かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  259

2021-07-06 19:10:53 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究31まとめ(15年9月)
    【はずかしさのまんなか】『寒気氾濫』(1997年)107頁~
     参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放


259 輪郭の固き少女の触るるほど近づきてきて輪郭を消す

      (レポート)
〈解釈〉二通りに解釈ができるのではないか。一つは、前の歌(芹青きながれに指を差し入れてわがとこおとめ登校をせず)を受け、痩せた少女が水辺にいる場面を思った。ふっくらとやわらな輪郭ではなく、頑な輪郭の少女が、水面に手をさしいれ自分の影を壊している。もう一つは、場を水辺ではないと解釈して読んだ。作者は地面に映る自分の影を見ており、そこへ「輪郭の固き少女が」触れるほど近づいてきて作者の輪郭と重なる。そのため作者の輪郭を消してしまったという。
〈感想〉「輪郭の固い」とは、直線的な身体の痩せた様子と同時に、少女の内向的なこころの固さも表現されているように思う。(真帆)


     (当日意見)
★解釈で作者の輪郭を消してしまうとありますが、私は少女が輪郭を消したと思った
 のですが。257番の「少女の胸真っ平らなり蘆の芽のむすうに尖るすぐろ野に立
 ち」と同じ少女なのでしょう。そういう子が近づいてきて、むちゃくちゃ可愛くて
 輪郭が消えてしまった。(慧子)
★そうすると近づいてくるのは〈われ〉に近づいてくる?(鹿取)
★そうです。(慧子)
★芹青きの歌とは全く独立している。輪郭を消したというと少女の優しさが見えてく
 る。輪郭が固いというのはしっかりした娘さんだということ。(曽我)
★優しさって、少女が持つ本来の優しさではなく、作者に対する優しさのことですか?
   (石井)
★親しさのことです。近づくことによって優しさが増す。(曽我)
★それが優しさですか?(石井)
★曽我さんのおっしゃったのは、バリケードを張ったようなとげとげしいところが消
 えていって暖かな心になったよという意味だと思います。(真帆)
★これはもう自分の子供だとしたら、近づくことによって融合的になる。その気持ち
 は実によく分かる。抱き上げるような感じ。遠くで見てると固い感じだけど、お父
 ちゃんって近づいてくると融合されちゃうんですよ。(鈴木)
★輪郭が固いというのはまだ未熟な少女、そう思っていた子が近づいてきたら意外と
 女性的で成長していたんだと思ったという。(M・S)
★私はあまりそういう人情的な感じではとっていなかったのですが。どちらかという
 と心理学的なイメージ。肉体も精神もやや固い少女が〈われ〉に近づいてくること
 によってその輪郭がおぼろになっていく感じ。鈴木さんがおっしゃった融合という
 のとまあ同じことだと思います。高度な渡辺さんらしい歌ですね。(鹿取)

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