欠陥建築バスターズ

土地・建物の調査研究が専門。日本の地震や災害に備えた建築や、不動産市場や世界経済の未来鳥瞰について述べています。

コンクリート中性化の間違った記事!

2013年11月13日 07時16分21秒 | 建築のうんちく



『大学の研究室で、コンクリート研究した私に喧嘩を売るなら…』



私は、以前も、このブログで書きましたが、ある大学で、「コンクリートの研究」

を、していました。

それも、セメントメーカーや、住宅メーカーから依頼を受けて、様々な材料研究

をして来た訳です。



そして、「コンクリートの中性化」や「コンクリートの機械的性質」に関しては、

特に専門分野です。




…私は、「建築士」であると同時に、「私立探偵」です。

ですので、CIAの様に、あらゆる情報を「探知」するのが、日常の行為なのです!



そんな、情報収集の中で、「あるブログ」で「おかしな記述」を、発見しました。

どうやら、以前、私が「コンクリートに木片混入は、欠陥にあらず!」が、

お気にめさない様で…




この方のブログには、大体以下の様な記述がありました。…

「コンクリートに木片が、混入すると、コンクリートのかぶり厚さが不足する。」

「コンクリートに木片が、混入すると、中性化が早まる!」




…馬鹿を言っては、いけません!

一体、その根拠は、何ですか?

この方は、実際に、実験した事があるんですか?




…私は、この件に関して、実験した事も、研究した事も、ありますので、

この方の、間違いを、学術的根拠をもとに、ご説明したいと思います。




まず、「コンクリートの中性化」について、ご存知無い方も居られるので、

その説明から致します。


よく、マンションのベランダ部分を、下から見上げますと、一つ上の階のベランダ

のコンクリートが剥がれて、赤く錆びた鉄筋が、露出しています。




これが、「コンクリートの中性化」です!

コンクリートの中の鉄筋は、コンクリートが強いアルカリ性なので、錆びません。



ところが、空気中の二酸化炭素が、コンクリートに触れると、コンクリート表面

から、コンクリートのアルカリ性が失われ、中性に近づいて行きます。



これが、中性化なのです!

そして、中性化が、鉄筋まで及ぶと、鉄筋は錆びてしまい、鉄筋表面の

コンクリートが剥がれ落ちる訳です。



この現象が、先ほどの、マンションのベランダに見られる「劣化」です。



この「劣化」を防ぐ方法は、あまりないのですが、「鉄筋が錆びる」のを防止

するには、鉄筋までのコンクリートの厚みを厚くする位しか、方法がありません。




そこで、法律で、「鉄筋までのコンクリートの厚み」を決めてある訳です。

これを、「かぶり厚さ」と、呼びます。





…この、ブログの中で、私に喧嘩を売っている方は、

「コンクリートに木片が混入すると、コンクリートのかぶり厚さが不足し、

中性化が進み、ビルが崩壊するとでも、言いたいのでしょう!」




実際の、鉄筋コンクリート工事の中で、コンクリートの中に、小さな「木屑」

は頻繁に混入します。

これは、コンクリートの型枠工事の最中に、角材等をのこぎりで切って使う

からです。




わざと、「木屑」を入れている訳では、ありません。

職人さんも、気が付かないのです。



…気が付かない!

そうなんです、その位、小さな「木屑」しか混入しないのです。



もし、中国の「おから工事」みたいに、わざと大量の「木屑」を混ぜたら

当然、耐久性や強度に影響します。




しかし、数センチの「木屑」が、コンクリートに混入しただけでは、全く

影響が出ません。


それも、「木屑」が混入したとしても、広いビルのワンフロアーに、

数センチの「木屑」が、一個か二個が普通です。




この程度で、ビルが崩壊するかの様な、大げさな事を言うのは、

誠に滑稽な方だと、言わざるを得ません。





…私は、実際に、不純物をコンクリートに入れて、その耐久性を調査しま

したが、「木屑」は「中性化」に悪影響を及ぼしませんでした。



そればかりか、むしろ、逆の結果が出たのです。



実験では、「木屑」をもっと、大きくして、

「かまぼこ」みたいに、木の板の上でコンクリートを固め、木の板が無い時

と、「中性化」の進む速度の違いを、比較しました。




すると、「木の板」がある方が、普通のコンクリートに比べて、「中性化」

の速度が、三分の一になったのです。




その理由は、中性化と言うのは、「乾燥」したコンクリートの方が早い事

が分かって居ますが、「木の板」周辺は、適度に、コンクリートの乾燥を、

防いで居たからです。



また、「中性化」を促進する、「二酸化炭素」のコンクリート内への侵入

も、軽減されていました。




…つまり、「中性化」を抑制するのは、コンクリート表面を、「木の板」

で覆ってしまう方が、良いと言う結果が出て居ます。




ここまで、読んで頂けたら、私に喧嘩を売った方の「主張が間違っている。」

事に、納得されたと思います。




…更に、この方は、「木屑は拾わせるべき。」と主張されています。



確かに、拾う事が出来る場合は、その様にした方が良いでしょう。

ただ、この方は、実際の工事現場での作業経験が、無い様です。



鉄筋コンクリートの工事現場というモノは、生け花の剣山の様に「鉄筋」が

組まれ、人が乗ると壊れかねない「型枠」が組まれています。




その様な中で、僅か「数センチ」の「木屑」が、一個か二個、広いビル

のフロアー工事の時に、「コンクリートの型枠」に中に落ちても、

監理者も職人も、気が付くでしょうか?




もし、可能ならば、数十人体制で、皆で「双眼鏡」を持ち、目を血走らせ、

僅か数センチの「木屑」を、見張らないといけません。



こんな、馬鹿で、大げさな事を、誰がしますか!





…馬鹿で大げさと言えば…

「欠陥建築裁判」において、今回、話題にした様な「木屑」の写真を、

証拠に出している「怪しげなインスペクター」がおりますが、これも「大げさ」

の極致です。



裁判官も分かっていて、「またか!」みたいに、相手にしていません。

事実、この様な「証拠」を提出しても、裁判では負けています。



つまり…

『裁判所も、コンクリートに微細な木屑が混入しても、問題無し!』

と、断定しているのです。



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