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10年前の3月 ばぁーせき!芭石!芭石に来たぞっ!


 菜の花が咲き乱れるこの光景は極楽浄土が舞い降りてきた様な美しい光景です。日本なら菜の花=花粉症の時期となりますが中国では花粉症そのものがない(杉が植わってない)ので非常に快適です。   04,03,15 蜜蜂岩-仙人脚 3レ

 10年前の3月は念願だった中国・芭石鉄路を訪れています。まず芭石鉄路についてですが、ネットの記述を総合すると芭石鉄路は1957年開業の石炭運搬用の専用鉄道で芭溝で算出する石炭を、山の下にある街の石渓まで運び出すために作られたとの事です。芭溝と石渓から一字づつ取って芭石鉄路と呼ばれています。全線20Km弱で、軌間786mmの軽便鉄道で非常に特異なのが国鉄線との連絡のない孤立した路線になっている事です。これは石渓まで運んだ石炭を船で運搬するために国鉄線と接続する必要がなかったと言うことだと思われます。
 ほとんどが非電化ですが石渓から躍進橋までの4キロ強は電化されてこな区間では電気機関車も貨物用に使用されて頻繁に運転されています。非電化区間は小型の蒸気機関車(C2)で今も運転されています。 


 蜜蜂岩站はスイッチバックになっています。ちょうど機関車の場所から谷の下を見ると勾配を調子よく登って来る列車が撮影出来ます。お立ち台にに戻って待っていると方向を変えた列車がやって来て非常に効率よく撮影が出来ます。静かな陽当たりの良い場所で一日4往復の列車を待つゆとりはなにものにも代えがたい時間でした。C2の甲高い汽笛が山々に木霊してそれはそれはこの世とは思えない光景でした。    04,03,17 蜜蜂岩-仙人脚 5レ

 時が経過して石炭の産出も少なくなり、険しい山道のために道路は未開通であったために鉄道にしか頼ることしか出来なかった奥地にもまがいなりにも道路が開通し(雨が降り続くと通行止になる程の相当な悪路らしいですが)現地の生活は一変しました。本来の建設目的である石炭輸送も産出する炭鉱の採炭量の減少から芭石鉄路そのものの存続が危ぶまれていましたが、おりしも中国人の生活水準の向上により観光資源として芭石鉄路を延命する事になり、現地では工業遺産に指定し現在では数少なくなった現役の蒸気運行路線のため観光資源として注目を浴びるようになり現在に至っています。


 室内灯も窓ガラスもない客車はわかっていてても軽いカルチャーショックを受けます。よくぞこの世の中にこんな鉄道が残ってくれていたと感動さえ憶えます。   04,03,16 蜜蜂岩-仙人脚 3レ

 この芭石鉄路の存在はなかり前から知られていました。特に2月下旬~3月上旬にかけての菜の花のシーズンにはこの世とは思えぬ素晴らしい光景が繰り広げられ、その景色の中をC2形ナロー蒸機が窓ガラスもないボロボロの客車を牽引して走ると言うのですから、何とか訪れたて撮影したいと思うのは鉄ちゃんなら誰しも思う事だと思います。しかし当時は現地の奥地は外国人の非解放地域で列車に乗って奥地に向かうと蜜蜂岩站で公安に見つかり強制下車させられると言う事でした(今思えば蜜蜂岩まで行ければ後は公安に見つからない様に歩いて奥地に行けたし、蜜蜂岩界隈でも充分に撮影を楽しめたはずですがそれは奥地を知って初めて言える話で、当時は奥地行けないなら意味がないと言われていました)ので二の足を踏んでいました。しかし2000年頃にこの地域一帯が非解放地域から除外され外国人でも自由に奥地に入れるようなり一気に芭石への想いが強くなったのは言うまでもありませんでした。しかし当時、中国はサーズ(重症急性呼吸器症候群=SARS)騒動の真っ只中、それもその病気が芭石鉄路へ行くためにどうしても通らなくてはならない成都がサーズが蔓延している中心地域になっており出撃にはかなりの覚悟が必要となり、出撃はサーズ騒動も沈静化した2004年になってからでした。余談ながら我々の仲間にはサーズ騒動真っ只中に芭石へ撮影に向かった強者が何名かいましたが、成田空港から成都へ向かう飛行機に乗り込む姿をインタビュー付で某放送局のニュースで放送されしまった方がいらっしゃいました。それだけなら笑い話で済んだのですが、それを近隣のたちの悪いオバサンに見られてしまったからさぁ大変!帰国したらサーズ感染者扱いされ保健所が飛んで来たりして大変嫌な思いをした方がいらっしゃったとか・・・?


