かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 367 中欧②

2023-10-20 12:11:19 | 短歌の鑑賞
 2023年度版馬場あき子の外国詠51(2012年4月実施)
  【中欧を行く ドナウ川のほとり】『世紀』(2001年刊)P96~
   参加者:N・K、崎尾廣子、鈴木良明、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:渡部 慧子 司会と記録:鹿取 未放


367 影響力少なきゆゑ伝承は安らけし漁夫の砦に菩提樹は散る

      (当日発言)
★何の影響だろうか、分からない。(藤本)
★同じようなことがいつの世も繰り返されていることを言っているのか。(崎尾)
★「漁夫の砦」に残されている伝承は、それほど大事件では無かったので、いまは静か
 な風景の中にあって安らかに菩提樹が散っているということだろうか。(鹿取)


     (まとめ)
 「伝承は安らけし」は、遙か昔だから安らかなのか、もともとそれほど残虐なことがらではなかったのか。あるいは、非常に残虐な事柄があったのだけれど、その言い伝えは少人数にしか伝わらなかったので、安らかなものとして今日には残っているということか。十三世紀、モンゴル軍は残虐を極めたというし、ナチスやソ連軍のこともまだ近い過去である。とても「安らけし」とは振り返れないだろう。365番歌「旅人は何を見るべきただ静かなハンガリーの秋を漁夫の砦に」、366番歌「ドナウ川秋がすみせり漁夫の砦にたたかひし漁民のことも忘れつ」などから考えると、何か伝承を外れた忌まわしい過去を作者は見ようとしているのだろう。(鹿取)   

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