かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の132

2019-02-03 19:14:26 | 短歌の鑑賞
  なぎさ用渡辺松男研究2の17(2019年1月実施)
     Ⅱ【膨らみて浮け】『泡宇宙の蛙』(1999年)P85~
     参加者:泉真帆、M・I、K・O、岡東和子、A・K、T・S、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


132 吊革に手の甲のある夕刻よサラリーマンはインドを思う
     (レポート)
 吊革をにぎる、ではなく「吊革に手の甲のある」と詠っている。そのため一首には自分の意志で通勤しているという意識感覚がなく、作者の身体は通勤移動をしているが心はインドを思っているというのだろう。上句に「手の甲のある」と物質的に表現しているところが絶妙だとおもう。(真帆)

      (当日意見)
★インドを思うだから仕事が終わってほっとしているのかなあ。上の句のような表現はなかなかで
 きないので感心しました。(岡東)
★インドは仏教生誕の地ですし、原初的な何かがありそうで憧れる人は多いですよね。私の友人で
 インドによく出かけている人は、帰国して何週間かは空間に霊のようなものが見えるってよく言
 っていました。疲れ果てて電車のつり革にすがっている夕方、ふっとインドを思うって分かりま
 す。(鹿取)
★手の甲をクローズアップしてうまいですね。たぶんそこには夕日が当たっていて、そういう映像
 が見えます。インドって手の文化ですよね。左右で不浄の手とか決まっていますよね。つり革の
 手からいろんなことを想起させるので感心した一首です。(K・O)
★そういうことにさっき鹿取さんが言ったことが加わっていると思います。システム化されたサラ
 リーマンの世界から原初的な世界を憧れる。手の「甲」といったところでクローズアップされる
 映像が素晴らしいです。(A・K)
★もっとも、この歌が詠まれた時代から比べて、今インドはIT産業では世界のトップですよね。
 まあ、それは上部だけで、大部分は近代化されないどろどろの世界が残っているのだと思います
 が。そういう最先端と泥臭いものが同居しているのがインドで、それも魅力なのでしょうけど。
    (鹿取)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男の一首鑑賞 2の131 | トップ | 渡辺松男の一首鑑賞 2の133 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事