 朝霧の中を走るその車窓からの眺めも素晴らしいものがありました。  04,03,14 石渓-躍進 3レ

 我々はサーズ騒動も一段落した2004年に訪れています。メンバーは湘南チサ區様・青年部長殿・田端の師匠、それに夜間軌行様とこの旅行では特別ゲストとしてMプロもご参加いただきました。現地ガイドはその頃、熱烈服務で名を馳せていたセン・チョクトさんでした。3月13日に出発し成都空港からセンさんが地元旅行社経由で手配したミニバスで向かいました。始発站がある石渓には深夜の1時頃に到着。翌朝は一番列車ではキツイのでは?とセンさんが気を聞かせてくれて8時過ぎの2番列車で入りました。
 とにかく念願だった芭石鉄路へやって来たというので私以外のメンバーも興奮状態でした。まだまだ本格的に観光地化される前でしたので、外国人は中国人と違う車両に乗るように指示されたものの後に登場するこの鉄道には不釣り合いのガラス張り観光車両ではなく、中国人が乗る車両と変わりなく窓ガラスの無い、代わりに落とし込みの鉄板があり車内灯もない工作員車でボロボロの客車で趣がありました。列車は貫通ブレーキが無いので(日本で言えば列車としてイロハのイさえも要件を満たしていない)車掌が站が近くなったり、下り勾配では手ブレーキを扱うのがとても面白かった事を思い出します。
 石渓站を出るとすぐに一面菜の花畑が現れ、その美しさに感動と言うより妖気を感じるくらいで最初は言葉を失い、時が経つにつれハイテンションになっている自分がありました。


 後に観光地として景観がふさわしくないと理由で取り壊された露天です。この様な光景を文化遺産として理解出来ないうちは中国の文化程度は知れたものです。  04,03,14 石渓站風景

 センさんが事前に芭溝站から徒歩で数分の場所に宿をとってくれていました。宿の老夫婦がいろいろ世話をしてくれた事、夕食後に散歩がてらに歩いた芭溝の集落がきっと戦前の日本の地方の村がそうであっただろうと想像出来る賑かさを見せていたのが今もはっきり覚えています。また自販機なぞあり得ない場所柄、喉がかわくと沿線民家を訪ねると気持ち良くお湯をポットに注いでくれて、そのなかに日本茶のティーバッグを入れて菜の花畑のなかで地元の人の心の暖かさに感謝しつつ、お茶をいただきながら列車を待つ時間は至極の幸せな時間を過ごす事が出来ました。


 真っ暗でどんな写真が撮れるか?とカメラを構えていると列車が停止すると同時に機関助士がアッシュを機関車外に投げ捨てましたが、この火が貴重な光源になりました。   04,03,17 芭溝 1レ

 撮影は自動車と移動手段はないので列車で移動するか徒歩になります。ただ列車は撮影対象なので夜明前の列車以外は乗るわけにはいかず、おのずと徒歩中心になります。ただ撮影範囲はせいぜい数キロ圏内ですから、徒歩での移動は良い運動になります。夜明前の列車で目星をつけた撮影地まで列車で移動し徒歩で移動しながら一日撮影して程よい疲れを感じて宿に帰り、簡易シャワー(日本流に言うと行水かな?)を浴びると夕飯が出来ていてなんとも贅沢な一日を過ごす事が出来ます。
 三泊4日の撮影でしたが初日は晴、二日目と三日目は薄曇りで最終日の4日目は曇りでした。まぁ゛四川の犬は太陽を見て吠える!゛と言われるほど天候が悪い地域ではまずまずの天気なのかもしれません。最終日はセンさんにお願いしてチャーター列車を運転してもらい、あらかじめ決めていた場所でフォトランをやりながら撮影をし、最後はチャーター列車に乗車して石渓站まで出て待たせておいたバスで成都に戻り、最終日は大都会の成都で地元の辛い中国料理をたのしんで、(健全な)マッサージで疲れをほぐし、翌日の朝の便で帰国しました。


 少し肌寒い朝に保線の服務員が線路を歩いて現場に向かいます。こんな光景でも新鮮に思えます。機会があればまた訪れたいものです。  04,03,15 蜜蜂岩

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コメント一覧

DT200A@CF-Y7
青年部長殿
天気の悪い休日に、何もやる事がない環境で最後には弊ブログへご投稿をいただき、感謝いたします。

>滞在中に新品冷蔵庫が鉄路で搬入され・・・

 ”冷蔵庫のドア側にはビールを入れるんだ!これが文化だ!”なんてウソを教えたり、Mプロはダンボールに「冷えたビールあり升!」と自分のサイン入りの看板を作ったりやりたい放題でしたネ!
青年部長
蜜蜂岩站前の食堂へ、撮影で滞在中に新品冷蔵庫が鉄路で搬入され、「あれは我々が食べた支払いで買ったな?!」なんて笑いましたねぇ
DT200A@SH-11C
団長様
もっと自分のために時間を有意義に使うべきでは?と言う葛藤と闘っての貴重なコメント、誠にありがとうございます。

〉成都はサーズとは全く無関係だったはずです。中国便の搭乗者が少ないので無関係の地域にもかかわらずインタビューされてしまい、それが放送されて大変な事になってしまいました。
  今だから笑い事ですが、当時は笑うに笑えない話でしまネ!

団長
私はインタビュ鵜ー事件の1週間前に芭石に行ったので何事も無く帰国しました。たしか当時成都はサーズとは全く無関係だったはずです。中国便の搭乗者が少ないので無関係の地域にもかかわらずインタビューされてしまい、それが放送されて大変な事になってしまいました。
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