かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 352

2024-11-26 22:35:18 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究42(2016年9月実施)
    『寒気氾濫』(1997年)【明快なる樹々】P143~
     参加者:M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木 良明    司会と記録:鹿取 未放


352 樹のどんなおもいが春を呼ぶのかと欅の幹に耳押しあてる

    (レポート)
 樹を擬人化して、樹のおもいを探ろうとしている。葉が茂ってくれば、そのそよぎのなかに樹のおもいを聞くことも可能だろうが、小枝や風がごまかすこともあるし、そもそもその季節ではない。勢い本音を訊こうとして「欅の幹に耳押しあてる」のである。また、現象的には、樹が「春を呼ぶ」のではなく、春が巡ってきたので、樹はおのずからそれに反応するわけなのだが、自然から遊離した人間から見れば、自然そのものである樹が「春を呼ぶ」ように思えるのである。(鈴木)


      (当日意見) 
★レポーターのような理屈ではなく、これはものすごく素直な歌だと思いますが。
   (鹿取)
★樹が水を吸い上げる音が聞こえると聞いたことがあるますが、何か樹の思いが聞こえ
 るような音があって、この樹と定めて聞く人がいるそうですね。(M・S)
★それは面白いですね。樹に耳を押し当ててああ春が来たんだなあという歌はけっこう
 ありますね。これは逆に樹の思いに主眼があって、それが面白い。(鹿取)
★樹に耳があるとか眼があるとかうたった歌はありますけど、この歌は甘くなっていな
 くていいですね。(慧子)

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