宇江佐真理「たば風」
図書館行けず蔵書漁り中。
文庫です。
2008年5月10日1刷
蝦夷・松前藩に関わりのある人達を描いた6編の短編。
短編と言いながらも、ひとつひとつの話が深くって、大満足です。
前回読んだ記憶はうっすらだったので、初見かのように楽しめました(それもどうかと思うけど)
・たば風
間もなく祝言、という許婚者同士を襲った病。引き離され、諦めて余所へ嫁いだ女性の危機に奇跡的な回復力で力を貸す男。女性の無事を見届けて、再発した病で亡くなる。切ないけど、読後感はよかった。
・恋文
呉服屋から武士の元へ望まれて嫁いだ女性。末っ子の元服に離婚を誓うが、その末っ子から100通、父親ーの恋文を書いたら認めてやる、と言われる。事情で、蝦夷の国元へ単身赴任した夫へ手紙を書くうち、初めて夫に恋をする話。面白いけど、ありえないなあ・・
・錦衣帰郷
蝦夷地調査に人生をささげた最上徳内。村山藩楯村出身の貧農の生まれの彼は出世してわずか2日間の帰郷を果たす。それをもてなす、幼馴染の庄屋の視点で描かれる。凄い人がいたんだな、と思わず検索かけちゃった。
・柄杓星
これも引き離された許婚者同士。こちらは男が彰義隊へ入隊。上野から逃げてきた男を女の兄が発見し匿う。一夜だけ、語りあい、函館へ向かう男。そのまま音沙汰はなかった。 こういう悲劇は当時たくさんあったんだろうな。
・血脈桜
幕末の松前藩主の妻、光子を守るため結成された、仲良し6人組の女達。旧幕府軍に追われる中、光子を守りとおす。前年、光子とともにみた「血脈桜」を心の支えとして。実話っぽい。すごいなあ・・・。そしてこの桜は現存しているとのこと。
・黒百合
維新で、禄を失った幕臣達。家を支えるため見世物小屋で立会いを披露して小銭を稼ぐ娘。共に舞台に立つ若者と気持ちを確かめあい、追手と戦う。 この家の兄は酷い。武士の風上にもおけないわ。