読む日々

テーマばらばらの読書日記

海うそ

2018-05-29 | 小説・近代
「海うそ」梨木香歩



明治終わりか大正時代。
東京の大学から、研究のため南九州の遅島を訪れ滞在し、島の廃仏毀釈前の史跡を訪ね、島の人と親しく関わりつつも、研究の答えが出ずに論文を書けなかった男性が、戦争を挟み、50年の時を経て偶然その島の開発に携わる息子にかこつけて島を再訪するお話。

再訪部分はごくわずか。大半は島での日々。これがまた魅力的。

ただ彼はその僅か前に婚約者と両親を相次いで亡くすという悲劇に見舞われている。

昭和の再訪でその死について語られている。

海うそとは蜃気楼のこと。
海うそが見える洋館に住む人は、父親が昔、島のお坊さんだったとのこと。

島に微かに残る昔の風習言い伝え地名。それらを紐解く物語でもある。

が。戦後は悉く変えられていく。

この年齢まで生きると、戦前戦後の価値観の変わり方がいかに激しかったのかよくわかる。

例えば昭和10年と50年ではまるで別世界だけど、
昭和50年と今では、さほど人の姿形や生活様式は変わらない。
洋服着てるし髪は美容室で整えるし、パンはふつうに食べるし、自宅に車あるし電話あるし、洗濯機使うし掃除機使うし。

これから国はどう変わっていくのだろう。


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