「ペニー・フロム・ヘブン」ジェニファー・L・ホルム作/もりうちすみこ訳
児童書とはいえ高学年向きだし、大人が読んで充分おもしろいです。かなりオススメ
舞台は1953年アメリカ、ニューヨーク郊外。11才のペニーは赤ん坊の時、イタリア移民だった父を亡くし、
母方の祖父母と母親と暮らしている。近くには父方の親族がたくさん住んでいて、
イタリア人らしく事あるごとに一族が集合する。
なぜか母親と父親の一族は一切かかわらない。そして暮らしぶりもとても対照的な2つの家族。
母方祖母の作るとてつもなく不味そう
な料理と、父方の祖母が作る想像しただけでヨダレの出そうな
美味しい料理の数々や、
なんでも自由気ままに子供に体験させようとする父方一族に対し、心配症でなんでもダメダメ
という母方の家族。
そんな中で学校でのイジメも体験しながら、それでも毎日楽しく暮らす暮らし振りやら、母親の恋やら、幼馴染でイトコの男の子に引きずりまわされて体験するハラハラドキドキや、憧れの男の子にまつわるお話や、父親のすぐ下の弟である叔父のあふれんばかりの愛情など、読んでいてとても楽しかった。
第二次世界大戦の起こした悲劇がバックストーリーとして語られ、その事が父の死と実は関係していたのだ、という事が
ペニーの入院で明らかになります。
最後はハッピーエンド
です。そこが子供向けの本らしくて、とってもいいです。
あとがきを読むと、ペニーのモデルは作者の母。家族も親戚もみんな実在していて、ストーリーだけが架空のお話でした。
エピソードはほとんど実際に起こったことみたいで、だから尚更リアルでおもしろい。
「ペニー」の本名は「バーバラ」だけど、父親がビング・クロスビーの
「ペニー・フロム・ヘブン」という曲が好きだったから
皆がペニーと呼ぶようになった、と最初に書いてあるけど、それもまた、第二の意味が後半で明かされます。
実父への強い想いと、母親の再婚相手に対する気持ちと、不安定な年頃の女の子の気持ちが上手に語られていて
小学生の頃ってこんなだったよなあ、と懐かしい気持ちも味わえます。
あと表紙の爽やかな絵もよかった。訳もとてもいい。そしてロサンジェルス球団だと思っていたドジャースが、最初はブルックリンにあったんだ、って事が大発見でした。
満足度100