かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 83

2020-09-02 17:40:09 | 短歌の鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究⑩(13年11月)
     【からーん】『寒気氾濫』(1997年)36頁~
      参加者:崎尾廣子、鈴木良明(紙上参加)、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター 渡部慧子    司会と記録:鹿取 未放


83 空からきて空へ消えゆくもののかげ埴輪曇らせ過ぎてゆきたり

      (レポート)
 眼前に「埴輪」がある。それを「曇らせ過ぎてゆきたり」と完了形に詠うところの「空からきて空へ消えゆくもののかげ」とは、光陰、つまり時だ。ゆっくり言葉をかさね、虚をたっぷり含む歌いおこしによって、一首を大きくしている。完了形で切り取りながら、対照が「埴輪」であるところからその制作時代までさかのぼる読みとなる。「曇らせ」に埴輪暦とでも呼びたい長い時のうつりの明暗を思う。(慧子)

           (記録)
 ★私は雲の歌だと思っていました。雲がすぎていく時は埴輪が曇る。そして雲が消える
  と埴輪は明るくなる。だから私はもう少し単純な歌かと思っていました。もちろん埴
  輪というものへの執心というか偏愛みたいなものが作者にはあって、埴輪の歌はたく
  さんあるので、埴輪の歴史も含めて本質のようなものに迫りたい思いはあるかもしれ
  ない。その点ではレポートの後半部分にはわりと同感です。(鹿取)
 ★わたしは「もののかげ」の「かげ」が光陰の「陰」だと思っていた。光のことを古典
  では「かげ」というからこれは時のことかと。たしかに時間なら空に消えるとは限ら
  ないわね。(慧子)
 ★光陰という時の光は太陽で、陰は月のことなんだけど、それで月日、時間。
(鹿取)


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