以前、ここで紹介したこともある
西田幾太郎の短歌の一篇
わが心深き底あり 喜も憂の波も とどかじと思う
この歌を見るたびに、
これこそ、spirichal aspect(霊的な側面)
だなあと思います。
精神症状などの抑うつとかせん妄といった
中枢から発生する生理的変化を伴う
疾病状態とは異なり、
スピリチャリティは、人の本質的な苦悩を
もたらす深く、コアなものなのだと思います。
最近読んでいた論文で、
Palliative care for the seriously ill
というNew England Journal of Medicineの
レビューがありました。
その中で、
スピリチャルな部分が満たされていないと
精神面におけるQOLが低下すること
スピリチャルなサポートを受けていた進行がん患者は
End-of-life(いわゆる終末期 以下 EOL)に
利益の無い医療に振り回されることが少なく、
QOLのスコアが高かったという
他の論文を引用し、
スピリチャルサポートの有用性を
述べていました。
(利益のない医療とは、
ここで引用された論文では、
救命に繋がらない挿管や
ICUへの入院などを
指しています。)
(Amy S Kelley, R. Sean Morrison. Palliative care for the seriously ill. N Engl J Med 2015; 373:747-55)
人の受療行動-つまり、医療機関を受診するきっかけは、
自分自身に不快な症状があるときです。
熱がでた、痛みがある、食欲がない、
下痢をした・・・・・
ところが、スピリチャルな支援を受けるための
きっかけというのは、
症状としては持ち合わせていないのです。
あえて言えば、漠然とした不安・・・
漠然とした不安で、
中々、外来に行ってみようとは
思えないものです。
でも、本当に、このスピリチャルサポートは重要です。
うつの予防、
抗がん治療の中止を円滑にしていくためにも、
EOLに落ち着いた時間を過ごしていくためにも、
早いうちからサポートを受けていることは
大変有用なことです。
前述の論文では、現在アメリカでは、
スピリチャルサポートが
医療費抑制につながる可能性について
研究されているけれど、
まだ結論が出ていないことにも
触れていました。
スピリチャルサポートの方法は、
ありきたりの言葉になりますが、
その人の語りと傾聴が大切になります。
さらに進んで、
ライフレビュー
回想法とも言われ、
今までの人生の歩みを振り返ってみることで、
自分らしさ(自己覚知)を取り戻し、
特に、困難なことを
どのように乗り越えてきたか思い起こすことは、
copingの力をもたらせるとも考えられています。
ディグ二ティーセラピー
カナダのチョチノフによる心理療法。
人生において大切に思っていること、
誇りに感じていることなど、
9つの構造化された質問をし、
それについて語ってもらい、
一つのファイルにまとめることで、
尊厳を維持することを目指すもの
ロゴセラピー
実存分析。
ビクトールフランクルによる
人が自らの「生の意味」を見出すことを援助することで
心の病を癒す心理療法のこと。
https://ameblo.jp/positivementalhealth/entry-12163637844.html
などが挙げられます。
これらは、言葉を使い、語ることができて成り立ちます。
ですから、EOLに入ってしまって、
語ることも苦痛な状況では、
心理療法は困難となります。
診断時から緩和ケアに併行してかかることが進められているのは、
こうしたことからも言えます。
診断時が難しいと感じる場合は、
主治医に尋ねてください。
標準療法として、後どのくらいラインが残っているのか。
そして、その見通しの中で、標準療法の限界が見え始めたら、
限界に達する前に、相談室に行ってください。
どのようなサポート体制がその病院にあるのか、
院外で利用できるリソースはあるのか、
生きることを心身両面から
サポートしてくれる体制をどのように作っていくか、
相談をしてください。
すべてのがん診療連携拠点病院には、
相談室が必須の設置となっています。
本当に、遅くなってしまって申し訳ありません。
ブログ立ち寄らせて頂きましたが、スゴク勉強なさっていて、驚きました。そんな学生さんが緩和ケアを念頭に置きながら医療に関わってくださろうとしていることに、大変ありがたく感じます。
社会からの要請と医療から提供できるもののバランスが取れていることが、よりよく前に進めていくことができるポイントであることは、まさに御指摘の通りです。
読者登録してくださり、本当に、ありがとうございます。また、糧になるとお書きくださり、感謝です。こちらこそ、引き続き、どうぞ、よろしくお願いいたします。
私もいずれ、緩和ケアを通して、患者さんが自分らしく、最期まで自分の生を全うできる手伝いをしていくことができる一人前の薬剤師になりたいと思います。
しかし、医療だけが緩和ケアにおいて必死になっているのが少し心配です。
「医療学生の備忘録」というブログの管理人ですが、今後の糧になる内容であると感じ、読者登録させて頂きました。また、今後ともよろしくお願いします。