にれっちのつれづれ日記

本州最北端の小児科医にれっちの独り言(^^)

この発熱ってインフルエンザ? でも慌てないで

2015-01-06 09:03:37 | 病気のはなし
今年も八戸・上十三地区からインフルエンザの流行が始まり、いよいよ下北地区も流行開始かという状況になりました。
テレビでも盛んに報道されていることから、「発熱=すぐ受診して検査、投薬が必要」と誤解している人が多いようです。
以前からブログに書いていますが、「インフルエンザ=全員が重症になる」わけでも、肺炎や脳炎・脳症などの重い合併症が高率に起こるわけでもなく、多くの場合は発熱・関節痛・咳などの症状が数日間続く軽症タイプです。
また不顕性感染と呼ばれる無症状(だが他人への感染力はある)の人が2-3割もいる事もわかっています。
「発熱した。インフルエンザかもしれない。大変だ~!」と慌てずに、まずはお子さんの状態をしっかりみてあげましょう。
もしもグッタリしている、とても辛そうにしているという場合は、医療機関を受診することが必要です。
インフルエンザは勿論、他に鑑別が必要な疾患も含めての検索と、治療方針の決定を行います。
熱は高い(最初はちょっと辛さもあるでしょう)が水分摂取はできていて、テレビを見たりは可能ならば、一晩様子を見ましょう。
(インフルエンザウイルスはおおよそ8時間で10倍になると言われていますが、医療機関が行うインフルエンザの検査はウイルス(の塊)が数千~万個ないと陽性反応を示さないため、半日程度ではまだ数十倍にしか増えておらず反応しない=検査上は陰性になる可能性があります)
翌日には自然に解熱しているようなごく軽症ならば、解熱後2日も経てばウイルスの排泄もほとんど問題ないレベルに下がりますから、自宅安静のみでも大丈夫です。
まだ熱が続いていて辛そう・心配という場合には、医療機関を受診することを考えましょう。
インフルエンザの診断は、厚生労働省の感染症発生動向調査による基準で、「1. 突然の発症、2. 38度以上の発熱、3. 上気道炎症状(せき、鼻水、いん頭痛)、4. 全身症状(筋肉痛、全身けん怠など)の4項目を満たすとき」もしくは「上記の4つを満たさない場合でも、迅速診断キットにより病原体の抗原が検出されたとき」とされていて、必ずしも検査は必須ではありません。
また学校の出席停止についても、学校保健安全法という法律で「校長は、感染症にかかつており、かかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる」とされていて、必ず医療機関を受診する必要があるわけではなく、症状等から感染が濃厚に疑われる状態であれば学校(校長)の判断で出席停止にできるとことになっています。
大切なのは診断名ではなく、適切な治療と感染拡大の防止です。
インフルエンザはカゼの一種ですから、治す(ウイルスを殺す)薬はなく、休養と栄養、対症薬(熱や咳を和らげる薬)が治療の基本です。
抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を抑制して自分の体(免疫力)がウイルスを排除する助けになるので、症状が辛い人にとっては有益ですが、もともと軽症の人にとっては必須のものではありません。
症状が治まってきても、登園・登校は子どもにとっての「仕事」ですから、体に大きな負担がかかります。
熱が下がったからと無理をさせるのではなく、集団生活に耐えられる程度に回復するのを待つことが大切です。
またそのことが周囲への感染拡大に対する一番の予防策でもあります。
正しく知って、正しく対処する、そのために必要なお手伝いをしますので、心配な時はどうぞご相談ください。