かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 337 スイス②

2024-12-22 11:47:01 | 短歌の鑑賞

   2024年度版 馬場あき子の外国詠46(2011年12月実施)
     【氷河鉄道で行く】『太鼓の空間』(2008年刊)167頁~
      参加者:K・I、N・I、鹿取未放、崎尾廣子、曽我亮子、
        たみ、藤本満須子、渡部慧子                                      

337 美しく遠く思ひのとどかざるアルプスの雪ゆめならず見る
        
             (レポート)
 眺めている場がよく分からないが展望台からであろう。マッターホルン、アイガー、メンヒ、ユングフラウなどの名峰の連なるアルプス。胸に沁みる美しい歌である。(崎尾)


            (当日意見)
★憧れていたアルプスを現実に見た喜びがよく表されている。(N・I)
★遠かったが実際に来ているアルプス全体を現在形で詠っている。しかし、見ているけれど一体化はで きない。(藤本)


       (まとめ)
 「とどかざる」は現在形だから、あこがれていた以前に届かなかったのはもちろん、実際に眺めている今も思いは届かないというのだろう。もし現実に見て思いが届いたのなら、ここは「届かざりし」と過去形になるはずだ。だから「遠く」は物理的な遠さのみではなく、精神的な距離を含んでいるのだろう。憧れていたアルプスにやってきて、夢ではなく目の前にその雪を見ている。しかしその余りにも美しいアルプスの崇高さにはとても思いは届かない。人間には触れることを許さないような圧倒的な神々しさがそこに在ったのだろう。「とどかざる」と人間の思いを拒絶することで、賛美を際だたせている。(鹿取)

 


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