始まった。順子は意地悪な性格なので、わざと少しボールを離れた所に打って、京子を左右に走らせる。京子は、縄が食い込む辛い感触に耐えながら、必死で左右に走ってボールを返した。だが、ジャージの下で股縄が食い込む責めに、京子は、ハアハアと息が荒くなっていった。ミスも多くなっていった。
「何よー。京子。どうしたの。どこか、体の具合でも悪いの?」
順子がふくれっ面で聞いた。
「だ、大丈夫。何でもないわ。さあ、つづけましょう」
順子は、いつもの気持ちのいいラリーが出来ないのが不快なのだろう。ふくれっ面でボールを出した。京子は、ハアハアと息を荒くしながら、股縄の責めに耐えながら、ボールを打ち返した。しかし、京子は縄に責めつづけられて、参ってしまい、時々、打ち返しそこねた。その度に、順子は、ふくれっ面で京子を叱った。その度に京子は、
「ごめんなさい」
と謝った。
そんな調子だったので、その日の京子のプレーはその後も、ミスばかりだった。
プレーが終わった後、京子は、女の敏感な所を刺激されつづけてきて、もうメロメロだった。
しかもジャージの下はブラジャーもパンティーも着けていない丸裸で、それを人に気づかれたいという背徳の快感が、京子をメロメロにしていた。

   ☆   ☆   ☆

京子は、車に乗ると、ハアハアと息を荒くしながら老人の家に車を飛ばした。この、やりきれない淫乱な気持ちから早く、身も心も開放されたいという思いでいっぱいだった。

京子はもう何も分からなくなっていた。ともかく、老人の家に行こう。そして、うんと惨めな格好にしてもらおう。そうしなければ、自分はおかしくなってしまう。そう京子は思いながら、老人の家に向かって車を運転した。運転している時もハアハアと呼吸は荒かった。交差点で赤信号で停止すると、早く青にならないかと待ち遠しくて仕方がなかった。

   ☆   ☆   ☆

ようやく老人の家に着いた。京子はヨロヨロと車から降りると、チャイムを鳴らした。ピンポーン。チャイムが家の中に響く音が聞えた。直ぐに玄関の戸が開いて、老人が出た。
「よう来たの。さあ、入りんしゃい」
老人は京子を見るとニヤリと笑った。京子は、ヨロヨロとよろめきながら老人の家に入った。居間に通されると、京子は畳の上に、どっと倒れ伏した。
「おじいさん。何とかして。私もうダメ」
京子はハアハア喘ぎながら言った。
「どうしたかの」
老人はニヤニヤ笑って、落ち着いた口調で聞いた。
「テ、テニスをしてきたの」
京子のジャージは汗で、ぐっしょりだった。
「疲れたんじゃな。服を脱がしてもいいかの」
「いいわ。好きなようにして」
老人はホクホクした口調で言って、京子のジャージを脱がした。ジャージの下は、ブラジャーもパンティーも履いていない丸裸で、股縄が腰にカッチリととりつけられていた。京子の体は汗だくだった。
「ふふ。この格好でテニスをしてきたのかえ」
「そ、そうよ」
「それは、辛かったじゃろ。まず風呂に入って、疲れをとりんしゃい。湯を沸かしてくるけん」
そう言って老人は部屋を出て行った。京子は放心状態でうつ伏せで目を瞑って畳の上に横たわっていた。ジャーと湯が流れ出す音が聞えた。すぐに老人が戻ってきた。
「股縄をはずすけん。いいかの」
「いいわ」
京子は、ぐったりと畳の上にうつ伏せになったまま言った。老人は、京子の腰にカッチリと取りつけられた股縄をはずした。女の部分の所はネバネバした液で濡れていた。丸裸のまま、畳の上に京子はぐったりとうつ伏せに横たわっていた。
「どれ。もう湯がいっぱいになったじゃろ」
そう言って老人は部屋を出た。流れていた水の音がピタッと止まった。老人はすぐに部屋にもどってきた。老人は京子を抱き起こした。京子は畳の上に手をついてうつむいていた。老人は、いきなり京子の両手をつかむと、グイと背中に捻り上げた。
「あっ。な、何をするの」
京子は、驚いて思わず声を出した。だが老人は、黙ったまま、京子の手首を重ね合わせて縛った。
「ふふ。すまん。すまん。一度、あんたを縛ったまま、体を洗いたいと思っていたんじゃ」
老人はホクホクした顔つきで言った。
「さあ。立ちんしゃい」
老人は、縄尻をとって言った。京子は老人に言われたように立ち上がった。老人に縄尻をとられたまま京子は、風呂場へ行った。
「さあ。風呂場の椅子に座りんしゃい」
老人に言われて京子は風呂場の椅子に腰掛けた。老人は脱衣場で服を脱ぎ、褌一枚になると、風呂場に入ってきた。
「髪が濡れんようにせないといけんのう」
そう言って老人は京子の艶のある長い黒髪を輪ゴムで束ねた。老人は湯船から桶で湯を汲むと、京子の肩にざあっとかけた。湯は滝のように、京子の乳房の上から腹へ、そして股の中へと流れた。そしてもう一度、反対側の肩から湯をかけた。そして、今度は背中に湯をかけた。湯が背中から、後ろに回された腕にかかり、大きな尻を伝わってスノコの上に流れ落ちた。老人はスポンジを湯で湿らせて、石鹸で泡立てた。そして、そして京子の体を洗い始めた。肩から背中、と後ろを洗った。そして前に回って、京子の乳房にスポンジを当てた。老人は、京子の大きな乳房を念入りに洗った。スポンジに擦られて乳房は、もどかしそうに揺れた。
「ふふ。大きい乳房じゃの」
老人は、京子の背後に廻ると、後ろから、泡立った京子の乳房をつかんだ。
「ふふ。柔らかい乳房じゃの」
そう言って老人は念入りに手で洗った。それはもう揉んでいるのと同じだった。そうされても京子は、後ろ手に縛られているため、どうすることも出来ない。時々、老人が乳首を摘むと、京子は、
「ああっ」
と喘ぎ声を上げた。老人は京子の腹を洗い、大きな尻を洗った。そして股の付け根から、女の秘部をスポンジで泡立てた。老人は、スポンジを横に置くと、尻の割れ目、や秘部を指で念入りに触った。尻の割れ目を、すーと、なぞると京子は、
「ああー」
と苦しげに眉を寄せ、大きな喘ぎ声を出した。そして老人は京子の太腿から足先まで丁寧に洗った。体全部を洗いおわると、老人は湯船から桶で湯を汲んで、京子の体に何度もかけた。京子の体の泡が流された。
「さあ。湯船に入りんしゃい」
老人に言われて、京子は、後ろ手に縛られたまま、湯船に入った。老人は、京子の縄尻をとったまま、湯に浸かっている京子を見た。まるで囚人の入浴のようだった。
「湯加減はどうかの」
老人が聞いた。
「いいわ」
京子が答えた。しはし、京子は気持ちよさそうに湯に浸かっていた。
「どうじゃの。疲れはとれたかの」
老人が聞いた。
「ええ。十分、温まったわ」
京子は湯船の中で答えた。京子は湯船から、そっと立ち上がって、湯船から出た。京子は後ろ手に縛られているため手が使えない。老人はバスタオルで京子の体を丁寧に拭いた。京子は老人に縄尻を取られて裸のまま居間に行った。


居間に入ると京子は倒れるようにどどっと畳の上にうつ伏せになった。そして、膝を立てて、膝を開いた。尻が高々と上がり、尻の割れ目がパックリ開いた。後ろ手に縛られているため、顔は畳にピッタリとくっついて、乳房は畳に押しつけられて、ひしゃげた。
「見て。私の恥ずかしい所を見て」
京子は、あられもなく叫んだ。老人は京子の尻の前に、胡坐をかいて座った。
「ふふ。とうとう言ったの。言われんでも、ちゃんと見ておるけん。尻の穴も、アソコも丸見えじゃよ」
老人は余裕の口調で言った。
「ああー。いいわー」
京子は被虐の恍惚の叫びを上げた。
「おじいさん。私を責めて」
「何をして欲しいかの」
「何でもいいわ。私を惨めの極地にしてー」
「よしよし。わかった」
そういうや、老人は、高々と天井を向いている京子の大きな柔らかい尻を掴むと、グッと開いた。ただでさえ開いている尻の割れ目が、いっそうパックリと広がった。尻の穴がキュッと窄んだ。老人は、乳房を揉むように、京子の大きな柔らかい尻を、じっくり揉んだり、触ったりした。
「ああー。いいー」
恥ずかしい所を全て目の前で、いやらしい目つきで見て、弄くりまわしている老人の様子を想像すると、恥ずかしさが込み上げてきて、京子は被虐の快感を叫んだ。老人は、そんな京子を余裕の顔つきで見て、ふふふ、と笑った。老人はティッシュペーパーを一枚とると、捻って紙縒りをつくった。そして、その先を京子のパックリ開いていてる尻の割れ目に沿って、すっとなぞった。もどかしい、遣り切れない感覚が京子を襲った。
「ひいー」
京子は、悲鳴を上げた。尻の穴は、反射的にキュッと窄んだ。丸裸の恥ずかしい格好を見られている事と、恥ずかしい所を悪戯っぽく弄ばれているという実感が京子に激しい被虐の興奮を起こした。京子のアソコからは白い液体がトロリと湧き出した。老人は京子の足の裏をくすぐったり、脹脛から太腿に向かって、すーと指を這わせたりした。その度に京子は、ひいー、と叫んだ。
「おじいさん」
「なんじゃね」
「私をうんと惨めな格好に縛って」
京子は叫ぶように言った。
「よしよし。どんな格好がいいかね」
「好きなようにして。うんと恥ずかしい格好にして」
「よっしゃ。うんと恥ずかしい格好に縛ってやろう」
そう言うや老人は、縄を二本用意した。そして、一本ずつ、カッチリと京子の足首に縛りつけた。
「さあ。仰向けになりんしゃい」
老人が言った。京子は、畳の上を廻って、仰向けになった。大きな乳房が顕わになった。老人は椅子を持ってきた。そして、縄を持って椅子の上に乗り、天井の梁に縄をかけた。老人は、ふふふ、と笑いながら、縄を引っ張った。京子の足が天井に引っ張られていった。そしてついに、両足がピンと一直線になった。老人は、さらに縄を引っ張った。老人は、さらにグイと引っ張って、両方の縄を、大きく間隔を開けて、天井の梁に縛りつけた。
「ああー」
と京子は叫んだ。京子は、後ろ手に縛られたまま両足を逆さ吊りのように、天井に向かってピンと一直線に大きく開かれているという惨めな姿である。老人はさらに、グイと縄を引っ張って、京子の足を上げた。京子の尻が持ち上がって、宙に浮いた。そして老人は、カッチリと縄を梁に縛りつけた。
「ああー」
と京子は叫んだ。京子は、部屋の真ん中で、丸裸で、尻が浮くまでスラリとした足を大きく開かれて吊り上げられるという、惨めの極地の姿になった。老人は京子の尻の前にドッカと胡坐をかいて座った。
「ふふ。どうじゃね。こうやって丸裸を晒す気分は」
「い、いいわー。み、見てー。私の恥ずかしい所を」
京子は、あられもなく叫んだ。
「ふふ。言われんでも、尻の穴も、アソコも丸見えじゃよ」
老人は笑いながら言った。
「い、いいわー」
京子の尻はピクピク小刻みに震えていた。老人は、ただでさえパックリ割り開いている京子の尻の肉をつかむと、グイとさらに割り開いた。
ただでさえ開いている京子の尻の割れ目が、いっそうパックリと広がった。老人は、乳房を揉むように、京子の大きな柔らかい尻を、じっくり揉んだり、触ったりした。
「ああー。いいー」
恥ずかしい所を全て目の前で見て、いやらしい目つきで、弄くりまわしている老人の様子を想像すると、恥ずかしさが込み上げてきて、京子は被虐の快感を叫んだ。老人は、そんな京子を余裕の顔つきで見て、ふふふ、と笑った。老人はティッシュペーパーを一枚とると、捻って紙縒りをつくった。そして、その先を京子のパックリ開いていてる尻の割れ目に沿って、すっとなぞった。もどかしい、遣り切れない感覚が京子を襲った。
「ひいー」
京子は、悲鳴を上げた。尻の穴は、反射的にキュッと窄んだ。丸裸の恥ずかしい格好を見られている事と、恥ずかしい所を悪戯っぽく弄ばれているという実感が京子に激しい被虐の興奮を起こした。京子のアソコからは白い液体がトロリと湧き出した。老人は京子の足の裏をくすぐったり、脹脛から太腿に向かって、すーと指を這わせたりした。その度に京子は、ひいー、と叫んだ。
さっきと違って、縄で両足を吊り上げられているため、京子は老人に、何をされても、逃げる事は出来ない。そのことが京子に、いっそう激しい被虐の興奮をもたらした。老人は京子の横に来て座った。そして、楽しそうな様子で、身動きのとれない京子の大きな柔らかい丸出しの乳房を揉んだり、乳首を摘んだり、コリコリさせたりした。
「おじいさん」
「なんじゃね」
「顔を踏んで」
京子は、ハアハアと息を荒くしながら言った。
「よし」
老人はニヤリと笑って立ち上がった。そして京子の美しい顔に足を乗せた。始めは、頬っぺたに乗せるだけだったが、足の裏で口を塞いだり、目を塞いだりした。京子は、丸裸にされて、後ろ手に縛られて、足を吊り上げられて、こんな屈辱的なことをされていることに、激しい被虐の快感を感じた。老人は、顔から、足をどけると乳房に足を乗せて、グリグリ揺すった。
「ああー。いいー」
京子は被虐の歓喜をあげつづけた。
「おじいさん」
「なんじゃね」
「蝋燭を垂らして」
「よしよし」
老人はニヤリと笑って、蝋燭を取り出した。そしてライターで蝋燭の芯に火をつけた。
ぽっと蝋燭の火が燈った。すぐに皿の部分が溶け出した。老人は、そっと乳房の上で蝋燭を傾けた。蝋涙がポタリと落ちて京子の乳房にくっついた。
「ああっ。熱いっ」
思わず京子は声を出した。だが老人はニヤニヤ笑いながら蝋燭を垂らしつづけた。乳房が蝋の斑点でいっぱいになった。老人はさらに腹にも蝋燭を垂らした。
「ああー。熱いー。熱いー」
京子は叫びながら、身を捩った。
「ふふ。面白い方法で蝋を垂らしてやろう」
そう言うと老人は、ふっと蝋燭を吹き消した。そして老人は、一本の縄に、三本の蝋燭を、少し間隔を開けて、取りつけた。
「ふふ。これをどうすると思う?」
老人は、したりげな顔つきで京子に聞いた。
「わ、わからないわ」
京子は、怯えるように、蝋燭が結びつけられている縄を見た。老人は、立ち上がって、椅子を京子の尻の前に置いた。そして、蝋燭のついた縄を持って、椅子の上にあがり、縄の先を、梁に結びつけた。そして椅子から降りて、椅子をどかした。蝋燭のついた縄は、ちょうど京子の股の上に垂れ下がっている。京子は、ようやく、その意味が分かって、青ざめた。
「こ、こわいわ」
京子は思わず言った。老人は、ふふふ、と笑うと、三本の蝋燭に、それぞれ火をつけた。火の熱で、すぐに蝋燭の皿の部分が溶け出した。ポタポタと蝋が京子の股間に滴り落ちた。
「ああー。熱いー」
京子は悲鳴を上げた。京子は、蝋から避けようと激しく体を捩った。しかし、尻が浮くほどまで、両足が吊り上げられているのである。そしてピンと一直線に、大きく開かれて梁に縄で縛られているのである。どんなに腰を捩っても逃げる事は出来ない。蝋涙は非情にポタポタと京子のアソコや尻の割れ目に雨のように滴りつづけた。京子の股間は、みるみるうちに蝋涙の斑点でいっぱいになった。
「ああー。熱いー。許してー」
京子は泣きながら身を捩って訴えた。だが老人は、ニヤニヤ笑って、この光景を楽しそうに眺めていた。とうとう京子の股間は蝋涙で埋まってしまった。老人は、おもむろに立ち上がると、三本の蝋燭の火をふっと吹き消した。蝋涙の責めがなくなって、京子は、ぐったり動かなくなった。アソコは蝋が一面に貼りついて見えないほどだった。貼りついた蝋の塊は、ちょうどアソコを隠す覆いのようで、エロチックに見えた。老人は立ち上がって椅子を京子の尻の前に置くと、椅子の上に乗って、梁に縛りつけられている京子の足の縄を解いた。そして、縄をゆっくり降ろしていった。京子のピンと一直線に伸びた足がだんだん、降りてきて、ついに床に着いた。京子は疲れ果ててグッタリしていた。老人は京子の足首の縄を解いた。長い時間、吊るされていたため、足首には、赤みがかった縄の痕がついていた。老人は、グッタリ仰向けになっている京子の体についている蝋を丁寧に剥がしていった。その顔つきは、さも楽しそうだった。蝋を全部、剥がすと、老人は、部屋を出た。そして湯の入った洗面器を持ってきた。老人はタオルを湯に浸して絞り、京子の体を丁寧に拭いていった。胸から足先まで。前を拭きおわると、京子をうつ伏せにして、後ろ手の縄を解いた。そしてグッタリしている京子の足先からパンティーをくぐらせ、腰まで引き上げてパンティーを履かせた。そしてブラジャーもつけた。老人は、京子をゆっくり起こした。京子は、ゆっくり起き上がって足を揃えて横座りに座った。
「ふふふ。どうじゃったかの」
老人が聞いた。
「は、恥ずかしかったわ」
京子は顔を赤らめて言った。
「今日は疲れたじゃろ。家に帰って、ゆっくり休みんしゃい」
京子は顔を赤くしてペコリと頭を下げた。老人は、京子に茶を出した。京子は、ゴクリと飲んだ。そしてジャージの上と下を着て老人の家を出た。
「ふふ。また、いつでも来んしゃい」
老人が笑いながら言った。京子は顔を赤くしてペコリと頭を下げて車を出した。

   ☆   ☆   ☆

アパートに着いた京子は、寝室のベッドにどっと身を投げ出した。もう京子にSMに対するためらいはなくなっていた。その後も、京子は、被虐の欲求が嵩じて耐えられなくなると、老人の家に行って、裸にされて、様々な惨めの極地の格好に縛られて老人に責めを求めた。

   ☆   ☆   ☆

ある日の事である。その日も京子は被虐の疼きに耐えられなくなって老人の家に行った。
ピンポーン。チャイムを鳴らすと、いつものように老人が笑顔で出た。
「へへ。おじいさん。また来ちゃった」
京子は子供っぽくペロッと舌を出した。
「ふふ。よう来たの。さあ。入りんしゃい」
「お邪魔しまーす」
京子は、子供が、友達の家に入る時のような、くだけた口調で言って老人の家に入った。京子は居間の畳の上にペタンと座った。
「ふふ。今日はどんな風に責めて欲しいかの」
「おじいさんに任せるわ。好きなようにして」
「よし。じゃあ、わしの好きなように縛るけん」
そう言って、老人は京子のブラウスのボタンを外していった。全部、はずすとブラウスを脱がせた。京子の豊満な乳房を収めて、大きく膨らんでいる、白いブラジャーが顕わになった。次に老人は京子のスカートのファスナーを外し、スカートを下げて、京子の足先から抜きとった。京子のムッチリした大きな尻をピッチリと覆うパンティーが顕わになった。これで京子は、ブラジャーとパンティーだけ、という姿になった。老人は、ブラジャーとパンティーも外した。これで京子は、覆う物何一つない丸裸になった。老人は、京子の両腕をグイと背中に回すと、手首を重ね合わせて縛り上げた。
「ふふ。これでもう、私は、逃げられないわね」
京子は、ふふふ、と子供っぽく笑ってそんな事を言った。老人は京子の体を抱くようにして、そっと京子の上半身を畳の上に倒した。そして片方の足首を縄で縛った。老人は椅子を持ってきて、縄を持って椅子の上に乗り、縄を天井の梁に引っ掛けた。老人は縄をぐいぐい引っ張り出した。それにつれて足首を縛られた京子の片足が天井へ向かって吊り上げられていった。ついに京子の片足がピンと一直線に伸びた。片足が天井に向かってに吊られ、足が大きく開いてしまって、尻の割れ目がパックリ開き、女の恥ずかしい部分も丸出しになった。
「ふふ。恥ずかしいかの」
老人は笑って聞いた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は顔を赤らめて言った。
「それじゃあ、恥ずかしい所が見えんようにするけん」
そう言って老人は、京子の乳房の上にブラジャーを乗せ、アソコの上にパンティーを乗せた。
「どうじゃな。これで見られなくなったじゃろ」
老人は笑いながら言った。
「は、恥ずかしいわ」
京子は頬を赤くして言った。ブラジャーとパンティーを乗せられているだけの格好は、丸裸に劣らず恥ずかしかった。
「じゃあ、今日は目隠しするけん。いいかの」
「いいわ」
京子は元気に答えた。老人は、豆絞りの手拭いで京子を目隠しした。
「ふふ。どうじゃの。こうやって目隠しされる気分は」
「こ、怖いわ。何をされるか、わからないもの」
「ふふ。何も見えない、わからなさにスリルがあるんじゃよ。今日は、わしは、あんたが何を言ってもわしは何も言わず黙って責めるけん。いいかの」
「いいわ」
そう言って京子は、後ろ手の親指をギュッと握りしめて、恐怖に耐える用意をした。
「ちょっとトイレに行きたくなってきたけに。行ってくるけん。ちょっと待っててくれんしゃい。すぐ戻ってくるけん」
「すぐ戻ってきてね」
「ああ」
そう言って老人は立ち上がると、部屋を出た。部屋には人がいなくなって、しんとなった。京子は老人が早く戻ってこないか、と思った。こうやって丸裸にされて、足を吊られ、老人に悪戯されるのをワクワク待っている自分を思うと、自分も変わってしまったなと、京子はつくづく感じた。すーと襖が開く音が聞えた。

人が入ってきた。入ってきたのは、何と順子だった。
「あっ。おじいさんね」
京子は目隠しされているため、相手が順子と気づかない。老人だとばかり思っている。そのため気をゆるしている。順子は、京子の前に座った。
「ふふ。おじいさん。目隠しされているというのも、何をされるかわからないスリルがあるわね。さあ。好きなように責めて」
京子はウキウキした口調で言った。順子はニヤリと笑って、京子の胸の上に乗っているブラジャーと、股の上に乗っているパンティーを取り去った。
「ああっ。は、恥ずかしいわ」
京子が言った。順子は、グイと京子の尻を割り開いた。ただでさえ開いている尻の割れ目が、いっそうパックリと広がった。
「ああー。いいー」
恥ずかしい所を全て目の前で見て、いやらしい目つきで、弄くりまわしている老人の様子を想像すると、恥ずかしさが込み上げてきて、京子は被虐の快感を叫んだ。順子は毛筆で京子の尻の割れ目をすーとなぞった。もどかしい刺激に京子は、
「ああー」
と声を上げた。順子は京子の足の裏をくすぐったり、脹脛から太腿に向かって、すーと毛筆を這わせたりした。毛筆が触れる度に京子は、
「ああー」
と、苦しげな喘ぎ声を出した。目隠しされているため、何処に毛筆の責めがやってくるかわからない。
「ああっ。おじいさん。目隠しプレイって最高に興奮するわ」
京子は、ハアハアと鼻息を荒くしながら言った。
順子はニヤリと笑って、裸になった上半身も毛筆でくすぐり出した。丸出しになった乳房、脇腹、臍の穴、首筋、などを丹念に刷いた。その度に、京子は、
「ああー」
と苦しげな喘ぎ声を出した。念入りな悪戯がかなりの時間つづいた。
丸裸の恥ずかしい格好を見られている事と、恥ずかしい所を悪戯っぽく弄ばれているという実感が京子に激しい被虐の興奮を起こした。京子のアソコからは白い液体がトロリと湧き出した。
「おじいさん。顔を踏んで」
京子は、ハアハアと息を荒くしながら言った。
順子はニヤリと笑って立ち上がった。そして京子の、美しい顔に足を踏みつけた。そしてグリグリ揺すった。
「ああー。いいー」
京子は被虐の歓喜をあげつづけた。
しかし無言のまま責めつづけられる事が、初めはスリルがあったが、だんだん怖くなってきた。
「お、おじいさん。何か言って」
だが、返事は無い。目隠しされたまま、無言の毛筆責めが、つづいた。責めは、いつまで続くのかわからない。
「おじいさん。黙っていられると怖いわ。何でもいいから、何か言って」
ついに京子は本気の口調で訴えた。
「ふふ。あなたって相当のマゾなのね」
京子は天地がひっくり返るほど吃驚した。声は女の声である。誰だかわからない。今まで、責めていたのが、老人ではなく、誰だかわからない女だと思うと、京子は激しい不安に襲われた。同時に、誰だかわからない女に、丸裸の片足吊りを、じっくり目の前で見られ、さんざん裸の体を弄ばれたかと思うと、激しい羞恥が京子を襲った。
「だ、誰。あなたは。お願い。目隠しをとって」
京子は叫ぶように言った。
すると、それに呼応したかのように、京子の頭の後ろに手が来て、豆絞りの手拭いの結び目が解かれた。そしてスルリと目隠しがとられた。目前には、順子が、ニヤニヤ余裕の表情で笑いながら京子を見つめている。
「じゅ、順子」
京子は叫ぶように言った。
「ど、どうして、あなたがいるの」
なぜ順子が。京子にはさっぱり分からなかった。同時に、順子に、丸裸の片足吊りを、じっくり目の前で見られ、さんざん裸の体を弄ばれたかと思うと、激しい羞恥が京子を襲ってきた。
「み、見ないで」
京子は顔を真っ赤にして叫んだ。だが、後ろ手に縛られて、片足を吊り上げられている以上、京子はどうする事も出来ない。順子も、京子の訴えなど、どこ吹く風といった様子である。
「ふふ。京子。あなたに、こんな趣味があるなんて知らなかったわ」
そう言って順子は、京子の乳首を指でピンと弾いた。
「み、見ないで。お願い」
京子は必死に訴えた。
「ふふ。じゃあ、ブラジャーとパンティーを乗せて上げるわ。そうすれば、見られないわ。どう」
順子は、京子の下着を手に持って言った。京子は、羞恥と疑問で頭が混乱していた。
「の、乗せて。お願い」
京子は、すがりつくように言った。順子は、ふふふ、と笑って胸の上にブラジャーを乗せ、アソコの上にパンティーを乗せた。
「ふふ。これで恥ずかしい所は見られないわよ。よかったわね。でも、その格好もすごくエロチックよ」
順子が揶揄した。京子は真っ赤になった。
「な、なぜ、あなたがここにいるの」
京子は再び聞いた。
「さあ。どうしてかしら」
京子は他人事のような口調で言った。咄嗟に、京子は老人のことを思いついた。老人は、家の中にいるはずだ。
「おじいさーん」
京子は、大声を張り上げて老人を呼んだ。するとスッと襖が開いた。

老人がおずおずと入ってきた。
「おじいさん。これは、一体どういうことなの」
老人を見ると京子は開口一番、大声で質問した。
「す、すまん」
老人はどっと倒れるように京子の前にひれ伏した。
「おじいさん。お願い。これは一体、どういう事なの。かわけを話して」
京子に言われて老人はムクッと顔を上げた。老人はチラッと隣に座っている順子を一瞥した。
「ふふ。説明してあげなさいよ」
順子に言われて老人は、おずおずと語り出した。
「京子さん。すまん。実はわしが、テニススクールに入ったのは、あんたが目的だったんじゃ」
「ど、どういうことなの」
京子は老人に説明のつづきを求めた。
老人は語り出した。
「わしがテニススクールに入る少し前のことじゃ。わしは、いつものように、いきつけの書店にSM写真集を買いに行ったんじゃ。すると、この女の人に、買う所を見られてしまっての。話したい事があるから、と言われて近くの喫茶店に入ったんじゃ。わしは、若い女子に弱いでの。喫茶店に入ったんじゃ。すると、この人が言ったんじゃ。テニススクールに入ってくれないか、と。どうしてか、と、わしが聞き返すと、この人は、携帯であんたの顔写真を見せてくれたんじゃ。あまりにもきれいなので、わしは驚いた。そしたら、この人が言ったんじゃ。彼女は、真面目で性格も優しい。テニススクールで、わしが、いじめられる所を見たら、きっと、わしの事を心配して、いたわってくれる、と。車で家にも送ってくれる、と。家に入ったら、あんたを裸にして縛ってしまえ。あんたは老人のさびしさに同情して、きっとわしの言う事を聞いてくれる、と言ったんじゃ。あんたは、真面目で、いつも自制しているから、一度、マゾの喜びを知ったら、病みつきになる、と言ったんじゃ。わしは、本当かな、と思ったが、こうして本当になってしまったんじゃ」
老人は語った。

順子はタバコを取り出して余裕の表情で一服した。
「ふふふ。京子。あなたを初めて見た時から、あなたを私の奴隷にしたいと思っていたの。でも、いきなり、あなたにそんな事を言っても聞くわけないでしょう。以前、私が、あなたにレズごっこをしない、と誘ったら、あなたは、即座に、「不潔」と怒ったわね。でも、あなたには絶対、マゾの資質があると、確信していたの。だから、こうやって、おじいさんを利用したのよ」
そう言って順子は、ふーと煙を吐いた。
京子は、全てを納得した。まんまと順子の罠にはまってしまった自分がみじめだった。だが老人をせめる理由はない。順子が、悪いのだ、と思おうとしたが、老人の手練手管にはまってしまった自分を思うと順子を、せめる気持ちより自分をせめる気持ちの方が勝った。京子は激しい自己嫌悪におちいった。
「ふふ。あなたの事は、おじいさんから、全て聞いているわ。この前のテニスの時、やけにミスが多くて、それが疑問だったけど、ジャージの下は裸で股縄を締めていたのね。それじゃあ、無理もないわね」
京子は、この前のテニスの事が思い出されて、真っ赤になった。
「私、あなたがミスしたのは、おじいさんに縛られて、頭がボーとしてたからだと思ったの。でも、自分で股縄を締めてたなんて。あなたって、すごい淫乱なのね」
順子に何を言われても京子は言い返せない。あんな事をしてしまった事をつくづく後悔した。
順子は、京子の前に椅子を置くと、それに座った。順子は、ふふふ、と笑って足指で、京子の胸に乗っているブラジャーとアソコに乗っているパンティーをとった。順子は、足で京子の胸やアソコを踏んで、グリグリ揺すった。順子は顔も踏んで、グリグリ揺すった。
「ああー」
京子は喘ぎ声を出した。
「どう。こうされる気持ちは」
「く、口惜しいわ」
「何が」
「あ、あなたの罠にはまってしまったことが」
「でも、マゾっていうのは、屈辱が快感なんじゃない。今まで、あなたは、その快感に浸ってきたんじゃない。もう何もかも忘れて、身も心も裸になってしまいなさい。私だってマゾだから、おじいさんに、うんと辱められてもらったわ。恥ずかしがる必要はないわ」
京子は言い返せなかった。しかし順子も、自分と同じように老人に辱められたのか、と思うと、その光景が頭に浮かんで順子に対する屈辱も薄くなった。順子に足で、体を弄ばれているうちに、京子に、被虐の快感が起こり出した。どのみち、順子の責めからは逃げられないのである。
「も、もう好きにして」
京子は叫んだ。
「ふふ。とうとう言ったわね」
順子は、足の親指を京子の口に当てた。
「さあ。きれいにお舐め」
京子は、順子の足指を貪るようにペロペロ舐めた。親指から小指まで犬のようにペロペロ舐めた。
「私の奴隷になる」
順子が聞いた。
「な、なります」
京子は恍惚の快感で声を震わせながら言った。
「これからは、私のことを、順子様と呼ぶ」
順子は、京子の顔をグリグリ揺すって聞いた。
「は、はい。順子様」
京子は服従の言葉使いで言った。順子は、ふふふ、と笑った。
「あなたも、ずっと足を吊り上げられて、疲れたでしょう。降ろしてあげるわ」
そう言って、順子は、京子の足首の縄を解いた。一直線にピンと吊り上がっていた京子の片足が畳の上に降りた。
「あ、ありがとうございます。順子様」
京子は芋虫のように這って、順子の足指をペロペロと舐めた。
「さあ。京子。立ちなさい」
「はい」
順子に命令されて京子は、後ろ手に縛られたまま、立ち上がった。順子は、天井の梁から垂れている縄を京子の、手首の縄尻に結びつけた。京子は、後ろ手に縛られた立ち縛りとなった。丸裸の立ち縛りを順子と老人がじっと眺めている。
「こうやって、私を晒し者にして楽しもうというのね。いいわ。さあ。うんとみじめな私を見て」
京子は、あられもないことを言った。それでも、恥ずかしい所を隠そうと、膝を寄り合わせた。しばし老人と順子は、ニヤニヤ笑いながら裸の京子をしげしげと見た。
「ふふ。女子に見られるのは、恥ずかしいじゃろ。わしが隠してやるけん」
そう言って老人は立ち上がって京子の背後に立ち、片手を乳房に当て、片手を秘部に当てた。確かに、それは、恥ずかしい所を順子に見られない覆いにはなった。しかし、その姿は極めてエロチックだった。老人は、京子の胸と秘部を、ゆっくり揉み出した。時々、乳首を摘んでコリコリさせた。
「ああー。いいわー」
京子は被虐の快感を叫んだ。しばし老人は、背後から京子の体を弄んだ後、再び順子の隣にドッカと胡坐をかいて座った。
京子は再び、老人と順子の二人の晒し者となった。
しばし、順子と老人は、丸裸で膝を寄り合わせている、惨めな姿の京子満足げにを眺めていた。しばしの時間が経った。
順子が、だんだんハアハアと息を荒くし出した。
「きょ、京子。あなただけ裸を見られるというのは恥ずかしいでしょ」
そう言って順子は、息を荒くしながら、ブラウスのボタンを外していった。そしてブラウスを脱いだ。豊満な胸を覆う白いブラジャーが顕わになった。順子は、虚ろな目を老人に向けた。
「お、おじいさん。私も縛って」
そう言うや順子は、両腕を背中に回して、手首を重ね合わせた。老人は縄を持って、ホクホクした顔つきで順子の背中に廻った。そして、順子のブラジャーを肩から外した。豊満な順子の胸が顕わになった。老人は、背中で重ね合わされている順子の手首を縛り上げた。
「さあ。立ちんしゃい」
老人に言われて順子はヨロヨロと立ち上がった。
老人は順子のスカートのホックを外した。パサリとスカートが落ちた。順子は、大きな尻を包むピチピチのパンティー一枚になった。老人は、パンティーもゆっくり降ろしていき、足先から抜きとった。順子は、覆う物何一つない丸裸になった。京子は、順子の心が分からなかった。
「ど、どうしたの。順子」
京子が聞いた。
「わ、私も、あなたを見ていたら、惨めになりたくなっちゃったの」
順子は、上擦った声で言った。順子は、老人を虚ろな目で見た。
「お、おじいさん。私も吊るして」
順子はハアハアと息を荒くしながら言った。
「よしよし」
老人は、順子の縄尻を、京子を吊るしている縄の位置と同じ所の梁に縛りつけた。結果、順子と京子は、ほとんど顔や体がくっつく位に間近に向き合った。京子は、恥ずかしくなって顔をそらした。老人は、二人の腰を、まとめて縛り上げた。二人の体がピッタリとくっついた。もう離れることは出来ない。老人は、二人を縛ると、畳の上に座り込んだ。
「さあ。京子。私たちは、レズショーをさせられるために、おじいさんに捕まって、こんな風にされちゃったのよ。逆らったら酷い目にされちゃうわ。もう諦めましょう」
そう言って順子は自分の乳房を京子の乳房に擦り出した。乳房が、おしくらまんじゅうの様に、つぶれて平べったくなった。順子は、時々、乳房を離して、乳首を擦り合わせた。乳首と乳首が、じゃれあうように触れ合った。
「ああー」
微妙な刺激に京子は、興奮して声を上げた。順子は、京子の首筋のあちこちにキスした。
「ああー」
京子は声を上げた。京子は、恥ずかしさから顔をそらしていたが、鼻と鼻が触れ合うほど間近に顔があって、二人の視線は嫌でも相手に合ってしまう。視線をそらそうとする行為は京子にとって、よけい恥ずかしかった。京子は諦めて順子に顔を向けた。順子は、自分の口唇を京子の口唇に重ねた。順子が、舌を出して京子の舌に絡めてきた。京子の唇の裏からネバネバした液が、とめどなく溢れ出した。順子は、それを一心に啜った。京子も舌を出して順子の舌に絡めた。もう自分は順子と他人ではなくなってしまったのだと京子は思った。




