地震リスク delphis manta blue

身近な地震リスク 減災を目指して

<復興を願い 2011.3.11東日本大震災>
<未曾有の巨大災害 記録>

新潟県と地震保険・共済

2007-07-21 | 地震リスク

戦後、新潟県では三度の大震災を経験したことになる。

 

一度目は昭和39年(1964年)6月16日に新潟県沖を震源とするM7.5の新潟地震が発生し、新潟市では震度6を記録し死者26名、住家全壊1,960戸の被害となった。二度目は平成16年新潟県中越地震、三度目は今回の平成19年新潟県中越沖地震。新潟県は地震の多いイメージがなかったはずだか・・・・。

<参考:日本地震学会 日本付近の主な被害地震の年表>

http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssj/publications/HIGAI/after1951.html

 

1964年の新潟地震発生後、池田内閣で大蔵大臣を務めた新潟県選出の田中角栄は、地元である新潟の惨状を目の当りにし、地震保険創設を決意し保険審議会に諮問した。審議を経て1966年6月、「地震保険に関する法律」が制定され、日本に地震保険が誕生した。

 

当時、保険事業として成り立たないとしてきた損害保険業界は国が再保険として関与することにより事業としてスタートすることができた。地震保険は官と民間が一体となった世界的にもめずらし制度として運営されている。

<参考:損害保険料率算出機構 日本の地震保険>

http://www.nliro.or.jp/disclosure/q_ofjapan/nihonjishin_3.pdf

 

このように地震保険誕生には新潟地震に深く関係があったわけであるが、地震保険が田中角栄が望んだ被災者の生活安定に寄与したものとなっているのか疑問がある。新潟県の加入状況は2005年度末で世帯加入率13.2%と全国平均20.1%を大幅に下回る。この数字は2004年10月の新潟県中越地震を経験した後での状況だ。経験する前の世帯加入率は11.2%の低水準である。わずかしか増えていないようだ。

 

しかし、地震保険以外にJAの建物更生共済や全労災の共済等もあり、新潟県での地震災害に係る保険・共済の加入件数は地震保険114,298件、JA建物更生共済448,325件と圧倒的にJA共済が多いようだ。

<参考:日本損害保険協会 地震保険都道府県別世帯加入率の推移>

http://www.sonpo.or.jp/archive/statistics/syumoku/pdf/index/kanyu_jishin.pdf

<参考:JA共済 2007年6月25日ニュースリリース能登半島地震>

http://www.ja-kyosai.or.jp/about/press/20070625.pdf

 

2004年の新潟県中越地震では地震保険で12,542件、14,774百万円を保険金として支払い、建物更生共済で87,362件、77,209百万円の共済金が支出された。今回はどれくらいの保険金、共済金により救われることだろうか。

<参考:日本地震再保険(株)再保険金支払額上位10地震>

http://www.nihonjishin.co.jp/quake_info/index.html

 

新潟県での地震に対する備えは今回も耐震補強、地震保険・建物更生共済加入の状況から万全とはいえなかった。田中角栄も非常に残念に思うことだろう。この状況は全国でみても同様なことがいえる。耐震補強、地震保険・建物更生共済への加入は国民の義務と考えるほうが得策だ。


住宅の安全性

2007-07-21 | 地震リスク

今回の平成19年新潟県中越沖地震でも昭和56年(1981年)以前の旧耐震基準の古い住宅が多く倒壊した。国土交通省の推計によると日本全国には約4,700万戸の住宅があり、うち約75%の3,550万戸が耐震性のある住宅、残り約25%の1,150万戸が耐震性が不十分とされている。

<国土交通省 住宅・建築物の地震防災対策の推進のために>

http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/07/070610/01.pdf

 

しかし、昭和56年以降に建てられた住宅は本当に安全なのだろうか。

 

国土交通省の資料によると、昭和56年を境としている現行の耐震基準、旧耐震基準は昭和53年に発生した宮城県沖地震を契機に耐震基準が見直され現行の耐震基準となった。しかし、その耐震基準は建築基準法上の最低限遵守すべき基準とされ、震度5強の地震に対してはほとんど損傷を生じず、震度6強から震度7の地震に対しては人命に危害を及ぼす倒壊等の被害が生じないことを目標としている。すなわち現行の耐震基準は、震度5強では無傷であるが、震度6弱以上は倒壊の恐れは低くなるが被害は生じるものと読み替えることができる。昭和56年以降の住宅が倒壊しないとは言い切れない。現にいろいろな建築士は「地盤によっても左右され、木造住宅、コンクリートのマンションでも壊れないものをつくることは不可能だ」と発言している。また残念な耐震偽装の問題も露呈した。

 

これまでの地震により古い住宅の倒壊だけが注目を浴びているが、昭和56年以降の住宅の被害状況にもっと注目すべきだ。昭和56年以降の住宅であれば安全だと誤解を生んでしまう。以前に福岡県西方沖地震では福岡市の新築マンションで内壁や天井に亀裂が生じたり、段差が生じたりし住民が苦しい再建交渉を行っている番組をみた。天災なのか人災なのか。阪神・淡路大震災のときも昭和56年以降の住宅で同様の問題が生じたと聞く。

 

自分の住宅に本当に耐震性があるかどうか。地盤も含め専門家に一度みてもらうことと、行政は推計ではなくもっと個々の住宅の情報をしっかり把握し、減災にむけたきめ細かい対策に全力を注いでいただきたい。

 

<参考>

独立行政法人 防災科学技術研究所 加震実験映像

http://www.bosai.go.jp/hyogo/movie.html

長周期地震動によりビル、マンションの中がどうなるか、旧耐震基準の住宅の倒壊の様子がみれます。