かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 198 中国⑤

2023-02-26 11:39:04 | 短歌の鑑賞
2023年度版 馬場あき子の旅の歌26(2010年3月実施)
    【飛天の道】『飛天の道』(2000年刊)164頁~
     参加者:N・I、Y・I、T・S、藤本満須子、T・H、
         渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放


198 富士よ富士しだいに小さく日本は沈みゆき濃きスモッグに満つ

    (まとめ)
 前歌【風早(かざはや)の三保の松原に飛天ゐて烏魯木斉(うるむち)に帰る羽衣請へり】を受けての作だから、烏魯木斉に帰る飛天とこれから行こうとする自分たちを意識の上で重ねているのであろう。実際は飛行機で中国に向かっている場面だろうが、「富士よ富士」と呼びかけるとき日本を離れる飛天の寂しさも投影させているのだろう。スモッグに満ちた日本が小さく沈むように遠ざかってゆく。「スモッグに満つ」に象徴される日本の現状は自然破壊や環境汚染の問題だけではなく、汚染を生み出す政治状況の不透明性までを含んでいるのだろう。「沈みゆき」にそんな祖国日本に対する悲しみと哀惜が滲む。(鹿取)

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