平成22年3月20日(土)

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コンビニ人間・古倉恵子 (小説)(1)

2020-07-07 01:56:04 | 小説
コンビニ人間・古倉恵子

山野哲也は、精神科医である。
大学を卒業して、ずっと、精神科医として、働いてきた。
しかし、彼は、精神科医という仕事に、やりがい、を感じては、いなかった。
医者など、誰がやっても、同じだし、かけがえのない仕事ではない。
慣れてしまえば、八百屋と同じである。
医者の中でも、研究者は、かけがえのない仕事で、やりがいを、感じている人も、いるだろう。
しかし、臨床医は、慣れ、で、あり、誰がやっても、同じなのである。
確かに、脳外科医の福島孝徳先生のように、日本の医学界から、アメリカに飛び出して、患者に侵襲の少ない、独自の手術法を考案し、そして独自の、器具を考案し、物凄い数の、脳手術をして、腕を磨き、脳幹に出来た、巨大腫瘍を取る、という技術を身につけて、福島孝徳先生、以外の脳外科医では、手術できない、困難な、患者の手術、を成功させた、という医師も、いないわけではない。福島孝徳先生は、ずば抜けた、才能と努力の人であり、他の医師では、救えない患者を、福島孝徳先生は、救っているのであり、そこまでいくと、やりがい、も、出るだろう。
福島孝徳先生は、かけがえのない医師なのである。
しかし、福島孝徳先生のような、臨床医は、極めて例外的であり、100人に1人、いるか、いないか、なのである。
他の医者は、大同小異であり、相対的に、少し、他の医者より、優れた医者もいるが、基本的には、医者は、誰がやっても同じ、仕事なのである。
彼の母校の、口腔外科の教授も、
「臨床医になるのは、医学者の恥」
とか、
「医者は知的職業じゃない」
とか、
「医者は、高校卒の知識があれば、慣れで、出来る」
とか、言っていたが、彼も、全く心の中で、同じ事を考えていた。
そもそも、そんなことは、彼は、直観力で、医学部に入る前から、わかっていた。
彼は、もっと、自分だけにしか、出来ない、かけがえのない、創造的なことをしたかったのである。
なのに、医学部に入ったのは、彼は、自分が、何をするために、生きているのか、わからなかったからである。
それで、医学部に入ってから、医学部は、6年間もあるし、医学部に、いる間に、自分が本当に、したいことが、見つかるんじゃないか、と思ったのである。
それに、希望をかけた。
そして、医学部3年の時に、それに、気がついた。
それは、「小説を書く」ということだった。
ある時、いきなり、「小説家になろう」という、突拍子もない、インスピレーションが、起こったのである。
それ以来、彼は、小説を、書き続けてきた。
しかし、彼は、自分の、天分の才能が、職業作家として、筆一本で、生きていける、とは、全く、思っていなかった。
しかし、自分には、表現したいものがある。という確信は、もっていた。
「人は、一生、自分の才能、以上の作品も、才能、以下の作品も書けない」
という、格言があるが、それは、彼も感じていた。
しかし、ともかく、彼は、自分の、表現したいものを、精一杯、書いていった。
彼は、聖書の中の、タラントの喩え、が、好きだった。
タラントとは、(=タレント。先天的能力)という意味である。
新約聖書によると。
神は、人間に、(どういう気まぐれでか)、ある人には、10タラント与え、ある人には、5タラント与え、ある人には、3タラント与えた。
人間が、死ぬ時、神は、10タラント与えられて、その10タラントを、使い切った人間を祝福した。
5タラント与えられて、その5タラントを使い切った人間も祝福した。
3タラント与えられて、その3タラントを使い切った人間も祝福した。
しかし、10タラント与えられても、その10タラントを、使わず、怠けていた人間は、祝福せずに、怒った。
つまり、先天的能力の差に関わらず、努力して生きた人間は、神は、すべて祝福する、というのである。
しかし、先天的能力の差に関わらず、努力せず、怠けて人生を過ごした人間に対しては、神は、怒るのである。
彼は自分が与えられたタラントは、どのくらいかは、わからないが、彼も、人間の価値とは、自分に与えられた能力を、どれほど、努力して、使い切ったか、であると思っていた。
なので、文壇で、認められたい、とか、文学賞を獲りたい、と、いう気持ちも、なかった。
たとえ、世に認められなくても、無名のまま、死んでも、それで、一向に構わなかった。
ただ、彼の、生きがいは、「小説を書く」、ことだけだったので、小説が書けなくなると、もう、生ける屍、に等しかった。
普通の人なら、健康だから、いつでも、書ける。
しかし彼は、過敏性腸症候群で、毎日が、便秘と、不眠の戦いだった。
普通の人なら、小説を書く、才能があって、10年も、小説を書いていれば、それなりに、何らかの、文学賞を獲って、多少は、文壇に認められる、ものだが、彼は、病気のため、書きたい作品が頭にあっても、気力が出ずに、思うように書けなかった。
しかし、彼は、病気と闘うことにも、生きる意味を感じていた。
努力しなければ、何も出来ないが、努力すれば、何かが出来るのである。
なので、彼は、週に、2回は、温水プールで、1回に、3時間、泳ぎ、週に、2回は、市民体育館のトレーニング・ルームで、二時間、筋トレをしていた。
それが、彼の健康を維持するのに、一番、良かったからである。
食べることは出来ても、食べると便秘になって、苦しむため、彼は、食べたくても、小食に努めた。
努力することに、人間の価値があると、そういう信念を、彼は、持っていた。
人間は、努力すれば、大抵の事は、出来るようになるものである。
スポーツとか、学問とか、芸術とか、どんな事でも、日本一とか、世界一、とか、では、先天的な、才能、も、関係してくるから、人間は、努力すれば、何でも出来るわけではない。
しかし、一心に努力すれば、超一流ではなくても、何事でも、それなりに、出来るようになるものである。
「人間は、努力すれば、大抵の事は出来るようになる。もし、努力しても達成できないのであれば、それは、本当の努力ではない」
とは、一本足打法の、ホームラン王、の王貞治の言葉であるが、彼も、そのことは、その通りだと、思っていた。
彼は、自分に、努力という、厳しい、試練を課した。そして、それと同時に、他人に対しても、そういう、目で、見ていた。
彼は、フリーターだの、ニートだのを、軽蔑していた。
世の人間は、政治が悪い、だの、IT社会となったから、たの、現代の病だのと、もっともらしいことを、言うが、彼は、そう思っていなかった。
フリーターは、仕事が終われば、遊んでいるから、いつまでも、フリーターなのだ。と、彼は思っていた。
実際、彼は、研修医の時、激しい、幻聴と妄想に苦しめられながらも、宅建の勉強をして、宅建の国家試験に通った患者の主治医になったことも、あった、ので、その思いは、なおさら、であった。
彼は、自炊を全くしなかった。
というか、何も、自分では、料理を作れなかった。
彼は、自分の興味のあることには、とことん、打ち込むが、興味のないことには、極めて、ズボラだった。
なので、彼の食事は、外食か、コンビニ弁当、であった。
彼は、食事は、いつも、近くの、コンビニ(セブンイレブン湘南台店)で、コンビニ弁当を買っていた。
彼の、アパートにも、電子レンジは、あったが、彼は、コンビニ弁当を、電子レンジで、温めるのも、面倒くさかった。
セブンイレブン湘南台店には、いつも、同じ女の店員がいた。
彼が、この町に引っ越してきたのは、千葉の国立下総療養所で、二年間の研修を終え、地元の、民間病院に就職するために、引っ越してきた、10年前である。
それ以来、彼は、精神病院の仕事と、小説創作に、寸暇を惜しんで、生きてきた。
しかるに、彼女は、10年間、ずっと、コンビニ店員をしている。
彼が、引っ越してきた時から、彼女は、コンビニ店員だったので、いつから、始めたのかは、わからない。
しかし、いつから、始めたのにせよ、10年間も、コンビニ店員を、やっている彼女は、彼には、憐れ、を、通り越して、みじめ、に見えた。
「よっぽど、やる気がない人間だな」
と、彼は、彼女を軽蔑した。
今年(平成28年)、モハメド・アリが死んだ。
モハメド・アリ、は、努力と不屈の精神をもった偉大な男だった。
その、モハメド・アリも、
「不可能とは、自らの力で世界を切り開くことを放棄した臆病者の言葉だ。不可能とは、現状維持に甘んじるための言い訳にすぎない」
と、言っている。さらに、
「不可能なんて、あり得ない」
とまで、モハメド・アリは、言っている。が、それは、ちょっと、言い過ぎだ。
人間は、どんなに、努力しても、空中4回転は、出来ない。
体操選手でも、伸身の、空中2回転が、限度だろう。
そもそも、「不可能」とは、「人間が出来ないこと」であるのであるからして、不可能は、どんなに、努力しても、出来るようにならない。
人間は、どんなに努力しても、鳥のように、空を飛ぶことは出来ない。
つまり、モハメド・アリの言う、「不可能」とは、「非常に困難なこと」という、意味である。
ともかく、彼は、彼女を見ると、
「よっぽど、やる気がない人間だな」
「彼女は、自らの力で世界を切り開くことを放棄した臆病者だ」
と、思っていた。
ある日のこと、彼は、医学の文献を、コピーするために、コンビニに行った。
「いらっしゃいませー」
彼女が、マニュアル通りに、挨拶した。
彼は、コンビニにある、コピー機で、医学の文献を、コピーした。
そして、原本と、コピーを持って、コンビニを出てアパートにもどった。
原本と、コピーとを、確認していると、原本(これもA4のコピーなのだが)と、コピーの一番下に、医学の文献とは、関係のない、コピーが、一枚、混ざっていた。
原本を、コピー機の上に、乗せた時、一枚、前の客が、忘れたもので、彼は、その取り忘れた、コピーを一緒に、持ってきて、しまったのだろう。
なにやら、詩のような、文章である。
それには、こう書かれてあった。
文章の最初に、「コンビニ人間」と、書かれてある。
詩のタイトルなのだろう、と、彼は思った。
それには、こう書かれてあった。

36歳未婚女性、古倉恵子。
大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。
これまで彼氏なし。
オープン当初からセブンイレブン湘南台店で働き続け、
変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、
清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、
毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。
仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、
完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、
私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。
ある日、いつも、コンビニ弁当を買っていく、客に、
そんなコンビニ的生き方は
「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが・・・・。

と、そこまで、書かれてあった。
「ははあ。これは、あの女店員が、書いた、自嘲的な詩だろう」
と、彼は思った。
なぜなら、彼女は、コンビニの制服のプレートに、「古倉」と書いてあったから、彼女の、苗字だけは、知っていた。
それに、あそこは、セブンイレブン湘南台店であり、彼女は、年齢は、知らないが、見た目から、まず30代に、間違いないと思っていたからだ。
彼は、以前に、ある不機嫌な時、おでん、を注文したことがあった。
ちょうど、その時、彼は、ある不機嫌なことで、イラついていた。
おでんの鍋の中では、大根、ゆで卵、白滝、こんにゃく、がんもどき、さつま揚げ、焼きちくわ、ちくわぶ、ロールキャベツ、牛すじ、ごぼう巻、昆布巻、はんぺん、が、グツグツ煮えていた。
彼は、ゆで卵、と、がんもどき、と、さつま揚げ、と、焼きちくわ、と、白滝、を、注文した。
だが、彼女は、白滝、の代わりに、こんにゃく、を入れた。
「ちょっと、あんた。僕は、白滝、を注文したんだよ。こんにゃく、と、間違えてるよ」
と、ツッケンドンに、注意した。
彼女は、
「申し訳ありませんでした」
と、ペコペコ謝って、こんにゃく、を、とり、代わりに、白滝、を入れた。
彼は、フリーターの、コンビニ店員の、こういう、卑屈な態度も嫌いだった。
それで、つい、
「あんたねー。あんたには、覇気というものが、ないんだよ。だから、いつまで経っても、コンビニ店員なんだよ。やる気のないヤツは、いつまでも、フリーターから、抜け出せないんだよ」
と、説教じみた愚痴を言ったことがあった。
彼女は、
「申し訳ありませんでした」
と、また、ペコペコ頭を下げて、謝った。
こういう個人的な、価値観の、注意は、本来、客といえども、する権利はないし、また、店員である、彼女も、謝るスジアイは、無いのだが、彼女は、白滝、と、こんにゃく、を間違えて入れた、負い目があるので、ついでの説教にも、謝ったのだ。
日本のコンビニ店員は、みな、そんなものである。
(そもそも、日本人は、卑屈すぎる。やたらと謝る。その卑屈さが、やる気の無さ、とも通じているんだ)
と、彼は、思っていた。
それ以前にも、彼は、コンビニで、何か買う時、彼女が、毎回、
「ただいま、おでん全品70円均一セール中です。いかがでしょうか?」
と、マニュアル通りのことを、言うので、彼は、いい加減、腹が立って、
「うっせーんだよ。お前は、マニュアルに書いてあることしか、言えないのかよ。食いたい時にゃ、言われずとも、買うよ」
と、愚痴を言ったこともあった。

あいつ、大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目なのか。
と、彼は、あきれた。
また、バカにされたのなら、「なにくそ」と、一念発起、奮起して、必死に勉強して、宅建とか、税理士とか、公認会計士とか、中小企業診断士などの、国家資格を取るなり、して、バカにした、相手を、見返してやろう、と、いう覇気もなく、こんな自嘲的な詩を、書くような、彼女の、根性にも、彼は、あきれた。
とことん、やる気のないヤツだな、と思った。
しかし、ともかく、これは、まず、彼女が、置き忘れた物だろうから、彼女に渡そうと、彼は、急いで、コンビニに行った。
「いらっしゃいませー」
彼女は、マニュアル通りの、挨拶した。
彼は、彼女に、
「これ。あなたが、書いたのじゃありませんか。コピー機の上に、置いてありましたよ」
と言って、彼女に、コピーを見せた。
「あっ。そうです。それ私のです。どうも有難うございました」
と、彼女は、言って、それを、受けとった。
彼は、10年前に、ここに引っ越してきて、その時から、彼女は、あのコンビニで働いていたが、いつから、彼女が、働き出したのかは、わからなかった。
しかし、まさか、大学在籍中から、あのコンビニで働き出して、現在まで、18年間も、コンビニで、アルバイトしていたことには、あきれた。
(よっぽど、やる気のないヤツだな)
と、彼は、あきれた。
彼は、こういう、やる気のないヤツを見ていると、腹が立ってくるのである。
それで。
「あんたねー。バカにされても、口惜しくないの?バカにされたら、一念発起して、何かに、打ち込むなりしなよ。こんな、自嘲的な、バカげた詩なんて書いていないで。たとえば。小説でも、書いてみなよ。まあ、あんたみたいな、覇気のない人じゃ、芥川賞とかは、絶対、無理だろうけれど。今じゃ、ネットで、自由に小説を発表できるじゃない。僕なんか、才能がないから、文学賞なんか、獲れないとわかっているけど、それでも、一生懸命、小説を書いて、ホームページで発表しているよ」
と、つい、余計な口出しをしてしまった。彼女は、
「は、はい。すみません」
と、卑屈に言った。
こういう個人的な、価値観の、注意は、本来、客である彼には、する権利はないし、彼女も、謝るスジアイは、ないのだが、彼が、彼女の置き忘れた、コピーを、届けてやった、お礼、の気持ちからだろう。彼女は、ついでに、謝った。
「あんたねー。ちょっと、卑屈すぎるよ。少しは、・・・そんな、個人的なことまで、言われるスジアイは、ありません、くらい、の、こと、堂々と、言い返しなさいよ。あんたは、覇気がなさすぎるよ」
と、彼は、彼女の態度に、苛立って、そう言った。
すると、彼女は、また、
「は、はい」
と、へどもど、と謝った。
(全く、仕方がないヤツだな)
と、思いながら、彼は、アパートに帰った。

平成28年になった。
去年は、9月の、安保法案の強行採決くらいしか、大きな出来事がなかったが、今年は、やたらと、色々な、事件、出来事、があった。
3月31日。2014年3月から行方不明になっていた埼玉県朝霞市の15歳の少女が、東京都中野区で保護された。埼玉県警察は、未成年者誘拐の疑いで23歳男(寺内樺風)の逮捕状を取り指名手配。翌28日、静岡県内でこの男の身柄を確保し、31日に逮捕した。
4月16日。熊本県にてM7.3の地震が発生。
4月20日。三菱自動車工業は、自社の軽自動車を対象とした燃費試験でデータを不正操作していたことが発覚。
4月29日。野球賭博問題で元プロ野球選手、数名が逮捕される。
5月27日。バラク・オバマアメリカ合衆国大統領が現職のアメリカ大統領として初めて、1945年に米軍によって世界初の原子爆弾による核攻撃を受けた広島市を訪問。広島平和記念公園で献花を行う。
6月3日。モハメド・アリが死去した。
6月15日。東京都の舛添要一知事は、政治資金の私的流用疑惑などを理由にこの日行われた東京都議会の本会議に先立って辞表を議長に提出。その後、都議会において舛添知事の同月21日付での辞任が全会一致で承認された。
6月19日。選挙権年齢を18歳以上とする公職選挙法がこの日施行。
6月15日。イチロー選手が日米通算の4257安打でピートローズ氏の大リーグ記録を超えた。
6月23日。イギリスが、国民投票で、EU離脱。
7月13日。天皇陛下が生前退位の意向を示されていることが報道される。

