緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

医学部での講義

2006年06月27日 | 医療

1年に一回、前任地の医科大学で講義をしている。主に緩和ケアのことを話す。がん対策基本法が立法化されるなど、社会が先行するなかで、講座も標榜科もない緩和医療は医学教育では取り残されている。

患者さんを、がん患者さんとか糖尿病患者さんとかではなく、疾患を持っていても健康なところも沢山ある一人の生活者として対面すること、どのような医療に携わったとしても、患者さんの心や体の痛みを感じることができる感性を持ち続けてほしいこと、緩和ケア医でなくとも不快な症状を取り除くスキルを身につけるべく勉強してほしいことなどを、緩和ケアの定義を基本に疼痛緩和の実際や事例、死別後の子供達を支える会でのことを挙げて伝えてきた。

いろいろな講演や講義をさせていただくが、これほど気が乗らない講義はない。専門職の講義や市民講座などは、皆さん聞きたいという気持ちできてくださる。でも、医学生講義、特にベッドサイドに出る前の講義は、別に興味があるから座っているわけでもなく、試験でもなければ中々乗ってくれない。逆に、いかに未知の世界の話を聞いて、面白いと感じてくれたり、心を揺さぶることが出来るかという私の力量に掛かっている。

最後に4月の朝日新聞の記事を使って、自分における延命処置の希望と家族の場合では異なるか意見を聞いてみた。
家族には苦しくても生きていてほしい、意識がなくても暖かければそれだけで生きていると感じることが出来る、家族も延命処置はしないで自然に迎えてほしいという意見が多かった。
自分の死は生物学的な死としてとらえることが出来るが、家族の死はいのちの終焉である。それは、感情が混沌とする実に曖昧な最終地点である。今日、学生さんが感じたこと、家族なら、自分なら、という死に対する感覚を忘れないでほしい。将来、医師になったとき、患者さんやご家族がどのように感じるか、それを絶対忘れないでほしい。人の痛みが分かる医師になってほしい。

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