かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 125

2023-10-02 13:30:25 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究14【寒気氾濫】(14年4月)まとめ
    『寒気氾濫』(1997年)50頁~
    参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、N・F、
        藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木良明    司会と記録:鹿取 未放
             

125  寒気団ヒマラヤ杉の上にあり同士討ちなり緘黙者とは

        (レポート)
 寒気団がヒマラヤ杉の上に居座って、地上のもの(ヒマラヤ杉や作者を含む)と対峙し、にらみあっている。今はどちらも緘黙者(口を閉じてだんまりを決め込んでいる)同士であり、その意味で同士討ち(仲間内の争い)の様相である。寒い「からっ風」の吹きすさぶ前の、山間部の重苦しい沈黙のような静けさが伝わってくる。(鈴木)


          (当日発言)      
★寒気団と作者とヒマラヤ杉の対比というのがとても面白い解釈ですね。緘黙者という
 のが一つのミソなんでしょうね。寒気団とヒマラヤ杉がお互いに押し合っている。そ
 こに空っ風が吹いてくる。群馬というのはものすごく寒いところですね。(N・F)
★この歌は大好きです。渡辺さんはあまり口数の多い人ではないから自分は緘黙者だと
 いう意識が日頃からあって、こんな歌が生まれるのでしょうね。しゃべらないのがそ
 んなに悪いことかというような意味の歌もありましたし。ここでは寒気団がずっと居
 座っていて、ヒマラヤ杉はその寒さにじっと耐えている、その拮抗のようなもの、緊
 張感が美しいと思います。(鹿取)


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