世間では、8月5日から始まる、リオデジャネイロオリンピックの話題でもちきりだった。
しかし、彼にとっては、世間の出来事は、他人事だった。
彼にとっては、今年、どのくらい、小説が、書けるか、が、彼の関心事の全てだった。
寒い一月から、三月までは、割と、調子よく、小説が書けた。
しかし、内容的には、自分でも、それほど、自信作といえるような作品では、なかった。
彼は、喘息にせよ、過敏性腸症候群にせよ、副交感神経が、優位になると、体調が悪くなる。
寒い冬の方が、交感神経が優位になるので、彼は、季節としては、夏が好きだが、体調という点では、冬の方が、良かった。
しかし、四月になって、だんだん、昼間は、温かくなりだしたが、夜は寒いままで、気温の日内変動の差が大きくなった。そうなると、自律神経が、ついていけず、体調が悪くなり出した。
体調が、悪くなると、小説も、書けなくなった。
頭が冴えないのだ。
読書しようと思っても、本も読めない。
それで、仕方なく、何とか、頭が冴えるように、市営の温水プール、へ、行ったり、市営の、トレーニング・ルームで、筋トレをした。
それでも、自律神経の失調は治らなかった。
つらい時は、何も出来なくて、死にたいほどの気分になるが、耐えることも、必要だと、彼は、自分に言い聞かせた。
いつか、きっと、体調が良くなってくれる時も、あるだろう、と、無理にでも、思い込もうとした。
4月、5月、6月、と、何も出来なかった。
しかし、7月になると、猛暑になり、昼も夜も、暑くなったが、気温の日内変動がなくなって、体調が良くなり出した。
彼は、また、小説を書き出した。
彼は、テレビを、ほとんど観ない。
テレビなんて、受け身の行為で、テレビばかっり、見ていると、バカになると、彼は思っている。
バラエティー番組なんて、バカバカしくて、つまらないし、テレビドラマも、まだるっこしい。
しかし、ニュースだけは、見ていた。
彼は、内向的な性格だが、内向的といっても、世事のことには、興味があり、ニュースだけは、見ていた。
それと、彼は、ニュースで、女子アナを見るのが、好きだった。
四月から、NHKの、ニュースウォッチ9、の、女子アナは、井上あさひ、さんから、鈴木奈穂子さんに代わった。
報道ステーションの、小川彩佳アナも、古館伊知郎が、やめてから、なぜか、明るくなった。
古館伊知郎が、司会者をやっていた時の、小川彩佳アナは、堅苦しかった。
7月19日(火)のことである。
ニュースで、今年の、芥川賞と直木賞の受賞者が発表された。
そして、受賞者の記者会見が、行われた。
世間では、今年は、誰が、芥川賞や、直木賞の受賞者になるのかに、非常に強い関心を持っている。
世間の人間は、常に、新しいもの、最新の情報、に、興味をもっているからだ。
しかし、彼は違う。
彼は、楽しむために、小説は読まない。
彼が、小説を読むのは、その小説から、何か、自分が書くための、小説のネタが、思いつくのではないか、と思っているからである。なので、そういう視点で、本を選んで読んでいる。
なので、彼は、それほどの読書家ではない。
昔は、小説を多く読むことが、小説を書く、ネタにも、なると思っていた時もあり、そのため、かなりの本を彼は、読んできた。
しかし、小説を長い期間、書いているうちに、小説を読んでも、たいして、自分が小説を書くための、参考にはならない、ということが、わかってきた。
さらに、彼は、読書は、気をつけないと、想像力、も、創造力、も、つぶす、ことをも知っていた。
彼は、最近、野球小説を書きたいと思っている。
当然、(小説ではないが)、野球マンガの代表作である、「巨人の星」、は、読んでいる。
しかし、「巨人の星」、を、読んでしまった後では、野球小説を書きたいと思っても、どうしても、「巨人の星」、を意識してしまって、それに、引っ張られてしまうのである。
つまり、真似、二番煎じ、盗作、である。
しかし、「巨人の星」を、読まないで、自分の頭で、野球小説のストーリーを、考えて、書いてみれば、何らかの、オリジナルな野球小説、が、書けるのである。
そういう、創作の、精神衛生に、彼は、気をつけて、本を選んで、読んでいた。
小説とは、他人の、(想像力、創造力)の産物だから、小説は、気をつけて、読まないと、他人の、想像力、の発見だけに、終わってしまって、自分の、想像力を、つぶしてしまいかねない。
なので、彼は、読書は、フィクションである小説より、世の中の事実を知る、読書の方に、変わっていった。
もっとも、フィクションである小説でも、凄い作品を読むと、その、想像力、というか、発想力、の凄さに、驚くことがあり、よし、自分も、発想力を、根本から変えてみよう、という、ファイトが、起こることも、あるので、小説を、全く、読まなくなったわけではない。
しかし、自分が小説を書くためには、自分が、実生活で、何を体験したか、ということが、大きい。
もちろん、自分が、体験したことが、そのまま、小説には、なりはしない。
しかし、印象に残ることを、体験すると、それが、小さなヒントになり、それから、フィクションの、お話しを、作れることが、多いのだ。
それと、自分の体験ではなく、何か、作品を書こうと思ったら、調べなければならない。
今は、インターネットがあるから、何でも、気軽に調べられる。
それで、彼は、小説を読むより、調べることの方が、多くなった。
7月19日(火)の、ニュースで、今年の、芥川賞と直木賞の受賞者が発表された。
芥川賞の受賞者の記者会見がテレビの画面に写った。
今年の、芥川賞の受賞者は、女の人で、古倉恵子という名前で、受賞した作品は、「コンビニ人間」という、タイトルだった。
その女性の、顔が映し出された時、彼は、天地がひっくり返るかと、思うほど、びっくりした。
あやうく、ショック死するところだった。
なぜなら、受賞者の女性は、彼が、いつも、行っているコンビニの、あの、覇気のない、古倉、だったからだ。
彼は、目を疑って、よく見たが、間違いない。
顔も、声も、体格も、仕草も、態度も、完全に一致している。
しかも、古倉、という名前も、一致しているし、コンビニで働いている、と、自分の口から、言ったので、もう、これは、疑う余地がない。
彼女は、
「コンビニで働いています。これからも、コンビニで働きたいと思っています、が、店長と相談したいと思います」
と、飄々とした口調で言った。
彼は、急いで、ネットで、「コンビニ人間」で、検索してみた。
すると、色々な、感想が出てきた。
だが、どれも、「素晴らしい」と、絶賛する感想だった。
その一部。
古倉恵子さんは大学時代からコンビニでアルバイトを始めて、未だに週2~3日で働いています。
そして、芥川賞を受賞したあとも可能ならばコンビニでのアルバイトを続けたいとの姿勢を見せています。
芥川賞を受賞する前でもすでに小説家として成功しているので、収入に困って働いているとかそういうのではないはず。
だとしたら小説のネタ探しの意味で、人間観察目的にコンビニバイトをしているんじゃないか?と思いきや、
なんでも古倉恵子さんにとってコンビニでのアルバイトはすでに生活の一部となっており、コンビニで真剣に働くことに生き甲斐を感じるんだそうです。
コンビニ人間は、コンビニで働き続け、周囲の人たちからは正常ではないという見方をされながらも生きる36歳で未婚の女性の主人公・古倉恵子の姿を描いた作品です。
世間の常識から外れてしまう行動をとってしまう主人公の古倉恵子は、コンビニ店員というマニュアルが用意された仕事につくことによって、自分が生きる居場所を見つけます。
社会では、しっかりとした職について働いていなければ世間から認められません。
そんな世の中で、”コンビニで働く”という選択をとった主人公の古倉恵子は、その生き方に満足していました。
類型化された生き方を選択させられる世の中の成り立ちや、正常ではないものと社会とのすれ違い、その考えなどについて改めて考えさせられます。
現代社会に生きる人々の距離、人と人との干渉と不干渉との間ともいえる絶妙な感覚で主人公たちの行動が描かれています。
主人公だけが社会的な印象操作とは全く関係のないまっすぐな目で世界を見ており、独自の視点で世界を見ています。
これが人間の本質なのかな。と、感じる部分も多々ありました。
そして、選考者の二人が、「まさに芥川賞に値する傑作」と、絶賛していた。
彼は、今度は、「古倉恵子」で、検索してみた。
すると、「古倉恵子」のWikipedia、が、出てきた。
Wikipedia、には、彼女のプロフィールが出てきた。
それには、こんなことが、書かれていた。
古倉恵子(ふるくら けいこ、1979年8月14日―)は、日本の小説家、エッセイスト。
千葉県印西市出身。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
文学賞
2003年、『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞受賞。
2009年、『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補。
2009年、『ギンイロノウタ』で第31回野間文芸新人賞受賞。
2010年、『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。
2012年、『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。
2013年、『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。
2014年、『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。
2016年、『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
代表作
『ギンイロノウタ』(2008年)
『しろいろの街の、その骨の体温の』(2012年)
『コンビニ人間』(2016年)
主な受賞歴
群像新人文学賞優秀賞(2003年)
野間文芸新人賞(2009年)
三島由紀夫賞(2013年)
芥川龍之介賞(2016年)
と、書かれている。
彼は、天地がひっくり返るかと、思うほど、びっくりした。
彼女は、単なる、やる気のない、フリーターだとばかり、思っていたが、蒼蒼たる、輝かしい執筆歴、受賞歴、をもった小説家だったのだ。
人は見かけによらない、とは、まさに、このことだ。
彼も、小説を、苦心して書いているが、彼には、いかなる文学賞なども、絶対、とれない自信というか、確信がある。
それでも、書いているのは、彼にとっては、小説を書くことだけが、生きていること、だから、である。
彼は、文学賞など、別に、欲しいと思わない。
もちろん、獲れるものなら、獲りたいとも思うが、彼は、長く小説を書いてきて、自分の文学的才能というものを、知っているつもり、である。
「作家は一生、同一レベルの作品しか書けない」
この格言は、彼にとって、救いでもあり、あきらめ、でもあった。
しかし、彼は、それで満足している。
彼の書く小説は、恋愛もの、エロチックなもの、ユーモラスなもの、であり、文学的価値は、たいして無いが、読んで、「面白い」と言ってくれる、人も、多いのだ。
スポーツの、水泳で、たとえれば、彼は、オリンピックで、通用するほどの、実力は無いが、基本の技術は、身につけていて、上級者であり、泳いでいれば、楽しいし、つまり、要するに、小説は、アマチュアの、趣味で、書いているのである。
そのことに、彼は、十分、満足している。
彼の書いてきた作品のうち、数作を、これなら、ある程度、売れそうだから、単行本で、商業出版しても、いいよ、と、言ってくれる、出版社があれば、もう、それで、御の字、なのである。
しかし、レベルは、高くなくても、また、世間で認められる作家にならなくても、そんなことは、彼には、どうでもいいことであった。
小説を書くことが、彼の生きがい、の全て、なのである。
だから、彼は、頭が冴えなくなったり、小説のネタが、思いつかなくなって、小説が書けなくなることの方が、文学賞を獲れないことより、はるかに、苦痛なのである。
もちろん、彼も、レベルの高い文学賞を、獲って、職業作家として、筆一本で、膨大な、量の本を出版している、作家を、うらやましいとは思う。
し、また、尊敬する。
彼は、まず、彼らプロ作家にまでは、どんなに、頑張っても、量においても、質においても、なれないだろうとは、思っているが、彼は、最初から、あきらめてはいない。
彼らを、思うと、彼も、頑張って、彼らに、負けないくらいに、頑張ろう、という、ファイトが起こるのである。
ただ、量が多ければ、いいというわけでもなく、仕事として、連載で、仕方なく書いている、面白くない、小説まで、評価しているわけではない。
そもそも、小説なんて、芸術であり、個性の世界であり、どの作品が、どの作品より、価値が、上とか下とか、絶対的に、いうことは、出来ない。
たとえ、レベルは高くなくても、また、アマチュアであっても、彼の書く小説は、彼にしか、書けない小説なのだ。
彼の小説創作観は、そんなものである。
ただ、彼は、芥川賞を獲るほどの、作家を、神様のように、尊敬していた。
もちろん嫉妬もしていたが。
それは、彼が、小説を書くことにのみ、価値を感じているのだから、当然のことである。
野球が、好きで得意な少年が、一流のプロ野球選手を、神様のように、尊敬するのと同じ理屈である。
文学的に価値のある作品を、書けるようになるには、努力だけでは、出来ない。
天性の才能というものが必要である。
しかし、天性の才能が、あれば、小説は、簡単に書けるか、といえば、書けない。
それは、彼自身が、昔から、小説を書いてきて、痛感していることである。
小説を書くには、小説や本をよく読み、世間の動向をよく観察し、絶えず、小説の題材を、日常生活の中で、根気よく、探しつづける情熱を持ち続け、インスピレーションが、降臨してくるのを、我慢強く待ちつづけ、インスピレーションが、起こったら、ストーリーの構想を、練り、必要な情報を取材し、最も適切な言葉を選び、美しい、滑らかな、文章を組み立て、呻吟して、ストーリーを、考え、そして、書いた後も、推敲し、最後の一行まで、言葉にしても、文章にしても、ストーリーにしても、一点の矛盾もない、作品に、仕上げなくてはならない。
それには、大変な根気と、情熱の持続と、頭の酷使が必要なのである。
そして、そういう、厳しい、難しい、小説という物を、作り上げようと、決断したのは、その人の、意志であり、努力なのである。
なので、彼は、芥川賞を獲るほどの、作家を、神様のように、尊敬していた。
しかも、彼女は、2003年に、『授乳』という作品で、群像新人文学賞優秀賞を受賞している。
なので、彼女は、10年、以上、小説を書き続けてきたのだ。
さらに、最初に書いて、投稿した小説が、いきなり、文学賞を受賞する、などという、ことは、まず、ない。
なので、彼女は、それより、もっと、ずっと以前から、小説を書いているはずだ。
そして、2003年に、文学賞を獲ってからも、その後も、小説を書き続け、
2009年に、『ギンイロノウタ』で第31回野間文芸新人賞を受賞し、
2010年に、『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補となり、
2012年に、『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補となり、
2013年に、『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞を受賞し、
2014年に、『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞を受賞し、2016年に、『コンビニ人間』で第155回芥川賞を受賞したのだ。
さらに、文学賞候補や、文学賞受賞とならなかった、小説も、間違いなく、たくさん、書いているだろう。
彼女は、小説創作一筋に、努力に努力を重ねて、生きてきた、もの凄い人間なのだ。
彼の、彼女に対する態度は、180°変わってしまった。
彼は、今まで、彼女を、やる気も、覇気もない、フリーターだと思って、見下して、さんざん、イヤミを言ってきたのだ。
「あんたねー。あんたには、覇気というものが、ないんだよ。だから、いつまで経っても、コンビニ店員なんだよ。やる気のないヤツは、いつまでも、フリーターから、抜け出せないだよ」
とか、
「あんたねー。バカにされても、口惜しくないの?バカにされたら、一念発起して、何かに、打ち込むなりしなよ。こんな、自嘲的な、バカげた詩なんて書いていないで。たとえば。小説でも、書いてみなよ。まあ、あんたみたいな、覇気のない人じゃ、芥川賞とかは、絶対、無理だろうけれど。今じゃ、ネットで、自由に小説を発表できるじゃないの。僕なんか、才能がないから、文学賞なんか、獲れないとわかっているけど、それでも、一生懸命、小説を書いて、ネットで発表しているよ」
とか、
「あんたねー。ちょっと、卑屈すぎるよ。少しは、・・・そんな、個人的なことまで、言われるスジアイは、ありません、くらい、の、こと、堂々と、言い返しなさいよ。あんたは、覇気がなさすぎるよ」
とか、さんざん、バカにしてきたのだ。
彼は、「うぎゃー」、と、叫び、恥ずかしさに、床の上をゴロゴロと、転げまわった。
まさに、釈迦に説法である。
彼も、2003年、以前、から、小説を書き続けてきた。
しかし、彼の小説創作歴は、3回だけ、小さな文学賞に、投稿して、一次予選も、通らなかったのと、2001年に、「女生徒、カチカチ山と十六の短編」という、単行本を自費出版しただけであった。
彼にとっては、群像新人文学賞、だの、野間文芸新人賞、たの、三島由紀夫賞、だの、芥川賞、たのは、はるか、雲の上の、上の、一生、努力しても、到達できない、別次元のことだった。
以前、コピーにあった、詩みたいな彼女の文章の最後の、
「ある日、いつも、コンビニ弁当を買っていく、客に、
そんなコンビニ的生き方は
「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが・・・・。」
とは、間違いなく、彼のことだろう。
「もう、彼女に会わす顔がない。彼女は、芥川賞を獲っても、コンビニで、働きたい、と言っていた。ならば、もう、あのコンビニには、絶対、行くまい」
と、思い決めた。
しかし彼は、自炊が出来ない。
なので、食事は、コンビニ弁当を買う、しかないのである。
彼も、食事は、自炊が全く出来なくて、コンビニ弁当に、頼り切っているので、そして、コンビニがなくなると、生きて行けなくなるので、彼も、「コンビニ的人間」と、いえるかもしれない。
彼は、芥川賞受賞作家をバカにしてきたので、もう、彼女のいる、セブンイレブン湘南台店には、恥ずかしくて、行くことは出来なくなってしまった。
しかし、彼にとって、コンビニ弁当は、絶対に必要である。
なので、アパートに、一番、近い、彼女の働いている、セブンイレブン湘南台店は、行くのをやめにして、少し、遠い、ローソンで、コンビニ弁当を買うことにした。
しかし、ローソンの、コンビニ弁当には、彼の欲しい、369円の、幕の内弁当がなかった。
なので、ローソンの、不本意な、コンビニ弁当を、買って、我慢することにした。
翌日になった。
7月20日(水)である。
彼は、急いで、湘南台駅の駅前の、文華堂湘南台店に行ってみた。
「コンビニ人間」は、もちろんのこと、彼女の、著書の本を、出来るだけ、手に入れて、読んでみたかったからである。
「コンビニ人間」、は、当然、平積みで、何冊も、積んであった。
昔は、湘南台駅の西口には、五階建ての、大きな三省堂書店があったが、出版不況のため、とっくの昔に、なくなってしまった。
それ以外でも、近隣の、書店は、どんどん、閉鎖していった。
文華堂湘南台店は、規模が小さく、彼女の本では、「コンビニ人間」と、講談社文庫の、「殺人出産」しか、置いてなかった。
彼は、その二冊を買った。
そして、アパートに帰って、さっそく、「コンビニ人間」を、読み出した。
「コンビニ人間」は、素晴らしかった。
特に、「コンビニ人間」の、P54に、書いてある、
「人間は、皆、変なものには、土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている」
という、一文と、P115に、書いてある、
「普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ」
という、一文に、作者の強烈な、人間批判があった。
その後、講談社文庫の、「殺人出産」を、読んでみた。
講談社文庫の、「殺人出産」は、表題が、「殺人出産」、であるが、内容は、「殺人出産」、「トリプル」、「清潔な出産」、「余命」、の四作の短編集だった。
というか、「殺人出産」、は、119ページと、一番、長く、本の半分以上を占めていて、ついでに、他の、三作も、収録してある、というものだった。
彼女は、「コンビニ人間」、以外では、どんな作品を、書くのか、知りたくて、真っ先に、一番、短い、「余命」、という小説を、読んだ。文庫本で、たった、4枚、という、短い、短編、だったが、これが、怖い小説だった。
自分が、生き埋めになって、死ぬ、という内容の小説だった。
記者会見では、あんなに、おとなしそうな人が、こんな、怖い小説を、書くのかと、彼女の、精神がわからなくなった。
次に、彼は、「清潔な出産」、を読み、「トリプル」、を読んだ。
「殺人出産」、は、119と、長く、怖そうだったから、後で読もうと思ったのである。
「清潔な出産」は、子供は、欲しいが、セックスは、したくない夫婦が、セックスをしないで、子供を産む、という、小説だった。
これには、感心させられた。
人間が、生まれてくるためには、男と女が、セックスをしなくてはならない。
しかし、人間が生まれてくる、ということと、性行為とは、ちょっと、考えれば、全然、別の問題だ。
「トリプル」は、の男女の関係、は、男と女の、二人一組、という、常識、に反抗する小説だった。
どの作品も、世間の常識に、反抗するような、小説ばかりだった。
あの、おとなしそうな、顔をした、コンビニ店員が、こんな、小説を書いていることに、彼は驚いた。
「殺人出産」は、怖そうだった、し、もう、夜、遅くになっていたので、読まなかった。
その日の夜、彼は、彼女が、こわくなって、なかなか寝つけなかった。
しかし、いつものように、睡眠薬を飲んで、You-Tubeで、無理して、明るい、健全な、「ジャッキー・チェンの、コメディーカンフー映画」を、少し見た。
そうしているうちに、何とか、眠れた。
しかし、夜中に目を覚ましてしまった。
腹が空いていたので、何か食べたくなって、彼は、勇気を出して、おそるおそる、コンビニに、行ってみた。
「こんばんはー」
と、言って、僕は、コンビニに入った。
「いらっしゃいませー」
彼女がいた。
彼女は、いつもの、明るい口調で、ニコッ、と、笑って、挨拶した。
彼は、少し、ほっとした。
「あ、あの。芥川賞の受賞、おめでとうございます。テレビの記者会見、見ました。今まで、失礼な事を言ってしまって、申し訳ありませんでした」
と、言って、彼は、深く頭を下げた。
「いえ。いいんです。気にしてませんから」
と、彼女は言った。
彼は、彼女に許されて、ほっとした。
彼は、恥ずかしくなって、何を買おうかと、彼女と、少し離れて、コンビニの中の、食べ物を、探した。
彼は、カップラーメンと、ポテトチップスと、野菜ジュースを、手にとって、カゴに入れた。
そして、急いで、レジに持っていこうと、顔を上げた。
すると。コンビニの、ガラスから、彼の後ろから、彼女が、彼に、近づいて来るのが見えた。
何をする気だろう、と、彼は、戸惑った。
「あっ」
彼が、危機に気づいた時には、もう、遅かった。
彼女は、「えいっ」、と、駆け声をかけて、背中に隠し持っていた、スコップを、振り上げて、思い切り、彼の頭に振り下ろした。
・・・・・・・・・・・
気がつくと、彼は、横になっていた。
(ここは、一体、どこなのだろう?)
全身に、ひんやりと、土の、冷たさ、が、伝わってきた。
彼は、手と足を、動かそうと、してみた。
しかし、駄目だった。
手は、縄で、後ろ手に縛られ、足首も、縄で、カッチリと、縛られていた、からだ。
そこは、ちょうど、彼の体が、入るくらいの大きさに、地面に、長方形に、くり抜かれるように、掘られた、穴の中だと、彼は気づいた。
上を、見上げると、古倉恵子さんが、彼を、じっと、彼を、眺めていた。
「あっ。古倉さん。ここは、どこですか。一体、何をしようというのですか?」
彼は、焦って聞いた。
彼女は、小さな微笑を頬に、浮かべた。
「ふふふ。ここは、コンビニの裏の雑木林よ」
彼女は、言った。
「こんな、土葬の墓のような、所に、僕を入れて、どうしようと、いうのですか?」
彼は、声を震わせて、聞いた。
「あなたは、ここで、生き埋めになって、死ぬのよ」
彼女は、薄ら笑いを、浮かべながら、淡々と、言った。
「な、何で、そんなことをするんですか?」
彼は、焦って聞いた。
「あなたは、コンビニ店員を、バカにしたでしょ。私には、それが、許せないの」
「ご、こめんなさい」
「あなた。なぜ、私が、作家的位置を確立しているのに、コンビニ店員をしているのか、わかる?」
彼女が聞いた。
「そ、それは、あなたにとって、コンビニで、働くのが、生き甲斐だから、でしょう?記者会見でも、そう言っていた、じゃないですか」
彼が言った。
「ふふふ。ちがうわ。あれは、世間を欺くためのウソよ」
彼女が言った。
「で、では。何が理由ですか?」
彼が聞いた。
「ふふふ。私。小説で、人間を殺す場面を書くのが大好きなの。そして、人間が死んでいく場面を見るのも、好きなの」
「そ、そんな、こと。く、狂っている」
彼は、ゾッと、全身から、冷や汗が出た。
「ふふふ。このコンビニの、裏の雑木林の中には、18人の死体が埋まっているのよ。みな、コンビニ店員を、バカにした人間だわ。あなたは、19人目ね。梶井基次郎の短編に、(桜の樹の下には)、というのがあるでしょ。桜の樹の下には屍体が埋まっているのよ。人間の屍体を肥やしにしているから、桜は美しいのよ。あなたも、桜の樹の、肥やし、に、なりなさい」
そう言うや、彼女は、スコップで、土を彼の入っている、穴の中に、土を入れ始めた。
そういえば、コンビニの裏は、桜の樹だった。
そういえば、この近辺で、一年に一人くらいの割り合いで、失踪したまま、行方がわからなくなっている事件が起こっているのだ。
それは、警察で調べても、その行方は、まだ、わかっていない未解決事件だった。
彼女の言うことは、辻褄が合っている。
彼は、ぞっとした。
「古倉様ー。お許し下さいー。もう、コンビニ店員をバカにしたりしませんー」
彼は、必死で、叫んだ。
「ふふふ。人間が死ぬ時の、悪あがき、の姿、を、見るのって、最高の快感だわ」
そう言って、彼女は、どんどん、スコップで、土を、彼の上に、乗せていった。
・・・・・・・・・・・
「うわー」
彼は、バッと、飛び起きた。
ハアハアハアハア。
全身が、汗、ぐっしょり、だった。
しばし、彼は、速くなった脈拍が、下がるのを、待った。
時計を見ると、午前2時だった。
周りを見ると、そこは、彼のアパートで、床の中だった。
(はあ。夢だったのか。よかった。しかし、怖かったな)
そう呟いて、彼は、また、布団の上に横になった。
翌日になった。
7月21日(木)である。
彼は、藤沢駅前にある、藤沢有隣堂に、車で行った。
湘南台から、藤沢駅までは、小田急江ノ島線で、急行で、7分である。
各駅停車では、湘南台から、六会日大前、善行、藤沢本町、と三駅である。
距離は、7kmである。
彼は、藤沢には、車で行く。
車の方が、疲れないからである。
時間も、電車と、大体、同じで、7分、程度で行ける。
小田急線の、東を、主幹道路の国道467号線が、小田急線に、沿うように、走っているので、ほとんど、直線的に行けるから、楽なのである。
彼は、藤沢駅の駅前があまり好きではなかった。
ゴチャゴチャしていて、気分が落ち着かないからである。
しかし、藤沢には、ビッグカメラがあって、家電製品は、そこで買っていた。
そして、有隣堂は、駅前ビルの中で、4フロアーに、渡っていて、医学書の専門書も、あるほど、充実していた。
彼は、欲しい本があると、在庫があるか、どうか、を電話で、聞いてから、行って買っていた。
有隣堂では、古倉恵子著作の本では、「授乳」と、「マウス」と、「ギンイロノウタ」と、「しろいろの街と、その骨の体温と」と、「消滅世界」と、「タダイマトビラ」が、あった。
これで、ほとんど、彼女の出版してある本は、手に入れることが、出来た。
彼は、アパートにもどって、「マウス」から、読み出した。
「余命」ですら、怖い小説なのだから、「殺人出産」は、もっと、怖い小説だろうと、思って、彼は、読むのを、躊躇していたのである。
「マウス」は、(臆病者。弱いもの)という意味であり、社会的弱者を、いじめるな、という世間に対する、主張を彼は、感じた。
その日は、読書に、没頭した。
夜寝るまで。
夜12時になって、彼は、床に就いた。
そして、昨日と同じように、You-Tube、で、ジャッキー・チェンのコメディー・カンフーなどの、明るい、健全な、動画を見て寝た。
しかし、夜中に目を覚ましてしまった。
時計を見ると、午前2時である。
彼は、昨夜の夢の、コンビニの裏の、桜の樹に、本当に、屍体が埋まっているのか、どうか、ということが、気になり出した。
その想念は、強迫観念のように、時間の経過と、ともに、どんどん、大きくなり、ついに、彼は、耐えきれなくなって、懐中電灯を持って、コンビニの裏の雑木林に行ってみた。
そして、桜の樹の近くを、懐中電灯で、照らして見ながら、歩いた。
(この地面の下に、彼女の埋めた屍体が、本当に、あるのだろうか?)
と、思いながら。
と、その時である。
「うわー」
彼は叫び声を上げた。
地面に乗せた、足が、突然、ふっと、拍子抜けしてしまったからだ。
落とし穴だった。
深さは、3mくらいだろうか。
よじ登ることが、出来なかった。
落ちた時に、左の足首を挫いてしまったからだ。
上を見上げると、古倉恵子さんが、地中の彼を、じっと見ていた。
「ふふふ。あなたも、懲りない人ね。昨日、埋めたはずなのに、どうやって、出てきたの?今度は、絶対、出て来れないように、してあげるわ」
彼女は、そう言って、彼の頭の上から、バケツを、逆さにした。
ザー、と、何か、が、彼の頭の上に、かかってきた。
「な、何ですか。これは?」
彼は、聞いた。
「ふふふ。速乾性のセメントよ。セメントで、固めてしまえば、もう出て来れないでしょう」
そう言って、彼女は、次から次へと、セメントを、穴の中に、流し込んでいった。
「や、やめて下さい」
彼は、絶叫した。
しかし、彼女は、やめない。
「ダメよ。あなたは、コンビニ店員を、バカにしたでしょ。私には、それが、許せないの」
「ご、こめんなさい。古倉様―。お許し下さいー」
しかし、彼女は、薄ら笑いを浮かべながら、セメントを流し入れつづけた。
・・・・・・・・・・・・・
「うわー」
彼は、バッと、飛び起きた。
ハアハアハアハア。
彼は、全身が、汗、ぐっしょり、だった。
時計を見ると、午前2時だった。
しばし、彼は、速くなった脈拍が、下がるのを、待った。
周りを見ると、そこは、彼のアパートで、床の中だった。
(はあ。また夢だったのか。よかった。しかし、怖かったな。しかし、二日も続けて、こんな怖い夢を見るとは・・・)
翌日になった。
7月22日(金)である。
その日も、彼は、古倉さんの小説を読んだ。
彼は、古倉さんの小説を読むと、また悪夢を見そうで、怖かったのだが、読まないでいると、ますます、怖くなりそうで、読まずにいられなかった。
悪夢で、見た、コンビニ店、の、裏、の土の中に、埋められる、というのも、「余命」という、土の中に埋められて死ぬ、という小説を読んだことが、きっと、影響しているのだろう、と、彼は思った。
いや、その可能性は、大きいだろう。
「余命」ですら、怖い小説なのだから、「殺人出産」、は、もっと、怖い小説だろうと、思って、彼は、読むのを、躊躇していたのである。
彼女は、スティーブンソンの、「ジキル博士とハイド氏」、のような二重人格の人なのかも、しれないと、も思った。
しかし、読まないでいると、増々、怖い小説、に思えてきて、彼は、勇気を持って、読んでみることにした。
怖いものを、見ないでいると、想像で、実際とは、違って、過剰に、怖いもの、と、思って、それに、脅かされる、ということは、結構、あることである。
それに、彼は、もっと、彼女という人間を、知りたくなってもいた。
それで、「殺人出産」を読み始めた。
「10人産んだら一人殺してもいい」、という殺人出産システムが導入された、現代から、100年後の世界を描いた小説だった。
小説は、怖くもあったが、彼は、彼女の、度胸に、圧倒された。
こんな、内容の小説を、書いたら、文壇から、非難されるのが、彼女は、怖くないのだろうか。
石原慎太郎は、「完全な遊戯」という、問題作の短編小説を書いて、文壇から、不謹慎だと、滅茶苦茶に、批判された。
そういうことは、いくらでもある。
文壇の目は、厳しいのである。
しかし、彼女の、世間の、常識、や、既成の価値観に、真っ向から、挑む、勇気に、彼は圧倒された。
記者会見や、ネットでの顔写真からは、似ても似つかわない、度胸のある人だと、感心させられた。
「10人産んだら一人殺してもいい」、という殺人出産システムの、未来社会というのは、きっと、彼が、コンビニ店員である、古倉さんを、バカにしたから、彼を、殺したいために、思いついたんだ、と、思った。
読み終わって、彼は、怖くなってしまった。
その夜、彼は、床に就いた。
(もう、今日は、怖い夢を見ませんように)
と、祈りながら。
ついでに、彼は、手を組んで、久しぶりに、「主の祈り」をした。
「天にまします我らの父よ。願わくば御名をあがめさせたまえ。御国を来たらせたまえ。御心の天になるごとく地にもなさせたまえ。我らの日用の糧を今日も与えたまえ。我らに罪ある者を我らが許すごとく我らの罪をも赦したまえ。我らを試みに会わせず悪より救い出したまえ。国と力と栄とは限りなく汝のものなればなり。アーメン」
主の祈り、をするのは、10年、ぶりくらいだった。
彼は、特に、「我らを試みに会わせず悪より救い出したまえ」、のところに、力を込めた。
「我らを試みに会わせず」、とは、「こわい夢をみるのが神の試み」、のように思われたからである。しかし、それに続く、「悪より救い出したまえ」、は、古倉恵子さん、を、「悪」、と言っているようで、それに、申し訳なさを感じた。
しかし、彼は、枕元には、しっかりと、十字架と、聖書と、ニンニク、を置いておいた。
彼は、You-tube で、つとめて、明るい、動画を見た。
無理に、笑おうとしてみたが、笑えなかった。
しかし、やがて、睡魔が襲ってきて、彼は、眠りに就いた。
幸い、その日は、夜中に、起きることが、なかった。
チュン、チュンという、雀のさえずりと、窓から、入ってくる日の光によって、目が覚めた。
時計を見ると、午前6時だった。
(はあ。よかった)
と、彼は、安心した。
その時である。
玄関の戸が、すー、と開いた。
彼は、時々、玄関の鍵をかけ忘れてしまうことがある。
昨日は、かけ忘れてしまったのだろう。
(こんな早朝に一体、誰だろう)
彼は、不思議に思った。
髪の長い、女の人が入って来た。
その顔を見た時、彼の全身の体毛は、逆立った。
入って来たのは、なんと、古倉恵子さん、だったからだ。
しかも、彼女は、靴を脱がず、スニーカーを履いたまま、土足で入って来た。
彼女が、彼のアパートに、入って来ることは、不思議ではない。
なぜなら、彼のアパートと、コンビニは、とても近く、(だから、古倉さんのいる、コンビニを利用しているのだが)、以前、彼が、アパートから出てきたところを、仕事が終わって、帰る途中の、古倉さんと、会ってしまったことが、あるからだ。
「あ、あの。ふ、古倉さん。一体、何の用ですか?」
彼は、咄嗟に、立ち上がろうとした。
しかし、体が、ビクとも動かない。
金縛りである。
以前にも、彼は、金縛り、にあったことがあった。
彼女は、腰を降ろして、彼の枕元に座り込んだ。
「あ、あの。古倉さん。一体、何の用でしょうか。それに、いくらなんでも、土足で、他人の家に部屋に入り込む、というのは、非常識なのではないでしょうか?」
「何を言っているの。あなたこそ、私の心の中に、土足で入り込んだじゃない。偉そうなことを言う資格があなたに、あるの?」
「そ、それは、心から謝ります。申し訳ありませんでした」
「謝ってすむことじゃないわ。よく、私が、深く掘っておいた、落とし穴から、出て来れたわね。しかも、速乾性のセメントをかけておいたのに」
「・・・・」
「私が来たのはね。あなたは、生き埋めにしようとしても、ゴキブリのように、しぶとく、脱出してくるから。こうなったら、もう私の方から、出向いて、あなたを、私の手で、確実に殺すしかないと、思ったからなの。あなたが、確実に死んだのを見届けてから、コンビニの裏の、桜の樹の下に埋めることにしたの」
「お、お許し下さい。古倉様―」
彼は、叫んだ。
しかし、彼女は、何も答えない。
「古倉様―。おわびとして、僕は、あなた様の奴隷になりますー」
「奴隷って。あなた、マゾなの?」
「は、はい。そうです」
「私。マゾの心理って、よくわからないの。でも、友達に聞いたところによると、男の、マゾって、崇拝する女性に、完全に服従することの喜び、なんでしょ。そして、マゾの極致って、崇拝する女性に殺されることに、最高の喜びを感じるんでしょ。なら、あなたは、殺されても、幸せなんじゃないの?」
「あ、あの。僕は、そこまで、本格的なマゾじゃないんです」
「じゃあ。いっそ、本格的なマゾになりきりなさいよ」
「そ、そんな・・・」
彼は、まだ、死にたくなかった。
もっともっと、生きて、小説を書きたかったからだ。
「古倉様。僕は、マゾは、今日限り、やめます。僕は、これから、清く、正しく、明るく、生きます。ですから、お許し下さいー」
「ふふふ。何、言ってるの。人間の、生まれつきの、感性や、性格なんて、一日で、変わったりなんかは、しないわ」
彼女には、彼の哀願など、聞く素振りなど全くなかった。
「今は、金縛りになっていて、動けないわね。私に、見つめられた男は、みんな、金縛りになってしまうのよ。なぜかは、わからないけれど。でも、金縛りだけじゃ、心配だから、ちゃんと、縛っておきましょうね」
そう言って、彼女は、金縛りで、動けない彼の、両手を後ろに廻し、背中で、手首を重ね合せて、縄で縛った。
そして、左右の足首も、カッチリと、縛った。
「ふふふ。これで、もう、逃げられないわね」
彼女は、そう言うと、小さな裁縫セットを取り出して、一本の、縫い針を取り出した。
「ふふふ。私。小説で、人間を殺す場面を書くのが大好きなの。そして、人間が死んでいく場面を見るのも、好きなの。あなたは、体中を、針で刺して、殺してあげるわ」
彼は、背筋が、ゾッとした。
「や、やめて下さい。そんなことー」
彼は、絶叫した。
「じゃあ、まず、右の目を刺してみましょうね」
そう言って、彼女は、彼の、右目の、角膜に、垂直に、縫い針を立てた。
針が、彼の、右目の角膜に、近づいてきた。
・・・・・・・・・・・・・
「うわー」
彼は、バッと、飛び起きた。
ハアハアハアハア。
彼は、全身が、汗、ぐっしょり、だった。
時計を見ると、午前2時だった。
しばし、彼は、速くなった脈拍が、下がるのを、待った。
周りを見ると、そこは、彼のアパートで、床の中だった。
(はあ。夢だったのか。よかった。怖かったな。しかし、三日も続けて、こんな怖い夢を見るとは・・・)
翌日になった。
7月23日(土)である。
彼は、もう、あのコンビニや、古倉さんのことは、あまり考えないようにしようと思った。
ちょっと、古倉恵子さんの小説を読むと、怖くなってしまう、からである。
(あの人は、あの人で、独特の感性を持っている)
子供の頃から、無口で、変わり者で、人と違う、感じ方、考え方、を、する、という点では、彼と、共通する性格もある。
しかし、彼の、書きたい小説は、さわやかな恋愛小説である。
そして、彼は、後味の悪い小説は、書けなかったし、書きたくなかった。
しかし彼の書く小説は、ハッピーエンドでは、必ずしもない。
彼は、結末をつけるのが、嫌いで、小説の、ラストこそが、小説の、始まりで、その後、どうなるかは、読者の想像にまかせたい、というのが、彼の創作スタンスだった。
しかし、彼女の、小説は、いささか、怖い。
しかし、やはり、彼女の小説は、読まずには、いられなかった。
それで、彼は、おそるおそる、「タダイマトビラ」という小説を読んでみた。
自分が産んだ、血のつながっている、本当の、自分の子ども、を愛せないという母親、のもとで育った少女の話だった。
少女は、おそらく古倉さん自身であろう。
彼女は、母親の愛情を受けずに、育ったのではないか、と、彼は思った。
彼女は、小説の創作に、於いては、自分の、思い、を極限まで、表現しようと、追求している。
それが、文学的価値として、評価されているのだ。
いったん、読み始めると、つい、小説に、引きずり込まれて、読んだ。
しかし彼女の小説を読むと、怖くなってしまう。
それで。
彼は、読書の途中に、明るい気分になろう、テレビのスイッチを入れてみた。
彼は、テレビは、ほとんど見ない。
バラエティー番組は、もちろんのこと、テレビドラマも、見なかった。
テレビドラマは、受け身で、まだるっこしい、し、バラエティー番組は、ギャーギャー、うるさいだけだったからだ。
彼は、テレビは、ニュースしか見なかった。
それと、NHKの、「クローズアップ現代」では、時々、いいのを、やっているので、見ることもあった。その程度である。
彼は、テレビのチャンネルを、リモコンで、切り替えていった。
TBSで、「水戸黄門」を、やっていた。
「水戸黄門」は、同じパターンで、単純に楽しめて、明るい気分になれるかもしれないと、思った。
「水戸黄門」の、ストーリーは、いつものパターンだった。
極悪非道の悪代官が、弱い、町人の娘を、罠にはめて、いじめる。
水戸黄門と、角さん、助さん、が現れて、いじめられている、小町娘の言い分を聞いてやる。
悪代官が、水戸黄門に出会うが、悪代官は、水戸黄門を、偉い人だとは、知らず、老いぼれジジイと、見なしているので、バカにする。
忍術を身につけている風車の弥七、が、悪代官の、悪事の決定的な証拠をつかむ。
水戸黄門と、角さん、助さん、が、悪代官の、代官所に、乗り込む。
しかし、まだ、悪代官は、水戸黄門の正体を知らないので、手下に、「やっちまえ」、と命じて、斬りかかる。
しばし、乱闘シーンがあってから、角さんが、懐から、葵の印籠を、取り出して、「ええい。鎮まれ、鎮まれ。この紋所が目に入らぬか。こちらにおわす御方をどなたと心得る。畏れ多くも前の副将軍・水戸光圀公にあらせられるぞ。一同、御老公の御前である。頭が高い。控え居ろう」と言う。
悪代官と、その手下は、「ははー」、と言って、水戸黄門の前にひれ伏す。
何だか、見ているうちに、彼は、背筋がゾッとしてきた。
何だか、自分が、極悪非道の悪代官のようで、水戸黄門が、古倉恵子さんに、似ているような、気がしてきたからだ。
彼は、急いで、テレビを消した。
彼は、もう、テレビを見ることも出来なくなってしまった。
その夜。
彼は、床に就いた。
昼間、見た、「水戸黄門」が、気になって、なかなか、寝つけなかった。
しかし、12時を過ぎたころから、だんだん、眠気が起こり出した。
気づくと、彼は、ある、見知らぬコンビニ店にいた。
研修中の、若い女のコンビニ店員の対応が遅いので、彼は、
「あんたねー。あんたは、やる気、というものがないんだよ」
と、説教というか、愚痴をこぼしていた。彼は不機嫌な顔で、そのコンビニを出た。彼が、そのコンビニ店を去った後、すぐに古倉恵子さんが、やって来た。彼女は、泣いている、女のコンビニ店員に、優しく声をかけた。
「いいのよ。コンビニ店員だって、立派な仕事なのよ」、
となぐさめていた。
彼は、翌日、古倉恵子さんが働いている、セブンイレブン湘南台店に、行った。彼は、古倉恵子さんにも、
「あんたねー。あんたは、やる気、というものがないんだよ」
と、いちゃもん、を、つけた。そこに、見知らぬ男が、現れた。なんと、その男は、水戸黄門の、角さん、だった。角さんは、
「ええい。頭が高い。ひかえおろう。このお方を誰だと心得る?」
と、彼を叱りつけた。呆然としている彼に、角さんは、言った。
「このお方こそは、畏れ多くも、第155回の、芥川賞を受賞なされた、古倉恵子先生であらせられるぞ」
彼は、顔が真っ青になって、「ははー」、と古倉恵子さんの前に、ひれ伏した。いつまでもひれ伏していると、
「山野哲也よ。面を上げよ」
と、古倉さんの声が聞こえた。彼は、おそるおそる顔を上げた。いつの間にか、古倉恵子さんは、杖を持って、服は、紫のちゃんちゃんこ、を着て、水戸黄門の格好になっていた。古倉恵子さんは、おもむろに話し始めた。
「山野哲也。そのほう、たかが、一介の医者の分際で、威張りくさり、社会の弱者である、コンビニ店員を、軽蔑し、見下し、愚弄しつづけてきた、その極悪非道の所業。いささかの許す余地も酌量もなく、その罪、万死に値する。よって、市中、引き回しの上、獄門、晒し首とする」
と、厳しく告げた。
「うわー」
彼は、バッと、飛び起きた。
ハアハアハアハア。
彼は、全身が、汗、ぐっしょり、だった。
しばし、彼は、速くなった脈拍が、下がるのを、待った。
時計を見ると、午前2時だった。
周りを見ると、そこは、彼のアパートで、床の中だった。
(はあ。夢だったのか。よかった。しかし、怖かったな。これで、四日連続だ。こんなことは、初めてだ。彼女は、本当に、僕を憎んでいるのかも、しれない。これは、本当に、彼女の、たたり、なのかもしれない)
と、彼は、恐怖した。
その後も、彼は、古倉さんの出てくる、怖い夢を、毎晩、見つづけた。
怖い夢は、あの手この手を、変えて、古倉さんが、彼を殺そうとする、夢ばかりだった。
彼は、それで、ヘトヘトに疲れてしまった。
彼は、芥川賞受賞作家をバカにしてきたので、もう、彼女のいる、セブンイレブン湘南台店には、恥ずかしくて、行くことは出来ない。
しかし、彼にとって、コンビニ弁当は、絶対に必要である。
それで、アパートに、一番、近い、彼女の働いている、セブンイレブン湘南台店は、行くのをやめにして、少し、遠い、ローソンで、コンビニ弁当を買うことにしていた。
しかし、ローソンの、コンビニ弁当には、彼の欲しい、369円の、幕の内弁当がなかった。
なので、ローソンの、不本意な、コンビニ弁当を、買って、我慢していた。
数日が過ぎた。
彼は、彼女に、とても恥ずかしくて、合わせる顔がなかったが、しかし、その一方で、彼女は、芥川賞を獲った後でも、本当に、コンビニのアルバイトを、続けているのか、ということが、気になってきた。
いくらなんでも、群像新人文学賞、だの、野間文芸新人賞、たの、三島由紀夫賞、だの、芥川賞、などの文学賞を獲って、彼女は、もう完全に、世間で、作家としての地位を確立して、小説の原稿料や、単行本や、文庫本の印税収入で、十分に、生活できるはずである。
彼女の芥川賞の、受賞の記者会見でも、彼女は、「これからも、コンビニ店員のアルバイトを続けたいと思っているけれど、店長と相談して決めようと思います」と、彼女は、言った。
「つづけたいと思っている」と、言ったのだから、続けるのか、どうかは、まだ、わかっていない。
さらに。
「店長と相談して決めようと思います」と、言ったのだから、やめた可能性もある。
芥川賞を受賞すると、芥川賞受賞者という、肩書きが、出来るから、受賞者には、出版社から、こぞって、執筆依頼が殺到するものである。
そして、芥川賞受賞者という、肩書きから、傑作でなくても、あまり、面白くなくても、小説を書きつづけていれば、読者は、買うのである。
そういう点で、日本で文学の最高の権威である、芥川賞を受賞してしまえば、もう、あとは、天下御免で、小説や、エッセイを、書き続けていれば、原稿料や、単行本や、文庫本の印税収入で、生活費は、保証されたも、同然なのである。
なので、彼女は、小説創作に、忙しくなって、セブンイレブン湘南台店を、辞めたかもしれない。
そう思って、彼は、そっと、セブンイレブン湘南台店に、行ってみた。
そして、店の外から、そっと、店内の店員に、気づかれないように、店内を見た。
彼は、びっくりした。
何と、彼女が、以前通り、コンビニの店員のアルバイトをしていたからである。
彼は、彼女に、見つからないように、そっと、店の中の、彼女の様子を見た。
客が来ると、彼女は、「いらっしゃいませー」、と、相変わらず、愛想よく、客に、挨拶していた。

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コンビニ人間・古倉恵子 (小説)(2)

