緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

がん治療学会の認定医制度

2008年08月26日 | 医療

がん治療学会の認定医制度。

昨年、真夜中に申請開始され、あっという間に5000人の応募・・
サーバーパンク・・

記憶に新しい話です。



それに対して、臨床腫瘍学会の専門医。
兎に角、専門的過ぎて取りづらいと評判でした。



臨床腫瘍学会の専門医は、専門性に優れているといえるでしょう。
一方の、がん治療認定医、これはどこを目指しているのでしょう。

また、この2つの関係、どうなってるんだろう・・

かすかな疑問がいつもありました。





先日、がん治療学会の認定制度に関連する学会49団体が出席をした関連委員会に
日本緩和医療学会からの立場で出席をしてきて、
なるほど・・・と思うことがありました。




ある先生が質問されました。

医学生にとって、このがん治療認定医をとれば、どのようなメリットがあって
10年後にこれがどう活かせると説明できるのでしょうかと。



がん治療学会の認定医は、
自分の専門分野ではないがん領域のことを広く浅く学び、
ボトムアップを目的としています。

社会に対して、認定医、専門医というのは、
医師のここが優れていると太鼓判を押すようものです。



司会をなさっている先生は
がん対策基本法ができたときの委員をされており
患者さん団体と沢山やり取りをされたのだなあと肌で感じました。



「患者さんが言われました。

『がん治療の医師は、自分の専門のことは良く分かっている。
 でも、隣の診療科のこととなると全然わかっていない。
 これでは、がんは診てもらえない。』

 だから、自分の専門領域以外を学んでもらえるようなシステムを作りたい。

 若い医師にどう説明するかということが重要ではなく
 患者さんにとって、必要とされる医師を育成するための認定制度だということを
 ご理解いただきたい。」




つまり、医師のための証ではなく、
患者さんにとってよりよい医師を作るためのシステムとしての
制度を意味していました。


このがん治療認定医は、
患者さんにとって、がんを診る医師として
知っておくべきことを学んで欲しいという
意図が込められていたことを知ることができました。



なぜ、5000人も押し寄せるようなことをしたのか・・



これも、実は計算されていたことがわかりました。

新たに医師が誕生する数8000人。
この4月の国家試験合格する医師が
将来がん患者さんに接する数40%という計算でした。
だから、毎年3000人が受験できる体制をつくりたいと。

初年度なので、定常状態ではない分、
どっと殺到してしまったのは、
計算されていたわけではありませんが、
そう離れた数字だったわけではありませんでした。


大風呂敷を広げたわけではなく、
すべてのがん患者さんに関わる医師に
この認定医のシステムを通ってもらいたい
そんな意図が見えました。



ありがたいことに、私はこの委員会の末席に置いてもらいました。
(末席というか、一番前に座っていたのですが・・)

途中激しいやり取りもありました。
でも、そのお陰で、この意図することがよくわかりました。

緩和医療の専門医のシステムを作ることに私の時間は今さかれています。

でも、これが将来一段落をしたら
私自身の勉強のために、
がん治療認定医にチャレンジしたいと思ったのでした。

(蛇足です・・・

 これは、ここにいるような医師のためというより
 若い医師のために認定制度ですからね・・

 何度も、何度も、念押しされていました・・・ )

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