2020-07-07 01:54:21 | 小説
彼女は、記者会見で、言った通り、コンビニのアルバイトを、続けることにしたのだ。
彼には、彼女の心理が、全く、わからなかった。
しかし、ともかく、コンビニのアルバイトを、続けている以上、彼女は、記者会見で言ったように、コンビニでのアルバイトは、彼女にとって、すでに生活の一部となっていて、コンビニで真剣に働くことに生き甲斐を感じているのだろう。
彼は、彼女の心理が、全く、理解できなかった。
しかし、彼は、かなり、残念だった。
彼女は、きっと、執筆が、忙しくなり、おそらく、コンビニを、辞めているだろうと、思っていたからである。
彼女が、辞めていてくれれば、彼は、アパートのすぐ近くの、セブンイレブン湘南台店を利用することが出来るからである。
彼は、彼女の、精神構造が、全くわからなかった。
しかし、ともかく、彼女が、セブンイレブン湘南台店で働いている以上、そこのコンビニを、利用することは出来ない。
しかし、彼女の、屈託のない、笑顔を見ていると、心を込めて、今までの、非礼を、わびれば、彼女は、怒りそうもないようにも、見えた。
彼女の、今までと、変わらぬ、穏やかで、おとなしそうな、態度を見ていると、彼女が、彼を見ても、「あなた。今まで、よくも、さんざん、私をバカにしてくれたわね。私は、芥川賞を受賞した、売れっ子の、超人気作家なのよ」などと、彼にイヤミを言うようには、とても、思えなかった。
そもそも、彼が、彼女に、暴言を吐いた時には、彼女は、すでに彼女は、群像新人文学賞、野間文芸新人賞、三島由紀夫賞、センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞、を受賞していて、毎日、旺盛な、執筆活動をしていたのである。もう、これだけで、十分、過ぎるほどに、世間で、作家的地位を確立している。
それなのに、彼が、彼女を、口汚く、愚弄しても、彼女は、「申し訳ありませんでした」、と、心から、謝っていたのである。
また、彼女は、芥川賞を獲るまでは、じっと、我慢して、芥川賞を受賞して、テレビで記者会見をしてから、彼に、「私は芥川賞を受賞した、超一流の、売れっ子作家なのよ」と、自慢して、さんざん、バカにした、彼を、見下してやろう、という、ような、復讐の計画を、密かに、たくらんでいた、とも、思えない。
一体、彼女の精神構造は、どうなっているのだろう?
ともかく、彼にとっても、この、コンビニは、便利なので、今まで通り、使いたい。
そもそも、コンビニとは、convenient store (便利な店)という意味だから、当たり前である。
彼は、彼女に、今までの、非礼を、謝罪したいと、思うと同時に、(それは、彼女に、心から謝罪すれば、彼女は、彼を許してくれそうに思えたからである)、彼女と、もう一度、会って、彼女の精神構造を知りたい、という、気持ちが、起こってきた。
しかし、彼は、すぐには、彼女に、会う気には、なれなかった。
なにしろ、彼は、「神様を冒涜しつづけて」、きたのだから。
その、落とし前は、絶対、つけねばならない、という強い自責の念が、彼を、激しく叱咤した。
「しかし、彼女に対する、謝罪の、落とし前、は、どのように、つけたら、いいのだろう?」
と、彼は悩んだ。
しばし、考えているうちに、彼は、落とし前、の、方法を思いついた。
それで、彼は、急いで、小田急線に乗って、新宿に、行った。
そして、四時間くらいして、また、湘南台に、もどってきた。
彼は、いったん、アパートにもどってから、コンビニに行ってみた。
彼女は、夜勤もしている、こともあるのである。
コンビニの外から、彼は、そっと、中を見た。
彼女は、いた。
彼女一人である。
彼は、ゴクリと、唾を飲み込み、高鳴る心臓の鼓動を、抑えようと、勤めながら、そーと、コンビニのドアを開けた。
「いらっしゃいませー」
彼女は、いつもの、愛想のいい、挨拶の言葉を言った。
もっとも、彼女が、愛想がいいのも、コンビニの、マニュアルにある、「お客様には、笑顔で、元気よく、挨拶する」、という規則を守っているのに、過ぎないのだろうが。
彼は、彼女と、視線が合うと、茹蛸のように、顔が真っ赤になった。
彼は、いきなり、彼女の前に、行き、立っている、彼女の前で、土下座した。
「古倉様。今までの、無礼極まりのない、発言の数々、態度、まことに、申し訳ありませんでしたー。心より、おわび致します」
そう叫んで、彼は、頭を床に擦りつけた。
「申し訳ありませんでしたー」
彼は、10回、謝罪の発言を繰り返した。
そして、10回、謝罪した後は、ずっと、体をブルブル震わせながら、土下座し続けた。
それは、あたかも、かけがえのない、一人娘を、車で、はねて、死亡させてしまった、男が、その両親に、謝罪する時の態度と、全く同じだった。
「あ、あの。お客様。一体、どうなされたんですか?」
いつまでも、土下座して、平身低頭している、彼に、彼女の声が、かかった。
彼は、おそるおそる、そっと、顔を上げた。
彼の目からは、ボロボロと、大粒の涙が、流れていた。
彼の顔は、あたかも、15ラウンド戦った後の、ボクサーのように、見るも無残に、腫れ上がっていた。
顔中、青アザだらけだった。
「あっ。お客様。顔が、ひどく、腫れ上がっていますが、どうなされたんですか?」
彼女が、聞いた。
「古倉様。私は、あなた様に、話しかけても、よろしいのでしょうか?」
彼が聞いた。
「え、ええ。一体、どうなされたんですか?」
彼女は、淡々とした口調で言った。
彼は、涙を流しながら、語り出した。
「ふ、古倉様。7月19日の、テレビのニュースで、あなた様が、芥川賞を受賞なされた、ことを知りました。あなた様が、数々の、文学賞を受賞なされた、文学創作、一途に、一心に、精進して、生きてこられた、気高い、お方様とは、つゆにも、知りませんでした。私は、あなた様が、そのような、ご高名で、志の高い、高貴な方であるとは、知りませんでした。今までの、無礼極まりのない、発言の数々、態度を、今、心より、おわび申し上げます」
そう、彼は、泣きながら、言った。
「い、いえ。私。別に、気にしていません。それより、その顔のアザは、どうなされたんですか?」
彼女は、淡々とした口調で言った。
「はい。おそれながら申し上げます」
彼の口調は、テレビの時代劇で、家臣が殿様に物申す時の口調になっていた。
「私めは、あなた様が、芥川賞を獲るほどに、文学一途に、精進し、努力して生きてこられた、高貴な方とは、つゆほども知らず、あなた様に、さんざん、無礼な、ことを、言ってきました。この罪は、どんなに、つぐなっても、つぐない切れない、大罪でございます。そこで、私は、浅はかな頭で、どうしたら、私の犯した罪をつぐなえるか、を、考えました。できれば、あなた様に、気のすむまで、殴っていただきたいと思いました。しかし、あなた様の、海よりも、山よりも、御寛大な御性格では、それを、あなた様に、願い出ても、あなた様は、とても、それを、引き受けて下さらない、と思いました。しかも、あなた様は、腕力のない女性でございます。そこで、私は、今日、新宿に行って参りました。そして、新宿のスタジオ、アルタの前で、『殴られ屋。一回、千円で、日頃のストレス発散のため、思い切り殴って下さい』と、プラカードを、首にかけて、立っておりました。そして、10人の、屈強の男に、力一杯、殴って頂きました。これによって、あなた様に対する、非礼の、罰の一部としたかったのです。しかし、私が受けるべき罰は、あくまで、あなた様が、お決めになることです。どうぞ、なんなりと、あなた様の気が晴れる罰を、私に、下して下さい」
彼は、涙に咽びながら、そう言った。
「お客様。そんな、無茶なことをされたんですか。そんなことを、されては、私の方が、心が痛みます。さぞ、痛かったでしょう。お怪我はありませんか?」
彼女は、淡々と言った。
「ああ。寛大な、お言葉を有難うごさいます。顔は、多少、腫れていますが、大した怪我など、ありません。私は、あなた様と違い、頭は、愚鈍ですが、肉体のタフさだけには、自信があります」
と、彼は言った。
「でも、お客様。私が小説を書いているからといって、どうして、そんなに、私に、対して、卑屈な態度に、なるのですか?」
彼女は、首を傾げて聞いた。
「古倉様。お言葉を返すようで恐縮ですが。何事でもそうですが、どんな芸事でも、一つの道に、価値を認め、精進する者ならば、その道を、はるかに究めた上の人を、下の者が、尊敬するのは、当然のことではないでしょうか?」
彼は言った。
「では、あなたも、小説を書くのですか?」
彼女が聞いた。
「はっ、はい。私は、あなた様と違い、優れた、価値のある文学作品など書けません。文学賞など、獲ったことは、ありませんし、また、おそらく、一生、獲れないと確信しています。愚鈍で非力な私ですが、私も、小説を書いて、ネットに出しています」
と、彼は言った。
「本当ですか。お客様も小説を書いているとは、思ってもいませんでした。よろしかったら、読ませて頂けないでしょうか?」
と、彼女は言った。
「それは、身に余る光栄です。私は、浅野浩二、というペンネームを、使って、ホームページに、小説を出しています。拙い小説ばかりですが、よろしければ、ご覧ください」
と、彼は言った。
「じゃあ、ぜひ、読ませて頂きます。浅野浩二さん、ですね。どんな小説かしら。楽しみだわー」
と、彼女は言った。
「古倉様。楽しみ、などと、言われると、読んで、内容の、つまらなさに、失望した時に、申し訳なく、恥ずかしく、心苦しいです。古倉様も、芥川賞をお獲りになり、執筆活動が、ますます、忙しくなるでしょうから、執筆中に、書きあぐねた時に、息抜きのため、気が向いたら、ご覧ください。原稿用紙で、10枚ていどの、ショートショートも、あります。ストーリーは、単純ですが、読みやすさには、心がけて、書いておりますので、読んで、肩が凝ることは、ないと、それだけは、自信があります」
と、彼は言った。
「わかりました。でも、楽しみです。お客様が、どんな小説を書いているのか、と、思うと・・・」
と、彼女は言った。
「あ、あの。古倉様・・・」
「はい。何でしょうか?」
「私の、今までの、非礼を謝罪したいのですが、私がすべき罰を、教えていただけないでしょうか?」
彼は聞いた。
「罰も何も、お客様には、何の恨みもありません」
彼女は、淡々とした口調で言った。
「で、では。私の、今までの、非礼を許して下さるのですか?」
「許すもなにも、お客様には、恨みどころか、心から、感謝しています」
「ええー。それは、一体、どうしてですか?」
「だって、お客様が、私に、マニュアルに書いてあることしか、言えないのか、と、言って下さったから、私は、コンビニ人間、という、小説を書いてみようと、思いついたんです。それが、芥川賞になったのですから、私が、芥川賞を獲れたのは、お客様の、おかげ、でもあるんです」
「そうだったんですか。そうわかると、私も、救われます。有難うございます」
そう言って、彼は、随喜の涙を流した。
その時。
コンビニのドアが、ギイーと、開いた。
客が三人、入って来た。
「お客様。すみません。仕事しなくてはならないので・・・」
と、彼女は、小さな声で言って、レジにもどった。
「いらっしゃいませー」
彼女は、急いで、コンビニ店員にもどって、大きな声で、客に会釈した。
三人とも、タトゥーをした、ガラの悪い男たった。
「おい。ねーちゃん。そこの、そこの、マルボロ、二箱、くれねーか」
と、一人が、不愛想に言った。
(群像新人文学賞や、野間文芸新人賞や、三島由紀夫賞や、はては、芥川賞を獲って、Wikipedia にまで、名前が、載っている、高名な文学者に、なんたる口の利き方だ)
と、彼に、憤りが起こった。
他の二人の客は、週間マンガの、立ち読みを始めた。
彼は、咄嗟に、客達に、
(おい。お前たち。この、お方をどなた、だと思っているんだ。畏れ多くも、芥川賞を受賞した・・・)
と、言って、立ち読みしている二人を、注意したい、衝動が、起こったが、彼は、グッ、と我慢した。
それは、単行本「コンビニ人間」の、P54に、書いてある、
「人間は、皆、変なものには、土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている」
という、一文と、P115に、書いてある、
「普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ」
という、一文が、思い浮かんだからである。
新約聖書でも、マタイ伝7章1節に、
「Do not judge, or you too will be judged」
(人を裁いてはいけません、そうしないと、あなたが神に裁かれますよ)
と、書いてある。
それは、今まで、古倉さんを、覇気のない人間だと、その人の一部だけを見て、決めつけて、その人の全てが、解ったかのように、心の内に、非難していた、彼の反省の、思いからであった。
彼女は、コンビニの仕事が、終われば、どうせ、ごろ寝して、テレビか、スマートフォンの、アプリか、を、やっているだけだろう、と、思ってしまっていた、彼の反省からであった。
そして、彼自身も、医学部時代、無口で、内気で、友達がいなく、同級生達から、さんざん、「あいつは、得体の知れないヤツだ。何か、悪いことを考えているヤツだ」と、そういう目で、見続けられてきた、こととも、同じだった。
彼は、他人に、どう思われようと、気にしない、開き直り、を、方針としていた。
(他人が、どう思おうが、かってにしろ。オレはオレだ)
と、彼は、自分を、人に、良く見せようとも、悪く見せようとも、全く思わなかった。
それが、強さ、だと、彼は、思っていて、他人の、自分に対する、評価だの、陰口だの、には、動じなかった。むしろ、誤解されることに、誤解する人間の、頭の程度の、低さを、心の中で、笑っていた。誤解され、偏見の目で見られることが、彼の、誇りでさえあった。
それと、同じように、立ち読みしている二人だって、どういう人間かは、わからない。
高い志を持っているのかも、しれない。
人を、その人の、見かけの、一部で、勝手に、決めつけては、いけない、ということが、「コンビニ人間」を読んでから、彼の信念になっていた。
そんなことが、一瞬のうちに、疾風のように、彼の頭を擦過していった。
彼は、そっと、コンビニを出た。
そして、アパートに入って、床に就いた。
「人を、その人の、見かけの、一部から、勝手に、決めつけては、いけない」
というのは、以前から、彼のモットーだった。
自分は、他人から、誤解され、悪く見られようと、そんなことは、気にしない。しかし、他人は、そういう、先入観で、見ては、いけないと、思っていた、つもりだったのに、まんまと、彼女を、そういう、先入観、で、決めつけていた、自分を、彼は、恥じた。
その原因を、彼は、歳をとるにつれて、自分の頭が、固くなったからだとは、思っていなかった。彼女の性格が、つかみどころが無く、そのため、イライラしていたのが、原因だと思った。
ともかく、その夜は、彼女に謝ったので、リラックスして眠れた。
夜中に、怖い夢を見ることもなかった。
数日が、経った。
もう、彼女の出てくる怖い夢をみることもなくなった。
しかし、その数日間は、彼は、古倉さんのいる、コンビニには、行かなかった。
なぜかというと、古倉さんは、まず、ネットで、「浅野浩二」で、検索して、彼の小説を、読んでくれているだろうから。出来るだけ、日にちをかければ、多くの小説を、読んでくれるだろう。
彼の、小説は、原稿用紙換算にして、短いのでは、10枚から、長いのでは、400枚と、全く、バラバラだった。
原稿用紙の換算枚数は、各小説に、書いていなかったが、小説のタイトルを、クリックして、下に、スクロールすれば、どのくらいの長さかは、わかる。
青空文庫でも、そうして、小説の長さは、わかる。
彼女が、今、自分の、書いた小説を、読んでくれているのではないか、と思うと、彼は、緊張しっぱなしだった。
一週間、経った。
もう、怖い夢は、見ることはなかった。
彼は、古倉さんのいる、コンビニに、行ってみた。
「いらっしゃいませー」
彼女は、雑貨の棚を清掃しているところだった。
ドアの開く音で、反射的に、挨拶の言葉を発したのだ。
振り返って、客が、彼であることを、見ると、彼女は、ニッコリと、笑った。
店には、彼女と、彼しかいない。
「こ、こんにちは」
彼は、照れくさそうに、挨拶した。
「こんにちは。浅野さん」
彼女は、パタパタと、小走りで、彼の方にやって来た。
「小説、読ませていただきました。ブログも、かなり読みました。浅野さん、って、精神科医で、スポーツも、色々、やるんですね。すごいですね」
彼女は、無邪気そうに、そう言った。
「い、いえ。一応、僕は、医師ですが、これは、謙遜ではなく、本当に、たいした医師では、ありません。スポーツは、健康のために、やっているだけです」
と、照れながら言った。
「あ、あの。古倉さん。もし、よろしければ、いつか、喫茶店か、どこかで、ゆっくりと、お話ししたいです。古倉さんの、小説も、ほとんど、読みました。古倉さんの小説に対する、僕の感想も、ぜひ、話したくて・・・」
と、彼は、言った。
「わかりました。今日、の5時に、仕事が、終わりますので、その後、お話ししませんか」
「ありがとうございます」
「話し合う場所ですが・・・。もし、よろしければ、浅野さんの、アパート、というのは、ダメでしょうか?」
「いいんですか。身に余る光栄です」
「うわー。嬉しいわ」
彼女は、飛び跳ねて喜んだ。
「僕も嬉しいです。決して、襲いかかったりしません。から、安心して下さい」
「ええ。言われるまでもなく。心配していません。浅野さんは、プラトニックな性格ですから。小説を、読んでいて、ひしひしと、それを感じました」
彼は、喜んで、アパートにもどった。
幸い、彼のアパートの部屋は、つい、最近、大掃除して、きれいだった。
彼は、面倒くさがりで、年間、4回、ほどしか、アパートを掃除しないが、いったん、掃除し出すと、部屋の隅々まで、完璧に掃除しないと、気が済まない、という潔癖症でもあった。
彼は、古倉さんが、来るのが、待ち遠しかった。
芥川賞を、とった、天下の、売れっ子、職業作家が、来るのだ。
彼は、古倉恵子さんと、何を話そうかと思ったが、ともかく、彼女の、作品の数々についての、感想を話そうと思った。
彼女は、芥川賞をとった、職業作家であり、彼は、趣味で書いている、アマチュアである。
実力的には、天と地、ほどの差がある。
しかし、芥川賞をとったプロの職業作家でも、自分の身近で接していた、思いもよらぬ人が、小説を書いている、となると、その驚き、と、好奇心から、どんな小説を書いているのか、ちょっと読んでみたくなるのは、自然な感情である。
彼女は、記者会見での、対応にしても、ネットでの、彼女の記事にしても、あまりにも、人が良すぎる、と、思っていた。
芥川賞を獲って、文壇的地位を確立すると、原稿の執筆依頼が殺到する。
また、文壇的地位を確立すると、他の人が、書いて、出版された本の、帯に、コメントの、依頼も、頼まれる。
帯に、「芥川賞受賞作家の、古倉恵子さんも、絶賛」とか、書かれると、本の、売れ行き、も、よくなるのである。
そのため、時間がないのに、他人の出版した本まで、読まなくてはならなくなる、こともある。
他人の本の、解説も、頼まれたりする。
連載小説の依頼を頼まれたりもする。
本人は、気分が乗らなくても、また、小説の構想が、無くても、書かないわけには、いきにくい。
作家的地位を確立すると、何かと、忙しくなるのだ。
まあ、良く言えば、仕事が、増えて、収入が安定する、とも、言えるだろうが。
しかし、創作意欲が、旺盛で、自分の書きたいものを書きたい、と思っている、作家にとっては、迷惑だろう。
また、芥川賞に限らず、権威のある、文学賞を獲ると、出版社の方から、小説執筆の依頼が、来る。
しかし、実際のところは、文学賞を、とると、それを越えられる、作品は、書けず、文学賞でとった、一作で、終わってしまう、一作作家の方が、圧倒的に多いのである。
しかし、彼女は、中学生の時から、小説を書いてきて、いくつもの、文学賞を獲っている、創作意欲が旺盛な、本物の小説家なのだ。
そんなことを、思いながら、彼は、古倉さんが来るのを待っていた。
古倉さんは、彼のアパートを知っている。
なぜなら、彼のアパートと、コンビニは、とても近く、(だから、古倉さんのいる、コンビニを利用しているのだが)、以前、彼が、アパートから出てきたところを、仕事が終わって、帰る途中の、古倉さんに、見られてしまったことが、あるからだ。
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
彼は、玄関の戸を開けた。
古倉さんが、立っていた。
「やあ。古倉さん。来て下さって、ありがとうございます」
彼は、ペコペコ頭を下げて、言った。
「こんばんは。山野さん」
彼女も嬉しそうな表情だった。
「どうぞ、お入り下さい」
彼は、玄関の前に立っている彼女を招き入れた。
「では。お邪魔します」
そう言って、彼女は、彼のアパートに入っていった。
彼の、アパートの玄関には、テニスのラケット、と、野球のグローブが、無造作に置いてあった。
それが、目についたのだろう。
「山野さん、って、テニスをするんですか?」
彼女が聞いた。
「ええ。健康のため。足腰を鍛えるために、やっています」
「試合とかは、しないんですか?」
彼女が聞いた。
「ええ。たまには、やりますよ。去年は、テニススクールのコーチに勧められて、ウィンブルドンという試合に出て、ノバル・ジョコビッチ、という、かなり強いヤツに、勝って、優勝しました」
と、彼は言った。
「ウィンブルドンとか、なんとかジョコビッチ、とか、私。全然、知らないんです。私、スポーツのこと、全然、知らないので・・・」
と、彼女が言った。
「いやー。スポーツなんて、くだらないですよ。ですが、適度な運動は健康にいいので、僕は、やっているんです」
「古倉さん。芥川賞、受賞、おめでとうございます。それと、あなたを、覇気のない人間などと、失敬なことを言ったことを、心よりお詫びします」
彼は、改まって、再度、謝罪した。
「有難うございます。でも、私。本当に、気にしていないので、そのことは、もう、言わないで下さい」
「ありがとうございます。そう言って頂けると、本当に、救われます」
彼は、話したいことが、いっぱいあった。
だが、やはり、彼女の小説に対する、感想を一番、言いたかった。
それで、
「では、まず、僕の方から、古倉さんの小説に対する、感想を言っても、よろしいでしょうか?」
と、聞いた。
「ええ」
と、彼女は、自然に答えた。
なので、彼は、話し始めた。
「古倉さん。あなたの小説を読んで、まず頭に浮かんだのは、太宰治です。太宰治は、子供の時、自分が、みなと、違う考え方をする人間であり、自分が、異端児であることを、隠そうと、学生時代は、道化を装いますね。そして、大学在学中に、偽らない自分の子供時代の心境を述べた、(晩年)の、諸作品によって、文壇から絶賛されますね。あなたも、子供の頃から、一般の子供と、考え方が違う自分を、一般の子供のように、演じる、処世術で、波風たてず、友達と、つき合って、生きてきましたね。しかし、あなたは、太宰治とも、違う。太宰は、性格が弱く、苦悩しつづけて、生きてきましたが、あなたは、冷静に、自分や他人、つまり人間を、観察し、小説の中で、普通と言われる人間社会の中に、変わっている、と言われる人間を登場させ、色々な、お話しを作っていきますね。感情を、入れず、淡々と。あなたは、苦悩する、ということがない。というか、苦悩する、ような境遇に生まれなかったし、生来の感覚があっさりしているように見受けられます。それを武器となって、他人の評価なんか、が、気にならない。それで、堂々と、小説を書いている、ように、見受けられます。多数派が支配している社会に、少数派の人間の、心の理解を求めているのでもなく、自分の意見を主張しているのでもない。あたかも、善人と悪人がいるから、お話しが作れるように、多数派と少数派がいるから、お話しが作れる、ので、それを、楽しんでいるように、見えます」
「え、ええ。まあ、そうです。ところで、山野さんは、どういう心境で小説を書いているのか、教えて下さい」

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コンビニ人間・古倉恵子 (小説)(3)

2020-07-07 01:51:03 | 小説
「僕は、自分の心にある、叶わぬ願望を、小説を書くことによって、実現させようという思いで、小説を書いています。僕は、現実の女性と、つき合えません。なので、小説で、架空の、可愛い、僕にとって、理想の女性を、登場させ、その女性と、つき合おう、としたり、その女性に、面白い、生き方をさせたりして、お話しを作ろうとしています。そういう小説が多いです」
「そうですね。山野さんの小説を読んで、それは、感じました」
「まず。コンビニ人間、に、ついてですが。・・・圧倒されました。古倉さんの小説は、みな、読みやすく、文章も美しい。僕は、芥川賞の受賞作を、ほとんど、読みません。僕は、新しい物、好きの世間の人間とは、ちょっと、違います。僕は、自分が、小説を書くことのみが、僕の関心の全てなんです。僕は、長年の経験から、小説を読むことは、自分が、小説を書くヒントを得られることは、まずない、と、確信するようになりました。作家の、感性も、体験した経験も、小説の舞台も、全然、違います。しかし、今回の、古倉さんの小説は、違いました。コンビニ人間、は、古倉さんの小説の中でも、一番、優れた作品のように、思います。これほどの、小説なら、芥川賞の受賞作に、ふさわしいと思いました。なにせ、芥川賞は、日本人で、100万人、ほどの、作品の中で、ただ一人、選ばれる賞ですが、まさに、それに、ふさわしいと、思いました。これは、決して、お世辞でも、なんでもありません」
「そう言って、頂けると、素直に、嬉しいです」
「あなたには、妹さんが、いるという設定になっていますが、本当は、いないのでは、ないでしょうか?」
「ええ。そうです。私は、一人っ子です。でも、どうして、それが、わかるんですか?」
「妹さんが、あなたに、世間で、変わった人間に、見られないように、色々と、アドバイスしますね。しかし、あなたほど、思索の深い方なら、妹さん、という、アドバイスしてくれる、他の存在が、いなくても、あなたの思考力で、十分、わかるはずです。しかし、・・・(私は、変わり者に、見られないように、こうすればいいと思った)、・・・というふうに、主人公の独白の形式で書くより、そうした方が、小説が面白くなります。あたかも、諸葛孔明のような、優れた軍師が、いて、変わり者の、主人公を、助けているようにした方が、小説が、面白くなります」
と、彼は言った。
「え、ええ。その通りです。そういう計算がありました」
「次に、白羽さんですが。この人は、あなたの敵として、作った、人物ですが、この人は、あなたの、敵でもありますが、あなたの分身でもありますね?」
「ええ。よくわかりますね。どうして、わかるんですか?」
「だって、あなたと、正反対の価値観を持った、敵を登場させなければ、お話しが、作れない。しかし、白羽さんの、言葉の、いくつかは、あなたの、考え、そのものが、多く表現されています。それに、こんな、複雑なことを、考える人間なんて、まず、現実には、存在しっこありません。世の人間、や、男は、もっと、単純です」
「え、ええ。その通りです。敵役を作るのには、苦労しました。本当は、もっと、単純な男にしたかったのですが。それでは、私が作りたい、お話しが、作れなくなってしまいますし。また、主人公である私に、私の気持ちを、言わせるのは、照れくさいですし、主人公である私に、世の不条理さを、言わせるのも、恥ずかしいですし。それで、彼の口を借りて、私の思いを、述べさせました。違和感を感じられましたか?」
「いえ。全然、感じません。ああいう、複雑な、精神の男は、まず、現実には、1000人に一人もいないと思いますが、いても、おかしくないと思います」
「そう言って、頂けると、非常に、嬉しいです」
「一番、というか、感動したのは、ラストです。ここでは、白羽さんは、完全に、いわゆる世間の常識的な人間となっています。しかし、立ち寄った、コンビニで、あなたは、スーツ姿で、店員でもないのに、コンビニ店員の仕事をしてしまっている。せずにはいられない。そして、店員も、あなたを、受け入れるようになる。ここに至って、あなたの、コンビニに対する、激しい愛、が、完全に勝利している。僕は、読んでいて、涙が出て来ました。あなたは、音に対して、とても、敏感ですね。すごく、繊細な精神を持っておられるのでしょう。人間にとって大切なことは、傍目からみると、つまらない、とか、価値が無い、と思われていようとも、自分の仕事に、生き甲斐を持って、精一杯、頑張っている人は、異常でも、なんでもない。そういう人こそ、活き活きと、生きて、充実した人生を送っている人だと、つくづく感じました」
「仰る通りです」
そう言って、彼女は、顔を赤らめた。
「次に僕が、素晴らしいと思ったのは、清潔な結婚、という、短編小説です。これは、印象が、あまりに、強かったでした。セックスしない夫婦。というより、セックスを嫌っている夫婦。しかし、子供は欲しい、という、小説です。ここでも、あなたは、世間的な常識の見方を完全に破壊している。というより、あなたは、常識という枠に、縛られない、感性、考え方、を先天的に持っている。と、感じました。しかし、ああいう考え方は、僕にもあります。僕は、小学6年生まで、結婚した男女は、何をしているんだろう。それは、わかりませんでした。寝る時は、お互い、パジャマを着て、手をつないで寝ているのだろうと、思っていました。中学生になって、男女は、セックスをし、そのセックスによって、人間が、産まれると知った時は、ショックでした。これは。人間も動物ですから、自分の種を残さなければならない。それが動物、生物の宿命です。人間もその例外ではない。それが成されるためには、生殖行為が、気持ちのいいものでなくては、ならない、と、ショーペンハウアーは、言っています。人間は、子供の頃の、初めの時期は、セックスという、行為に、嫌悪を感じても、成長するのと同時に、徐々に、第二次性徴と、ともに、高まっていく思春期の激しい性欲から、それを、いつの間にか、自然な行為と、受け入れてしまっている。しかし、僕には、それが、どうしても、受け入れられませんでした」
「仰ることは、全て、その通りです。しかし、山野さんは、どうして、セックスを、受け入れられないのですか?」
「僕は、生殖という行為、を嫌っているからです。僕は、人間なんて、幸せな人生が送れる、という保証がない限り、産まれて来ない方が、良いとさえ思っています。人間が、産まれること、とか、それを意味する、数の子、だの、末広がり、だの、という、ことを、単純に喜ぶ、大人の気持ちが僕には、全く、わかりません。僕は、あの小説には、非常に共感しました。ただ、僕には、ああいう小説を書いてみたい、という、情熱までは、起こらなかっただけです」
「そうですか」
「(殺人出産)も、面白く読ませていただきました。男は、いつも、発情していますが、女性の性欲は違いますね。女性は、いつも着飾って、男に対して、フェロモンを出している。しかし、性欲という点では。女は、基本的に、普段、男を、性欲の対象としては、見ていません。ある、一定、以上の、性欲の快感を感じてしまうと、性欲が、燃えあがってしまいますが・・・。それに、女は、出産する時、苦しまなければならない。これは、聖書では、アダムとイブが罪を犯したから、と言っていますが、ともかく、女は、産み、の、苦しみを、しなければ、ならない。妊娠した、女性も、スマートなプロポーションが、お腹が、ふくれて、格好が、わるくなる。それどこか、妊娠中毒症などになったら、自分の命も危なくなる。まさに、命がけで、人間を産んでいる。そもそも、女は、月に一回、子供を産むための、準備である、生理、と共に生きている。それに、セックスによって、人間が産まれる、というのも、ちょっと、考えてみれば、不謹慎ですよね。石川啄木も、(二筋の血)という、小説のラストで、こう言っています。(男と女が不用意の歡樂に耽っている時、其不用意の間から子が出來る。人は偶然に生れるのだと思ふと、人程痛ましいものはなく、人程悲しいものはない。其偶然が、或る永劫に亘る必然の一連鎖だと考へれば、猶痛ましく、猶悲しい。生れなければならぬものなら、生れても仕方がない。一番早く死ぬ人が、一番幸福な人ではなかろうか)、と。あなたの作品は、あなたが、女だから、書ける、と思いました。夫婦のセックスにおいては、男も女も、快感を得ますが、人間の誕生に於いては、男は、何も苦しまない。しかし、女は、初潮から閉経までの、人生のほとんどの期間を、毎月、起こる生理と、妊娠による体の崩れと、出産の命がけの苦しみ、という、三つの苦しみ、を、味あわなくてはならない。これは、不公平ですよね。あなたは、その不公平さ、に、不満、というか、憤りを持っている。あなたの小説、(殺人出産)は、神に対する、その不公平さ、の、許しがたい、煮えたぎるような怒りが、動機ですね。(殺人出産)では、男も人工子宮を埋め込まれ、人間を産むことが出来る、ようになっていますね。わがまま勝手な世の男どもよ。女の産みの苦しみをおもい知れ、という、あなたの、男に対する、凄まじい憎しみの怨念が、ひしひしと、感じられました」
「え、ええ。そうかもしれませんね。でも、私。妊娠や、出産の、苦しみは、経験していませんし。生理は、経験してきましたが、そんなに、つらかったことは、ありません」
彼女は、顔を赤くして、焦って言った。
「それと。(マウス)ですが。これは、おとなしい私(田中律)が、自分以上に、もっと、おとなしい、というか、全くクラスメートの誰とも、話さない、ネクラな性格の、塚本瀬里奈、に、(くるみ割り人形)の、話しをしてあげて、その翌日から、塚本瀬里奈、は、(くるみ割り人形)の、主人公の、マリーになりきって、さかんに喋り出し、積極的に行動する、という話ですが。これは、読んでいて、現実には、そんなこと、絶対、あり得ない、と、違和感を感じました。他人が読んであげた、一つの童話が、きっかけで、誰とも全く一言も、話さなかった無口な子が、その翌日から、性格が豹変して、さかんに喋り出して、積極的に行動する、などということは、現実的には、考えられません。それは、選考委員も感じていると思いました。しかし、この作品は、三島由紀夫賞の候補になっています。しかし、小説や、漫画なんて、現実的かどうか、なんて、細部の正確さを、きびしくは、見ていないんだな、と思いました。手塚治虫の、医療マンガ(ブラックジャック)にしても、医学的には、デタラメなのが、かなりあります。しかし、ストーリーが面白ければ、違和感を感じません。芥川龍之介の、(蜘蛛の糸)や、(杜子春)にも、矛盾は、あります。しかし、批判する人はいません。だから。文学賞では、選考委員は、細部の、揚げ足をとるのではなく、小説の、全体の文学的価値を、評価しているんだな、と、知らされました。つまり、作品の評価は、減点方式ではなく、良い点を見つけての、加点方式なのだと、思いました。読者も、面白さを、求めて、小説を読みます。僕は、性格が神経質なので、小説作品の、現実との、整合性、が、気になってしまいます。しかし、(マウス)を、読んで、小説は、小説のお話の中で、辻褄が合っていれば、いいのである、ということを、あらためて、感じました。これは、前から感じていたことですが。現実性、ということに、こだわっていると、小説は作れません。むしろ、いかに、現実性を壊すか、という、ことに、僕は、心がけています」
「ええ。私も、(マウス)は、ちょっと、現実性と点で、批判されないかな、と、心配して書いていました」
「ところで、古倉さん。あなたは、自分の作品に、愛着を持っていますか?」
「自分が満足できる作品には、愛着は、あります。愛着、という言葉が、適切かどうかは、わかりませんが」
「作家にとって、作品は、自分が産んだ、自分の子供、とも、言われていますが、その、一方で、哲学者の、メルロ・ポンティーは、作家にとっては、過去に書いた作品は、墓場、とも、言っています。それは、作家にとっては、作品を作っている時だけが、生きている時である、という意味です。それは、僕も感じています。三島由紀夫は、死ぬ前に、自分の作品の全てを、自分の排泄物とまで、言っています。それは、ちょっと、卑下しすぎ、だとも思っていますが・・・。だって、三島由紀夫の作品では、成功作とか、失敗作、とか、客観的に、文芸評論家によって、判断されていますが、文学賞をとった、文学的価値のある、作品の方が圧倒的に多いです。ましてや、三島由紀夫は、ノーベル文学賞の候補にも、なったほどですから。自分の作品を、自分の排泄物、とまでは、本当には思ってなく、過剰に、卑下しているとも思っています。少なくとも、僕は、創作は、コックと同じだと思っています。コックは、手によりをかけて、美味しい料理を作る。そして、お客さんが、(美味しい)と、言って、喜んで、自分の作った料理を食べているのを、見るのが、コックの、喜び、であって、創作も、それと、全く同じだとも思っています。太宰治も、そういう考え方です。ただ、味つけ、つまり、心にも思っていないことは、作家は、書けないでしょう。そういう点、僕は、読者に、まずい料理は出したくない。美味しい料理を出したい、と思っています。しかし、あまり、美味しさ、とか、心地よさに、こだわっていたり、自分が愛着をもてるような作品ばかり書いていると、文学的に価値のある作品は、書けない、とも、あなたの作品を読んで、感じました」
「そうですね」
「あっと。ちょっと、僕だけ、一方的に、話してしまって、申し訳ありません。つい、小説とか文学のことになると、饒舌になってしまっで・・・」
「いえ。構いません。山野さんは、小説を、見る目が、鋭いのですね。鋭い文芸評論家、以上の文学評論です。これからも、私の、書いた小説、や、文学のこと、聞かせて下さいね」
「ええ。でも、僕は、文芸評論家になるよりも、自分が小説を書きたいのです。たとえ、文学的価値は無くても。あるいは、あっても、低くても。でも。歳をとって、自分が、どうしても小説を書けなくなったら、文芸評論的な、ことでも、書こうかな、とも思っています」
「今度は、私に、話させて下さい」
「はい。何なりと。言って下さい。ちょっと、一方的に、芥川賞を受賞したプロ作家先生に、偉そうなことを言って、まことに、申し訳ありませんでした。何なりと、お話しして下さい」
「まず。単純な質問をさせて下さい。山野さんは、どうして、医者になろうと、思ったのですか?」
「それは、ひとことで言って、医者に対する復讐です。僕は、幼い頃から、喘息で、自分史である、(浅野浩二物語)、とか、(ビタ・セクシャリス)にも、書いていますが、小学校の半分の三年間を、親と離れて、喘息の療養施設で過ごしました。自律神経の切り替えが、悪くて、小児喘息が、治りきらずに、大人になってしまいました。胃腸も、ストレスで、過敏性腸症候群という、かなり、つらい病気にかかってしまいました。僕は、一生、医者、や、薬、なしには、生きていけないのです。医者は、無能なくせに、威張った医者も多いんです。自分の体のことを、一番よく知っているのは、まず第一番目に自分であるはずです。一日中、自分の体と、つきあっているのですから。医者は二番目、あるいは、三番目で、もっと下で、あるはずです。なのに、現実は違います。医者は患者を、病気に関しては、素人とバカにしています。そんな、自分の体のことを、一生、ヘコヘコと、医者に頭を下げ続けるのが、口惜しくて、いっそ、自分が医者になってやろう、と、思ったのです。患者でも、医者ならば、(僕も医者です)、と、堂々と言えます。そして、そう言えば、医者も患者を、医学の素人と、バカにすることが出来なくなります。そういう、不純な理由が、第一番です」
「負けん気が強いんですね」
「ええ。劣等感が強いんです。それと、二番目は。僕は、自分が、本当にやりたいことを、高校生になっても、どうしても、わかりませんでした。僕は、一人で、コツコツとやる仕事が僕の性格に合っていると思いました。たとえばオートバイの設計技術者のような仕事が、僕の適性には、ふさわしいのでは、ないかとも思いました。しかし、やはり、病気や医者に対する、コンプレックスの克服の方が、まさって。これは、どうしても、克服しなければならない、僕の宿命だという思いが、まさり、それで、医学部に入ることが、僕の至上命題になってしまったんです。それで、難関で、世間的な評価も高い、医学部に入ろうと思ったんです。医学部6年間のうちに、自分が本当に、やりたいことが、見つかるだろう、とも思っていました。つまり、モラトリアムです」
「それで、大学三年生の時に、小説家になることが、自分が本当にやりたいこと、だと気づいたのですね」
「ええ。その通りです」
「作品について、ですが。読みやすく、面白い作品が、多いですね。(ロリータ)とか、(虫歯物語)とか、(蜘蛛の糸)とか、(杜子春)とか、つい最近のでは、(七夕の日の恋)とか、とても、面白く読ませて頂きました。可愛らしい小説が多いですね」
「そう言って、頂けると、嬉しいです」
「文学賞に投稿しようとは、思わないのですか?」
彼は、ニコッと微笑した。
「あなたも、ちょっと、意地悪な質問をしますね。僕の作品の中で、文学賞を受賞できるような、作品があると思いますか?僕は、無いと思っています。僕の小説は、娯楽で読んで、ちょっと面白いな、と、思える程度の小説に過ぎないと思っています。しかし、文学賞となるような、作品は、娯楽で読んで、ちょっと面白いな、という程度の作品では、ダメなんです。そんなことをしたら、その文学賞の価値が下がってしまいます。作品は、ある一定、以上の、何らかの、文学的価値のある作品でないと、どんな文学賞でも、受賞できません。それは、色々な文学賞に投稿してきた、あなたになら、わかるはずです」
「すみません。その通りです」
「いえ。いいんです。僕は、文学賞を獲りたいと、熱烈に望んでいるわけでは、ないんです。僕は、小説を書いていれば、それで満足なんです。文学賞は、スポーツに喩えるなら、国体とか、日本選手権のようなものだと、思います。技術も体力も、かなりのレベルの選手でないと、大会で、優勝することは、出来ません。僕も健康のため、色々と、スポーツをやっています。ですが、技術の基本は、身についていても、それだけでは、テニススクールで、コーチと対等に、打ち合える程度の実力です。そんな人は、吐いて捨てるほどいます。その程度の実力では、正式な大会で、勝つことは、絶対、出来ません。だから、文学賞に投稿する、なんて無駄なことは、しないんです」
「山野さんは、自分というものを、よく知っていますね。山野さんに、ウソは、つけないと思いました。失礼ですが正直に言います。私が、もし、文学賞の選考委員だとしたら、山野さんの、作品で、受賞の価値がある、と、堂々と、自信をもって言える作品は、・・・大変、失礼ですが、・・・ありません」
彼は、ニコッと笑った。
「いえ。いいんです。僕は、小説を書いていれば、幸せなんですから。僕にとっては、文学賞を、受賞できないことより、小説が、書けなくなることの方が、はるかに、こわいんです。僕にとって、小説を書く、ということは、生きるということ、そのものなんです。命なんです。ですから、命である、小説を書く、ということが、出来れば、それで、十分、満足なんです。そして、逆に言うと、命である、小説を書く、ということが、出来なくなると、僕は、死の恐怖に、おびえるようになるんです」
「山野さんは、天性の小説家ですね。認められるか、認められないか、などということを、度外視して、小説を書き続けているのですから」
「僕は、何事においても、競争とか、他人と比べることが嫌いなんです。上は、オリンピックから、下は、テニススクールのレッスン中の試合まで。世間の人間は、スポーツでは、全て、どっちが、勝ったか、負けたか、という、勝敗ばかりに、みな、注目します。そして、勝敗を決めなくては気が済まない。しかし、水泳とか、短距離走とかでは、0.01秒の差で、勝ったり、負けたりして、それが、金メダルと、銀メダルの、大きな違いになります。そして、選手も、観客も、勝敗の結果に、目の色を変えます。しかし勝負は時の運であり、そんな差は、もう一度、やれば、簡単に、逆転する、ということなど、ザラにあります。僕は、そういうことが、くだらないことだと、思っているのです。大学受験にしても、選抜試験ですから、他人を蹴落とす競争です。しかし、芸術の世界は、個性の世界ですから、比べることが出来ません。サザンオールスターズと、ユーミンの、音楽を、どっちが、上とか下とか、そんなこと、比べることなど出来ません。僕の書く小説は、確かに、文学的価値という点では、高いものではないでしょう。あなたの、いくつもの受賞作は、文学的価値という点から言えば、僕のコメディー的な小説より、はるかに上です。しかし、僕の書く小説は、僕にしか書けない、そして世界で、唯一の作品です。だから、僕は、満足できる小説を書ければ、それだけでいいのです」
「山野さんは、純粋な人なんですね」
「でも。何か、偉そうなことばかり、言いましたが、もちろん、僕は、あなたが、うらやましい。芥川賞もさることながら、それ以上に、全国の書店の、目立つ所に、平積みで、置かれ、もう、すでに、50万部、を越しています。つまり、50万人の人に、もうすでに、読まれているわけですし、これからも、発行部数は、増え続けるでしょう。人づきあいが苦手で、孤独に苦しむ芸術家なら、誰だって、芸術作品を、通して、つまり、自分が書いた小説が読まれることによって、世間と、関係を持ちたい、と思っていますから。その点は、僕は、古倉さんを、すごく、うらやましく思っています」
「山野さんも、いつか、世間の人達に、認められる小説が、書けるといいですね」
「ええ。僕が小説を書くのは、多分に、自己満足という面もあると思います。しかし、僕の小説を読んで、面白い、と、言ってくれる人もいるのです。はじめは、大学時代の文芸部の友達から、そして、ネットでも、少し勇気を出して、あるホームページの、掲示板に、小説の宣伝をすると、面白い、と言ってくれる人が、多いんです」
「そうでしょうね。山野さんのは、面白いですもの」
誉められて、彼は、少し、得意になった。
彼は、パソコンの、あるホームページを開いた。
ホームページアドレスは、http://policewoman.sakura.ne.jp/top/link.html である。
そこには、こう書かれてあった。
「個人的お勧めサイトの紹介。
簡単な紹介コメントを勝手に添えています。
浅野浩二のホームページ
その名の通り浅野浩二さんのWEBサイトで、小説やエッセイなどが読めます。
その作品には掴みどころのない不思議な魅力が溢れていて、特に自分は「女生徒」という作品がお気に入りです。
疲れた時に、この作品を何度も読み返してしまうのですよ。
自分が、他の方の作品を読んで羨ましく思う時の感想は二種類あって、
「頑張って、いつかはこういう作品を書きたいなぁ。」というものと、
もうひとつは「こういう作品は、僕には一生書けないのではないか?」というものです。
浅野さんの小説は数少ない後者に該当する素敵な作品群です」
「これは、僕が、ホームページを作って、間もない頃、それは、僕が、(女生徒、カチカチ山と、十六の短編)を、文芸社で、自費出版した頃、(平成13年)ですから、もう、15年も前に、頼んでもいないのに、相手の人が、書いてくれたのです。リンクまでしてくれて。こういうふうに、読んでくれる人が、いると、とても、嬉しく、また、創作の、ファイトがでます」
彼は、いささか得意になって、さらに、続けて話した。
「これは、僕が、文芸社に、短編集を、送ってみたところ、返ってきた、感想です」
と言って、彼は、A4の用紙を、彼女の前に差し出した。
それには、こう書かれてあった。
「平成12年9月27日。(株)文芸社。山野哲也様
本稿は、18編の掌編・短編と、5編のエッセイで構成されている。どの作品も手堅く、まとめられており、作者のレベルの高さを感じた。内容的には、掌編といっても短編に匹敵するような大きく重いテーマのものがあり、短編でも、もっとよく短く刈り込んだ方が仕上がりの良くなるものもあるが、総じて、どの作品も、よく計算された上で書かれていることがわかる。文学作品として平均的なレベルをクリアしていると言えるだろう。
掌編では、「スニーカー」、「少年」など、実に達者な語り口で書かれており、短編も無駄なく構成され、展開もスムーズである。作者は、かなり修練を積み、筆力を蓄えられた方だと推察する。作者の持ち味の一つに、職業経験を生かした心理的な描写、人間を解剖し分析する文章力がある。分析も細部にこだわりすぎて説明的になると、かえってくどくなり、作品をぶちこわす結果になるが、本稿では程好く味付けされているため、作品の質感を高めることに成功している。
エッセイは、「ちゃんと小説を書きたく、こんな雑文形式の文はいやなのだが・・・」(P82;婦長さん)とあるが、病院の日常をさりげなく描いたエッセイには、小説に劣らぬ魅力を感じるという意見もあった。なかでも、「おたっしゃナース」、「婦長さん」は、作者の独断場の世界でもあり高い評価がされた。また、山野様の作品の一つの方向として、「少年」や「春琴抄」にみられるように、被虐の世界に徹底されていることも興味深い。精神分析、心理解剖の知識と経験が十分に生かされている。
ただし、作品としての全体の構成を見た場合、どのような意図で編まれたものなのか判断が難しいところである。安定した筆致で書かれた個々の作品は、それぞれ完成度が高いのだが、小説にしても、エッセイについても、どのような読者を想定してあるのかが曖昧である。その流れを明確にした方が、作品の密度を高め、読者に、より強いインパクトを与えることが出来るだろう。
なお、各作品にはタイトルが付けられているものの、本稿のタイトルともなるべき総合タイトルが付されていない。ぜひ、山野様ご自身で納得のいくタイトルを考えていただきたい。
などが挙げられました。
いかがでしたでしょうか。山野様の作品は、弊社に毎月800点以上、送られてくる作品の中でも印象深い作品であることに間違いなく、好評を得たもののひとつでした。」
彼女が読み終わって、顔を上げたので、彼は、そのコピーを取り戻した。
「文芸社は、あの時は、協力出版と、宣伝していましたが、実際は、悪質な自費出版で、しかも、製作費の費用に、相当な水増しをしていて、本を売ることでなく、本を作ることで、利益を上げていた、詐欺商法でした。それは、ネットで、調べて、僕も知っていました。しかし、この評価の文章は、心にもない、おだて、を言っているとは、思いません。この感想は、かなり、正確に、僕の小説を、評価していると思います。おだてて、契約に、こぎつけるため、だけだったら、(山野様の作品の一つの方向として、「少年」や「春琴抄」にみられるように、被虐の世界に徹底されていることも興味深い)、などとは、はっきりと、書いたりしないでしょう」
「被虐って。山野さんは、マゾなんですか?」
「ええ。そうです。僕の小説を読んで、マゾっぽい、と思いませんでしたか?」
「いえ。私。マゾって、さっぱり、わからないんです」
「そうですか。サド、とか、マゾ、とか、が、全くわからない人も、世間には、結構、いますからね。そういう人の方が幸福かもしれませんね。今は、ドSとか、ドM、とか、いう言葉を、世間の人達が、平気で使うようになりました。しかし、今、使われている、ドSとは、単に、(いじわる、とか、わがまま)という意味で、ドMとは、単に、(気が小さい)という意味に変わっただけです」
「山野さんは、マゾという、ものを、表現するために、小説を書いているのですか?」
「そうです。それただけでは、ないですが。それは、大きいです」
「私には、マゾは、わかりませんが、私も、自分の異常な感覚を表現するために、小説を書いています」
「そうでしょうね」
「ところで、山野さん。世間では、私が、芥川賞を受賞しているのに、コンビニで働きたい、と思っている、ことを、異常と見ていますが、山野さんには、その私の心理が、わかりますか?」
「ええ。もちろん、わかりますよ。あなたが芥川賞を獲っているのに、コンビニのアルバイトを続けたいと、いう気持ち」
「では、説明して下さい」
彼女は、黙ってニコッと、笑った。
彼が、どんな説明をするのかを、ワクワクと待っているという感じだった。
「簡単なことです。世間の人は、芥川賞を獲れば、それ以後は、創作に専念するもの、という、固定観念に、まだ、おちいっているのです。菊池寛は、(小説家たらんとする青年に与う)で、(小説を書くということは、紙に向って、筆を動かすことではなく、日常生活の中に、自分を見ることだ。すなわち、日常生活が小説を書くための修業なのだ)と言って、作家の創作、にとっての、実生活の重要性を主張しています。太宰治も、(如是我聞)で、(作家は、所詮、自分の生活以上の小説は書けない)と、作家が生活を真面目にすることを主張しています。三島由紀夫も、(小説家の休暇)の中で、(創作においては、規則正しい日常生活こそが、大切だ)と言っています。僕も、それは、感じています。医者の仕事だって、慣れれば、同じ事の繰り返しです。僕は、仕事が好きではありません。もっとも嫌いなだけでも、ありませんが。しかし、なぜだか、仕事が終わって、ほっとした時に、小説のインスピレーションが思い浮かんだり、小説の筆が進むのです。まったく、大作家たちが、言っている通りです。むしろ、机の前で、ウンウン唸っていても、小説のインスピレーションは、なかなか起こってくれません。そういう時。町を歩くのでもいい。公園で遊ぶ子供達を見てみるのもいい。一度も入ったことがない喫茶店に入ってみるのでもいい。なにか現実の空気に触れることが、創作のヒントになります。僕は、それを、何回も経験しました」
「その通りです。私も、コンビニで働いていると、小説のアイデアが浮かんでくることが、よくあるんです。というか、コンビニで働かないと、小説のアイデアが沸かないんです」
「ところで、山野さんは、私を変わった人間だと思っていますか?」
「それは、もう、世間の常識的な人の目から見れば、変わった人間に見えるでしょう。あなたの作品のほとんどは、世間の常識的な人から見ると、おかしな、非常識な、小説に見えるでしょう。しかし、そもそも、物書き、というのは、世間の常識に合わないから、作品が、書けるんじゃないんですか?小説家なんて、みんな変人ばかりだと思いますよ。もちろん、僕だって、何十回、(変人。とか、変わり者)と、言われたことか、わかりません。僕は、自分でも、自分を変人だと思っています。世間の常識に合う人間は、現実に生きること、つまり、異性を愛し、結婚し、真面目に会社勤めをし、子供を生み、子供の成長を楽しみ、酒を飲み、おいしい料理を味わい、海外旅行で外国に行き、ペットを飼い、セックスの快感を楽しみ、プロ野球を見て好きなチームを応援し、と。そういうことを、することが、すなわち、その人が主人公となっている小説を書いているようなものです。つまり、常識的な人間は、現実に生きて行動することが、小説を書いている行為なのです。しかし、世間の常識に合わない感性に、生まれついた人間は、現実を生きることが、楽しみには、なりません。本当に生きることにも、なりません。だから、自分の心の中に、燻っている、自分の思い、を、紙と、ペンによって、架空の世界の、お話し、という形で、書いて、作りあげることが、自分が、本当に生きる唯一の方法であって、それ以外に、本当に、生きる方法が無いのです。だから、常識的な人間も、行動という手段によって、本当に生きているし、変人である小説家も、小説を書くことによって、本当に生きている。どっちの方が、正常、とか、どっちの方が、変とか、そういうことは、決められないこと、だと思います。しかし、あえて言うなら、変な人間である小説家の方が、自分の思いに忠実に生きていて、常識的な人間は、世間の常識、というものに、自分の心が、良くも悪しくも、無意識のうちに、影響されて、作られてしまっている、とも、思っています」
「仰る通りです」
彼女は、強い口調で声で言った。
「どうも、僕ばかり、小説の大家先生に、偉そうなことばかり、言ってしまって、申し訳ない」
彼は、恥ずかしそうに、顔を赤くして、頭を掻いた。
「いえ。いいんです。私、人間が好きですから。人間を観察するのが、好きですから。知らない人を見ると、この人は、どういうことを、考えいるのだろうなって、ことに関心を持ちますから。山野さんのこと、もっと、よく知りたいです」
「なら、話しますよ。何でも、聞いて下さい」
「二点、聞きたいことがあるんです。一点は、性と生、のことです。もう一点は、過敏性腸症候群という胃腸病のことです」
「一点目の、性と生のことですが。山野さんは、小説で、性的なことを、多く書いていますね。山野さんの、性と生に対する、考えを教えて下さい」
「人間は、どうしても、自分の価値観、モノサシで、他人をも見てしまいます。これは、よくないことだと、思いますが、感情として、起こってしまう、ことは、仕方のないことですよね。夏の暑い日に、暑いと思うな、と、言っても、無理なことです。心で感じることまで、修正しろ、というのは、無理なことだと思います。大切なことは。自分の感じ方を、そのまま、行動に移したり、他人に押しつけたりしなければ、それで、いいだけのことだと思います。芸術の創作に価値を認めている、人間は、どうしても、他人に対しても、芸術の創作、という価値観で、人を見てしまいます。スポーツに価値を感じている人は、スポーツ、の能力という視点、価値観で、人を見てしまいます。これは、仕方のないことだと思います。僕は、生まれてきてから、幼少の頃から、病気や、容貌、取り柄のなさ、などに、苦しんで、生きてきました。今でも、生きることは、喜びもありますが、つらさ、も、非常に多い日々です。だから、人間一般に対しても、この世に、生まれてくることを、手放しで喜べないのです。僕は、人間なんて、幸せな人生が送れる、という保証がない限り、産まれて来ない方が、良いとさえ思っています。絶対的な健康と、普通の程度の容貌と、正社員での就職、が保証されない、限り、人間が生まれてくることに、慎重になっているんです。そして。セックスと、人間の誕生は、つながっています。僕が、興奮するのは、SMだけでした。子供の頃は、みんな、SM的なことに、興奮すると思います。男は、女の裸を見たい。女に、エッチな悪戯をしたい、と思っています。しかし、男である自分は、女に、裸を見られたくない。まさに、SM的です。しかし、実際は、小学生、や、中学生では、女生徒は、性に目覚めてはいても、大人の性行為は受け入れらない。男子生徒が、一人の女生徒を、取り囲んで、裸にして、エッチなことをすれば、女生徒にとっては、それは、つらい、いじめ、であって、泣いてしまう、だけでしょう。男子生徒は、先生にも注意されますから、そんなことは、出来ません。つまり、そういう、エッチなことは、男の子の、夢想にとどまる、だけです。谷崎潤一郎の、(少年)、のような、小説は、実際には、行われるはずは、ありません。あれは、完全なフィクションです。しかし、高校生、そして、大学生になってくると、女も、胸が膨らんできて、また、性にも、目覚めてきます。なので、SMプレイを、する、女の大学生も、出て来ます。しかし、男は、何といっても、セックスというものに、目覚めます。そして、男も女も裸になって、抱き合い、そして、本番をしたくなります。SMは、消えていくか、ペッティングの一部となっていきます。しかし、本番は、人間を生む行為ですから、そして、出来ちゃった結婚、などのように、妊娠してしまうことも、あるわけですから。僕は、本番、という行為が生理的に嫌いなのです。男と女の体が、完全に、つながる。これの方が、ノーマルだと僕も思います。しかし、僕は、人間なんて、幸せな人生が送れる、という保証がない限り、産まれて来ない方が、良いと思っていますから、基本的に、生殖行為に嫌悪感を感じるんです。幼稚園児では、男女は、異性を、友達として、見ています。しかし、小学生も、学年が上になってくると、そして、中学生になると、異性として、意識し始めます。恥じらいます。それは、かわいい。しかし、高校生になると、女も、性を知り、男と平気で、手をつなぐようになる。恥じらいが、なくなる。それが、ノーマルなのでしょうが、僕には、それを見るのが、つらいのです。だから、僕の、理想的な、男女関係は、中学生の、恥じらいのある男女関係、です」
「なるほど。わかりました。では、次に、胃腸病のことについて教えて下さい」
「ええ」
「山野さんは、小説では、自分の病気のことを、ほとんど、書いていませんが、ブログでは、自分の消化器病のことを、結構、書いていますよね。ところで、過敏性腸症候群、って、どういう病気なんですか?ホームページでも、(過敏性腸症候群)と、題した文章がありますが、読んでみましたが、いまだに、わからなくて・・・」
「そういうふうに、聞いてくれる、だけでも、すごく癒されます」
「どうしてですか?」
「だって、世間の人は、親でも、そうですが、過敏性腸症候群、の辛さを訴えても、誰も、理解しようとしてくれませんから・・・。理解しようとしてくれる人は、過敏性腸症候群、に苦しんでいる人だけです。世間の人は、自分を無にして、相手の話を聞こうとは、決して、しません。自分の人生経験から、説教するのが、好きな人ばかりです。コンビニ人間、で、書いてあるように、土足で相手の心に踏み込むのが好きな人ばかりです。病気の、辛さを訴えても、祖父は、(オレも胃腸が悪くなったことがあるよ。しかし、オレは、こうして乗り切ったよ)と得々と自慢げに説教しますし、両親に言っても、(野菜はとっているのか)、とか、食事の注意ばかりです。しかし、そのくせ、世間の人間は、自分の苦しみは、訴えて、自分に対する理解は、必死になって、他人に、求めています。理解してくれないと、怒り狂います。自分の苦しみは理解されたいが、他人の苦しみは、自分の経験から、説教したがる。全く自分勝手だな、と、思います。それは、病気に限らず、全てのことで言えます。僕は、前から、そういう世間の人間の、身勝手さに気づいていましたから、人に理解なんか求める、というバカバカしい行為は、とっくの昔に、捨てています。病気や、自分の苦しさは、自分の努力で、治すものだと、思っています。つまり、自力本願です。そして、僕は、色々なことを試してみて、過敏性腸症候群、は、食事ではなく、運動が、一番、効果があると、わかり、健康のために、運動しているのです。ブログでは、自分の病気である、過敏性腸症候群、のことも、書いていますが。本当は、自分の病気のことは、書きたくないのですが。僕にとって、ブログは、書きたい事を、好き勝手に書いていますが、病気の考察の、記録でも、あるんです。今日は、調子が良かったが、それは、どうしてか、ということを、書くことで考えているんです」
「なるほど。そうだったんですか」
「たとえば。パラリンピックや、身体障害者の人を見ると、まず、見た目で、可哀想だな、辛いだろうな、と思ってしまいます。それは健常者に対する引け目だけでなく、ちょっと、想像力を働かして考えれば、片手の無い人は、歯を磨くのも大変だろうな、とか、トイレで用を足すのも大変だろうな、とか、障害によって起こる、二次的な、日常生活の、様々な、不便を想像してしまいます。しかし、障害者の人の表情を見ていると、結構、明るい人の方が多い。障害者の人が、日常生活で、どんなことが、辛くて、どんなことは、それ程でもない、のかは、他人には、わかりません。わかっているのは、障害者本人だけです。だから、障害者の人の、苦しみを、過剰に考えて、可哀想に思ってしまったり、逆に、想像しても思いつけないような意外なことで、苦痛になっている、ことも、あるはずです。ですから、他人の苦しみを、理解しようとする行為は、不潔だと、僕は思っています。一番、理解に近づくためには、相手に直接会って、相手の口から、話しを聞くことだと思います。それなら、ある程度、相手を理解できると思います。文章では、感情までは、伝えにくいですから」
「私も、そう思います」
「しかし、世間の人間は、どうしても、喋らずには、いられない。人を自分の先入観で、評価せずには、いられない。なので、人と、喋り合う。そして、お互いに、誤解し合って、お互いに、自分の主張を、言い合って、生きている。しかし、デリケートな性格の人は、他人に理解されたとも思わないし、他人を理解したいとも思わない。だから、人と話せなくなって、無口になってしまうんです。そして、無口だと、変人だと、言われるのです。アメリカ人は、喋ることが美徳です。喋らないでいると、あいつは、何も考えていないバカだ、と思われます。しかし、日本には、以心伝心、とか、沈黙は金、とか、謙譲の美徳、とか、の精神が昔はありました。今では、アメリカナイズされて、それらは美徳ではなくなってしまいましたが」
そう言って、彼は、一呼吸、おいて、さらに、話しを続けた。
「ちなみに、古倉さんは、ハンバーガーショップとか、牛丼家の店員、とかでは、ダメなんですか?」
「ええ。もちろん、私も、マクドルドや、吉野家で、働いたことも、あります。コンビニ同様、好きです。しかし、あれらは、早い、美味い、安い、を、売りにしていて、実際そうですが、流れ作業的です。しかし、コンビニは、何でも屋で、一つの、小さな、世界を感じるんです。食料もあれば、本もあれば、日用品もあります。人間の生活を感じるんです。商品は、売れてくれるのを待っている、私の、かわいい子供のような感覚なんです。努力、気配り、に、よって、お客様に喜んでいただけるし、お客様に、気配りできる余地がありますし、私の、努力によって、店の売り上げが、上がったり、する余地があります。それが、面白いのです。私も、いくつか、アルバイトをしましたが、コンビニ店員が、一番、私の相性に合っているな、と感じているんです」
「抱きつかれると、何も言わない、というのは、どうしてですか?普通、コンビニ店員が男に抱きつかれたら、最低でも、小さな声で、やめて下さい、と言うものですよ」
「それは、抱きついてくる、お客さんの、意図がわからないからです。単に、性欲が目当てなのか、あるいは、私を好きになってくれて、でも告白できず、心の中で、苦しい思いをしつづけて、ついに我慢できなくなって、そっと私の腰を、触れてしまった、というのかも、しれないじゃないですか。そういう人って、ロマンチストじゃないですか。私の、やめて下さい、の一言で、その人が、傷ついて、しまうのは、可哀想ですし、せっかくの、常連の、お客さんだったら、なおさら、お得意さんも、失ってしまいますし、その人の、純情な心も傷ついてしまうじゃないですか。だから、抱きついてくる意図が、わかるまで、声は出さない方針にしているんです」
「なら、僕も、あなたに、後ろから、そっと、腰を触れておけば、よかった」
彼は、ふざけて、そんなことを言った。
彼女は、ふふふ、と、笑った。
「ところで、古倉さんは、コンビニで、働いた日にしか、創作意欲が沸かず、小説が書けず、コンビニで働かない日は、創作意欲が、沸かないため、小説が書けず、それで、編集の担当の人から、コンビニで働く日を、増やすように、言われている、と、ネットに、書いてありましたが、あれは、本当なんですか?」
「ええ。本当です」
「そうですか。それは、ちょっと変わっていますね」
と彼は言った。
「山野さんの、創作意欲は、どうなんですか?」
「僕も、仕事をした日に、小説の、インスピレーションが、起こる、ということは、なぜかは、わかりませんが、よくあります。しかし、小説の、大まかな構想が、思い浮かんでしまえば、もう、しめたもので、あとは、働かなくても、インスピレーションで、起こった、小説の、構想を、文章にしていく、だけです。だから、働かなくても、小説は書けます」
「そうですか」
「僕が思うのに。古倉さんは、非常に、デリケートで、繊細で、でも、おとなしくて、体つきも、性格も華奢で、ガンガン、小説を、書く馬力が、ないように、思えます。なので、緊張感がないと、小説を書く、馬力が起こらないように、見受けられます。コンビニで、働くと、古倉さんに、緊張感という、強い刺激が、加えられるために、それで、精神が、活発になって、小説を書きたい、という、意欲が、起こる、ように、見受けられるんです。つまり、スポーツで言えば、ドーピング、です。働くことで、ノルアドリンが分泌されて、小説を書く意欲が、高まっているように思われます。どうでしょうか?」
「ええ。そうです」
と、彼女は言った。
「山野さんは、精神科医だから、異常な、精神の患者さんを、たくさん、見てきたから、異常な性格の、私を見ても、驚かないんですね」
「それは、違います」
「どう、違うんですか?」
「僕は、精神科医になりたくて、精神科を選んだのでは、決して、ありません。僕は、医学部を卒業した時、健康状態が、ガタガタで、外科はもちろん、内科も、とても、勤まる、体調ではありませんでした。それで、一番、体力的に、楽、と言われている、精神科を選んだのにすぎないのです」
「そうだったんですか」
「世間の人は、精神科医というと、人間の心を、精神分析する、医者、と、思っていますが、それは、全く、違います。昔の、フロイトの頃の時代は、神経症、つまり、ノイローゼ、の患者に、対して、精神分析も、行われていましたが、今の精神科医は、違います。精神科は、心理学ではなく、薬理学なんです。統合失調症の患者の薬の知識が、ほとんど、全てです。人間の心理に、興味のない人、や、苦手な人でも、つまり、誰でも、精神科医には、なれます。でも、そんなことを、ムキになって、世間に訴える気もありませんし、誤解している人には、どうぞ、精神科医を、好きなように、見て下さい、と、僕は、開き直った、態度でいます」
「そうなのですか」
「ええ。そうです。むしろ、医者、特に、精神科医、は、かえって、人の心に鈍感になってしまいます。これは、職業病です」
「それは、どうしてですか?」
「人の心を読む、という職業は、一体、どういう仕事でしょうか。たとえば、その一つは商売です。商売で、相手との、取り引き、契約、を成立させるには、相手との、虚々実々の、駆け引き、が必要になります。相手は、どういう性格だろうか、とか、どう言えば、相手は、どう感じるだろうか、とか、相手の心理を探ろうとしなれれば、なりません。また。商品を開発する技術者は、世間の人間が何を求めているか、ということを、細心の注意で、たえず、読もうとしなければ、売れる商品は、作れません。また、スポーツでもそうです。プロ野球でなくても、大学野球でも、高校野球でも、バッターは、ピッチャーが、次に、どんな球を投げてくるだろうか、と、ピッチャーの心理を読まなくては、なりません。つまり、相手と対等な仕事では、相手の心理を読まなければなりません。しかし、医者はどうでしょうか。医者と患者との、関係は、対等ではありません。医者の方は、先生、と呼ばれますが、患者は、先生とは、呼ばれません。つまり、医者の方が、上で、患者の方は、下、という、上下関係です。患者は、医者に対して、強気な態度には、出れません。特に、精神科では、そうです。精神科の、個人クリニックに行く人は、悩みや、精神的な病気で、毎日がつらく、助けて欲しくて、藁にもすがる、思いで、精神科クリニックに行きます。精神科医は、患者にアドバイスしますが、その、アドバイスに対して、患者は、医師に対して(それは違うんじゃないですか)とは、言えません。精神病院の、精神科医と患者の関係も、同じです。精神科医が、患者の問題点を、一方的に説教するだけで、その逆はありません。人から説教されず、一方的に、人に説教はがりして、自分で、ものを考えないでいると、精神が、どんどん、鈍化していきます。精神科医に限らず、社会的地位が上になって、権力や権威を持つと、人間は、どんどん、ダメになっていきます。スポーツでも、そうです。監督とか、コーチは、権威があります。なので、コーチに物申すことは出来ません。(こうしてみたい)、などと、自分の考えを言うことなど、もってのほかです。ひたすら、コーチの言うことを聞く、イエスマン、になるしかないのです。コーチは、一方的に、アドバイスというか、説教するだけです。だから、コーチも、どんどん、ダメになっていきます。古倉さん。あなたも、(マウス)という小説の中で、小学校のクラスの中の友達グループにも、いくつも、上下関係があって、下の、(おとなしい女子)、のグループは、上の、権力を持った(明るい活発な女子)、の、グループ、の心理を知り、それに合わせるよう、演じなくては平和な学校生活は送れない、と、書いているでは、ないですか。そして、あなた、つまり、田中律、は、(真面目でおとなしい女子)の三人組のグループの一員ではないですか」
「な、なるほど。そ、そうですね。でも、山野さんは、思索が深いですね。それは、どうしてですか?」
「それは、僕が、医師である、以前に、患者で、あるからです。あまり、自分の病気自慢のようなことは、言いたくないのですが。僕は、小学校の半分の三年間を、親と離れて、喘息の施設で過ごしました。僕には、普通の人間が持っている、集団帰属本能、というものが、ありません。なので、友達も一人もいません。喘息=内向的=ものを考える。という、図式が、僕には、見事に当てはまるのです。古倉恵子さん。あなたも、普通の、元気で溢れている、人間と違って、元気のエネルギーが、少ないですね。あなたの、小説を読んで、それを、つくづく感じました。元気のエネルギーが少なく、デリケートだと、人とのつきあいが疲れる=孤独を好む=内向的になる=ものを考える=空想にふける。という、傾向になります。そういう点で、僕は、あなたと、同類の人間だと思っています」
時計を見ると、もう、9時だった。
「古倉恵子さん。本当のことを、言います。僕は、あなたになら、殺されてもいいです。ただ、今は、僕は、まだまだ、小説を書きたい。し、書きたい小説があります。だから、僕が、体力が無くなって、小説が全く、書けなくなったら、僕は、あなたの手にかかって、殺されたい。医学の進歩の皮肉で、安楽死を望む人は、これから、もっと、増えていくでしょう。(殺人出産)で、殺される人は、憎い人ではなく、(死)を希望する人なら、いいのではないでしょうか?」
彼女は、ニコッと、笑った。
「山野さん。これからも、時々、お話ししても、いいですか?」
「ええ。僕は構いませんし、光栄ですが。あなたには、文学を語り合える友達が、たくさん、いるじゃないですか?」
「ええ。確かにいます。でも、彼女たちは、私のことを、クレージー、と、言うんです。彼女らは、元気があり余っていて、キャピキャピ、一刻たりとも、休むことなく、喋りつづけるんです。彼女たちも、やはり、常識的な人間です。そして私を、変わり者、と、見ているんです。なので、私は、彼女たちにも、変わり者、と、見られないよう、世間の普通、の基準のマニュアルの教科書で、対応しているんです。本心は、言えません。そうしないと、私。友達がいなくなっちゃいますから。ですが。山野さんは、根っから、おとなしくて、無口で、私を、変人と見ていません。だから、山野さんと、話していても、疲れないんです」
「そうですか。そう言って、もらえると、嬉しいです」
そんなことを話して、彼女は、彼のアパートを出ていった。
翌日からは、彼は、また、セブンイレブン湘南台店で、コンビニ弁当を買うようになった。
古倉さんは、コンビニで働いている。
というか、働きながら、小説を書いている。
彼も、古倉さんに、「努力」、という点で、負けないように、頑張って小説を書いている。




平成28年10月9日(日)擱筆

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武男と愛子 (小説)

2020-07-06 23:39:54 | 小説
武男と愛子

ある高校である。その二年B組では三人のワル仲間がいた。玲子と冬夫と夏夫である。玲子の父親は、ある大学病院の消化器科の教授だった。彼は日本で食道胃吻合術の権威で、マキャベリ以上の権謀術数によって教授の地位を得た。妻も同じ大学病院の皮膚科の助教授である。
そもそも医学の世界というのは世襲的なものなのである。政治家と同じように、地盤、看板、カバン、を引き継げるから医者の息子は圧倒的に有利なのである。そのため親は何としても自分の子供を医者にしようとする。
そのため玲子の父親は何とか玲子を医学部に入れようと、家庭教師をつけ、塾へ通わせたりしてスパルタ教育をした。しかし玲子は頭が悪く、高校生になっても未だに分数の足し算、引き算すら出来ない。テストで悪い点を取るたびに、父親は玲子を厳しく叱り、罵った。
そのため、玲子はグレた。金はふんだんにあったので玲子は遊びまくった。類は友を呼ぶ、で、ワルの冬夫と夏夫が玲子に近づいてきて、玲子の子分になった。彼らは学校で、やりたい放題のことをしていた。が、皆、彼らの悪事を見ても、あとの報復を恐れて、見て見ぬ振りをしていた。
しかし、そんな中でクラス委員長の愛子だけは違っていた。愛子は正義感が強く、彼らの校内喫煙やカツアゲや窃盗を堂々と注意した。担任教師にも告げた。が、教師も愛子が、「彼らに注意して下さい」と訴えても聞き流すだけで、腰を上げようとはしなかった。
愛子はクラス一の秀才で勉強熱心で、将来は国立の医学部に入って小児科の医者になろうと思っていた。

玲子の父親は、いつも愛子を引き合いに出して、「お前も少しは彼女を見習え」と言ったり、「彼女のような優秀な子が娘だったらなー」などと嘆息したりした。

そんな事で、玲子の愛子に対する憎悪は激しく煮え立っていた。

クラスに武男という内気な生徒がいた。武男は冬夫と中学が同じだった。武男は内気で友達がいなく、そんな武男に冬夫が声をかけて、二人は付き合うようになった。武男は冬夫に従う子分のような関係になった。冬夫は武男をゲームセンターに連れて行ったり、新宿や渋谷の繁華街に映画を見に連れて行ったりした。もちろん金は全部、武男もちだった。

そんなことで高校になっても、武男は冬夫との縁から、玲子達三人のワル仲間の一員のようになっていた。しかし、武男は用事を言いつけられるだけのこづかいのような存在で、三人の横暴振りにも辟易して、いいかげん三人と縁を切りたいと思っていた。

高校に入って、愛子をはじめて見た時、武男はドキンと心臓が高鳴った。武男の席は愛子の後ろだったが、授業中はいつも愛子を見るようになった。
ある時、愛子と視線がバチンと合った。愛子はニコッと笑った。武男は真っ赤になって、あわてて視線をそらした。武男は孤独で友達がいない。そのため、やることといえば勉強だけで、そのため、中学から学科の成績はよかった。高校でも成績は愛子に次いで良かった。武男は愛子に近づきたいという思いから、いっそう勉強に身を入れるようになった。

ある日の休み時間。愛子が武男の席にやってきた。
物理の教科書とノートを持っている。
「武男君。となり座ってもいい」
愛子はニコッと笑って言った。
「は、はい」
武男は顔を真っ赤にして肯いた。愛子は武男のとなりの席に座って、物理の教科書を開いた。
「ここのところが解からないんだけど、教えてくれない」
そう言って愛子は、あるページを指で指し示した。それは電磁気の問題だった。武男は顔を真っ赤にして、どもり、どもり丁寧に説明した。愛子は笑顔で、ウンウンと肯きながら、武男の説明をノートに写した。
始業のベルが鳴った。
愛子は教科書とノートを閉じた。
「ありがとう。教えてくれて。よくわかったわ」
「い、いえ」
武男は顔を真っ赤にして言った。
「また、解からない事があったら教えてくれる」
「は、はい。でも、愛子さんほど頭のいい人が解からない事で、僕に解かる事なんてまず無いと想います」
「そんな事ないわ。私、そのうち、武男君に抜かれそうな気がするわ。これからは、解からない事は、お互い、教えあいましょう」
「は、はい」
武男は真っ赤になって、小声で答えた。愛子はニコッと笑って、席へ戻っていった。
その日以来、武男と愛子は勉強を教え合うようになった。

武男の愛子に対する想いは、どんどんつのっていった。夜、布団に入ると必ず、愛子の姿が浮かんでくる。しかし、武男の愛子に対する愛し方はノーマルな形ではなかった。先天性倒錯者の武男の愛子に対する愛し方は極めてアブノーマルな形だった。
裸になって、愛子の足元の前にひざまずき、愛子の足をペロペロ舐めたり、顔を踏まれたり、と、徹底的な奴隷になったり、あるいは、その逆で愛子を裸にして、爪先立ちに吊るし、愛子を鞭打って、愛子が泣きながら、「お願い。許して。武男君」と、訴えても無視して、鞭打ちつづける。そんな常人とは、掛け離れた、歪んだ形だった。普通の人の男女の愛の形とは、お互い裸になって、結合して、一体化し、女の体内に射精する。という事は武男は知識としては知っている。
しかし純は、そういう形では女を愛せないのである。それどころか、そういうノーマルな行為を想像すると純は吐き気すら催した。なぜ、そうなるのかは、武男にも解からない。だが、どんなに奇矯な形であっても、愛のボルテージの強さは常人と変わりはなかった。

ある日の昼休み。冬夫が武男に言った。
「おい。武男。今日の放課後に来いよ。玲子さんが愛子を呼び出したのさ」
「ど、どうするの」
「愛子にヤキを入れるのさ。あいつ、俺達の事を先公にチクッたり、俺達にインネンばかりつけるだろう。だから、一度、徹底的にヤキを入れてやるのさ。あいつ、勉強が出来て、クラス委員長で、お高くとまって、生意気じゃんか。お前も愛子が嫌いだろう」
「え、ええ」
武男は心とは裏腹に冬夫に合わせた。
「よし。じゃあ、放課後、体育館に来いよ」
そう言って、冬夫は教室を出て行った。

休み時間、武男は愛子の席に行った。
「あ、あの。愛子さん」
武男は声をかけた。
「なあに。武男君」
愛子は屈託のない笑顔で武男を見た。
武男はしばし、口唇を噛んでいたが、
「いえ。何でもないです」
と言って、自分の席に戻った。

その日の放課後。誰もいない体育館で、愛子と玲子が向き合っている。
「玲子さん。用は何ですか」
愛子は決然とした口調で言った。
「ふふ。楽しい事をするのさ。今まで、さんざん、あんたには世話になったからね。そのお礼さ」
そう言って玲子はタバコを取り出して、火をつけて、おもむろに煙を吐いた。

その時、冬夫と夏夫がドカドカと入ってきた。
「おい。お前も入れよ」
冬夫に呼ばれて武男も入ってきた。武男は彼らの後ろでうつむいている。
「武男君!!」
武男を見るや、愛子は思わず、武男に声をかけた。だが、武男は返事をしない。眉を寄せ、うつむいたまま、じっと拳を握りしめている。

愛子は玲子に向き直った。
「どういう事なの。何をしようっていうの」
愛子は玲子に問いかけた。が、玲子は答えず、ふふ、と笑って後ろを向いて、冬夫と夏夫に目配せした。
「さあ。はじめな」
玲子に言われて、二人はニヤッと笑って愛子の所へ行った。そして二人がかりで愛子を取り押さえた。
「な、何をしようっていうの」
不安げな表情で訴える愛子を無視して、冬夫が愛子の後ろに回って、愛子の両手を背中にねじり上げた。夏夫は身動きのとれない愛子の服を脱がせ始めた。セーラー服を脱がせ、スカートも脱がせた。
「やめてー」
愛子は叫んだが、夏夫は聞く耳など持たない。愛子はセーラー服とスカートを脱がされて、パンティーとブラジャーだけになった。夏夫は愛子のブラジャーをはずした。小高い乳房があらわになった。愛子は恐怖に顔を引きつらせて、全身をプルプル震わせながら、腿をピッチリ閉じている。冬夫は笑いながら、パンティー一枚になって腿をピッチリ閉じて全身をプルプル震わせている愛子を、背中からガッシリと、両手首を重ね合わせて、掴んでいる。玲子は、ふふふ、と笑って、立ち上がって愛子の前へ行き、愛子の前に座り込んだ。
目の前では女の肉をピッチリとおさめた純白のパンティーが、形のいい小さな盛り上がりをつくっている。
「ふふ。こんもり盛り上がって、すごくいい形じゃない」
玲子は笑いながら、しばし、愛子のパンティーの盛り上がった所を指で押してみたり、パンティーの縁のゴムをつまんで、離し、ピチンと音をさせたりした。
「それじゃあ、そろそろこれも脱ぎましょうね」
そう言って、玲子は両手でパンティーをグッとしっかり掴んだ。
「や、やめてー」
愛子は腿をピッチリ閉じて、全身をプルプル震わせながら叫んだ。が、玲子は、かまわず、一気にパンティーをずりおろし、足から抜き取った。覆う物一枚もない丸裸になった愛子は、真っ赤になって、何とか女の最恥の部分を隠そうと、片足を鶴のように曲げて、もう一方の膝の上にピッチリ重ね合わせた。恥部は何とか隠されたが、みじめこの上ない姿である。玲子の後ろでは夏夫が、ニヤニヤ笑って見ている。
「ふふ。恥じらいがあって、とても素敵なポーズね」
玲子は、全身をプルプル震わせている愛子に、そんな揶揄の言葉を言った。
しばし、玲子と夏夫は、冬夫に後ろから取り押さえられて、全裸で顔を赤くしてそむけ、膝をピッチリ重ね合わせて、プルプル体を震わせている愛子を楽しむように眺めていた。武男は二人の後ろで、うつむいている。
「冬夫。お前も疲れただろう。もう、手を離してやんな。お前もこっちに来て愛子の裸をとっくりと楽しみな」
言われて、冬夫は背中で捻り上げていた愛子の手首を離して前に回った。
愛子は両手が自由になると、急いで座り込み、手を胸と秘部に当てがって隠した。
三人は顔を真っ赤にして、胸と秘所に手を当てて、座っている愛子を楽しげに眺めた。
「ほらよ。愛子のセーラー服と下着だよ。好きな物をとって、宝物にするなり、何なりしな」
言われて冬夫はセーラー服とパンティーを取り、夏夫はスカートとブラジャーを取った。
「お前ら、がめついね。武男の分が無いじゃないか。武男にも分けてやんな」
玲子は叱るように冬夫と夏夫に言った。後ろに控えていた武男は、あわてて三人の前に出た。
「ぼ、僕はこれをもらいます」
そう言って武男は床の上にある愛子の靴下を拾った。
「そんなものでいいの」
「は、はい」
武男は小声で言って、拾った靴下を持って、再び隠れるように三人の後ろに回った。
冬夫は愛子のパンティーを裏返して、女の部分に鼻を当てて匂いをかいだり、
「ちゃんとシミがあるぜ」
などと揶揄した。
「オレにも貸せ」
と言って、夏夫は冬夫から愛子のパンティーをとった。夏夫も冬夫と同じように、愛子のパンティーに鼻を当てた。そして、
「あー。いい臭いだ」
などと言った。愛子は真っ赤になってうつむいている。そんな愛子を二人は、楽しむように眺めた。
「ほら。遊んでないで、そろそろ始めな」
玲子に言われて二人は立ち上がって裸で座っている愛子に近づいた。
二人は胸と秘所を隠している愛子を強引に立たせた。
「今度はオレが押さえててるよ」
そう言って夏夫は、愛子の両手を後ろへねじり挙げた。
「あっ。いやっ」
手で隠していた胸が露わになった。夏夫に両手を背中に捻り上げられて無防備になった裸を何とか見られないよう、愛子は腿をピッチリ閉じて全身をプルプル震わせている。冬夫は夏夫に取り押さえられている愛子の胸や尻や太腿を触りまくった。太腿の付け根の所に手を割り込ませると、愛子は、
「ああー」
と叫んで腰を引いた。
「ほら。そんな、お優しいのじゃなく、タコ糸を使って、あれをやりな」
玲子に言われて冬夫は、ニヤリと笑ってポケットからタコ糸を出した。冬夫はタコ糸を愛子の女の谷間に食い込ませた。
「や、やめてー」
愛子は悲鳴を上げたが冬夫は聞く耳を持たない。
タコ糸をゆっくり前に引いてみたり、後ろに引いたりした。タコ糸は、女の柔らかい谷間に食い込んで、埋まってしまっている。前は、閉じられた女の割れ目から、やっと顔を出し。後ろは尻の割れ目の上の方に現れている。前後に擦る度に愛子は、
「あっ。あっ」
と、うめき声を漏らす。
「ふふ。どうだ。気持ちいいだろう」
冬夫が揶揄する。愛子は何とか、恥ずかしい所を隠そうとして、腿をピッタリ閉じている。そのため、結果として、恥部がタコ糸をしっかり挟んでしまっている。手を離しても落ちないほどに。
「どうだ。気持ちいいだろう」
冬夫は、タコ糸の前後に引く運動を続けている。愛子は喘ぎ声を漏らしながら、眉を寄せ、苦しげに、体をプルプル震わせている。愛子がクナクナと座り込みそうになると、冬夫は、そうはさせじ、と、タコ糸の前後に力を入れて上に持ち上げて、その力でそれを阻止する。愛子は、仕方なく、落としかけた腰を上げる。冬夫も、
「座り込むなよ」
と恫喝する。この責めを抜ける方法はない。
「お、お願い。許して」
愛子は半泣きになって訴えた。
武男は彼らの後ろで、憐憫の目で生贄の愛子を眉間に皺を寄せ、拳をギュッと固く握りしめて見ていた。
「もうやめてあげて下さい」
三人の後ろで控えていた武男が耐え切れなくなったように言った。男二人の視線が武男に行った。彼らはニヤッと笑って武男を見た。
「ふふ。お前、本当は愛子が好きなんだろう。俺達と縁を切りたいんだろう。お前が匿名で、俺達の事、先公にチクッた事、知ってるんだぞ」
武男は言い返せない。
「裏切りは、グループの掟でリンチだ。もうお前は俺達の仲間じゃない。徹底的にヤキを入れてやる」
武男は言い返せない。冬夫は愛子の顔を見た。
「ふふ。いい事を思いついたぞ。おい。愛子。責めから開放されたかったら、『武男を私の身代わりにして下さい』と言いな。武男を丸裸の晒し者にする代わりに、お前は放免してやろう」
「で、出来ません。そ、そんな事・・・」
「ふふ。そうだろうな。しかし、言わないなら、いつまでも、お前だけが責めつづけられるだけだ」
「愛子さん。僕を身代わりにすると言って下さい。僕は、喜んで愛子さんの身代わりになります」
「どうだ。ああ言ってるぞ」
冬夫は愛子の顎をグイと掴んだ。愛子はチラと武男を見た。
「で、出来ません。わ、私には、そんな事・・・」
冬夫は、愛子をじっと睨んだ。何としても愛子の良心をおとしめようとしている。
「よし。じゃあ。身代わり、というのじゃあなく、一緒に責められるというのはどうだ。お前への責めも半分になるぞ。少しは手加減もしてやる」
冬夫は、そう言って再び、愛子にタコ糸の責めを始めた。この責めはいつまでつづくのかわからない。愛子は、
「ああー」
と悲鳴を上げて、腿をピッチリ閉じて全身をワナワナ震わせている。
「愛子さん。言って下さい」
愛子は、しばし口唇を噛んでためらっていたが、ついにワナワナと、口を震わせながら言った。
「わ、私だけじゃなく、私と一緒に武男さんも責めて下さい」
愛子は、言ってわっと泣いた。
「おい。武男。着てる物を全部、脱いで素っ裸になりな」
冬夫に言われて武男は、服を脱いだ。ワイシャツとズボンを脱ぎ、Tシャツとパンツも脱いで、丸裸になった。
「よし。愛子と武男を背中合わせに縛りな」
そう言って玲子は縄を二人に渡した。二人はニヤッと笑って、裸の武男と愛子をピッタリと背中合わせにくっつけると、二人をぐるぐる巻きに縛り上げた。

武男は愛子と背中合わせに縛られた。二人の尻が触れ合う。玲子は武男の前に立ってピシャピシャ武男の顔をたたいた。いたく満足げである。
「ゆ、許して。武男君。一人の責めに耐え切れず、武男君をおとしめてしまって」
「い、いいんです。愛子さん。僕はむしろ幸せです。愛子さん一人が責められるのを見ている方がよっぽどつらいです」
「武男。こっちを向きな」
玲子に言われて、武男は玲子のほうを向いた。
「ほら。もっと足を開きな」
武男は足を開いた。丸出しになったペニスが隆隆と勃起している。
「ふふ。どう。いとしい彼女と背中合わせに縛られて。今の気持ちを正直にいいな」
「し、幸せです。僕はこれでも男です。愛子さんは責めないでください。責めはすべて僕が受けます」
「ふふ。愛子と尻を触れ合わせて。どうだ。今の気持ちは。正直にいいな。愛子の尻の感触は」
「柔らかくて、気持ちいいです」
「愛子さん。御免なさい。今日は、愛子さんが虐められる事を知っていましたが、言わなかったんです」
「ふふ。男の恥ずかしい物を丸出しにして勃起させて・・・。玉をブラブラさせて・・・。お前は本当にマゾだねえ。こうやって見られているのも嬉しいんだろう。正直にいいな」
玲子は武男の金玉に洗濯バサミをくっつけた。
「ほら。言わないと、愛子をいじめるよ」
「は、はい。そうです。僕は、今、見られて興奮しています」
「ふふ。お前は正真正銘のマゾだねえ。たっぷりいじめてやるよ。幸せだろう」
玲子はニヤニヤ笑って、武男の金玉につけた洗濯バサミをピンと指で弾いた。
「ご、御免なさい。愛子さん。愛子さんをこんな目にあわせてしまって。ぼ、僕を許して下さい」
「いいのよ。武男君。そんなに私を想っていてくれたなんて。嬉しいわ。私の方こそ御免なさい。武男君を、はっきりと裏切ったわ。一緒に耐えましょう」
愛子と武男は手をしっかり握り合った。
「ふふ。洗濯バサミは仲良く、半分ずつ、二人につけてあげましょう。愛子のアソコにも」
「や、やめろ。愛子さんの責めは、全部僕が受ける」
「あら、そう」
玲子は愛子につける洗濯バサミをどんどん武男の金玉につけていった。武男は洗濯バサミをつけられる度にうっと顔をしかめて、その苦痛に耐えた。

「じゃあ、次は武男に愛子のオシッコを飲ませてやろう」
愛子はギョッとした。玲子は愛子の口を無理矢理、開けてオレンジジュースを三本つづけて飲ませた。
「二人を離しな」
玲子に言われて男二人は武男と愛子を縛っている縄を解いて、二人を離した
「よし。二人とも後ろ手に縛り上げな」
言われて冬夫は愛子を、夏夫は武男を、後ろ手に縛った。
「よし。武男を仰向けに寝かせな」
言われて二人は武男を仰向けに寝かせた。愛子は後ろ手に縛られて困惑した表情で立ち竦んでいる。
「よし。じゃあ、武男の首を縛って、その両端を愛子の足首に結びつけな」
男二人はニヤッと笑って、武男の首を縄で縛った。二人は武男の顔を挟むように愛子を立たせた。そして縄の両端を愛子の足首に結びつけた。武男の真上には愛子の最も恥ずかしい部分が丸見えになっている。隠しようがない。
「ああっ。お願い。武男君。見ないで」
愛子は顔を真っ赤にして言った。武男は目を閉じて顔を横に向けた。
「さあ。愛子。武男にオシッコを飲ましな。そうすれば今日の責めはやめてやるよ」
愛子は尿意を催してきて、腰をモジモジさせ始めた。

愛子は後ろ手に縛められたまま、腰をモジモジさせている。
「ああー。も、もうガマンできない」
愛子は悲鳴に近い声を上げた。が、どうする事もできない。彼らに哀願しても聞くはずがない。愛子の両方の足首は武男の首に結び付けられていて、武男から離れる事は出来ない。
「ほら。武男はお前のオシッコを飲みたくてウズウズしてるよ。武男はお前の便器だよ」
言われて、愛子はそっと足元の武男を見た。
「愛子さん。僕は愛子さんの体から出るものなら、何でも喜んで飲みます。遠慮しないで下さい」
そう言って、武男は口を大きく開いた。
「ほら。ああ言ってるじゃないか。武男にオシッコを飲ませてやりな。しっかり、腰を屈めて。口以外に、一滴でももらしたら容赦しないからね」
愛子はついにガマン出来ずに下の武男をそっと見た。しかし、愛子にどうしてそんな事が出来ようか。
「ああっ。で、出来ない。そんな事」
愛子は顔を真っ赤にして首を振った。玲子は、意地悪げにあるものを取り出した。それはイチジク浣腸だった。三つ、取り出して並べた。
「ふふ。どうしてもオシッコを飲ませたくないというのなら代わりにウンチにするよ。さあ、どうする」
そう言って、玲子は愛子の目の前にイチジク浣腸を突きつけた。愛子は鳥肌が立った。まさか、いくらなんでもウンチをするわけにはいかない。ウンチよりはまだオシッコの方が、という妥協したような表情が愛子に現れだした。
「ほら。早くしな。しないと浣腸するよ」
そう言って、玲子は冬夫にイチジク浣腸をわたした。冬夫は笑いながら、進退きわまっている愛子の尻の穴に茎の先を当てた。愛子は、「あっ」と叫んで尻をギュッと閉じた。愛子の尿意はもう限界に近づいていた。
「愛子さん。早く。早く」
武男が気を使ってせかす。
「ほら。ああ言ってるじゃないか。早く出すもん出して、すっきりしな」
玲子が揶揄する。ついに愛子は覚悟をきめた。愛子は武男の顔を跨ぐと、ゆっくりと腰を屈めだした。
「ご、ごめんね。武男君。許して」
愛子は武男が本当に自分の尿を飲みたいのか、どうかはわからない。とことんまで思いやり、気を使う武男のこと。本当はいくらなんでも尿を本気で飲みたいと思っているのかどうかはわからない。だが、それを知る術はない。愛子の尿意は限界に達した。愛子はガクガク体を震わせながら、尻を武男の顔に近づけた。
「全部しっかり飲まさなければ駄目だからね」
玲子が叱りつける。
「御免なさい。武男君。あとで、十分つぐないます」
そう言って、愛子は大きく開かれた武男の口に狙いを定めた。
愛子の尿意は頂点に達した。
「ああっ。もうガマンできない」
愛子は叫んだ。
「み、見ないで。お願い」
丸裸で足を開き、粗相する姿を見られる。ただでさえ耐えられない屈辱である。しかも、事もあろうに男の顔を跨いで、その口の中にしようというのである。どうしてこんな姿を見られる屈辱に耐えられよう。だが、傍観者達の視線は愛子のそこに今か今かと、待つように釘づけになっている。
「ああっ。もうガマンできない」
愛子は大声で叫んだ。
「ゆ、許して。武男君」
武男は大きく口を開けて準備完了といった状態である。愛子はとうとう我慢に我慢を重ねていた尿道括約筋の力を抜いた。堰を切ったように愛子のそこから激しい水流が流れはじめた。それは武男の顔にかかった。武男はすぐさま水流が自分の口の中に納まるよう、体を動かして、頭を少し上にずらせた。堰を切った水流は、非常な勢いで、噴出し続けた。
「ああっ」
愛子は叫んだ。それは愛子にとって言語に絶する開放感の心地よさの悲鳴だった。いとしい武男に自分の尿をまさに飲ませているという嗜虐的な征服の喜びを、いけない、と思いつつ、愛子は感じていた。武男は咽喉をせわしくゴクゴクいわせながら玲子に言われたように飲みきろうとしている。が、放出されつづける水量があまりに多いので、飲みきれなかった分が口から溢れ出て、床の上に滴った。玲子たち、傍観者は、腹を抱えて笑いながら、この光景を眺めている。膀胱にたまっていたものはもう大部分出て、愛子は苦しみからもう解放されていた。が、毒食らえば皿まで、といった捨て鉢な気持ちが完全な排泄の開放感を得たいという事に、もはやためらいを感じなくなっていた。水流は、もはや弱まっていたが、膀胱にまだ残っているのを感じると、意識して腹筋に力を入れて、それを出した。ついに愛子は膀胱の中にたまっていたものを全て出しきった。愛子はあわてて、倒れるように床に座り込んだ。玲子は笑いながら、
「どう。出し切って気持ちよかっただろう」
などと、揶揄する。
「ほら。どうだったか、正直にいいな」
玲子が愛子の乳首をグイとつねった。
「は、はい。出し切ってスッキリしました」
一同がどっと笑う。
「武男に自分の尿を飲ませたということに加虐的な快感を感じていただろう」
言わなきゃ夏夫と冬夫のションベンも飲ませるよ、と言って玲子は立ち上がって多量の水を飲んで膨れた武男の腹をグイと踏みつけた。
「は、はい。玲子さんの言う通り、私は武男さんにオシッコを飲ませている時に快感を感じていました」
言って愛子はわっと泣き出した。
「よーし。よく言った。じゃあ、今日はこれで終わりにしてやるよ」
玲子は男二人に目配せした。玲子たちは、あーあと大欠伸をして、映画を見終わった観客のようにゾロゾロと引き上げていった。
後にはガランとした体育館に裸の愛子と武男がとり残された。
武男と愛子は、ともに、後ろ手に縛られ、武男は首を縄で縛られ、その両端は愛子の足首に結びつけられているため、身動きがとれない。
武男は顔をねじって愛子の片方の足首に口をもっていき、歯で愛子の足首の縄を解いた。そして顔を反対に向け、同様にもう一方の足首の縄も解いた。二人の結合は無くなって自由になった。
武男は後ろ手に縛められた上半身を起こして立て膝になって、愛子に背を向けた。
「愛子さん。僕の背中の所にきて、背中を合わせて下さい」
言われて愛子は立て膝で、背中を武男の背中にピタッと合わせた。武男は手首を縛られた不自由な手で、愛子の手首の縛めを解いた。自由になった愛子は、
「ありがとう」
と言って、武男の手首の縄を解いた。二人は完全に自由になった。
しかし二人はしばし服を取るのも忘れて、恥ずかしそうに顔を背けて、黙ってうつむいていた。外が暗くなりだした。ためらいがちにじっとしていた愛子は思いたったように武男の正面に行って土下座した。愛子は床に頭を擦りつけて武男に謝った。
「ごめんなさい。武男君」
愛子は何度も繰り返し言った。
「ううん。いいんだよ」
武男は恐縮しきっている愛子の肩を掴んでやさしい口調で慰めた。
「あのね。武男君・・・」
愛子はしばし言いためらっていたが、じっと武男を見つめ、重たい口を開いた。
「あのね。武男君。さっき、言った事、本当なの。私、武男君にオシッコを飲ませているうちに武男君に意地悪な快感を感じてしまっていたの。もう、私たちの付き合いも終わりね」
武男は優しく愛子を抱きしめた。
「ううん。いいんだよ。君の体から出るものを飲めた事は僕にとって本当に嬉しいことなんです。僕は君と完全なつながりをもてた事に、今、最高に幸せを感じているんです」
武男は裸の愛子をいっそう強く抱きしめた。そして二人は接吻した。二人は裸のまま、いつまでも抱き合っていた。

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安謝 (小説)(上)

2020-07-06 23:30:49 | 小説
安謝

小学校×年の時のことである。私は小学校×年の一年間を親と離れて相模湾を間近に望む養護学校で過ごした。私は幼少時から小児喘息があり、学校を休むほどではないが、激しい運動をした時とか、季節の変わり目には喘息発作が起こった。重症ではないが、軽症ではなく、中程度だった。この、喘息の発作というものは、同病を持つものにしかわからないが、相当に苦しく、横になって寝る事が出来ないのである。症状の軽い子だったら、発作が自然に治まるということもあるのだが、私の場合、一度発作が出ると自然におさまるという事はなかった。気管支拡張剤の吸入器を吸わねば発作は治まらなかった。が、吸入器を吸えば発作は治まった。父親も喘息を持っており、父の兄(伯父)も喘息で、伯父の喘息はひどく、一晩中眠れず発作で苦しむ事もしょっちゅうだった。小児喘息は軽症なら、八割かた自然に治る。残りの二割が治らず成人の喘息に移行してしまうのである。親は私を伯父のようにしたくなく、何とか治そうと、いくつもの専門医の所に私を連れて行って治療の相談をした。が、私の喘息はなかなか治らず、親は相模湾に面したところにある小児喘息の治療を専門的にしている国立の療養施設があると聞き、私をそこに入れる事にした。この施設はもと、結核の療養所だったのだが、戦後、抗生物質のストレプトマイシンの開発によって結核が治る病気となり、結核患者がいなくなったため、小児喘息の施設に変わったのである。ここは東京の国立小児病院の分院であり、医師はみな、小児科で喘息、アレルギーが専門である。寮と学校がつながっており、病院も同じ敷地内にあった。寮では保母さんがたくさんいて子供の世話をした。寮では乾布摩擦をしたり、減感作療法の治療を受けたりして、規則正しい生活をして、療養生活を送った。入園は随時可能で、退院も随時可能だった。このような施設は当時、日本ではここくらいしか無く、医師も小児科の喘息、アレルギーの専門医ばかりであり、子供は、北は東北から、西は関西からと、全国から集まっていた。

 どんな社会でもそうだが、古株は、その社会に長くいたプライドから新入りに対してある種の優越感を持つ。子供の世界にあっては尚更である。寮には安謝という、きれいな女の子がいて、その子は古株で番長的な存在だった。鼻っ柱が強く、男の前で「金蹴り」などと言って冗談半分に男を嚇したりしていた。だからといって、力だけの支配ではなく、活発で話題が豊富で行動的なのでみんなが自然に慕ってくるのである。彼女は神戸から来ていた。週末の日曜は親が寮に面会に来る事が許されていた。安謝のお父さんも神戸から時々、面会に来た。安謝はファザコンでこの時を楽しみにしていた。が、男の子の将棋の相手もしてくれるので男は安謝のお父さんに将棋を挑んだ。子供同士ではドングリの背比べであり、強い相手に挑めるのは楽しかった。私も相手をしてもらったが、飛車、角、落ちどころか、桂馬、香車まで落としてもらっても詰められた。安謝はせっかく遠くから面会に来てくれたお父さんとの貴重な時間をとられてむくれていた。安謝のお父さんは間違いなくハンサムだった。やはり、安謝の美しさは安謝のお父さんやお母さんが持っている美人の遺伝子によるものなのだなと子供ながらに羨んだ。
 安謝は自分を主人公にした遊びをよくやった。砂場で下級生が遊んでいると、何でもいいから面白いものを作るよう命じた。作っている所は見ないで、出来上がった物だけを安謝が見る。殿様気分である。言われた子供達は安謝を喜ばそうと、色々な砂の作品を手をかけて作る。出来上がると安謝が来て、嬉しそうな顔で作品を見て回り、潰していく。落とし穴があるな、と分かっていても安謝はわざとかかってみせ、作った子供達を喜ばせた。安謝は自分が女王という気持ちが強く、子供達は安謝を親分と慕っており、あこがれの親分を困らせる事が、子供にとっても安謝にとっても楽しいのである。
 また、寮でこんな遊びもやった。それは一対多数のかくれんぼである。安謝が寮のどこかに隠れ、それを皆が探し出すというものである。これは女の子より、男の子の方が面白がった。ちょうど人間の受精のように、一つの卵子に無数の精子が群がり集まるような官能があった。子供達も安謝もドキドキである。第一発見者が、安謝を見つけると、小躍りして喜んで、
「安謝みーつけた」
と大声を上げる。するとみんなが集まってきて捕まえられた安謝の体に触ろうと手を伸ばす。安謝は壁を背に皆におしくらまんじゅうの様にギューギューに押され、身動きがとれない。それをいいことに皆は安謝の体を触ろうと、無数の手が安謝の体に伸びてくる。中には人ごみにまぎれているのをいい事に、スカートを脱がそうとする手も伸びてくる。安謝は何とか身を守ろうとしつつも喜びの悲鳴を上げた。
 私はこの遊びに加わるほどの勇気はもてなかった。私は捕まえられて皆に触られている安謝を後ろの方で見ていたが自分もこの遊びに無邪気に加わって安謝に触れたらどんなに楽しいだろうと、遊びに参加している子供達を羨んだ。
 だがこんな遊びはさすがに安謝の方からは言い出しにくく、一回だけで終わった。
 だが、皆に捕まえられて喜んでいる安謝を見ると、いつもは親分格として威張っている安謝にもマゾ的な性格もあるんだなと分かって何か嬉しくなった。
 前の学校と違ってここでは人と親しみやすかった。が、私はもともとの性格がコドクで一人でいる事の方が多かった。人とたむろしてお喋りする事が嫌いで、一人で色々な事を夢想する事の方が楽しかった。学校でも休み時間の友人とのお喋りよりも授業が始まって、先生の話を聞く方が楽しかった。休み時間も友達とのお喋りに加わらず一人でポツンとしている事の方が多かった。

 入園して半年もたったある日の事である。寮のベッドに寝ている私の所に安謝が来た。
「あ、あの。岡田君」
私は驚いた。安謝のような絶えず友達とお喋りしている子が、私のような内気で無口な者にいったい何の用があるんだろうと疑問に思った。が、彼女はいつもと様子が違って、頬を赤らめてモジモジしながら言いたい事があるのに言いためらっているといった様子だった。
「なあに。僕に何か用」
私は迷っている彼女の緊張を解くよう、優しい口調で言った。
「あ、あの。今週の日曜、岡田君に話したい事があるの。昼ごはんの後、学校の教室で待っているわ。来てくれる」
いきなりこんな突拍子もないことを言われて、私は驚いた。別に用もないので、
「うん。いいよ。じゃあ、行くよ」
と言うと、安謝は頬を赤らめて、
「ありがとう」
と言ってソロソロと去って行った。

   ☆   ☆   ☆

日曜日になった。昼食を終えて教室へ行くともう安謝は来ていた。だが安謝の様子が変である。いつもは男を男と思わない安謝が、今日は何かソワソワと緊張し、ドキドキして怯えるように頬を赤くしている。
「あ、あの。岡田君」
と言って言葉を切ってしまった。私はいったいどうしたんだろうと驚いた。そもそも彼女のような一時足りとも友達とおしゃべりしていなくてはすぐに退屈してしまうような子が私のような話題の少ない無口な者を誘い出すこと自体、およそ彼女らしくない。これはよほど重大な悩みの相談だと思って私は彼女が言いやすいように優しい口調で問いかけた。
「どうしたの。誰にも言わないよ。何か悩みがあるなら言ってごらん」
と促すと、彼女はしばし迷った末、弱そうな目を床に向け、口唇を震わせながら切り出した。
「お、岡田君。私をいじめてくれない」
彼女は顔を真っ赤にして体を震わせている。彼女は心に支えていた物が取れたように少し緊張が軽減されたようだったが、これからどうなるかの緊張に体を震わせていた。
「どうして?」
「あのね。この前、皆で私を捕まえる遊びをしたじゃない。それと落とし穴も。それが何かすごく気持ちがよかったの。きっと悲劇のヒロインになりたい願望だと思うの。誰もいない教室で岡田君にこういう風に恥ずかしい告白をしている今も、快感を感じてドキドキしているの。」
「そういうのマゾっていうんだよ。いじめられて喜ぶの。この前の遊びで君はマゾの性格があるってすぐわかったよ」
「ふうん。マゾっていうの。私ってマゾなのね」
「じゃあ、いじめてあげるよ」
「おねがい。いじめて」
「何をしていじめればいいの」
「縛ってくれない」
彼女は持ってきた縄を恥ずかしそうに渡し、両手を背中へ廻して背中で手首を重ね合わせた。
私はどうしようかと考えた末、取りあえず、彼女の両手首を背中で縛った。そしてピョンと机の上に縄尻を持ったまま、飛び乗った。安謝は目をつぶって、立ったまま、
「ああー」
と喘ぎ声を出した。
「どうしたの」
と聞くと、安謝は縛められて抜けられない手首をモジモジさせ、体をくねって、縛めを抜けようとする仕草をした。
「ああっ。何かとっても気持ちいいわ。こんな気持ちよくなったの生まれて始めて。Hで、ソワソワして。でも先生に知られたら叱られるわよね。こんな事。きっといけない事だもの。でもいけない事をしてるってことが、よけい刺激的なの。岡田君。言わないでね。誰にも」
「ああ。言わないよ。僕は内気で、口が堅いからね。君が望んでる事だけを忠実に実行するよ」
「じゃあ、座らせて。縛られたまま座ってみたいの」
そう言って、彼女は膝を折り、私の視線を背中にして、柔らかい脚を折りたたむように横座りした。


安謝は瞑目したまま黙って頬を火照らせている。いつもは「金蹴り」などと言って男を威嚇している、この寮の女番長である彼女が縄尻をとられたまま、抵抗もせず、じっと座っている。彼女は目をつぶって微動だにせず、完全に自分の被虐の世界に浸りきっているといった感じである。私は縄尻をグイと強く引っ張った。安謝の体はつられてユラリと揺れた。
「あん」
彼女は体をいきなり揺すられて小さな喘ぎ声を漏らした。
「ふふ。君が今、どんな事を想像しているかわかるぞ。当ててやろうか」
私は嵩にかかった言い方をした。安謝は黙ったままうつむいている。私は机からピョンと飛び降りて縄尻をとったまま、安謝の前にドッカと座って、目をつぶって顔を火照らせている安謝の顔を覗き込んだ。
「ふふ。君は今、泥棒に捕まえられた美女の気分に浸っているんだろう」
安謝は恥ずかしそうにコクリと肯いた。
「ふふ。君は綺麗で、自分の美しさに酔っているから悲劇のヒロインになりたい願望が強いんだ。君は綺麗で気も強いから男を男と思わない強気な性格だけれど、一方では、多くの男達に、よってたかって虐められたい、とも思っているんだ。ただ君はプライドが強いからそれは人に言えないだけなんだ」
私は縄尻をグイと引いて言った。
「あん。そ、そうよ。その通りよ。で、でも、あんまり私の心を推測しないで。は、恥ずかしいわ。それと、この事は誰にも言わないでね」
「ああ。絶対、誰にも言わないさ。でも君もここまで心の内を言ってしまったんだから、もう心も裸になって、されたい事を何でも言ってごらんよ」
そう言っても安謝は答えないので、
「じゃあ、僕は綺麗な女の子を捕まえた泥棒だから好きな事をさせてもらうよ」
そう一方的に言って私は安謝の顔や体を触ったり、いじくったりしたが、安謝は嫌がる素振りを見せない。私は図に乗って安謝のスカートをめくろうとすると、さすがに彼女も「あっ」と反射的に声を漏らして腿をピッタリ閉じあわせた。
「嫌なの。嫌ならやらないよ」
と言うと、彼女は小さく首を振った。
「い、いいわ。で、でも、恥ずかしいわ」
「でも、その恥ずかしさが気持ちいいんだろ」
私が笑いながら言うと彼女は顔をほんのり紅潮させてコクリと小さく肯いた。
しばしの間、私は安謝の髪の匂いを嗅いでみたり、肩をつかんで、揉んでみたりと、彼女を玩具のようにしていたが、安謝は緊張から体を硬くしていたが、抵抗する様子も見せず、されるがままに身を任せている。
「安謝にこんな事をした男は僕だけだろうな」
そんな独り言を言いながら、私は安謝の顎に手をかけてグイと上げて、
「どう。泥棒に捕まって玩具にされている気分は」
と聞いた。
「は、恥ずかしいわ。で、でも何かフワフワした感じでとっても気持ちがいいわ」
安謝は頬を赤くして答えた。
「お、岡田君」
彼女は声を震わせて言った。
「なあに」
「あ、あの・・・」
彼女は何かを言いたげだが、決断がつかないといった様子で口唇をキュッと噛んで、もどかしそうにモジモジしている。
「なあに。何かしたい事があるんだろ。誰にも言わないから言ってごらんよ」
私はためらっている彼女に決断を促すよう強い語調で言った。彼女は目をそらして、口唇を震わせながら蚊の鳴くような小声で言った。
「あ、あの。わ、私、裸になってみたいの」
言って彼女は顔を真っ赤にして目をそらした。私はとたんに嬉しい気持ちになった。
「ふふ。いいよ。元々、女の人を捕まえた泥棒は女の人に逃げられないように裸にしちゃうんじゃないかな。さあ。安謝のストリップショーだ。しっかり見ていてあげるから、着ている物を全部脱いで裸になりな」
それじゃあ、と言って、私は安謝の背後に回って後ろ手に縛られていた両手首の縄を解いた。


安謝は全身を小刻みに震わせて、しばしためらっていた。無理もない。男の前で裸になることなど小学生の女の子には恥ずかしくてとても出来るものではない。しかし私は彼女が怖がりながらもそれを強く望んでいる以上、私は、私のため以上に、彼女のために決断を促そうと思った。
「ほら。早く脱ぎなよ。どうしても脱げないんなら脱がしちゃうよ」
そう言って私は彼女のスカートに手をかけて彼女のスカートを外そうとした。彼女は、
「あっ」
と言って、あわててスカートを手で押さえた。
「ま、待って。自分で脱ぐわ」
彼女は震える手でためらいがちにブラウスのボタンを外していき、ブラウスとアンダーシャツを脱ぐと中腰になってスカートも脱いだ。パンツ一枚という姿になった彼女は恥ずかしそうに急いでペタリと床に座り込んだ。脱いだ服をギュッと体に押し当てて少しでも肌を隠そうとしている。私は無理矢理、服を彼女から奪い取った。彼女は咄嗟に、「あっ」と声を出して両手でパンツ一枚になった体を覆った。私は彼女から奪い取った服を丹念に調べるよう手にとって見て、鼻を当てて、
「ああ。いい匂いだ」
などと、これ見よがしに揶揄した。彼女は顔を真っ赤にして両手でギュッと体を覆った。
「は、恥ずかしいわ」
「でも気持ちいいだろ。男に裸を見られると、女の子は恥ずかしいけど、気持ちがよくなるんだ。でも、それではまだ裸とはいえないよ。パンツも脱ぎな」
そう言っても彼女は両手で必死に肌を隠そうとしたまま動こうとしない。私はいきなりパンツを掴んでグイと引き下げた。尻が一瞬、半分近く見えた。彼女はあわててパンツを元に戻した。
「さあ。早くパンツも脱ぎな」
と、催促しても彼女はパンツまで脱いで全裸になる勇気はもてないといった様子でじっとしている。
「しょうがないなあ」
私は彼女の服をかき集めると立ち上がって窓を開け、勢いよく服を外に放り投げた。
「あっ。な、何をするの」
彼女は真っ青になって大声で叫んだ。
「ふふ。僕だって本当はこんな事したくないんだ。でも君がいつまでも決断できないでいるから仕方なくやったんだ」
私は彼女の前にドッカと腰掛けて、余裕の口調で言った。
「ふふ。こうすれば恥ずかしくてここから出られないだろう」
「お、岡田君。お願い。服をとってきて」
「じゃあ、パンツを脱ぎな。そうしたら、とって来てやるよ。僕だって本当はこんな事したくなかったんだけれど、君がいつまでも脱がないから仕方なくやったんだ」
そう言っても彼女は最後の一枚はなかなか脱ぐ勇気を持てず、モジモジしている。
「ほら。早くしないと誰かに見つかって持ってかれちゃうかもしれないよ」
しばし彼女は口唇を噛んで困惑していたが、やっとのことで決断がついたらしく、小さな口を開いた。
「わ、わかったわ。脱ぐわ。だから、お願いだから早く服をとってきて」
そう言って彼女は中腰になってパンツを脱いだ。脱ぎ終わると彼女は急いでしゃがみ込んで腿をピッタリと閉じ、脱いだパンツをギュッと押し当てて、アソコを隠している。私は力ずくで、「あっ」と叫ぶ彼女からパンティーを奪い取った。彼女は両手でそこを隠し、腿をピッタリと閉じ、全身を小刻みに震わせている。私は彼女から奪い取ったパンツをポケットに仕舞い込んだ。肌理の細かい弾力のある瑞々しい肌は透き通るように美しい。
「お、岡田君。全部、脱いだんだから早く服をとってきて」
彼女は熱を込めて哀願した。私は、「ふふふ」と笑いながら、
「まあ、そう焦らなくてもいいじゃないか。元々、君が裸になりたいと言い出したんだぞ。どう。今の気持ちは。気持ちいいかい」
と、彼女の訴えをいなした。
「お、岡田君。私、服のことが気になって気が動転しているの。お願い。早く服をとってきて」
裸で必死に訴える彼女を見ながら、私は女の子をいじめる喜びを感じていた。
(ふふ。俺だけなんだ。みんなのあこがれの安謝の裸をみたのは・・・。生意気な安謝をこんな惨めな姿にしていじめた男は俺だけなんだ)
私は心の中で無上に心地いい優越感と快感に浸っていた。私は出来る事なら、ずっとこのままでいたかったが、彼女が、
「お願い。早く」
と、何度もせっつくので私はしぶしぶ口を開いた。
「わかったよ。とってきてやるよ。そのかわり、俺の言う事には何でも従うんだぞ。約束できるか」
と、威圧的な口調で言うと、
「はい。岡田君の言う事には何でも従います」
と従順な口調で言った。
「よし。今のコトバ忘れるなよ」
と念を押し、私は立ち上がった。部屋を出ようとすると彼女はあわてて引き止めた。
「待って。パンツを返して」
私はニヤリと笑って、
「いいよ。全部一緒にとってくるよ」
と言って教室を出て行った。

   ☆   ☆   ☆

私は投げた服を拾って来て寮の引出しの奥にしまった。ちょうど三時のおやつの時間で牛乳とアンパンが配られていた。私は二人分とって胸に抱え、安謝の待つ教室へ戻った。が、安謝の姿が見えない。
「おい。安謝」
と大声で叫びながら私は机を縫うように探すと、安謝は一番後ろの机の傍らに縮こまるように屈んでいた。授業のない日の教室にはまず誰も来ないが、教室には鍵もかかっておらず、万一、私以外の誰かが来て、見つかったら大変だ、という極度の不安があるのだろう。彼女はあくまで私という内気で無口で、この男になら一生誰にも話さないだろうという確信から、勇気を出してこのような秘密の遊戯を私に持ちかけたのである。


私が安謝の手を引っ張って教壇の前に連れ出すと、彼女は再び急いで座り込んだ。
「お、岡田君。服は」
「服はここには持ってこなかった」
「ええー。どうして。持って来てくれると言ったじゃないの」
「いや。僕は取りに行く、と言っただけだ。ほっぽらかしとくと誰かに持ってかれちゃうかもしれないからね。でも、ちゃんと服は全部とってきて、誰にも見つからない所に隠しておいたからもう大丈夫だよ」
「そ、そんな。ずるいわ」
「ずるくなんかいよ。君が勘違いしただけだよ。ともかく君は僕の言う事は何でも従う、と言ったんだから約束は守りなよ」
私は黒板から白墨を持ってくると、床に直径三十センチメートル位の円を描いた。
「さあ。この中に入って」
「入れてどうするの」
「いいから入るんだ」
私は立て膝で躊躇している安謝の手を引っ張って、無理やり彼女を円の中に入れた。
「いいかい。この円の中から出ちゃダメだよ。出たら服はとってこないからね」
私は威嚇的な口調で言った。円は足の裏がやっと入るだけの大きさなので安謝は床に尻をつけることも出来ず、全裸のまま不安定な立て膝の姿勢で腿をピッタリ閉じ合わせ、両手で体を隠すように覆っている。
「さあ。おやつを持ってきたから食べさせてあげるよ」
そう言って私はアンパンをちぎって安謝の口の中に入れては、牛乳を飲ませた。私はパンをモグモグ噛んで牛乳と一緒に飲み込む安謝を痛快な思いで眺めていた。
(ふふ。まるで人形のようだ。しかもこの人形は生きているんだ。生きた女の子を人形のように扱うのはなんて楽しいんだ)
私は心の中でそんな事を考えながら安謝の咽喉がゴクリと動くのを楽しげに眺めていた。おやつを半分くらい食べさせてから、
「もっと食べたい」
と聞くと安謝は黙って首を振った。
「じゃあ、おやつはお仕舞いだ。さあ、立って」
私が安謝の髪の毛を掴んで引っ張ると、
「あっ。いやっ。髪は引っ張らないで」
と言って、ソロソロと立ち上がった。手で恥ずかしい所を隠しながらモジモジしている安謝は何ともみじめで可愛らしい。私は後ろに回って安謝のお尻を見ながら、
「ふふ。かわいいお尻だね。ピッチリ閉じ合わさってとっても可愛いよ」
と揶揄すると安謝は咄嗟に、
「ああっ。見ないで」
と言って、私の方に向きを変えた。安謝は恥ずかしい所を手で隠してモジモジと困惑している。私は安謝の正面にドッカと腰を下ろして、おやつの牛乳とパンを食べながら、裸で立っている安謝を笑いながらじっくりと眺めた。
「どう。今の気持ちは」
「は、恥ずかしいわ」
安謝は腿をモジつかせながら顔を赤くして言った。
「でも恥ずかしいだけじゃないだろ」
安謝は頬を紅潮させながらコクリと肯いた。
「今の気持ちを言ってごらん」
「な、何かとっても気持ちがいいわ。フワフワして雲の上に乗っているような気持ちがするわ。男の子に裸を見られて死にたいほど恥ずかしいはずなのに、その恥ずかしさが気持ちいいの。こんな気持ちになったの、生まれて初めてだわ」
「ふふ。じゃあ、もっと気持ちよくしてやるよ」
そう言って私はモップをもってきて、安謝の体や顔を押しつけた。
「あっ。いやっ」
と言いながら安謝は必死で汚いモップを手で払おうとする。嫌がれば、嫌がるほど私は興奮してきて、私は安謝をいじめ続けた。しばし、いじめた後、私は安謝のすぐ目の前に立ち、
「さあ。いつものように『金蹴り』と言って僕をおどしてみなよ」
安謝は、「えっ」と言って驚いたが、
「やらないと服は持ってこないよ」
と、おどすと安謝は顔を赤くしてそっと私の襟首を掴み、「金蹴り」と言って、足で蹴るまねをした。
「へへ。いつもはカッコいいけど、裸で嚇されてもぜんぜん迫力ないよ」
私がそんな揶揄を投げかけると、彼女は、
「いやっ。恥ずかしいわ」
と言って、すぐに手を引っ込めて体を隠した。
「どう。今の気持ちは」
「は、恥ずかしくて、みじめだわ。でも、なぜだかすごく気持ちがいいわ。岡田君。この事、誰にも言わないでね」
私は、「ふふふ」と笑って、
「もっと気持ちよくしてあげるよ」
と言って、安謝の片方の足首を縄で縛って、その長い縄尻を掴んで机の上に乗ってグイと引っ張った。
「ふふふ。円の中から出たらダメだぞ」
と言いながら、思い切り引っ張ると安謝は、「ああー」と叫びながら、足が円から出ないように苦しげに身を保っている。何しろ円は両足が並んでやっと入るだけの大きさなので両足をしっかり開いて踏ん張ることも出来ず、両脚をピッチリ閉じて全身をプルプル震わせながら、苦しげに眉を寄せ、必死で縄で足を引っ張られるいじめに耐えている。その姿は惨めこの上なく滑稽である。
「お、岡田君。私、もう耐えられない。許して」
そんな訴えは嗜虐心をよけい刺激し、私は容赦なく思い切り縄尻を引っ張った。
「ふふふ。男勝りの君が素っ裸でこんなみじめな苛めをされている姿をみんなが見たらどう思うかな」
とか、
「君のこんな惨めな姿をみんなに見せてやりたいね」
などと揶揄のコトバを投げかけた。安謝は全身をピクピク震わせている。
私が力強くグイと縄を引くと安謝は、「ああー」と叫んで倒れそうになった。
「お、岡田君。もう許して。私、耐えられない」
私はある面白い事を思いついて心の中で笑った。
「じゃあ、許してやるよ」
と言って、私は握っていた縄を放した。安謝は辛いいじめから開放されてほっと一息ついた。
「ありがとう。岡田君。やっぱり岡田君てやさしいのね」
安謝は私の善意を信じきっているといった様子で、恥ずかしい所を隠しながら、頬を赤らめつつも、恥じらいがちな微笑を私に向けている。私は机からピョンと飛び降りて、安謝の前にドッカと腰を下ろした。
「僕がそんなにやさしい男に見えるかい」
「うん」
安謝は微笑して肯いた。
「へへ。僕はそんなやさしくなんかないよ」
私は足首の縄を解くとピョンと立ち上がって安謝の首に縄をかけて縛った。そしてその縄尻を素早く股間をくぐらせ、後ろに回って、尻の割れ目に食い込ませて、背中の上に持っていき、安謝の首に巻かれている縄に通してグイと力任せに引き絞って、首の縄に硬く結びつけた。安謝は、「ああー」と悲鳴に近い声を出した。丸裸の体に縦に前後に一本だけ走る縄が柔らかい女の体の谷間に意地悪く食い込みながらこの上なく女をはずかしめている。
「ふふ。縄を放したのはこうするためだったんだよ」
安謝は苦しげな表情でアソコを両手で覆っている。
「ふふ。手で隠さなくても恥ずかしい所は縄で見えないから大丈夫だよ」
そう言って私はサッと後ろに回って、
「ふふ。お尻の割れ目に縄がしっかり食い込んでいるよ。どう。縄が食い込む感触は」
と揶揄した。
「お、岡田君。こ、こんなのっていや。お願い。縄をほどいて」
安謝はどうしようもないといった表情で哀願した。私はそんな哀願など全く無視して、
「ふふ。縄が食い込んで気持ちいいだろう」
と揶揄した。
「ふふ。僕は君のこの姿を見たくて縄を放したんだ。さあ、お尻にしっかり力を入れて縄をはさんでごらん。気持ちよくなるから」
私の暗示が効いたかのように、自然と安謝はピッチリと尻を閉じ合わせるようになった。
「ふふ。丸裸でこんな事をした女の子は君だけだろうな」
「みんなが君のこの姿を見たらきっと興奮するだろうな」
私は余裕の口調でそんな事を言ってからかった。
「お願い。岡田君。縄を解いて」
安謝は必死で哀願を続けるだけである。私はしばし、丸裸で一本だけ体に食い込む縄をつけられて困惑している安謝を最高の快感で眺めていたが、そろそろ許してやろうと思って立ち上がった。
「縄を解いてやってもいいけど条件があるぜ」
「な、なに。条件て」
「裸のままみんなの前で土下座して、今まで威張ってきた事を謝るんだ」
「ええー」
安謝は真っ青になった。
「あ、岡田君。いくらなんでもそんな事出来ないわ」
「ふふ。大丈夫だよ。本当にみんなの前で土下座するんじゃなくて、ここにみんながいる事を想像して土下座するのさ」
安謝はしばし黙っていたが、
「わかったわ」
と素直に答えた。私は安謝の体に食い込んでいる縄を解いて、首の縄も解いた。
「さあ。いいかげん立ち続けて、脚が疲れただろう。もう円の外に出ていいから少し座ってゆっくり休みなよ」
「ありがとう。岡田君」
「どう。気持ちよかった」
と聞くと安謝は頬を赤くして小さく肯いた。
安謝は目を閉じて、崩れるようにクナクナと床に座り込んだ。安謝はやっとほっと出来たといった様子で、横座りしている。
しばしの休息の時間が経った。


「さあ。もう疲れもとれただろう。四つん這いになって土下座しな」
言われて安謝は犬のように四つん這いになった。
「さあ。今まで威張り散らしてきたことをみんなに詫びるんだ」
「な、何て言えばいいの」
「自分で考えなよ」
「わ、わからないわ」
「しょうがないなあ。じゃあこう言うんだ。『私は今まで女の分際で威張り散らしてきて申し訳ありませんでした。これからは私がみんなの奴隷になります。みんなにどんな事を命令されても素直に従います』とね。この教室にみんながいて、君を見ていることを想像して言うんだよ。僕がみんなの代表者としてしっかり君を見ていてあげるから・・・」
安謝は床に目を落として四つん這いの恰好で小声で命じられたお詫びの言葉を言った。
「ダメダメ。全然、心がこもってないよ。もっとみんなに取り囲まれているようにイメージして心を込めて言わなきゃダメだよ。それともっと頭を床にこすりつけて土下座して、お尻を持ち上げて・・・」
そう言って私は安謝の美しい黒髪の頭を足でグイと踏みつけた。頭を踏みつけられるという屈辱的な事をされて安謝は反射的に、「ああー」と声を出した。
「ふふ。君は今までさんざん威張り散らしてきたのに今では丸裸で土下座して頭を足で踏みつけられている。みじめの極地だよ。どう。今の気持ちは」
「み、みじめだわ。でも、いいわ。死にたいほどみじめなのに、なぜかすごく気持ちがいいわ」
「みんなに心を込めて詫びる気持ちになった」
「はい」
「じゃあ、お詫びの誓いをいいな。僕はみんなの代表者としてしっかり君を見ていてあげるから」
そう言って私は安謝の頭から足を下ろした。艶やかなストレートの黒髪を床に垂らして丸裸で四つん這いになっている安謝はまるで雌犬のようである。安謝はしばし黙ってじっとしていたが、やっと謝罪の言葉を心を込めて言う心境になったとみえ、自ら床に頭をこすり付けて声を震わせて謝罪の言葉を述べだした。
「わ、私は今まで女の分際で威張り散らしてきて申し訳ありませんでした。これからは私がみんなの奴隷になります。みんなにどんな事を命令されても素直に従います」
言い終わっても安謝はその姿勢のまま全身をピクピク震わせながら、両手で顔を隠すようにして頭を床にこすり付けている。
「どう。今の気持ちは」
私が笑いながら聞くと安謝は声を震わせながら言った。
「い、いいわ。みじめになるのがこんなに気持ちがいいなんて・・・。私、本当にみんなにこのみじめな姿を見られたいわ」
私は、「ふふふ」と笑いながら安謝の後ろに回って高々と上がっているお尻の肉を掴んで、グイと開いた。可愛らしい小さな穴がすぼまっている。
「あっ。いやっ。岡田君。そんな所見ないで」
私は安謝の哀願を無視してゆとりの口調で揶揄した。
「ふーん。お尻の穴ってこうなっているのか。はじめて見た」
「い、いや。恥ずかしいわ。見ないで」
安謝は尻の穴を見られないようにと、必死で尻の穴をすぼませようとしている。尻の穴はピッチリとすぼまっているが、力んでいるためまるで生き物のようにピクピク震えている。
(お尻の穴も口と同じように自分の意志で開けたり、閉めたり出来るものなんだな)
そんな事をあらためて気づかされて、私は可笑しくなった。私が尻から手を放すと尻の割れ目は元のようにキュッと閉じあわさった。
「君の体は隅から隅まで見てあげるよ。今度は仰向けになって寝てごらん」
「あ、仰向けにしてどうするの」
「いいから仰向けになるんだ」
私が恫喝的な口調で言うと安謝はしぶしぶ仰向けになった。両手で女の最も恥ずかしい所を覆っている。
「さあ。手をどけて」
「い、いや。恥ずかしいわ。許して」
「いいからどけるんだ。服を持ってきてやらないぞ」
私は恫喝的な口調で言ってアソコに当てている手をのけて脚をグイと思い切り開いた。安謝は、「あっ」と叫んで膝を曲げて脚を閉じようとしたが、私は素早く体を脚の間に入れて脚を閉じられないようにした。安謝は真っ赤になった顔を両手でギュと力強く覆った。私は、はじめて見る女の割れ目をまじまじと眺めながら、
「ふーん。女の子のここってこんな風になっているのか・・・」
と、ことさら驚いたように言って、割れ目をそっと手でなぞってみたり、そっと開いてみようとした。安謝はもう抵抗が無駄だと思ったらしく、閉じようとしていた腿の力をだんだん抜いていった。
「ふーん。すごいや。安謝のここを見たのは僕だけだろうな。ここからオシッコが出るんだね」
「そ、そうよ」
安謝は両手でしっかり覆った顔から恥ずかしそうに小声で言った。私はこんな機会はもう二度と来ないんじゃないかという焦りから、しっかり脳裏に焼きつけておこうと顕になった割れ目を凝視しながら、割れ目をさかんに指で触った。
「お、岡田君。恥ずかしいわ。もう許して」
安謝は蚊の泣くような小さな声で言った。私はもう今日はこのくらいにしようと思って、脚の間から出た。
「もう今日はこのくらいにしよう。君も疲れちゃっただろ。服をとってくるよ」
そう言い残して私は寮の自分の机の奥に隠に入れた安謝の服を取り出して、再び裸で一人、私が戻るのを待っている安謝がいる教室へ戻った。


安謝に服を渡すと安謝はほっとしたよう表情になって、
「ありがとう」
と言った。パンツや服を着ていく所を見ると何かとても興奮した。脱いでいく時よりも裸から服を着ていく時の方がもっとエッチに見えた。服を着てしまうと安謝はペタリと座り込んだ。
「今日はどうだった」
「気持ちよかったわ」
彼女は顔を真っ赤にして照れくさそうに答えた。
「何が一番気持ちよかった」
「わからないわ。全部気持ちよかったわ」
「僕も今日は最高に楽しかった。いじめちゃってごめんね」
と言って私は安謝の手を握った。柔らかく温かい女の子の手の感触が伝わってきた。
「あ、あの。岡田君」
と言いかけて安謝は言いためらった。
「なあに」
「また今日みたいにいじめてくれる」
彼女はパンパンと火照った顔を手で叩いて言った。
「いいの?僕は気持ちいいからいいけど、何か君がかわいそうだよ」
「いいの。岡田君は優しいし、口が堅いから安心して身を任せられるもの。だってこんな事、頼めるの、岡田君しかいないもの」
「でも・・・」
と言って彼女は言いためらった。
「でも、私が私でなくなっちゃいそう。こんな事をしちゃうと、もう男の子に会わす顔がないわ。もう男の子と対等に話すことは出来ないわね。私、本当に男の子にじめられる弱い女の子になっちゃいそう」
「それは困ったな。僕は君の性格までは変わってほしくない。男を男と思わない、強気なところが君の魅力なんだから」
私はある名案を思いついた。
「それじゃあ、こうしよう。みんなが見ている所で君が僕をビンタしたり、土下座させたりしていじめるんだ。僕は泣いて謝るんだ。そうすれば君も今日のことは忘れていつもの君に戻れるよ」
安謝は私の提案に驚いたらしく、目をパチクリさせていたが、やっと決心がついたらしく微笑した。
「ふーん。何か面白そうね。確かにそんな事をしたらいつもの私に戻れそうな気がするわ」
「決まり。じゃ、そうしよう。手加減しなくていいからね。君はきれいな女番長だから魅力があるんだ。君がおとなしい女の子になったら魅力がなくなっちゃうよ。この遊びは僕と君だけの秘密の遊びで、一生、誰にも知られないから大丈夫だよ」
「ふふ。やっぱり岡田君を選んでよかったわ。でも、二人きりの時にはうんといじめてね」
「うん。そうだ。真がいるだろう。あいつは僕を親分と慕っているから、今度は真を連れてきて、二人がかりで君をいじめるってのはどう。僕が誰にも言わないよう、約束させるよ」
「ふふ。いいわよ。面白そうね。岡田君一人にいじめられるより、二人がかりでいじめられた方がもっと気持ちよくなりそうな気がするわ」
「真には君がマゾだということは言わないでいる事にしよう。そうしたらあいつも本気になって君をいじめようとするだろうから。僕が君の弱みを握っていて、君は僕には逆らえないということにしたらどう」
「そうね。その方が面白そうね」
こう言って私と安謝は別れた。

   ☆   ☆   ☆

翌日になると安謝は昨日の事などどこ吹く風と、いつもの男勝りの女番長に戻っていた。絶えず新しい事を求めている子供は一晩寝れば前日の事などもう忘れてしまう。元々、性格の地が男勝りの勝気なのであるからほっとけば元の性格に戻るのは極めて自然な事である。大海を自由に泳ぐ魚が昨日は一時、狭い水槽に入ったようなものであり、再び海に戻れば魚は窮屈さから開放されて一層元気に泳ぎだす。それと同じである。
 昼食の後、いつものように安謝の取り巻きが安謝の所に寄って来た。安謝が番長として皆を支配しているのは、安謝の負けん気の強い勝気な性格のためだけではない。彼女は美しい上、陽気で面白い話や遊びを提案するので、皆が自然と何か面白い事はないかと安謝の所に集まってくるのである。巫女のようなカリスマ性が安謝にはあった。
安謝の子分に呼び出されて、私は安謝の前に引き出された。その瞳は残忍に輝いていた。昨日の約束を忠実に守ろうというよりは、昨日の仕返しをしてやろうという意地悪な目だった。安謝はもう昨日のことなど全く忘れているかのようだった。
「私のパンツが一枚なくなっていたけど、こいつの机の引き出しの中にあったんだ。こいつが盗ったんだ。こいつは人のものを盗む可能性があるよ。皆でいじめてやりな」
安謝が言うと皆が私に寄りたかって来た。
「こいつ。安謝さんの物を盗るとはとんでもないやつだ。しかも下着を盗るなんて変態なんだな。もう二度とそんな気が起こらなくなるよう、懲らしめてやる」
私はあせって抗議した。
「僕じゃない。僕は安謝さんの下着なんか盗ってない。僕を犯人にするため、誰かが僕の机の引き出しの中に入れたんだ」
「嘘をつくな。白状するまで拷問するぞ」
私は安謝の子分達に両腕を掴まれてビンタされ、寄ってたかって蹴とばされた。私が倒れて、海老のように縮こまっても皆は私を蹴ったり踏んづけたりする。悪漢が私のズボンごと引きずりおろそうとする。私はあわててズボンを掴んだ。
「や、やめろ。証拠もないのに。岡田さんをいじめるな」
後ろの方で見ていた真が出てきて縮こまっている私を庇うように体を寄せた。
「安謝さん。どうします。こいつ、岡田の子分だから・・・。もしかするとこいつが盗ったのかもしれませんよ」
「そうだね。二人ともまとめてヤキ入れてやりな」
安謝がそう言うと、子分達は再び私と真を蹴ったり、踏んづけたりしだした。一人が穢いモップを持ってきて、私や真の顔になすりつけた。安謝は女王のように余裕で眺めていたが、「ふふふ」と笑い、私の前に来ると足で顔をグリグリと踏みつけた。体重を乗せて安謝は容赦なく私を踏みつける。彼女は昨日のしかえしを思うさま楽しんでいるのだ。
「やい。この変態野郎。白状する気になったか」
「は、はい」
足で踏みつけられて、歪んだ顔から私が小声で言うと、安謝は足をどけた。
「よし。じゃあ、四つん這いになって本当の事を白状しな」
言われるまま私は皆の前で四つん這いになり、仁王立ちしている安謝の方に頭を向けた。子供の世界に法などない。いじめをやめてほしければ相手の求めている事を言うしかない。私は皆の前で四つん這いになっている恥ずかしさとみじめさから声を震わせて言った。
「安謝さん。正直に白状します。私が安謝さんのパンツを盗りました。ごめんなさい」
「ほーら。やっぱりこいつだった。みんな、ヤキを入れてやりな」
安謝は勝ち誇ったように言い、グイと足で頭を踏んずけた。
「とんでもないヤツだ。この変態野郎め」
皆はそう言いながら体を盾にして庇う真ともども、力任せに蹴ったり踏んだりした。

   ☆   ☆   ☆

 下着泥棒として白い目で見られてみじめに過ごしたその日の夕食後、安謝は私の肩を黙ってポンと叩き、人目のつかない場所に連れて行った。
「岡田君。ごめんね。皆の前でひどい事させちゃって。明日、岡田君が下着を盗ったんじゃないとわかったって、みんなに言っとくからね」
安謝は私と二人になると、皆の前とはうって変わった大人しい口調になる。
「うん。ありがとう。でも、これで君もマイペースでやってける自信がついただろう」
「うん。本当いうと、今日は本気で岡田君に仕返しして楽しんじゃったわ」
安謝は笑って舌を出した。
「じゃあ、今度の土曜は今日の仕返しだ。今度は真を連れて来るけどいい」
と聞くと、安謝は、
「ええ。いいわよ。どんな風になるか楽しみだわ」
と言って笑った。
「君は本当に嫌がる女の子を演じきってごらん。そうすれば君がマゾだということもばれないし、真も興奮して喜ぶよ」
「わかったわ。私、演じきるわ」

   ☆   ☆   ☆

土曜日になった。私が真に、
「おい。今日の昼御飯の後、教室で安謝を徹底的にいじめ抜くぞ。お前も手伝え」
と言うと、真は「えっ」と驚いて目を白黒させて私を見た。
「この前の仕返しですか。でも・・・」
と言って真は言いためらった。私はニヤリと笑い、
「でも、そんな事出来るんですか、と言いたいんだろう。まあ、オレに任せておけ。お前もあの生意気な安謝を徹底的にいじめろ」
「でもそんな事したら後でひどい仕返しされますよ」
私は笑いながら、真の肩を叩いた。
「大丈夫だ。仕返しなんか絶対されない。それはオレが保証するから、お前も徹底的にいじめ抜け」
真は狐につつまれた様な顔で私を見た。

   ☆   ☆   ☆

昼食後、真を連れて学校の教室へ入った真は、「あっ」と驚嘆の声を洩らした。誰もいない教室の床の上に安謝が両脚をそろえて、俯いて唖者のように押し黙っている。女番長として、顎で男を使っている彼女とはとても思えない。私は笑いながら安謝の肩に足をかけて体を揺すった。
「おい。安謝。真が来たぞ。この前、お前は何の罪もない真をリンチしたな。土下座して心を込めて詫びろ」
そう言って私は机の一つにピョンと飛び乗って、ドッカと胡坐をかいた。安謝は命じられた通り、脚をそろえて正座し、真の方に両手をついて頭を深々と下げた。
「真君。この前はひどい事をしてしまって御免なさい。今まで女のくせに生意気だった私を許して下さい。これからは男の子の言う事には素直に従うつつましい女の子になります。今日は、この前のお仕置きを心いくまでして下さい」
真は安謝に土下座された上、こんな事を言われて面食らっている。
「おい。真。ああ言ってるぞ。思う存分いじめてやれ」
私は笑いながら言ったが真は行動する決意をもてないで躊躇している。
「いいです。親分。後でいじめられちゃいますから」
「はは。大丈夫だよ。お前が何をしてもいじめ返されたりはしないよ」
そう言っても真は後の仕返しを怖れて安謝に触れようとしない。無理もない。しかたがない。私はまず自分がやって見せて真の警戒心を解こうと思った。私は人形のようにじっと座っている安謝の前にドッカと腰を下ろすと、安謝の耳や鼻をつまんだり、頬を撫でたりと、じっくり丹念に安謝の顔をいじくった。安謝は人形のように何の抵抗もせず、弄ばれている。横で見ていた真は私のいたずらを一心に見ていたが、自分もやってみたいといった、羨ましげな表情でギュッと固く拳を握り締めている。私はそんな真を笑って見てから、遠慮なく安謝の頬っぺたを力強くピシャリと叩いた。安謝は、
「ああー」
と声を出して辛そうな表情を一瞬見せたがすぐに目を瞑ったまま、顔を正面に戻した。私は安謝の鼻をつまみながら真に、
「どうだ。お前もやってみるか」
と笑いながら言った。真は疑問に満ちた目で私を見て、
「どうして親分は安謝にこんな事ができるんですか」
と身を乗り出して聞いた。
「ははは。まあ、それは秘密だな。まあ、俺が安謝の、ある秘密を握っているってとこだな。だからお前も遠慮しないで、何でも好きな事をしろよ。仕返しなんかされないから安心しな」
「ほ、本当ですか」
と真は恐る恐るの口調で聞いた。
「ああ。本当だとも。お前も安謝の体を触りたいだろう。こんな機会はもう二度とないかもしれないぞ」
ほら、好きなだけ触ってみろよ、と言って、私は真のためにいざって安謝の前からどいた。真は、正座して頬を紅潮させて俯いてじっとしている安謝の前に来ると、私に許可を確信するかのごとく、私を一瞥した後、しばし不動の安謝をじっと見ていたが、恐る恐る腿の上にそっと手を載せた。ピクッと安謝の体が震えたが安謝は何も言わず、姿勢を変えず、じっとしている。真はだんだん安心してきたらしく、安謝の腹や胸、腕などを触りだした。
「どうだ。気持ちいいだろう」
私は笑いながら聞いた。
「ええ。柔らかくて、温かくて最高です。憧れの女番長の体を触れられるなんて夢のようです。でも安謝さんは何で私なんかにこんな事をされて、怒らないんですか」
「ふふふ。理由なんて、あんまり考えなくてもいい。ともかく安謝は今はお前のオモチャなんだから、もっと遠慮しないでやりたい事をやりな。このあと二人がかりで容赦なくいじめ抜くんだからな」
真はほっと安心したという表情で遠慮なく安謝の体を触りだした。髪を撫でてみたり、鼻を近づけて服の上からクンクンと匂いを嗅いだりした。そして正座している安謝の後ろに回って背後からギュッと抱きしめた。
「どうだ。満足したか」
「ええ。親分。十分楽しませていただきました」

   ☆   ☆   ☆

「よし。じゃあ、今度はもっと面白い事をするぞ」
私は安謝の肩を掴んで立たせた。私は持ってきた四本の縄を出した。私は二本の縄で安謝の手首と足首を縛りながら真にも二本、縄を渡し、同じようにする事を命じた。真は嬉しそうな顔で安謝の手首と足首を縛った。両手、両足を縄で結ばれて、安謝は困惑した顔つきをしている。私たちは縄尻をとって少し離れた。
「な、何をするの」
安謝は不安げな顔つきで聞いた。
「ふふ。忍者ゴッコさ。君は組織から抜けようとした女忍者で、見つかって捕まっちゃったのさ。忍者の世界から抜ける事は出来ないのさ。追っ手がどこどこまでも追いかけて、捕まえるのさ。この縄は鎖鎌で僕達は見事、君を捕まえた追っ手というわけさ」
私達は、「えーい」と言って、笑いながら縄を引っ張った。私はたっぷり時間をかけて楽しもうと、はじめは思い切り力を入れず、安謝に抵抗できる余地を与えた。安謝は手足を引っ張られないよう、両手、両足に力を入れて、ピッタリ脇と足を閉じて縮こまっている。しかし両手足を縄で縛った以上、もうこっちのものである。いつ、引っ張られるかわからず、おびえて全身をプルプル震わせている姿は実に可愛らしい。
「よし。それじゃあそろそろ本気で縄を引っ張るぞ」
私と真は「えーい」と言って安謝の手足を縛った縄を力いっぱい引っ張った。どんなに手足を縮めようと力を入れて抵抗しても男二人の力にはかなわない。両側から手足を引っ張られ、固く閉じていた体はだんだん開かれてゆき、大の字になっていく。手足を縄で縛られて、たぐられている姿は全く、捕らえられて鎖鎌を絡められ、困惑しているみじめな忍者そのものである。しかも捕らえた忍者は美しいくの一である。
「ふふ。どうだ。真。こうやって女をいじめる気持ちは」
「最高に楽しいです。女をいじめる事がこんな楽しいなんて思ってもいませんでした。俺、今、興奮しておちんちんが固くなっちゃっています」
そう言って真は縄をグイと引っ張った。手足を縄で縛られて脂汗を流しながら大の字になっていく安謝はまるで蜘蛛の巣にかかった蝶のようである。いきなり体重の乗っている足をグイと引っ張ると安謝は反射的に、
「ああっ」
と叫び、足が滑って転びそうになって、あわてて踏ん張る。それが面白くて私達は安謝がほっとして力を抜くとグイと足首を縛っている縄を引っ張っては足を滑らせた。安謝はいつ足を引っ張られるかわからない不安に困惑して体をプルプル震わせている。その姿はいじめる方にとってはこの上なく愉快である。耐えられなくなって座り込みそうになるとすぐに両方から手首を縛っている縄を上に引っ張って、それを阻止する。
「おい。俺がしっかり手と足の縄を引っ張っててやるからお前は安謝の足を持ち上げてしまいな」
と言うと、真は、
「へい。わかりやした」
と言って、安謝の片足を思い切り引っ張って宙に引き上げた。安謝は片足を宙に引き上げられて、苦しそうに片足で立ってグラグラ体を揺らしながら何とかバランスを保とうとしている。責めのための縄を今度はバランスをとるための曳網にして、よろけそうになると反対側の手を引っ張って倒れないようにした。無理矢理、片足で立たされて、操り人形のようにバランスをとらされて、安謝は脂汗を流して、全身をプルプル震わせている。
「あ、岡田君。もう許して」
安謝は片足立ちの辛さに耐えられず、哀願した。片足で無理矢理立たされる辛さは想像に余りある。私はもうそろそろ許してやろうと思って引っ張っていた縄を放した。

「じゃあ忍者ごっこはおわりだ」
私は真に命じて安謝の首と足首の縄と解かせた。安謝にはそのままたっているように命じた。辛い意地悪から開放されたものの、安謝は片足立ちの辛さからハアハア息を切らせている。が、真はやる気満々という様子である。安謝が一休みして呼吸が元に戻ると私は真の欲望を満足させてやろうと、獲物に襲いかかろうとする様な目つきで安謝を見ている真に向って言った。
「おい。真。今度はスカートをめくってやりな」
「へい。親分」
真はもう私の命令に従って安謝をいじめることに全く抵抗を感じなくなったという感じで、
「へへへ」
と笑いながら、腰を屈めて、おびえた表情の安謝に忍び寄った。真が下から安謝のスカートの中をのぞこうとすると、安謝はおびえた表情で、
「いや」
と言って両手でスカートを押さえた。真は待ってましたとばかり、守りが手薄になったスカートの後ろをパッとめくった。白いパンツが丸見えになった。安謝はあわててスカートの後ろを押さえようとした。真は、してやったもので、片手で後ろのスカートを持ち上げつつ、今度は守りが手薄になったスカートの前を勢いよくめくり上げた。白いパンツが丸見えになった。安謝は、「あっ」と言って、片手で後ろを押さえつつ、片手で前を押さえた。しばしスカートを持ち上げつつ、安謝が困惑するのを楽しげに見ていた真は一旦めくっていたスカートから手を放した。が、安謝はいつ来るかわからない真の攻撃におびえながら、両手で必死にスカートを押さえている。が、女のスカートというものは360度の方向から簡単に攻撃されてしまう極めて脆弱な鎧である以上、手がもう一本、後ろについてでもいない限り、守り抜く事は不可能である。真は、いつ攻撃してくるかわからないで困惑してスカートをギュッと両手で押さえて体を小刻みに震わせている安謝を楽しげに眺めつつ時々素早くスカートの守りの手薄な所をサッとめくり上げては、安謝を困らせて楽しんだ。
私は真を呼び寄せて、安謝に聞こえないように耳打ちした。
(安謝のスカートを脱がしちゃいな)
真はそれを聞くと笑って肯いた。真が再び安謝に近づいていくと安謝は再びおびえた表情でスカートを両手で押さえ、守りの用意をした。真は素早く安謝に飛びつくとスカートのゴムに手をかけて力任せにグイとスカートをずり降ろし、一気に足から抜き取った。スカートを脱がされて白いパンツが顕になった。安謝は、「あっ」と叫んであわててパンツを手で押さえた。
「おい。真。どうだ。面白いか」
「へい。親分。最高に楽しいです」
真は笑いながら安謝から奪い取ったスカートを振り回した。
「じゃあ、今度はパンツを脱がしちゃいな」
「いいんですか。そんな事して」
「ああ。かまわないさ。パンツを脱がしちゃいな」
「や、やめて。岡田君。そんなこと」
安謝は真っ青になって叫んだ。が、私は笑いながら、かまわずやるよう、真に目で合図した。真が笑いながら安謝に近づいていくと、安謝は脚をピッチリ閉じてパンツのゴムを両手で力強くギュッと押さえ、全身をプルプル震わせながら、真の攻撃に対する守りを固めている。真はしばし困惑している安謝を楽しげに眺めていた。が、私が、
「おい。眺めてないで早くやりな」
と言うと、真は獲物を捕らえようとする動物の目つきになり、隙を狙ってサッと安謝に飛び掛かり、守りの手薄なパンツの後ろのゴムを掴むと力任せにグイと引き下げた。ピッチリと閉じ合わさった尻の割れ目が顕になった。安謝は、「あっ」と叫んで、あわててパンツを引き上げようとした。が、真は引き摺り下ろそうとする力を弱めない。尻はもうほとんど全貌を顕にしているが、安謝は何としても脱がされないよう必死でパンツのゴムを掴んで引き上げようとしている。もう尻は丸見えになっているのに脱がされかかったパンツを必死で握っている姿は滑稽この上ない。私は安謝のみじめな姿を余裕で眺めながら、「ははは」と笑い、
「もうお尻の割れ目が全部見えちゃってるんだから無駄な頑張りはやめて、脱がされちゃいな」
と揶揄した。私は真の傍らへ行って安謝に聞こえないようある事を耳打ちした。真はニヤリと笑ってパンツのゴムを放した。安謝はいそいでパンツを引き上げた。また、いつ下ろされるかわからない不安から安謝はギュッとパンツを握りしめている。おびえた表情の安謝は実に可愛らしい。そんな安謝を私と真はドッカと床に腰を下ろしてニヤつきながら眺めていたが、私はおもむろに立ち上がると、安謝の後ろに回って背後からサッと素早く両腕を掴んで羽交い絞めにした。
「あっ。何をするの」
「ふふ。お前が素直に脱がないから脱がせるだけよ」
そう言って私は安謝をガッチリ羽交い絞めにしたまま真に目配せした。
「おい。安謝のブラウスのボタンをはずせ」
真は待ってましたとばかり、ピョンと立ち上がると安謝のブラウスのボタンを上からゆっくりはずしていった。私は真に命じて、ブラウスを脱がせ、その下のシャツも脱がせた。
安謝はもうパンツ一枚というみじめな格好である。私は安謝を羽交い絞めにしたまま真に命じた。
「おい。真。オレがガッチリ押さえててやるから安謝のパンツを脱がすんだ」
と言うと真は、
「へい。わかりやした。親分」
と言って、無防備になった安謝のパンツをサッと掴んだ。私はあわてて真に注意した。「おい。あせって一気に脱がすな。じっくり時間をかけて脱がすんだ。オレがしっかり押さえててやるから膝の上あたりの途中でとめて安謝の困る姿をたっぷり楽しめ。こんな事はもう二度と出来ないかもしれないぞ」
と言うと真はニヤリと笑って、
「へい。わかりました。親分。どうもありがとうございます」
と言って安謝のパンツを再び掴み、ゆっくりと下ろしてゆき、アソコが見えるギリギリの所まで下ろすと、いったんパンツから手を放した。脱がされかかったパンツはみじめに腿の途中でとどまっている。安謝は何とかパンツを引き上げようと脚をモジつかせたが無駄だった。安謝は顔を真っ赤にして腿をモジつかせて何とか恥ずかしい所を隠そうとしている。
「や、やめて。岡田君」
安謝は恥ずかしさに耐え切れずに叫んだ。私は安謝の哀願など全く無視して、ガッチリと羽交い絞めにした背後から、からかうように声をかけた。
「どうだ。今まで子分だった真にこんな姿を見られる気持ちは」
「は、恥ずかしいわ。死にたいほど恥ずかしいわ」
そう言って安謝はピッタリ閉じ合わせた脚をモジつかせた。私は真に目を向けて、
「おい。真。安謝のみじめな姿をしっかり頭に焼きつけておけ」
と言ったが、真は言われるまでもなく、見えるか見えないかギリギリの状態になっている女の最も恥ずかしい所をゴクリと唾を飲み込みながらじっと見つめつづけている。
「お願い。岡田君。パンツだけは脱がさないで」
「ふふふ。ダメだな。お前が困れば困るほどオレ達は楽しいんだ」
私は安謝にそんな事を言ってから、真に目を向けて、
「よし。もう十分楽しんだだろう。完全に脱がしちまいな」
と命令すると、真は中途半端になっているパンツを掴んで一気に下まで下ろし、片足ずつ足を持ち上げてパンツを抜き取った。安謝は一糸まとわぬ丸裸にされて、「ああー」と叫んだ。
「ふふ。どうだ。今まで子分だった真に丸裸を見られている気分は」
「み、みじめだわ。死にたいほどみじめだわ」
安謝は丸裸にされても真に見られないよう、必死で腿を寄せ合わせている。

私は羽交い絞めを解き、床に散らかっているパンツや服を全部拾うと、少し離れてドッカと腰を下ろした。安謝は前後から私と真にはさまれて、両手で恥ずかしい所を隠しながら、腿をピッタリ閉じてモジモジしている。
 その時、三時のおやつの知らせが寮の方でしたので、私は真を呼び寄せて、安謝の服を渡し、寮の、ある所に隠してから三人分、おやつを持ってくるよう命じた。
真は笑って安謝の服を小脇に抱え急いで出て行った。

   ☆   ☆   ☆

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安謝 (小説)(下)

2020-07-06 23:27:59 | 小説
数分もたたずに真は三人分のおやつを胸に抱えて戻ってきた。私は真からおやつの牛乳とアンパンを受け取ると、真に命じて自分のおやつを持って、裸の安謝の正面に座るよう命じた。真は言われた通り、おやつを持って裸の安謝の正面に腰を下ろした。安謝は前後から私と真にはさまれて、両手で恥ずかしい所を隠しながら、腿をピッタリ閉じてもどかしそうにモジモジしている。
「おい。真。おやつを食べながら安謝の裸をとっくり鑑賞するんだ」
真は笑って呼応した。私達は胡座をかいて、おやつのパンを食べながら牛乳を飲み、裸の安謝をとっくり鑑賞した。
前後二人の視線に晒されて安謝は困惑している。安謝は真の方に体を向け、恥ずかしい所を見られないようにと、腿をピッタリ閉じて、両手で隠しながら腰を後ろに引いている。
「ふふ。お尻の割れ目が丸見えだぜ」
私が後ろから揶揄すると安謝はあわてて片手をお尻に当てて割れ目を隠した。丸裸を前後二人の視線から守ろうと困っている姿は実に滑稽である。
「は、恥ずかしいわ。お願い。岡田君。服を返して」
安謝は足をモジつかせながら言った。
「そうだろうな。恥ずかしいだろうな。じゃあ隠すものをやるよ」
私は真に目で合図した。真はニヤリと笑って安謝のおやつの牛乳瓶を安謝の方へゴロゴロと転がした。牛乳ビンは安謝の足にぶつかって止まった。
「ほら。それで隠せばいいだろう」
安謝は足元の牛乳瓶を見て、しばしどうするか迷っていたが、何も持たない丸裸でいるのは耐え難く、何でもいいから何かにすがりたいという気持ちが起こったのだろう。サッとビンを拾うと恥ずかしい所にピッタリと当てて覆いにした。牛乳がたっぷり入っている、それなりの大きさのある瓶は確かに多少ながら覆いの役割を果たしている。片手で牛乳ビンを前に当て、片手でお尻の割れ目を隠している姿は滑稽極まりない。
「ふふ。牛乳をそんな所に当ててどうするっていうんだ」
「そこに押し付けて温めてから温かい牛乳を飲もうってわけか。変な事をするヤツだな」などと言ってからかった。安謝は恥ずかしさから顔を真っ赤にして、「ああー」と叫んだ。が、いったん牛乳ビンを隠す多いとしてしまった以上、もはや元に戻すことは出来にくい。第一、丸裸でいる者に、何かを与えれば、それがどんな物でもそれを覆いにしたくなる気持ちが起こってしまうのはしかたがない。牛乳瓶は、火照った体のアソコに強く押し当てられて、本当に温められていく。
「おい。真。安謝のおやつだけれど安謝のアソコで温められた牛乳なんて二度と手に入れられないぞ。頼んで少し飲ませてもらえ」
私は笑いながらそんな事を真に向って言った。真は口の周りについた牛乳の沫を拭いながら笑って肯いた。私たちはおやつを食べながら、牛乳ビンをアソコに当てて丸裸で立っている安謝を余裕で眺めながら食欲と性欲を満たした。
「どうだ。真。面白いか」
「ええ。最高です。親分」
私は安謝に向って言った。
「おい。安謝。どうだ。今の気持ちは」
「は、恥ずかしいわ。死にたいほど恥ずかしいわ」
安謝は牛乳瓶をアソコに当て、片手でお尻の割れ目を隠しながら、頬を火照らせて声を震わせながら言った。
「じゃあ、お前も立ちっぱなしで、そろそろ疲れてきただろうから、そろそろ許してやる。その代わり条件がある」
「な、何。条件て」
安謝はすがるように、咄嗟に聞いた。
「四つん這いになって真の前に行き、今まで真をいじめてきた事を詫びるんだ。そしてこれからは真の奴隷になる誓いを述べるんだ。そして雌犬のように真のおもちゃになるんだ。少しでもさからったらダメだぞ」
「わ、わかったわ」
丸裸で立ったまま晒し者になる屈辱よりは救われる、と思ったのだろう。安謝は床に四つん這いになると、犬のようにいざりながら真の方へ向かった。私は真に椅子に座るよう命じると、真は椅子を持ってきて、それに腰掛けた。椅子に座らせたのは、真に安謝を高い位置から見下させるためである。真の足元まで来ても安謝は恥ずかしさのため、顔を上げる事ができない。今まで親分として顎で使ってきた真の前で丸裸で四つん這いになっているだけでも耐えられないほどの屈辱であろう。その真に謝罪して奴隷宣言をする事などとても出来るものではない。安謝は全身を小刻みにピクピク震わせている。
「おい。安謝。土下座してさっき言った事を心を込めて真に言うんだ」
恥ずかしさから、なかなか言う決断をもてない安謝に私は後ろから怒鳴りつけた。私に怒鳴り連れられて安謝はやっと口を開いて屈辱の誓いを声を震わせながら述べた。
「し、真君。今まで威張ってきてごめんなさい。私はこれから真君の奴隷になります」
今まで影も踏めなかった親分の安謝にこんな事を言われて真は最高の征服感に浸っているのだろう。真はニヤニヤ笑いながら安謝を見下している。
「よーし。安謝。よく言った。それじゃあ奴隷になったしるしとして真の足の指を舐めてきれいにするんだ」
私が後ろから安謝に命じると安謝は逆らう様子も見せず、素直に、「はい」と言って、真の足をぺろぺろ舐めだした。
「おい。真。どんな気分だ」
「ああ。親分。最高です。オレ、今、おちんちんがおっ立っちゃっています」
真は、苦しげな表情をして勃起したマラをズボンの上からしごいた。
「ふふ。そうだろう。今まで親分だった、こんなきれいな女が丸裸の四つん這いになってお前の足の指をぺろぺろ舐めているんだ。もう安謝はお前の奴隷なんだから何でも好きな事をしていいんだぞ」
「へい。わかりました」
真は笑いながら答えた。安謝が片方の足を十分舐めたので、真は膝を組み替えてもう一方の足を安謝の鼻先へ差し出した。安謝は差し出されたもう一方の足をまたぺろぺろ舐め始めた。
「おい。安謝。もっと指を付け根まで口の中に入れてきれいに舐めるんだ」
言われると安謝はその通り口の中に足指を含んで足指の付け根まで口唇を往復させた。はじめは興奮していた真もだんだん慣れてきたと見え、腕組をして靴磨きに靴を磨かせるような様子でニヤつきながら余裕の表情で、一身に足指を舐める安謝を見下している。親指から小指までもう十分に、安謝が足指を舐めてきれいにしたので真は足を引っ込めた。そして安謝を四つん這いにさせ、体を調べるように、体のあちこちを触っては揉んだ。安謝は四つん這いになったまま、されるがままになっている。真は後ろに回って、安謝の尻の割れ目を力強くグッと開いた。安謝は思わず、「ああー」と声を漏らした。真は一心にすぼまった尻の穴をじっと見ている。
「どうだ。安謝。子分だった真に尻の穴を見られる気分は」
「は、恥ずかしいわ。お、岡田君。真君。お願い。もう許して」
安謝は顔を真っ赤にしてピクピク体を震わせながら、屈辱に耐えている。今まで子分だった者の前で丸裸の四つん這いになり、尻の穴まで見られるという屈辱は想像に余りある。安謝は裸で立ったままで晒し者にされるよりは、と思って真の前で四つん這いになることの方を選んだのだろうが、男のサディズムに容赦というものはない。ついに安謝は四つん這いの状態で、尻の穴を見られる屈辱に耐えられなくなって、「ああー」と叫んでペタリと尻を床に下ろした。
「チッ。堪え性のないヤツだ」
私は真を呼び寄せてヒソヒソと耳打ちした。それを聞くと真はニヤリと笑った。私達は、女の最も恥ずかしい所をギュッと手で覆って隠しながら横座りしている安謝の背後からそっと忍び寄り、二人がかりで安謝の手足を掴んで無理矢理、立たせ、教壇に突っ伏させた。私達は「えーい」と掛け声をかけて二人がかりで安謝を持ち上げて、教壇の上に仰向けに載せた。
「な、何をするの」
いつも授業が行われている教壇の上に裸で載せられて、今度は何をされるのだろうかという不安げな表情で安謝は脚をピッタリ閉じ、必死で縮こまろうとしている。私は安謝の両手首を掴み、真には両足首をつかませて、二人で思い切り手足を引っ張った。男二人の力にかかっては女の力ではかなわない。「ああー」と安謝は叫び、ちぢこませていた手足は無理やり伸ばされて、安謝は教壇の上で大の字にさせられた。私達は安謝の手首と足首を縄で縛って教壇にくくりつけた。安謝は俎板の鯉のように教壇の上で大きく手足を広げ、腋の下も臍も、その下の恥ずかしい所も何もかもさらけ出している。
「お、岡田君。お願い。やめて」
安謝は顔を真っ赤にして叫んだ。
「ふふ。恥ずかしい所が丸見えだぞ」
「い、いや。見ないで」
脚を閉じようと腿の肉がピクピク動いている。
「ふふ。恥ずかしい所を見られるのは辛いだろう。覆いをして隠してやろうか。どうだ」
「お、お願い。そうして」
私は安謝のおやつのアンパンを安謝のアソコの上に載せた。
「な、何をするの」
「だから、恥ずかしい所を覆ってやったんだよ。こうすれば君のアソコは見えないよ」
教壇の上で丸裸の大の字に縛られて、小さななアンパンをアソコの上に載せている姿は実に滑稽でエロチックである。
「ふふ。あそこは見えないけどとてもエロチックだよ。あそこを牛乳で温めたり、今度はパンを温めたりと、君は変な事をしたがるんだね」
私がそんな揶揄をすると安謝は頬を真っ赤にして、
「お、岡田君。お願い。変な事はやめて」
「変な事。だって君が望んだ事じゃないか。じゃあ、とるよ」
私がパンを取ろうと手を伸ばすと安謝はあわてて、
「や、やっぱりやめて」
と叫んだ。恥ずかしさから頬を火照らせているため、本当にパンが温められているように見える。私は真に命じて安謝の牛乳を持ってこさせた。私と真は安謝の顔を挟むように、両側から笑いながら安謝を見下した。
「さあ。もう十分、温まっただろう。お前もいい加減つかれて、お腹がすいただろう。自分のアソコで温めたおやつを食べな」
私は安謝のアソコの上のアンパンをとった。アソコが顕になって、安謝は反射的に、「ああー」と叫んだ。
「そら。自分のアソコで温めたおやつを食べな」
私は安謝の口を無理やりこじ開けて牛乳を流し込んだ。安謝は口に注ぎ込まれた牛乳を仕方なしに飲んでいる。飲み込む時、ゴクリゴクリという音とともに喉仏が動くのが面白い。
「さあ。パンも食べな」
と言ってパンをちぎっては口の中に放り込んだ。そして牛乳を少し注ぎ込んだ。安謝は口を閉じてモグモグさせてゴクリと飲み込む。私は何だか生きた人間を使って、理科の実験をしているような気がして可笑しくなった。おやつを全部食べさせると、安謝が動けないのをいいことに、私は安謝の鼻の穴や耳の穴を間近で奥まで覗いてみたり、体のあちこちを触ったり、揉んだりして安謝の体をもてあそんだ。真も遠慮なく、安謝の体を触っている。女番長として威張ってきた、手も触れる事もできない、きれいな女が今では教壇の上に丸裸の大の字に縛られて男二人にもてあそばれている。私達は図にのって安謝の頬っぺたをピシャピシャ叩いた。
「おい。この机は授業で使う神聖な机だぞ。その上に丸裸で乗っかるなんて不謹慎じゃないか」
私は真面目くさった口調でそんな揶揄の言葉をを投げかけた。
「おい。真。安謝のアソコをよく見ておけ。女の子のアソコをこんなにまじまじと見られる機会はもう二度とないかもしれないぞ」
私がそう言うと、真はホクホクした顔つきになり、安謝の開かれた脚の方へ回って、両腿を掴んでグッと開き、鼻先が触れんばかりにアソコに顔を近づけた。
「し、真君。お願い。見ないで」
安謝は真っ赤になった顔をそむけて、腿をピクピク震わせている。
真の手がそこに触れると安謝は思わず、「あっ」と叫んだ。
「し、真君。お願い。やめて」
安謝は声を震わせて訴えたが、真は好奇心満々といった目つきで、割れ目をなぞったり、中を見ようと指でそっと割れ目を開こうとしたりしている。
「し、真君。お願い。やめて」
安謝は再び声を震わせて訴えたが真にやめる気配は全く見られない。無我夢中になっていつまでも割れ目をいじくりつづけている。真への哀願は無駄だと思ったのだろう。安謝は辛そうな顔を私に向けた。
「お願い。岡田君。もうやめて」
私は余裕の口調で、
「ああ。もうやめるよ。だが真は女の子アソコをはじめて見て喜んでいるんだ。真が十分満足したらやめてやるよ」
と言って一心に女のアソコを検分している真に、
「おい。真。どうだ。もう満足したか」
と聞いた。真はニヤリと笑って、
「はい。もう十分満足しました」
と答えた。
「そうか。それはよかったな」
そう言って私と真は教壇に縛り付けられれている安謝の縄を解き、二人で抱きかかえて安謝を教壇から下ろした。安謝はクナクナと座り込んだ。
「よし。今日はもうこれで終わりにしよう」
私は真に命じて安謝の服を持ってくるよう命じた。
真はホクホクした顔つきで教室を出て、すぐに服を持って戻ってきた。安謝は精根尽きたという様子でガックリ項垂れている。安謝に服を渡すと寂しそうな顔つきで黙って服を着た。そして再び床に座り込んだ。
「よし。じゃあ、今日はこれで終わりだ」
じゃあな、安謝、と言って私は真を連れて教室を出た。

   ☆   ☆   ☆

「どうだ。今日は楽しかったか」
と聞くと、真は、
「ええ。今日は最高の一日でした」
と笑って答えた。
「そうか。それはよかったな。これからは何回でも今日みたいに安謝にエッチな事をしていじめることが出来るぞ」
「本当ですか。オレ、最高に幸せです」
真はうかれきっている。
私は浮かれている真をジロリとにらみ、ただし、と、強い語調で言った。
「ただし、今日のことは絶対、秘密だぞ。誰にも言うな」
浮かれていた真は急に厳しい口調で言われて、笑いが消えて真顔になった。
「は、はい。絶対、誰にも言いません」
「よし」
私は真の目をじっと見つめて釘をさした。

   ☆   ☆   ☆

急いで教室に戻ると、いつもの姿に戻った安謝は黒板に白墨でネコの絵を書いていた。
「どう。うまいでしょう」
安謝は今までの事など忘れたかのようにアッケラカンとしている。安謝は白墨を置くと私の方に振り向いた。
「岡田君。ありがと。気持ちよかったわ」
「つらくなかった」
「うん。全然平気。でも少し疲れちゃったわ」
「真には誰にも言わないよう堅く口止めしといたよ」
「ありがとう」
「岡田君」
「なあに」
安謝の頬が少し紅潮した。
「ま、またしてくれる」
私は嬉しくなった。
「いいよ。でも一方的に君をいじめるっていうのは、わるいよ。またこの前みたいに君の気がスッキリするまで僕をいじめてくれていいよ」
安謝はクスッと笑った。
「そう。じゃあ、今度は立場を逆にして、ここに女の子をたくさん連れてきて岡田君に裸踊りをしてもらおうかしら」
私はびっくりした。
「ええー。いくらなんでもそんな事は出来ないよ」
「ふふ。ジョーダンよ。ジョーダン」
彼女はクスクス笑った。
「ああ、びっくりした」
私はほっとして胸を撫で下ろした。
「岡田君」
彼女は穏やかに微笑して私に寄りかかってきた。そして目を瞑って両手をそっと私の背中に廻した。私はびっくりした。心臓の鼓動がドキドキ早まっていく。私もそっと彼女の背中に手を廻した。
女の子と話すのが極度に苦手な私には彼女の心はわからない。
疲れから寄りかかったのか、私に好意を持ってくれたのか。
もしそうならその好意とはどんな種類の好意なのか。
しばし悩んだが私は考えるのをやめた。
柔らかい女の子の体の温もりの感触が無上に心地よかった。

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